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第364堀:奴隷姫の素性

奴隷姫の素性





Side:モーブ





「お、おっさんたち。いい美人さん連れているじゃねーか?」

「ちょっと貸してくれねーかな?」

「その時には、使い物にならないかもしれねーけどな」


ぎゃははは……と何とも定番なセリフが路地裏に響く。


「モ、モーブ……」


そんな声が後ろからして、しがみつかれる感覚が伝わってくる。


「ああ。俺たちのことか」


俺がそう言うと、ようやくライヤもカースもなんだろうって顔から、現状を理解した顔になった。


「なるほど。確かに俺たちのことだな」

「最近、こういう引率はよくやっていたから、特に疑問がありませんでしたね」


俺たちにとってはウィードの学校で、冒険者の授業をしていて、子供を引き連れるのは当然のことだったが、ここは他国どころか、新大陸の異国だ。いや、そこまで文明に差はないから苦労はしてないけどな。


「つまり、あれだ。お前たちはこの姫さんを攫いにきたと?」

「あん? 姫? どうでもいいから、痛い目見たくなかったら、その女を置いていけ」

「……どうやら、姫様の関係者でもなさそうだな」

「ですね。お前等、捕まりたくなかったら、俺たちに手を出すな。いまなら見逃してやる」


カースはそう言って、連中を追っ払おうとするのだが、やっぱりこの手合いが引くわけもなく……。


「馬鹿にしやがって!! もういい、ここで死体になりな!!」


剣などと言った刃物を取り出して、やる気まんまんでこちらに向かってくる。


「はぁ、めんどくせ」

「そう言えば、この国の法律では剣を抜いていいのか?」

「普通にこういう輩がいますし、抜いても構わないんでしょうが。エクス王国がこちらを捕まえる理由にもなりかねませんね」

「なら、素手でやるか」


ということで、素手で相手をすることになったのだが……。


「す、素手なんて……」


なんか、姫さんはブルブル震えている。

ま、当然とはいえ、これからこのぐらいは、なんてことないって感じになるからなー。

というか、自分から奴隷館から外に出たいって言ったんだしな。

これぐらいは我慢してもらいたい。

そんなことを考えつつ、適当にチンピラたちを畳んでいく。


「たいしたことなかったな」

「だな」

「監視の方。いるのでしょう?」


カースがそう建物の角に声をかけると、そこから2人ほどの男が出てくる。


「ばれていましたか」

「ええ。で、こいつらを頼めますか」

「わかりました。現行犯なので取り押さえてくれて助かります」

「これで、こっちの実力も分かったでしょうから、これからは積極的に助けに来てくれれば楽なんですが」

「了解しました。このことを上に伝えて、すぐに連携しても構わないか許可をとってきます。私たちとしても、こういう不逞の輩に人が襲われるのを、仕事だからと言って黙ってみているのは歯がゆいので」


そう言って、その監視の男はテキパキと連絡をとって、襲ってきたバカ共をさっさと連れて行ってしまった。


「思ったより、監視の奴はまともだったな」

「だな。誠実すぎて驚いた」

「もうちょっと、何か問題があると思ったんですが」

「ま、すんなりことが進んでよかったってことにしておこうぜ。じゃ、姫さん、当初の予定通り、武具を揃えに行くぞ」

「す、すごい……」


うんうん、俺たちの強さも確認できたのがよかったのか、疑うようなそぶりが消えているな。

ま、ただのおっさんたちが騎士よりも強そうにはみえないもんな。

うちの連中は特に変なのが多いから仕方ないけどな。

特にゴブリンとかスライムとかぶっ飛んでるし。

そもそも、剣とか魔術じゃねーからな。銃がメインだし、卑怯だよな。

いや、戦いに卑怯もクソもないんだが、ほら? なんとなくな。

と、そんなことを考えている内に、店にたどり着く。

エクス王都の大通りから遠く、路地の先のちょこっとだけ広い道に面したところにポツンとある店。


「トルーコ商店。ってあれ? あいつの名前、トーネコじゃなかったけ?」

「まあ、自分の名前を多少変えてってところだろう」

「道は聞いての通りですし、間違いはないでしょう」

「なら、とりあえず、入ってみるか」


ここでボーっとしていても始まらない。

俺たちとしては、武具を買ったという事実がいるのだ。

ドッペルと入れ替えるための前作業ってところだな。

なるべく、王都内での入れ替えはリスク回避の為にしたくないそうだ。

だから、訓練中に塹壕を掘らせる練習でもしたときに、入れ替えるらしいので、訓練するための武具が必要だというわけだ。

ま、難しいことはユキに任せよう。

俺たちはのんびり、ウィードと同じように授業みたいに教えればいいのだ。

で、中に入ったはいいが……。


「武具というより雑貨屋じゃないか?」

「そうだな。まあ、干し肉とかを売っていたから当然だと思えるが」

「ですね。ま、その分、安いでしょうからいいんじゃないですか?」


そんな風に店内を見て回っていると、奥からトーネコが出てきた。


「いやいや、よく来てくれました。なにかご入用ですか? それともあの宝石の売却ですか?」

「どっちもだ。この子の武具一式と、宝石の売却な」

「はいはい。って、この人は!?」

「なんだ知っているのか?」

「そりゃ、陛下にたてついたことで有名ですからね。よく、この姫様を引き取ろうと思いましたね」

「ま、気合いはありそうだからな」

「まあ、そりゃあるでしょうが……。ま、旦那たちなら大丈夫でしょう。じゃ、適当に見繕ってきます」

「ああ、頼む」


とまあ、トーネコを頼ったのは、こっちの適正価格というのが分からないからだ。

特に宝石売却関係は、下手に知らないところで売って馬鹿を晒すと、面倒なのが寄ってくるからな。知り合いで誠実そうな奴に売るのが後腐れなくていい。


「どうでしょうか?」


で、用意してもらったものだが、思ったよりましだった。

ちゃんとした、初心者装備という奴で、物も新品に近い物だった。


「こんなものよく持ってたな」

「まあ、私は本来武具商人になりたくてですね。暇とお金に余裕があればこうやって集めているんですよ。いつか、集めた武具を並べられる、でっかい店を出したいですね」

「なるほどな」


武具というのは、使うためのものではあるが、飾る意味合いを見出す奴もいる。

だから、武具商人のように、色々な武具を集めて、店に並べて売りたいと思う奴がいても不思議ではないだろう。

まあ、鍛冶屋としては、自分の商品を第一に扱ってほしいだろうから、こういう売り方は嫌がるだろうがな。

だから、鍛冶屋兼武具店ってのが多い。

トーネコのように、数多の武具を集めてっていう店はないことはないが、王都とかの大商人ぐらいだからな。

夢はまだ遠そうだ。

ってちょっと待て。……あれ? それならウィードに来れば、解決じゃね?

あそこは武具の魔窟だからな。

ユキもこういう相手は喜んで受け入れそうだし……。

と、いかん、いかん。

まずは、姫さんのことだ。


「どうだ、違和感とかないか?」

「……初めて着けるから、違和感しかないわ」


……まあ、姫さんならこれが当然か?

いや、ちょっとまて、俺の知り合いの姫さんはバリバリな戦闘職だった気がする。


「モーブ。俺も同じ考えに行きついたが、こっちがきっと一般的だと思うぞ」

「ですね。これを万が一にも本人に言わないことですね」

「だれが言うかよ」

「なんのこと?」

「いや、姫さんは気にしないでくれ。こっちの話だ」

「ふーん。ま、いいわ。それはそうと、そろそろ姫さんやお姫様って呼び方やめてくれないかしら? もうドレスは脱いで、普通の庶民と変わらない格好だし、私は貴方たちの弟子になるんでしょう? 遠慮はいらないわ」

「そっか、ならよろしくな。ドレッサ」

「ええ、これからよろしく。モーブ、ライヤ、カース」


褐色の肌をした、異国の姫ドレッサはそう言って、挨拶をした。

うん、挨拶1つでも上品だから、庶民とは見られないだろうな。

とりあえず、武具は揃えたし、トーネコに適当に挨拶をして、宿に戻る。

宿に戻る道中はドレスを脱いだおかげか、特に絡まれることもなく、宿についた。


「お、モーブ。戻ったんだな!!」

「おう、ロゼッタ。二日酔いはないみたいだな」

「おうさ!! あの程度の酒で酔うわけがないだろう!!」

「「「……」」」


何言ってるんだこいつ?

そう思っていると、ノードンも戻ってきていたのか、こっちにやってきて呟く。


「毎回、記憶が飛んで都合のいい方に改変する。二日酔いはないから、自分は酒に強いんだと思っている。迂闊に事実をいうと、信じられない、また酒宴をやろうってことになるから、堪えてくれ」

「め、めんどくせー。ま、わかった」


で、その間に、ロゼッタの興味はドレッサに移っていて、ぐるぐるとドレッサを眺めていた。


「へぇ、この子が……」

「な、なによ」

「いんや。その褐色の肌、そしてその上品さ。まさか、恩知らずのドレッサ姫を身請けしてくるなんてね」


ロゼッタがそう言った瞬間、ドレッサが怒りで爆発しそうになったが、ライヤが口を押さえて、後ろに下げる。


「んー!? んー!!」

「元気なこった。なるほどね。あの気概ならちょっときつい訓練もやってのけるだろうさ」

「あんまり、うちの弟子をいじめないでくれないか?」

「いや、ごめんよ。エクス王都では有名な姫さんだから、ついね。ま、この程度の野次はどうせ飛んでくるから、堪えるようにしないとキリがないよ。ドレッサ」

「……」


そうロゼッタが言うと、黙って、悔しそうに涙を流しながら俯く。


「あー、泣かせやがったな。とりあえず、ライヤとカースはドレッサ連れて部屋に戻っていてくれ。俺はちょいと話を聞いてから戻る」

「わかった」

「わかりました」


2人とドレッサが二階に上がって見えなくなるのを待って、ロゼッタに詳しく話を聞くことにする。


「とりあえず座るか」

「だね。エール2つ頼むよ」


座った瞬間に、厨房にいるおっさんに注文をする。


「飲むのかよ」

「どうせ、今日はのんびりなんだしいいだろう?」

「ま、そりゃそうか。で、あの恩知らずのってのはなんだ?」

「ん? 知らないのかい? まあ、他国から来たんなら知らなくても不思議じゃないか、エクス王国が管理する小国内の出来事だしね」

「はいよ、エール2つ」

「おっと、ありがとな。まずは乾杯と」

「へいへい。乾杯」


ぐいーっと、お互いに一気にエールを飲み干す。

……正直ラガーの方がいいよな。

不味くは……ないんだが、うん、本当に不味いとか思ってない。

ただ、ラガーの方がエールより美味いだけで。


「もう2つ追加だ」

「あいよ」

「おい、話」

「分かってるって、次はゆっくり飲むさ。で、ドレッサの話だったね。まあ、単純な話さ、エクス王国の管理というか管轄の小国の1つが、飢餓に陥った。それでエクス王国が支援をしたのさ。それがドレッサ姫の国だったってわけ。で、支援もただってわけじゃない。ちゃんと見返りを貰わないといけない。当然のことだろう?」

「まあな」

「ま、見返りと言ってもそんな大層な事じゃない。働き手を3000人ばかり借りただけさ。ドレッサの国以外でも同じような支援対価でやっているし、ドレッサの時が異常だったというわけでもない」

「ふーん。で、その働き手ってのは、なんの働き手なんだ?」

「話によれば、新しく畑を耕しているとか、開墾をしているだとか聞くね。実際みたことはないけど。で、その働き手の徴集は不当だって言って、反発して、働き手を奪還しようと戦争を起こしたのが、ドレッサの親父さんさ。で、その娘のドレッサも同調。結果、馬鹿な親父さんのせいで、小国は瞬く間にエクス王国が占領。不義理をはたらいた、恩知らずの姫って烙印を押されて奴隷行きさ。ほかにもいろいろ噂があるけど。実際は魔物にドレッサ姫の国がおそわれたとか。ま、何にしても、もうちょっと、周りを見れればよかったんだろうけどね。ま、それも、モーブたちに鍛えられていれば変わるかもね」

「なるほどなー」


なんというか、よくありそうな話ではあるよな。

愚かな王が欲張り過ぎて、自滅したような話。

何か判断しようにも、まだ情報がたらねーな。

ドレッサ本人にも詳しく話を聞いてみるか。


「さて、俺も部屋に戻るわ」

「なんだい、まだ飲み始めたばかりじゃないか」

「馬鹿、お前がいじめたドレッサの様子見だよ。どうせ晩飯には戻ってくるんだから続きはその時にな」

「あいよー。子守りは大変だね」

「お前が原因だけどな」


そんな風にロゼッタとの話を切って、部屋に戻ってきたのだが……。


「エクス王はアレが幸せなんていったけど、あんなのは、幸せじゃない!! 人は自然と共にあるべきなの!! あんなの飼われていると変わらない!! 人は家畜じゃない!! いや、家畜以下よ!! 遺跡に閉じ込めて、誰一人出てこないんだから!! きっと、皆、皆……アーネ!! うわぁぁーーー!!」


そう言って、ドレッサは泣き出した。


「……おい。泣くのはやめて、もう一度説明してくれ」


遺跡に閉じ込める?

おいおい、まさか……。

さて、相手の資源というかDPの源も割れてきました。

ここからは、本格的に裏からガタガタにする作戦が、あちこちで展開しますよ。

街にはモーブたち、内部にはヒフィーたち、ダンジョンには便利屋チーム。

スネーク!! スネェェェーーーク!!

ってかんじ?

あ、これゲームオーバーだよな。

「またせたな」かな?


あ、地震は結構あるけど、福岡特に問題なし。

生きてる。

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