第351堀:誰か知りませんか?
誰か知りませんか?
Side:コメット
さてさて、色々問題が起こりはしたが、寸前で押さえられたので特に延期などなく、聖域の、ダンジョンの御開帳があり、ちゃんとサマンサの姉、ルノウ君と共に聖剣の確認に立ち合い、確認するという作業ができた。
「こちらが?」
「ええ、我が国に伝わる。3振りの聖剣です。いえ、伝わるではありませんね。彼女たちの形見です」
「……そうですか、宰相は当時から生きておられたのですね」
「はい。幼くはありましたが、それでもこの聖剣を持った、彼女たちのことはよく覚えております。魔王との戦いで落命し、それを仲間の聖剣使いたちから私たちにあずかってくれと頼まれて、今なお、こちらに安置しております」
私としては、急造品とまでは言わないけど、ちょいちょいと作った試作品のようなものなんだけどねー。
こうやって、礼服を着込んで、完全警備態勢で仰々しくやられると、体がかゆい。
もっと、装飾ちゃんとしとけばよかったかな? とか思っちゃうくらいだ。
「……このような。伝説の品、そして、その時代を生きた大人物とお会いできたことを、心より神に感謝いたします」
……その神って誰? 誰に祈りを捧げているんだい?
知りうる限り、この大陸には一名、あと上に一名が多少関わって入るけど、駄目神だよ?
『神聖で、純粋な祈りを感じます』
『そうね。今時珍しいぐらいだわ。なにか特殊能力とかあげようかしら?』
「「やめて」」
聞き覚えのある空耳に、咄嗟に私とユキ君で止めに入る。
余計な混乱にしかならないからね。
そして、ベツ剣じゃなかった、聖剣の確認が終わった後は、ダンジョンコアの間に移動して……。
「陛下」
「うむ。変わらず、本物だ。これより魔力を注ぐ儀式に移る。最大限の警戒を敷け。昨日のようなことはないように」
「「「はっ」」」
さて、あとは魔力を注ぐ作業だ。
実際はユキ君がたんまりと補給しているからいらないけど、それを知っているのは一部だし、人心の安定の為にやらないわけにはいかない。
ということで、王様と宰相は警備兵に囲まれたまま、魔力を注ぐふりを12時間にわたってやることになっている。
いやー、これはよく考えたものだと思ったよ。
魔力を一気に注ぎ込むのではなく、じっくり少しずつ入れることによって、魔力の自然回復を待つことになって、総量としてはこっちが沢山注ぎ込める。
ある種の生活の知恵だね。
「ルノウ様、ユキ様方、これより長時間の儀式に入ります。警備上の観点から、ご退出願います」
「はい」
「わかりました」
うし。ここで一緒に待てとかただの地獄でしかないからね。
じっとしているとか、勘弁願うよ。
「しかし、間一髪でした。危うく、今回の事件がローデイの責任になるところでした」
とりあえず、私たちはルノウ君と一緒に客間に戻って一息ついている。
今回のは用意周到だったからね。
ちゃんとフォローをしておかなければ、私たちは拘束されていたと思う。
「ええ。幸い、陛下がすぐに準備と取り調べをなさったので、私たちに要らぬ疑いがかけられることは有りませんでしたが……」
「ユキ殿の言う通り、今回の件といい、ローデイ、アグウストでの出来事といい、ここまで、各国に手を回している所をみると、敵は本気なのでしょう」
私もそう思う。
ここまで、大国相手にわかりやすい暗躍をしているんだ。
動き出す日は近いね。
恐らくは、奪いとられたダンジョンコアを受け取れば本丸が動くと思う。
相手はダンジョンマスターのことを熟知している可能性が非常に高い。
だからこそ、その動力源を奪うという手段にでたんだろう。
他の国に対しては牽制、確認というところかな?
自分と同じようなダンマスがいないか、それと各国の対応力の把握。
「……何が起こってもおかしくありません。一刻も早く、ローデイへ報告に戻りましょう」
「はい。ですが、流石に、王様と宰相に別れを告げず出国するのは礼を欠きますし、儀式が終わるまで待ちましょう。一筆書いてくれるとも言っていましたし」
「……そうですね。ふうっ。落ち着かなくては。出発は余裕をもって明後日、二日後としたいのですがよろしいでしょうか?」
「ええ、それがいいでしょう。今日の内に、出発の準備をしておきます。明日は陛下たちとの会談、明後日に出るという流れでいいでしょう」
「昨日の騒動があった以上、ローデイの代表である私は、迂闊にこの部屋から離れるわけにはいきません。旅支度を任せるようなことになって申し訳ない」
「いえ。気にしないでください。そのためにこちらは人数がいますから」
「そのための傭兵という、国を背負わぬ立場が良いのですね」
だよね。ユキ君たちの最大の特徴はその傭兵という立場からくるフットワークの軽さだ。
そして、それを後押ししてくれる……。
「サマンサ、これからもユキ殿をしっかり支えていきなさい。そして、何か問題があればヒュージ家の名を使って、守り通しなさい」
「はい。心得ていますわ」
その周り。
ユキ君の行動を容認、支援する、各国の名家。
ジルバ、エナーリアからは、こじつけだけど王家の血筋。
ランサー魔術学府からは、ポープリ学長のお墨付き。
アグウスト、ローデイからは、クリーナ君と、サマンサ君の旦那さんとしての縁故。
ホワイトフォレストについては、ほぼ私たちの傘下だ。
聞けば冗談だと思う状況だが、だからこそ、この事実は強力だ。
というか、ウィードの方では、国土は狭いとは言え、大国と同レベルの国家と見られているしね。
……この事実、こっちのお偉方が聞いたら泡吹くんじゃね?
ユキ君の気持ち1つで、向こうの大陸の連合軍と、こっちの1国家で戦いになるし。
勝ち目ねー。こっちが連合組むとか夢のまた夢だし。
ユキ君のおかげで、ある意味団結してるけど、そのユキ君がちょいちょいと裏工作でもすれば、こっちは疑心暗鬼でガタガタになるだろうね。
……おや? もしかしてこれも計算に入れていたのかい?
考えるのが怖くなってきた、これ以上はやめておこう。
単純に、ユキ君の子飼いのモンスター軍団でどうにでもなるし、考えるだけ無駄だね、うん。
と、そういうことがありまして、私たちは出発準備を整えるという時間をいただき。
ダンジョンマスターの名簿の確認作業に入ったわけだ。
どう確認作業するのかって?
簡単さ。
「ほい、ほい、ほーい!!」
「……コメット様。何をやっているのですか?」
「今の私は、書類を配るマスィッーーンなのさ!!」
私と同じ時を生きていた、いや、それからの世界を見続けていた彼女たちに確認してもらおうと思ったのさ。
ベツ剣の持ち主たちにね。
「放っておいていいです。どうせ、ユキ殿の所から、また変な影響を受けたのでしょう」
「……ヒフィー様がそうおっしゃるのなら、いいのですが」
「ピース。もっとしっかりツッコめよ。絶対あのテンションおかしいから」
「じゃあ、そっちが言ってください。キシュア」
「えっ!? いやー、それは……。スィーア、言えよ」
「こっちに回さないでよ。いつもキシュアってそうじゃない。自分でやってよ」
「まあまあ、コメット様はいつも通りだよ。研究の時とかいつもこんな感じだったし」
「……アルフィンの言う通り。コメット様はこんな感じ」
「だよね。ニーナ」
うん。
再会した時は、ひどく憔悴していたけど、精神制御の解除とか、暖かいウィードの生活で、私と過ごしていた時みたいに戻っている。
いや、それ以上かな。
……これが武器を持たなかった彼女たちの未来なのかもね。
「えーい、お前等黙らんか!! コメット様から協力を頼まれたのだ。もう少し真剣にならんか!!」
そう言って怒鳴るのは、まとめ役のディフェス。
彼女も相変わらず大変そうだ。
私を斬ってから、ピースと、さらに400年もこの大陸をさまよっていたんだからね。
私よりある意味、つらい日々を過ごしてきたんだろうな。
真面目だったからなー。そういえば、最初は私に処罰を求めてたっけ?
私としては、君たちが道を自分で選んだことに祝福こそすれ、恨みはなかったけどね。
と、いけない、いけない。
「まあまあ、ディフェス。いい賑わいじゃないか。顰め面で話しても気まずいし。特に焦ることでもない。私は気にしていないよ」
「しかし……」
「残りのメンバーもまだ集まっていないし。のんびり話してもいいだろう?」
「……連絡はしたというのに、あのバカ共が」
「いやいや、クロウディアとカーヤは里帰り中での呼び出しだし、ネフェリとフィオは茶菓子を買いに行かせているからね。そう言う意味では私が悪いよ」
「……そうおっしゃられるのでしたら。しかし、いいのですか? フィオはアンデッドになったばっかりでは?」
あはは、本当に硬いね君は。
ま、アンデッドになってるフィオが心配なのは当然か。
今、買い物に出ているフィオはネフェリの妹で、当時の魔王戦役の時に、ピースと戦って命を落とした4人のうちの一人で、他の3人は埋葬されて今ではどこに遺骨があるのかもわからなかったけど、フィオは姉のネフェリによって冷凍保存されていたんだ。
それを、施設が整ったウィードでようやく復活とは違うかもしれないけど、アンデッドにしたわけ。
幸い、ネフェリの持っていたペンダントが魔力を集積するタイプで、そこにフィオの魂みたいなのが定着していたらしく、アンデッドになってからすぐに魂が肉体に戻り、自我を取り戻したのだ。
「問題ないよ。ウィードには専門家もいるし、何かあればすぐに連絡がくるよ」
「そう、ですね。で、師匠。わざわざ、私たち、あの当時のメンバーを集めたということは、その当時に関係するなにかですか?」
「ああ。その通りだよ、ポープリ。ま、詳しいことは後の4人が戻ってきてから……」
そう言いかけた途端、扉が開かれる。
「あ、ネフェリ。フルーツタルトってあるの?」
「んー。適当に買ったからなー。どうだっけ、フィオ?」
「あったよ。一個だけ」
「それなら、私がいただきます」
「あ、こら!? ディア、私が先に……」
「聞いただけですね。私が先約ということで」
賑やかだね。
こういう雰囲気も悪くはないね。
ウィードに案内されてからそう思うことは多々あったけど、こう身内の楽しそうな笑顔っていうのは、別格でこっちも嬉しくなるね。
「お、お、お……」
ありゃ……、これは……。
「お前等、さっさと座らんかーーー!!」
あ、なんかわかった気がした。
ディフェスはベツ剣使い達にとって、私に対するヒフィーやピースみたいな立場なんだ。
上司というより、お母さんってやつだ。
とまあ、お母さんの一喝で、素早くお茶とお菓子を楽しみながら会議再開となった。
「では、コメット様。ご説明願います」
「そうだね。ま、お茶とお菓子を楽しみながら聞いてくれ。一応、説明も書いているが、私から簡単に説明させてもらう。この書類は、新大陸にかつていたとされる、ダンジョンマスターの名簿だ」
「ダ、ダンジョンマスターのめ、めいぼ!?」
殆どが口をあんぐりと開けて反応できていないけど、ポープリが辛うじて反応できた。
「うん。名簿だ。で、私も含めて、ダンジョンマスターとの連絡がつかなくなったため、ユキ君が呼ばれたのはみんなが知っての通りだ。だが、ここにきて、この名簿に関係する問題が起きた。クロウディアとカーヤは知っているだろうが、私たちとは別件で魔剣を作っているとみられるエクス王国に、ダンジョンマスターかそれに準じた存在がいる可能性がでてきた」
「……なるほど。新たに呼び出したわけではないと、ヒフィー様、ルナ様より確認が取れているのであれば、この名簿の中の誰かが、コメット様と同様に生きながらえている可能性があるわけですね」
「流石、ディフェス。話が早くて助かるよ。というわけだ、私やユキ君は、敵の素性も何も知らない。しかし、当時表立って色々やっていた君たちなら何か知らないかと思ってね。ま、昔過ぎる話だし、情報は出てこないって思ってはいる。そこまで気負う必要はないさ」
本当に言っての通り昔過ぎるし、当時だってそれなりに人はいた。
その中のわずか数十名だ。
そんな名前を知っているとは思えない。
ま、聞かないよりはマシと言う話だ。
ということで、話半分、お茶とお菓子をのんびり楽しみながら、名簿を眺める程度のつもりだったのだが……。
「コメット様。物事というのは、奇縁と申しましょうか。知っている名前がございます」
「はい? マジ? ディフェス?」
「真面目に本当です。私が、当時、騎士だったのはご存知ですよね?」
「……ああ。死にかけだったのを助けたっけ?」
「はい。ネフェリ、フィオは当時は従者で、一緒に助けてもらいました」
「……そうだったっけ? ということは……2人とも知ってる?」
そう言って、ネフェリとフィオを見ると……。
「はい、覚えがある名前があります」
「この、サクリ・ファイスという名前ですが、当時、ディフェス様が仕えていた家です」
「ということは領主さまかい?」
「はい。ですが、私が助けられた時には既に、現在のエクス王国に攻め滅ぼされております」
「んー? それだと死んでるっぽい?」
「それはどうでしょう。ユキ殿の奥さん、魔王デリーユさんの弟さんが国の滅亡と同時にダンジョンマスターとしての能力を授かったという話もありますし、丁度、エクス王国の話です。偶然として片付けるのはどうかと」
「ああ、そうか。ならこの話はキープだね。ま、今は確認だ。他にも何か出てくるかもしれない」
「「「はい」」」
さーて、まだまだ情報がでるかな?
いや、出過ぎてもそれはそれで困るな。
……やべ、研究室に帰りたくなってきた。
まあ、恐らく名前だしたし、こいつが関係するとは思う。
しかーし!!
俺は適当に書いているので、確定ではない!!
あと、24日まであと少しとなりました。
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