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第352堀:過去と現在の研究者の邂逅

過去と現在の研究者の邂逅





Side:コメット




ワイワイ、ガヤガヤ……。


何で私はこんな人込みの中にいるのだろう?

正直に言って、私はこんな人込みは嫌いだ。

全然考え事に集中できないし、こういう人の多い所は物騒だ。

スリなんてザラだし、妙に虚栄心の多い奴らが多くて、その張り合いに巻き込まれることはよくあった。

ああ、私が王都魔術研究府にいた当時のことだ。

同僚たちは、別にたいした研究成果も出せていないのに、人の足を引っ張ることだけは一人前以上だった。

おかげで、私は心置きなく王都を出て、村へ移り住むことができた。

幸いなことに、馬鹿共が私の研究成果を自分の成果と言ってくれたおかげで、村に移り住んだ私に妙な追手や、王都に戻るための説得なども来なくて順風満帆だった。

村にいた、ヒフィー司祭も優しかったしね。

ああ、懐かしいね。

あの時は本当にのんびりだったんだけどな。

ダンジョンマスターに選ばれてから大変だったねー。


「どうかした?」


私はそうミリー君に声をかけられて我に返る。


「あ、いや。昔のことを思い出してね。私も今では特殊な立場だけど、この城下町の人たちと同じように過ごしていたのさ」

「へー。都会生まれだったんですね。うらやましいですねー。私はかなり田舎の生まれでして」

「あ、違うよ。ラッツ君と同じように、私も田舎出身さ。ただ、ほら、研究職として働くうちに気が付いたらってやつさ。ま、その後は王都の見栄っ張りの連中に嫌気がさしてね。それから、田舎に戻ったわけさ」

「ああ、なるほど。世知辛いですね」

「全くだよ」


とまあ、そんな話をしつつ、私たちはエナーリア聖都を歩いている。

なぜ、エナーリア聖都にいるのかというと……。


「しかし、思ったよりも早く、聖剣を見る許可が貰えたね」

「まあ。私たちはここじゃ、ちょっと有名人だしね」

「ですねー」


そういう2人には、先ほどから街の人の視線が大いに集まっている。


「あ、聖女さまだー」

「本当だわ。今日も姿を見れるなんて……」

「ありがたや、ありがたや……」

「ちょっとまて、ということは、聖堂では聖女様の治療が行われているのか!?」

「そ、そうだ!! かあちゃんを連れて聖堂に行かないと!!」


とまあ、神様を崇めるような感じだ。


「確か、ベツ剣の彼女たちが……」

「ええ。その時にちょーっと、助けただけなんだけどね」

「何がちょっとですか。はっちゃけて、デーモン共の首をちょんぱちょんぱしてたでしょうに」

「いいのよ。そのおかげで、早いうちに聖剣を拝めるんだからいいじゃない」

「ま、そうなんですが」

「しかし、不思議だね。なんで王家はスィーア教会に預けたりしたんだい? 一応、偽物とはいえ、本物に近いだろう?」

「だからこそだと思うわ」

「ですねー」

「どういうことだい?」

「えーと、本物であるなら、現在の王家と教会のどっちが聖剣使いに近しい立場かということですよ」

「あ、そういうことか。私の精神制御が災いして、当時の王家とは喧嘩別れみたいになったのか」

「ええ。それで、スィーアの場合は水の聖剣で治癒が得意だったし、それをあがめる教会、宗教までできているから、国民感情とか諸々で、使い手のいない聖剣を王家が所持するわけにはいかないのよ」

「うへー。非常に面倒だね」


これだから、街はいやなんだよねー。

いや、原因を作ったのはもろに私だけどさ。


「で、そういえば、ユキさんとルナからダンジョンマスターの名簿もらったって聞いたけど。どう? 何かわかりそう?」

「ああ、それね。ユキ君にはもう報告しているけど、そっちにはまだみたいだね。簡単に言うと、私達、当事者を集めて、確認して回ったよ」

「当事者? ……ああ。そういえば、当事者がいますね。まあ、当事者というのは正確には違うでしょうけど、コメットが現役の時代の聖剣使いの皆さんなら、私たちが調べるよりはましでしょう」

「そういうことさ。で、結果は思ったより良好だったよ」

「そうなの? てっきり昔過ぎることだし、分からないじゃないかと思ってたわ」

「私もそう思ったよ。多少、名前を聞いたことあるぐらいしか情報は出てこないかと思っていたさ。でも、世の中は案外狭いというか、ベツ剣のリーダー、ディフェスが元は騎士でね。ディフェスが仕えていた領主の名前があったようだよ」

「はー、本当にそういう偶然はあるものなんですねー。ってなんか聞き覚えがあるような気が」

「あれよ。デリーユの弟、ライエ君」

「そうだね。彼に似ているようには見える。ま、これが当たりって決まったわけでもないけど、とりあえず、ディフェスの話を中心に調べ上げてみるってユキ君は言っていたよ。ちょうど、エクス王国の一領土だからね」

「現在の状況をみるに、一番近いですねー」

「ほとんど手がかりなしだし、いいんじゃない?」

「だね。どのみち、エクス王国には潜入するんだし、ユキ君はいい機会だと言ってたよ」

「あ、で、ユキさんは?」

「まだホワイトフォレストだよ。王様と宰相さんは魔力補給中だしね、神様の相手が終わったら戻ったよ。ルノウ君も連れて戻らないといけないしね」

「……お兄さんは本当に大変ですねー」

「無理してないといいけど」


うん。僕もユキ君の傘下に入ってから思うが、後任のユキ君の仕事量は尋常ではない。

いや、ちゃんと分配をして、適材適所で通してはいる。

しかし、それでもユキ君が自ら担わなければいけない事柄はあるし、現場にもでている。

どう見ても、オーバーワーク一歩手前で、奥さんたちが心配するのはよくわかる。


「ま、護衛の4人もいますし、無理なんてしてたら、速攻お家に監禁ですね」

「そうね。ちゃんとゆっくりさせないとね」


ぬふふふ……。と笑う2人。

まあ、仲がいいのはいいことなんだが、逆にユキ君がさらに疲れそうだけどね。


「と、見えてきましたね」

「コメット、あれがスィーア教会の大聖堂よ」

「へぇー」


ヒフィーのところみたいに、国政を預かっているわけでもないのに、かなり大きいね。

で、多分、ミサを開く広場なんだろうけど、そのど真ん中に、スィーアを模した剣を持った女性の像が立っている。

それを見て、祈りをささげている人の多いこと多いこと。


「ないわー。あははは……」


人々に崇められているのが身内に二名もいると、無性に笑えて来る。

しかも、ちゃんと崇められることをしているならともかく、どっちもユキ君に敗北して捕縛されているなんちゃってである。


「こら、そこの君。今、お祈りをささげている人も多いんだ。騒がしいことはよそでやってくれないかい?」

「あ、ごめんよ。ちょっと、思い出し笑いをしてしまって」


そう言って私がその声に振り返ると、いろいろな意味でちっさい少女……ではないな、女性が魔剣を腰に佩いて近づいてきていた。

服装も豪華だし、こりゃお偉いさんかな?


「おや? エージルではないですか」

「戻ったの?」

「ん? ああ、ラッツにミリーじゃないか!! 久しぶり!! 君たちの夫と友人たちのおかげで学府では自由にやらせてもらっているよ」

「そうですか。お兄さんがお元気なら何よりです」

「で、ユキさんはいないみたいだけど。城?」

「いや。今回は僕だけの呼び出しだよ。まあ、そっちも話は伝わっているだろうが、魔剣が大量に見つかったって件で、そっちの専門の僕が呼び戻されたわけさ」

「なるほど」


ふーん。

この子が、彼女たちが作った魔剣の持ち主か。

確か名前はエージル。エナーリアでは将軍の地位と研究職だったか。


「と、その君たちと一緒にいる女性は誰だい? 初めて見る顔だけど」

「ああ、えーと、コメットって言って……」

「ユキ君が率いる傭兵団の技術、魔術顧問と言ったところだよ。傭兵団には明確な役職名なんてつけないからね。みんながみんな、足りないと思ったら動くからね」

「そういうことか。初めまして、僕はこのエナーリアで研究職と魔剣使いと将軍職を務めているエージルという者さ。ま、堅苦しいのは抜きでいいよ」

「そう言ってくれると助かるよ。私も研究職みたいなものでね。上下関係には疎いんだ」

「ははっ、そうだよね。コメットとは良い酒が飲めそうだよ。身分が上どころか、魔剣や将軍職のおかげで、資金は潤沢だけど、仕事が多くてさ、堪んないよ」

「ああ、わかる。その気持ちはよくわかる。私もユキ君の傭兵団に入るまでは色々掛け持ちだったからさ」


まあ、ヒフィーの魔術でほぼ全自動だったけど。


「世の中ままならないね」

「まったくだよ」


しかし、このエージル君。

私と気が合いそうだな。

研究内容次第では引き込むことをユキ君に提案してもいいかもしれない。


「で、エージルはなんでこちらに? 先ほどの話からすれば、回収した魔剣の研究で忙しいのでは?」

「それが、なんだかねー、回収した魔剣にすごく違和感があるんだよ。僕の魔剣と比べると雑というか、繊細さに欠けるというか、で、同じ原本である聖剣、本物との比較をする為に来たのさ。情報は山ほどとっているけど、また実物を確認することによって、何かわかるかもしれないからね」


へぇ、私やベツ剣の皆が作った魔剣と、粗雑品の違いに気が付いているのか。

こりゃ、知識を叩きこめばかなり使える気がする。


「しかし、こうやって君たちに会えたのは助かったよ。一応、聖剣の発見者と言っても、将軍という立場で王家寄りだからね。教会に話を通すのに時間がかかるんだよ。だから……」

「分かってるわよ。私たちが聖女の名前でも使って、エージルと一緒に聖剣見れるようにしてあげるから」

「流石ミリー、話が分かる。あとで良い酒を届けさせてもらうよ」

「そっちも話が分かるわね」

「やっすい報酬ですねー。政治的問題に手を貸したんですし、もうちょっと……」

「あー、ラッツの言う通りなんだけど。私としては特に君たちが喜びそうなものは酒ぐらいしか用意できないんだよね。だって、権力は既に王家の血筋って建前で、下手すると私より立場が上だし、金品なんてその関係でバックアップがあるしなおの事いらないだろ? あとは魔剣の横流しだけど、あんな正体不明の物を欲しがるとは思えないしね。ああ、出来るとすれば僕の身売りかな? でも、ユキとは良好な夫婦関係みたいだし、僕とそういうことしても生産的じゃないしなー」

「あー、そうですね。まあ、性欲とか愛情には性別の壁は必要ないですけど、特にエージルと致したいって欲求はないですねー。というか、その場合、エージルも傭兵団入りですよ?」

「そうだよねー。身売りだからそうなるよね。立場上それは無理だしー。……あれ? よくよく考えれば、ユキに身売りすれば、面倒な仕事から逃げられる?」


……なーんか、エージルの発言が私と被っている気がしてならない。

偶然なんだろうけど、なんか非常に親しみを感じている。なんでだ?


「なーに言っているんですか。魔剣のことを考えれば、国がエージルを手放すことはありえませんよ」

「そうねー。ま、国としては、ユキさんとの婚姻は認めるとは思うけどね」

「あれ? なんか矛盾してない?」

「政治関連はさっぱりですね。問題はエージルが将軍職や研究職を辞するところにありますから。それさえ続けてくれるのであれば、結婚は望むところでしょう。プリズム将軍も独身みたいですし、名家の血筋というのは国を支えるのに必要ですから。あ、魔剣は別にいいです。次を探せばいいだけですし、一兵卒は簡単に補充できますしね。で、そのついでに、お兄さんとエージルが婚姻を結べば、万々歳でしょう。エージルの言ったように、ここエナーリアでは私たち傭兵団は非常に扱いが困る立場です。エージルという窓口を得れば楽になるのでは? と考える人はきっといるでしょうね」


ふむふむ。

とりあえず、お偉いさんは本当にめんどうくさいというのが分かる。


「「だけど、そんな不純な動機で嫁入りなんて認めない」」

「あ、はい。分かってるって。だから、そんなにすごまないで」


まあ、そりゃそうだろう。

というか、ユキ君たちの仲間入りをすれば、今までより激務になるだろうね。

でも、充実はすると思うよ?

彼は適材適所が好きだからね。



さーて、私もその適材適所でエナーリアの正体不明の聖剣をしらべますかねー。






はてさて、今度はエナーリアの聖剣?の調査だ!!

その前に、この新大陸の新旧研究者たちの出会い。

何事も問題なく終わるのだろうか!!


あと、24日まで2日!!

ダクソ3!!

戦国立志!!

ドラクエ!!


ひゃっはーーー!!

一日を48時間にしてくれませんかね?



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