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第349堀:発信機、逆探、そう言うのは基本

発信機、逆探、そう言うのは基本





Side:コメット




ユキ君の全部ダミー作戦に乗ってよかった。

私だけなら、聖剣のダミーを作って終わりだっただろう。

まさか、ダンジョンコアが取られるとは思わなかった。

旧式ではあるが、ここのダンジョンコアにも防衛機能はちゃんとついている。

いや、王様や宰相といった人々が利用できるように、相手を攻撃するという機能はつけてなかったけど、そうやすやすとは動かせないようにしていた。

そういった意味で慢心してたが、ここまであっさり持っていかれるとは思わなかった。

どうやって私の防衛機能を抜けたんだ?

そんな感じで、とられたショックよりも、相手がどのような方法を使ったかの方が気になって仕方ない。

だってそうだろう?

私とは違う発想、考えの元、旧式とはいえ、私の作り上げた防衛機能をぬけたのだ。

関心こそすれ、怒る理由はどこにもない。

あ、いや、ホワイトフォレストの皆に迷惑がかかるのはけしからん。実にけしからん!!

そう、これは今後、同じようなことがないために、相手の知識や技術を知り、対策を立てるために必要不可欠な事であり、決して、新しい知識が得られるとか、わくわくするとかいう不純な動機は一切ない。

未来の為に必要な行為である!!


『よし、追手はいないな。あの馬鹿どもも囮ぐらいの役には立ったか。だが、あの馬鹿さ加減では長くは持つまい。さっさとこの獣臭い場所から去るべきだな』


私たちが覗く画面に音が届く。

男が手に持っているのはダンジョンコア。

この男が先ほどの混乱に乗じて、盗み出したのだ。

しかし、こっちは馬鹿たちと違い、鎧は正規のホワイトフォレストの物を着ているから、ちゃんと準備をして、南門、聖剣を囮とした、三段構えの作戦で来てたみたいだね。


「こ、これは?」


王様が目の前に浮かぶ画面を見て驚いている。

いや、私たち以外は全員驚くよね。

私だって、空中投影のモニターとか思いつかなかったし。

当時の私がやっていたのは、鏡を使った方法だったからね。

全く、空中に光だけを使って重さゼロのモニター作るとか、発想がぶっ飛んでいるよね、ユキ君たちは。


「見てのとおり、こうやってダンジョン化している範囲を監視するのさ。昨日の夜も話しただろう?」

「はい、それは伺いましたが、まさか、このような素晴らしいもので監視するとは……」


宰相さんはそう言って、画面を見つめる。

うん、その反応が普通だよね。

正直にいうけど、ユキ君やタイゾウさんの世界の技術レベルがぶっ飛びすぎなんだよ。

しかし、ルナさんやヒフィーとかの神様が呼ぶのならまだましだけど、良識もなんもない馬鹿が間違ってユキ君たちの故郷と半永久的につなげるなんてことをしたら、あっという間に飲み込まれるね。

自分たち以上の技術があるわけないという慢心で喧嘩を売ってしまえば、もうやばいってもんじゃない。あの超兵器群であっという間に壊滅だよ。

だから今後、召喚魔術関連は厳しく取り締まらないといけないだろう。

と、そこはいいか。

今のところは、それを予見したユキ君がルナさんに頼んで、部外者がこれ以上こちらに来ないようにしているらしい。

まあ、あのルナさんがまともに仕事をするわけないので、こっちもなるべく早く対策を打ち出さないといけないのは変わりないが。

と、そんなことを考えている内に、コアを持った男は、騒ぎが起きている南門には向かわず、東門へ平然と歩いて行く。


『待たせた』

『物は?』

『この通り手に入れた』

『よくやった。南門へは更に魔剣を持った部隊が近づいている。大きく迂回することになるが、構わんな? 追手はいないだろうな?』

『構わない。予定通りだ。しかし、ここの門兵はどうしたんだ? 殺したのか?』


ほう、どうやら、東門の兵士は丸ごと入れ替わっているみたいだ。

用意周到だね。

しかし、残念かな。

南門の増援部隊さんたちは、既にラッツ君とリエル君が壊滅させているよ。


『いや。殺してはいない。全員縛って転がして、中に貼り紙をしている、ローデイの仕業に見えるようにな』

『ははっ。それで今回の騒動は全部、今来ているローデイの使者に擦り付けるってことか』

『そうだ。すぐに信じるようなことはないだろうが、拘束や尋問などがあるから、時間稼ぎにはいいだろう。それでローデイと潰しあってもらえれば万々歳だ』

『よし、ならそろそろ行くか。我らが覇王もこれを待ち望んでいる』

『ああ。これから我が国の覇道が始まるのだ』


そう言って、東門から出ていってモニターの監視範囲外になって、詳細映像ではなく、大まかな地図での点滅移動になる。

恐らく馬にでも乗っているのだろう。大きく速度が上がって、迂回をしながら南を目指している。


「覇王? やはりエクス王国か!! 今すぐ追手を手配します。あの不届き者どもを……」

「まあまあ、落ち着いて。それよりも、東門に兵士を派遣して、ローデイの仕業ではないってやられた兵士に説明をしないと、問題があるんじゃないかい?」

「コメット様のおっしゃる通りです。しかし、追手は……」

「ん? あのまま放っておいていいよ。どこまで行くか確かめたいからね」

「どこまでですか?」

「覇王とはいったけど、エクス王国につくかはわからないしね。でも、どうやら、誰かの指示で運んでいることは間違いない。こうやって目標は追跡できているし、楽に敵の本拠地がちゃんと確認できるかもしれない。追手は作ってもいいけど、捕まえるようなことになれば困るわけ」

「な、なるほど。流石はコメット様です」

「いや。このダンジョンコアはユキ君の発想の元に作られていて、今回の事で提供してもらったからね」

「ユキ様のですか?」

「そうさ。ユキ君は魔力枯渇を解決するために、ダンジョン内に街を作ってそこで人々に暮らしてもらっているんだ」

「ダンジョンの中にですか!? しかし、それは合理的だ。なぜ、今まで私たちは気が付かなかった?」

「それは仕方ないよ。元々、魔物とかの巣窟で人が住めるような場所じゃない。ユキ君の発想が特別だっただけさ。私も部外者は排除するようなダンジョンだったからね。で、その過程で、ダンジョンコアをここと同じように人々の生活が楽になるように使っているんだけど、ここ以上にオープンというか、ダンジョンコアの存在をわざと知らせて、盗られやすいような形で放置してある」

「それは危険なのでは?」

「勿論、今回のみたいにほとんどが本物のダミーさ。ま、噴水のコアを取るとそこら辺一帯が機能停止する様にわざと設定してある。だから、そう言った意味で、ダンジョンコアは大事だということが、一般の人々にも浸透している」

「国民すべてがコアの守りというわけですな。意識の改革、なんという発想だ。しかも盗まれても、予備があるからすぐに復帰可能になる」

「うん。でも、盗られたままってのは再犯もあるから、根の方から断たないと意味がない。だから、ダンジョンコア自体に、今回のように位置を知らせる機能がついているんだ」

「わざと犯人に拠点の中枢まで持って帰らせて、叩き潰すわけですね」

「そういうこと。これで、敵の本拠地らしいところも分かるから、そこを調べて、私たちが直接殴り込むって寸法さ。これなら、国家に属していない者たちの犯行だから、どこかの治外法権のある国でも犯人は自国で自滅したに過ぎない」

「確かに、敵が国であれば、私たちは軽々しく動けない。そこまでお考えだったとは……」

「いや、全部ユキ君の受け売りだからね。こっち方面はさっぱりなんだ」


余分なことに頭を使いたくないからね。

まあ、大前提として、その組織ないし、国を相手取って勝てる実力がないと、実行できないんだけどね。

そこら辺は、ユキ君には些細なことだろう。

この大陸すべての国と敵対しても、戦えるというか、完勝できる。

今回の目的の最大の焦点は、いかに大規模な戦いを起こさないかである。

だから、こうやって忙しく動き回っているのだ。


「ということで、ダンジョンコアの方は放っておいてほしい」

「……わかりました。コメット様がそう言うのであれば」

「ですが、犯人が判明次第、私たちにできうる限りの協力、支援をさせていただきます」

「うん。その時はよろしく頼むよ」


こういうのは特権だと思う反面、王様と宰相さんが平伏してもう色々めんどくさいから、±ゼロだと思う。

で、話の区切りがついたので、ユキ君が話し出す。


「で、今後の予定ですが、捕虜の尋問はそちらに任せます。私たちが主導でやるのは流石に問題があるでしょう」

「そうですな。コメット様やユキ様のお許しがいただけるのであれば、犯罪者共の尋問は任せていただきたい。必ずやエクス王国の名を証して見せましょう」

「はい。私たちもちょっと調べたいことができたので、そっちを優先したい。だからお任せします。魔剣については、少々危険なので、ダンジョン内に放り込んでください。こっちで守りを手配します」

「助かります。しかし、ほかの用事とは?」

「ああ、王様たちも聞いてただろう? ダンジョンコアを狙う相手がいるって」

「はい。ダンジョンマスターかそれと同等の存在がいるということですよね?」

「そういうこと。で、幸いに私たちは、そのダンジョンマスターを作り出す存在と知り合いなんだ。だから、直接聞いてみようと思ってね」

「なっ!? そ、それは、ま、まさか!?」


私がそう言うと、王様や宰相さんは愕然として、震えだした。

まあ、これは普通の反応なんだろうね。


「そうだよ。神様。この場に呼び出してもいいんだけど……」

「そ、それはご遠慮いただきたい!!」

「は、はい!! い、いえ、決してやましいことがあるわけでなく、今回の失態や、おもてなしの準備がががが……」


うん、宰相さんが壊れ始めたね。

呼び出さなくて正解だよ。

というか、あの神様をよびだしたら、信仰とか威厳とか失墜して水深一万メートルとかになりそうだから。




そう言うわけで、一旦ウィードに戻って、その神様に直接話を聞くことにしたのだが……。


「……朝っぱらからなによ?」


そう言って、ウィードの一角にあるアパートからジャージ姿の頭ボサボサで出てくるのは、いろんな世界の神様をひっくるめて、統括する上級神。

女神こと、駄目神ルナである。

うん、駄目神ってホントしっくりくる。

ユキ君のネーミングセンスはすごいと思う。


「朝っぱらからじゃねーよ。既に昼回っとるわ」


そう、ぞんざいな物言いをして、腕時計を見せる。


「……。朝ごはんは?」

「知るかよ!? というかもう昼飯だよ!!」

「まあまあ、きっとルナ様も何かあったんでしょう。ちょっと待ってくださいね。すぐに準備しますから。キッチン借りますね。ルナ様」


そう言って、部屋の奥に行くのはこちらのウィードの神様である、リリーシュ様である。

この神様も現在はウィードに住んでいて、自らを祀っているリテア聖教のウィードにある教会で司祭を務めている。

ぽわぽわした人なのだが、こちらの大陸で最大宗教なので、私の知り合いのヒフィーとは雲泥の差である。


「あ、わ、私も手伝います!!」


で、そのぽわぽわ女神について行ったのは、その雲泥の差のヒフィーである。

とりあえず、流石に今回の正体不明のダンジョンマスターの件は全員に聞くほうがいいということで、知り合いの3人全員を集めようということになったのだ。


「で、ドラマの撮り溜めをようやく連休の初日に全部見て、連休の甘い惰眠をむさぼっていた、女神様を叩き起こすとかなによ? もっと、リリーシュとか、ヒフィーみたいに甲斐甲斐しくしてくれるのなら、可愛げがあるものを……」


……うん。

私はこの様子を見て確信したね。

絶対、欲しい答えは返ってこないと……。




こういう、発信機みたいなのはお約束だよね。

わざと泳がせるのも捜査の基本ってやつだ。

戦いとは常に二手三手先を考えてやるもさ。と赤い人も言っていますし。


さて、次回はお待ちかね。

みんなが大好き女神さま!!

な、好きだろう?


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