表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 暗躍する影編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

411/2194

第338堀:事態は駆け足で

事態は駆け足で




Side:ジェシカ





……本当に、世の中、本当に何が起こるかわかりませんね。

騎士として、マーリィ様の側近として一生を生きていくと思えば、敵に敗北し、捕虜となり、果てはその相手と結婚。しかも、心底惚れてです。

私が知る常識を遥かにぶち抜いて、空の上を歩いている相手を伴侶に選んだせいか、それからの人生は、もう今までとは違っていました。

ただの一人の騎士ではなく、世界の問題へ挑む、英雄諸事の一端のような出来事かと思えば、夫は、その過程で対立する女神を相手に大立ち回り。ではなく、冗談のような手法で勝利を収める。

もう、笑うしかありません。

誰がこんなことを想像できたでしょうか?

まあ、ユキの価値、私の夫としては見直しましたとも。

例え、女神であろうとも、道理の通らない相手には容赦をしない。

恐らくは、私が目指した騎士としての在り方を夫は体現しているのだと思います。

ああ、でもあの斜に構えた姿勢は私の趣味には合いませんので、真似はしませんが。

私は私のやり方で、ユキをサポートすればいいのです。

愛しているのは変わらないのですから。


しかし、何がどうなれば……。



「よーし!! ジェシカ!! どこからでもかかってこい!!」

「ジェシカ殿。ぼっこぼこにしていいですぞ」

「そうねー。陛下もこれで少しは、暴走しなくなると思うから、思いっきりやっちゃって!!」

「あ、手だけは動かせるようにお願いします。書類整理はやらせたいので」

「くっそ!! おっまえら、よく見てろ!! 剣王の腕は落ちてねえ!!」


そんな会話をするのはローデイの重鎮たち。

……なんで、私がローデイの王と剣の勝負をしているのでしょうか?

ユキに視線を向けるのですが……。


『ご愁傷さま』


そんなアイコンタンクトが飛んできます。

……はぁ、私もユキのトラブル体質がうつったのでしょうか?


「ジェシカー。ちゃんと手加減しないとだめだよ!!」

「だ、大丈夫でしょうか!? ぶ、無礼討ちとか!?」

「お嬢様、流石に大丈夫です。ヒュージ様に奥様、そして宰相のロンリ様からのOKですし。もし大怪我しても、ササッと治せば証拠は残りません。ということで、ジェシカ様、ちゃちゃっとやって、ご飯にしましょう!!」


身内は好き勝手言って観戦モードだ。

……ああ、ユキがいつもこんな場で苦笑いする気持ちが少しわかりました。

ごめんなさい。今度から自重します。


「くっそー!! 頭に来た!! ぜってー、ジェシカ殿を倒して、リーア殿も倒して、ユキとも勝負して勝つ!!」


まあ、こうなれば剣王としての名があるローデイ王は引くに引けないでしょう……。

本当になんで私が相手に選ばれたのだったか?

……確か、ならず者を押さえてから、城に戻ってお茶を飲んだ後、報告を聞いていた時だったか?




「陛下、荷物の押収は終わりました。中身は仰る通り、例の物で間違いありません!!」


そう言って、綺麗な敬礼をするのは、サマンサの姉、ルノウ。

サマンサから聞いたが、彼女も魔術学府を卒業後、王都勤務になり、実家にいなかったそうだ。

それが幸いして、王都での連携が上手くいって、スムーズに後始末ができたわけだ。


「いいか。物が物だ、厳重に警戒しておけよ。俺以外の奴は絶対通すな。命令書も出さないから、全部偽物と思え」

「はっ!!」

「ならず者達だけであの量の魔剣を仕入れる取引をできるわけがない。どう甘く見ても、うちの連中が糸を引いているに決まっている。こうやって、お遊びしている間に襲撃の情報を受けて、確認しに来るだろうよ。表向き、街の倉庫を非合法で占拠している連中をしょっ引いただけだからな。中身を知っている奴ら以外は、俺のいつもの行動と思うだけだ。来る連中はマークしとけ。あと、あの倉庫の表向きの持ち主も探っておけ」

「はい、失礼いたします!!」


ふむふむ。

確かに、直感型なんでしょうね。

マーリィ様も少なからずこういうところは有りました。

……まあ、その直感を国王が発揮して自由にやられると非常に迷惑でしょうが。


「よーし、待たせたな。これで俺が勝負しても問題がないわけだ!! 心置きなくやるぞ!!」

「絶対、お前は遊びたいがためだろ?」

「だな」

「もう、陛下は相変わらずね」


……ああ、遊ぶのに全力を尽くすタイプですか。


「遊んで何が悪い!! 勝手に玉座争った挙句勝手に死んで傭兵やってた俺にいきなり王位が転がり込んできた。いや、押し付けられたんだぞ。てめえらのケツぐらい自分でふけっての」

「それを言うなら俺たちもだがな」

「ですねー。当時の内輪もめで、当時の派閥は殆どが共倒れで、そのせいで、傭兵家業をのんびりやっていた私たちが呼び戻されたんですから」


……うっ、正直耳に痛い。

これは、同情の余地があるのですが、でも実際は更に迷惑を被っている人がいて、この大陸に生きる人々は、ユキに頭が上がらないのです。

こっちに来た理由は、主に私たちが原因ですし……。

立場とかではなく、普通に良識がある人から見れば、ユキに全てを押し付けている結果になっています。

で、その善行を善行として行っているかと言えば違います。

仕事だからです。

まあ、普通に正義心から、この大陸を救うためにきた!! なんて言われても、胡散臭いの一言ですが、ユキの仕事だから、もなかなか厄介です。

私たち、つまり……私ことジェシカ、クリーナ、サマンサという大陸に妻という繋がりができたから、多少面倒でも仕事をしていますが、これがなければ、国の面倒事には介入せず傍観に徹していた可能性があります。

ユキが与えられた魔力枯渇の原因を調べるのには、別にこの大陸で原因を突き止めなくてもいいのです、ここである程度の結果を実際見られるだけでも成果になるのですから……。

という感じで、ユキは凄くドライです。

……ということで、同じ立ち位置のユキがローデイ王の言葉を聞いて頷いています。

これはすごくよくない兆候です。ユキのヤル気がグングン下がっているのが分かります。

……あのローデイ王に口を閉じてもらわないと、世界の危機でしょう。


「そのお話は後でもいいでしょう。さあ、ローデイ陛下。一手ご指南願います」

「おう!! って俺が挑む側なんだけどな。まあ、いいか。来い!!」


伝わる気迫十分。

本当に王というより、騎士や傭兵という感じですね。

ユキに会うまでの私なら、どこまでやれたでしょうか……。

が、今は違います。


「では、失礼します」

「は? うぉぉぉ!?」


ガキン!!


一瞬で背後に回り、わざと声をかけて、剣を受けさせます。


「おぉぉぉ!! お? おおぉ!? ちょ、ちょっとた……」


そのまま力技で剣のつばぜり合いをしながら、ローデイ王を空中へ跳ね上げます。

力で負けるわけがないと、油断したせいですね。力を抜いて、流せば空中に跳ね上げられることはなかったでしょう。

しかし、流石傭兵家業をしていたというだけはあり。


「なろっ!!」


空中で体勢が不安定なのを承知で、そのまま剣の重みを頼りに思いっきり私に剣を振り下ろしてきました。

ガードしても吹き飛ばされて終わりと理解していたのでしょう。


キィィン!!


そんな音と共に、私とローデイ王の剣がぶつかりあい……。

ローデイ王の剣だけが弾かれていきます。


「え?」


おかげで私は剣を振りぬいてしまい、そこに空中から迫っていたローデイ王が迫ります。


「もらったー!!」


ちっ、直感型は本当に厄介ですね。

仕方がないので、とっさにバックステップをして距離を開け。


「おおっ!? ちょ、ここはしっかり俺と殴り合えよ!!」

「馬鹿をいうな。相手は女性だぞ」

「ですね。何を無茶なことを。それ以前に剣を弾かれたのですから、陛下の負けです」

「ええー!? ちょ、ちょーっと待とうぜ? 相手は俺以上の強さだったから、これぐらいはありだろ!?」

「「なし」」


というわけで、審判役の2人に勝敗が告げられて、勝負は終わりました。


「おつかれー。最後、驚いただろう?」

「ええ。まさか、剣王が剣を捨てるとは思いませんでした」

「ジェシカがユキさん以外であんな顔するとは思わなかったよ。かわいー」

「ありえません。リーア、あれは油断したのであって。決して惚れたなどということはありませんから。間違ってもユキの前で誤解を招く言い方はやめてください」

「そんなことユキさんが思うわけないよ。ねえ、ユキさん」

「ジェシカがそんなことするわきゃないな。ま、いい経験になっただろう? ああいうのも世の中には沢山いる。意表を突かれると、反応が遅れる。そこら辺の心の余裕は持とうな」

「はい。今後も精進します」


そうです。

あの程度のことで心を乱していてはいけません。

ユキはもっと突拍子もありませんし、子供たちの行動も最近活発になってきました。

私自身の子供はまだいませんが、正直に言って、私が最初に産まなくてよかったと思っています。

きっと、セラリアやルルアのように余裕のある母になれそうにありません。

我が子を思うあまり、お説教をしてしまいそうです。

そう言う意味で、みんなの子供を育てるということを経験できて良かったと思います。

これで、我が子が生まれた時は、おむつもご飯も完璧な母を見せてやれるでしょう。

と、そんなことを考えている内に、廊下から走り寄る音が聞こえて、扉が思い切り開かれます。


「陛下!! 大至急、魔剣の保管場所へお願いいたします!! ドクセン家の者たちが武装をして脅しているのです!!」


ルノウが慌てて報告をする。

なんというか、いくら何でも行動が早すぎますね。


「なんだと!! あいつら、分かりやすすぎだろ……」

「エナーリアへの工作疑惑もドクセンが疑われてたな……」

「……おそらく、その関係でしょうね。押収した荷物の中に決定的な何かがあるのでしょう。だから、慌てて押し寄せてきた」

「でも、無理やりここまですれば問題だろうに……」

「証拠隠滅して、他人に責任を擦り付けるつもりでしょう。そこのルノウはちょうどヒュージの娘ですし、美味いことにまさに魔剣の警備をしていた。向こう側が立場上は上ですし、発言は向こうのほうが優先されますね」

「そ、そんな!?」

「まあ、ルノウ落ち着け。さっさと俺たちがいくから。すまんな、客人たち。ついでだ、証人ということで、ついてきてくれ」


ということで、駆け足で、保管場所に行ってみれば……。


「ええい!! どかぬか!!」

「陛下の勅命により、何人たりとも立ち入ることはできません!!」


そんなことを言っているのは、先ほど廊下でヒュージ公爵に突っ掛かっていた男だ。

……先ほど、ツボにぶつかっていたかと思えば、右に左に忙しい男だ。


「よう、ドクセン。どうした?」

「へ、陛下!?」

「はっ、ルノウ隊長からお聞きしたかと思いますが、ドクセン公爵が陛下の断りなく、中のモノを検分すると仰ったのです」

「ほう?」

「ち、違います。この保管庫の中に、置き忘れたものがありましてな。取りに来た次第でして……」

「なら、ちょうどいい。今から検分だ。一緒に立ち会え。その置き忘れたと言うモノも見つかるだろう」

「い。いえ。陛下にお見せするには……」


ドクセン殿はそう言いかけて、口をいったん閉ざし、こちらを見てから再び口を開きます。


「わかりました。検分に立ち合わせて頂きます。陛下の仰っる通り、探している物が見つかるかもしれません」


……どう見ても、くだらないことを考えている顔ですね。

で、その結果。



「ふはははっ!! ここでお前らは全員死ぬ!!」


真っ先に魔剣をつかんで、こちらに武器を向けてくるアホがいました。


「……はぁ。とりあえず、理由を聞いておこうか」

「ふふ、いいだろう。これが冥土の土産だ。これは誰にでも使える魔剣でな。私がとあるルートから仕入れたものだ。これで、お前ら全員を殺して、適当にそこのヒュージの娘でも犯人に仕立て上げておいてやる。これでローデイは私のモノだ!!」

「いや。俺の息子が跡継ぎだが」

「……。そ、それは俺が宰相に収まり……」

「誰が武官のあなたを宰相に推すんですか……」

「……」

「「「……」」」


バカここに極まれりでした。


「よし、捕えろ。というか俺が直々にしばく!! お前な、いろいろ暗躍するにしてももっとがんばれよ!! ローデイが馬鹿の国に見えるだろうが!!」


そういって、剣王が一足でドクセンに近寄り、魔剣を使わせることなく鎮圧します。

ですが、もう手遅れです。

まあ、ある意味わかりやすいのですが。


「はぁ。検分を始める前に……。魔法警備隊はドクセンの家を抑えて来い。近衛も連れていけ。ほかにもいろいろ出てくるだろうし、流石に裏で別に糸を引いている奴がいるはずだ。そっちが本命だろう」

「「「はっ!!」」」


……しかし、スムーズにいろいろ進んでいるのに、なんで疲れる気がするのでしょうか?


「さーて、バカのせいで疲れたが、さっさと調べるか」


ああ、分かりました。

私達は最初から剣王に振り回されていたからですね。

さっさと終わらせて家で寝たいです。






とんとん拍子ではあるが、限度がある。

駆け足どころか、アクセル全開で事態が進むローデイ編。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ