第382堀:続・困難な任務だったぜ(棒読み)
続・困難な任務だったぜ(棒読み)
side:スティーブ
まったく、面倒な。
おいらたちの手の中には、魔剣のパーツがある。
まさか、なんて言ったりしないっすけど、ここまで簡単に手に入るとは思わなかったすね。
(どうしますか?)
(別行動している方を合流地点に呼び戻して、これを持って帰らせるっす)
流石にこのレベルの情報となると、現物を送り届けるのも大事になってくるっすから、一旦集まって、状況を確認して、送り届ける人員を用意しないといけないっす。
(おいらたちもいったんここから離れるっすよ)
(了解)
残っている建物には恐らく、残りのパーツがあるんだろうっすけど、下手に欲張るわけにはいかないっす。
送れる情報を送ってからまた調査をする方が確実。
帰ろう、帰ればまた来られるから。っす!!
あれ? なんか状況が違う気はするっすけど、多分意味合い的には変わらないからOKで。
しかし、最初から潜入されていることすら気が付かれていないので、簡単に合流できたんすけどね。
ああ、そういえば、犯罪を犯した犯人が捕まるのは、犯罪、事故、事件を起こしたことがばれるからである。なんてことを聞いたことがあるっすね。道理といえば道理っすね。
起こったことすら知らないのなら、手の打ちようがない。
あれ? これも、何か違う気がするっす。確か完全犯罪のやり方だったけ?
まあ、いいや。
おいらがクソ忙しいのには変わりないし。
(じゃ、居住区は特に深く調べるような施設はなかったと)
(そうです。えーと、なんて言うんでしたっけ? ああ、長屋みたいな家が並んでいて、何軒か中に入って調べましたけど、まさに居住区って感じでした)
(……みたいっすね)
合流して、居住区と思しき場所を探ったチームは、この証言の通り、特に目新しい物はなかったみたいっすね。
渡された、写真とかを見ても、本当に居住区って感じっす。
ありがたいのは、この大陸の文明レベルっすね。
文字の読み書きをできるのはごく一部とまでは言わないっすけど、そこまで多くないし、手軽に文字を書く道具も手に入らないっす。
だから、部屋を漁って、資料が出ないのであれば、よほど特異な相手でもなければ調べる必要は無しと判断できるっす。
これが、教育が行き届いたウィードだったら、全部の家をくまなくって感じになるっすから、地獄っすね。
ちっ、ノーブルとか言う奴め、こういう所をサボってやがったっすね。
居住区の方が大変だと思ったのに……ちっ、おかげでおいらが貧乏くじっす。
(何か問題でも?)
(いや。話や情報を見る限り、これ以上居住区を探るのはわりに合わないっすね。よって、居住区の部隊はおいらたちが手に入れてきた、パーツの現物をもって撤退。大将たちに届けたあとは、入口地点を見張っている部隊と合流して、おいらたちの撤退援護準備をお願いするっす)
(了解)
(陽動用の仕掛けはどうなっているっすか?)
(当初の予定通りに、設置してあります。いつでも任意に使えます)
(うし、その権限はおいらに渡して、そっちは撤退を開始、その際、門、出入り口に動きがないかも確認忘れるなっす。何かあればすぐ連絡を。おいらたちは、怪しい工場内をもっと詳しく調べてくるっす)
(了解。どうぞお気を付けて)
そんな感じで、片方の部隊が撤退するのを見送って、肩をぐるぐると回す。
(肩こりですか?)
(そらそうっすよ。お前も面倒な方を引いたっすね)
(ま、残業には慣れてますからねー)
(……それは、それで問題なんすけどね)
立派な社畜がここに一匹。
……部下としては幸せみたいなんすけど、これは上司としてはなんて声をかけるべきっすかね。
(侵入ルートはどうしますか?)
(そうっすね……)
とりあえず、そこは一旦置いておこう。
ここで考えたところで、待遇が改善するわけでもないし、ここら辺は魔物労働組合でも作ってそこら辺に丸投げするのがいいと思うっす。
今の仕事の上、そんなことまでおいらがやってたらきっと過労死するっす。
今は、お仕事に集中するっすよ。
この考え事のせいで「!」がでて見つかるとかは避けたいっすからね。
スティーブ!! スティーーーブ!! とかに無線でなるのは勘弁っす。
(とりあえず、わざとさっきと同じ順路をたどるっす。敵がおいらたちに気が付いているかの確認っすね。その状況次第で、ルートや方針を変えるっす)
(了解)
パーツを拝借した時は気が付かれていなかったっすけど、後で気が付いて、工場の動きが変わったら、おいらたちの潜入に気が付いていなくても、色々行動が変わるはずっす。
そこら辺の推移を聞いておくのも間違いじゃないっすね。
運が良ければ、だれか工場の管理者なのかもたどれそうっすから。
(特に工場前までは動きはないですね)
(そうっすね。まあ、時間は2時ぐらいっすからね。まだまだ、お仕事の時間でしょうよ)
(こっちは9時5時なんて時間は決まってないですけどね)
(いうなよ。泣きそうになる)
9時5時で仕事が終われるところは日本じゃ幻、ホワイト企業なんて存在しないっすよ。
日本でそれなのに、ウィードでは日本で言うところの国家公務員といっていい魔物兵隊がそんな時間に上がれるわけないっすよ。
日本みたいに、絶妙なバランスで、武力行使をするのに数多の制限があるわけでもないし、準敵対国は多いし、野生の魔物さんも多いし、治安もよろしくない。
正に、休む暇なしっす。
いや、まあその状況の中でもちゃんと休みもあるから、大将はそれなりに気を配ってはいるんだろうけどね。
というか、しれっと、おいら経由で大将に苦情言えって言ってないかね? 君?
(今日、デートだったんですよ)
(よし、光学迷彩を解除して、1人でリア充になってすみません。って言いながら囮になってこい)
(冗談ですよ)
(本当っすね? 一人で幸せになろうとか、そんなことを考えていないっすね?)
(……本当ですよ)
あん?
今こいつ顔そらしたっすね?
(そっちだって、アルフィンさんと同居じゃないですか)
(……世の中難しいんすよ)
本当に世の中難しい。やれ女だと言っても、手元に来る女性がなー。
流石にあれに手を出すほど落ちていないっす。
というか、手を出した途端おいらきっと死ぬっす。
主に、姐さんたちの手によって。
(はぁ、世の中大変ですねー)
(そう、生きるってのは大変なんすよ)
(だけど、思ったよりハンドサインで話ってできるものですよね)
(いや、ハンドサインに魔力を乗せて言葉送ってるだけっすからね。これで、無線機、魔力関連の傍受を防げるっす。電波ってのは無作為、周囲に飛ばすし、魔力での広域連絡は魔力感知が高い人に傍受される心配があるっすけど。このハンドサインなら……)
最低出力で、言葉だけを魔力に乗せて、近くの相手に送れるっす。
完全に、近距離使用だけに特化しているので、傍受の心配もない。
大将やザーギス、ナールジアさんが傍受できないか色々試したっすけど、ハンドサインの内容を読み取る前に、自然に存在している魔力などの、雑音に阻まれてかなり難しいらしいっす。
最近ようやく、実証実験が終わって、実戦投入がされたってわけっす。
今まではコールや無線機が主流だったんで、会話するにも周りにも気を使わないといけなかったっすからね。
(なんだかんだ言って、大将も俺たちのことを色々考えてくれているんですねー)
(ま、そうっすね)
……あの大将の本音はいかに楽ができるかの一言に尽きるっすけど、部下には言わぬが花っすよねー。
ま、おいらたちが戦死しないように気を配っているのも事実ではあるし、いいっすけど。
(さて、雑談はここまでっすね)
(はい。特に目新しい動きはないです。予定通りに潜入していいと思います)
工場前で雑談しながら、しばらく様子をうかがっていたが、特に変化はなしと。
(まったく、動きの1つでもあれば回れ右したんすけどね)
(いいじゃないですか。これでお仕事がさっさと終わると思えば)
(前向きでいいっすねー。なら、さっさと終わらせますか。帰ったら一杯奢るっすよ)
(楽しみにしときます)
さーて、お仕事の続きでもしますかねー。
あー、昼食休みの後の、まだ半分かーって感じ。
ということで、予定通りに、同じルートを再確認しつつ、動きを見て回るのだが……。
(平和ですね)
(そうっすね。お仕事をずーっと頑張っている皆さんの姿がまぶしいっす)
警戒をしていた変化も見当たらず、せっせと仕事にいそしむ労働者の姿が見えただけだったっす。
なんか、あの間に入って、パーツを拝借したことに罪悪感が湧いてくるっすね。
仕事の邪魔をしたという認識が……。
(で、どうするんですか? 一応、通ったルートは特に問題は無しですけど)
(予定通りに、残りの中身も確かめるっすよ。残りのパーツは是非とも手に入れたいっすからね)
(……魔剣用のコアがあると思っているんですか?)
(絶対じゃないっすけどね。防衛体制とかをみると、ここでいっぺんに揃えた方が楽っす)
そう、おいらの目的は、残りのパーツ。
魔剣を魔剣たらしめる、元、ダンジョンコアっす。
魔剣を量産しているということは、その生産場所があるとは最初から言われていた事っす。
運がいいのか悪いのか、その生産場所に当たったおいらたちっすけど、こうなったら、相手の生産力をしっかり把握する必要があるっす。
ここをしっかり調べることで、かなり大将たちが有利になるっす。
(ここからは、多少の無茶も押し通すっすよ)
(了解)
そう言って、慎重に残りの倉庫らしきものを調べて行くが、どれも本物の倉庫だったっす。
今まで見てきた、工場から箱詰めされたパーツをこちらに集積しているって感じっすね。
(ちっ、やっぱりそうは上手くいかないっすね)
(そうですね。ここではパーツだけを生産して、起点となるコアはまた別みたいですね)
はぁ。そう言えば、あの劣化魔剣は損耗率が高いとか言っていたし、パーツごとに作って、すぐに修繕できるようにしているっすかね。
まあ、軍に配備するような感じだったっすから、それぐらい整備性がないと戦場では邪魔になるだけっすよね。
(ま、それが分かっただけでも儲け物っす。一度撤退して、また潜入計画を練り直……)
そう言いかけた時、倉庫に立つ兵士の声が聞こえる。
なにやら、誰かと話しているようっす。
「はあ? 今日の持ち出した数量を覚えているかって? なんでまた? 規則通りの記載はしたぞ? ちょろまかしたりなんてしてないぞ、命は惜しいからな」
「いやいや、そう言う話じゃない。上の方で何やら問題が起きてな、再確認中らしい。俺たちに何か問題があったわけじゃない」
んー?
なんか、数量の間違えでもあったっすか?
ウィードでも同じようなことがあったらどこでミスがあったか徹底的に洗うっすからね。
ラッツ姐さんの商店の商品を横流ししようとしていたアホは、あっさり捕まったっすけどね。
大事だよね、記載とか再確認とか。
おいらたちだって、使用弾薬の数とか報告しないといけないっすから。
よほどの事態でもない限り、日本の自衛隊と同じように、薬莢回収も厳命されているっすからね、おいらたちの技術を少しでも知られないために。
めんどー。二次大戦中の日本軍よりは、まあマシなんだろうっすけど。
あの人たち、マジで戦場の中で、薬莢持って帰ってこいって言われてたみたいだし。
よう、そんな状況で戦争続けようと思ったっすよね。
「ほっ。ならいいや。えーと、確か……」
「……ふむふむ。ありがとう」
「いや。まあ、記憶だからそこら辺もズレがあるかもしれないぞ」
「分かっているさ。それでもって話さ」
「そうか、お前さんもこれからお偉いさんと会うんだから大変だな」
「ま、これも仕事だから仕方ないさ」
どこも下っ端は大変っすね。
同情するっすよ。
(さて、これ幸いに道案内ができたし、予定を変更して追うっすよ)
(了解。待機部隊に連絡します)
遠ざかっていく、下っ端の使い走り。
はぁ、敵さんも9時5時って法律制定されないっすかねー。
8時間労働、全世界共通でお願いするっす。
まあ、昼休みも絶対入れないといけないから、一時間は伸びるんすけどね。
さて、おいらも下っ端さんを見習って、一生懸命働きますかねー。
はい、2話ほど落とし穴を挟みましたが、仕事をしているスティーブや一般の人の生活は楽になったりしません。
悲しいよね。これって、現実なんだよ。(スレッガー風味)
さて、前も話しておりましたが、見本配る話ですが、東京でという意見も多いので、東京でーという方針で。
草案とか、何月にやるとかは、まだです。
そちらの案をまとめるために「東京オフ会予定を考えよう」って活動報告をあげておきますので、そこで話し合って決めましょう。
ではではー