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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 暗躍する影編

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第335堀:人によっては拷問になる

人によっては拷問になる




Side:サマンサ




全く、世の中は空気を読んでいませんわ。

私たちとユキ様の新婚旅行に水を差すのです。戦争回避へ奔走し、やっと学府に戻ったと思えば、ローデイを経由してホワイトフォレストへ行くことに。

確かに、ヒフィー様の話は分かりました。

不甲斐ない私たちの先祖が原因でもあります。

しかし、ユキ様の言う通り、今の幸せを壊すとか言語道断!!

私たちの新婚生活を邪魔するとか、馬に蹴られて即死して当然!!

やっと、ヒフィー様の件を片付けたとおもえば、ほかで動いている愚か者がいるのがわかり、このように忙しい日々に……。


「サマンサ様。髪が整えにくいので、じっとしてください。気持ちはお察ししますが」

「あ、ごめんなさい」


気が付かないうちに、イライラで小刻みに動いていたみたいですわ。

別にサーサリの邪魔をしたいわけではないので、ちゃんとじっとします。


「そう言えば、ユキ様はもうお休みになったのでしょうか?」

「いえ。今日はまだ学府でやることがあるそうで、意識は向こうで働いていらっしゃいますね」

「はぁ……、夫が必死に働いているというのに、私はのんびり、髪の手入れをしていてよいのでしょうか……」

「いいのですよ。明日はご実家に再び行かれるのです。しかも大変重要な親書を携えてです。ユキ様は殿方なので、戦場や現場での仕事が主ですから、身なりは多少雑でも構いませんが、妻であるサマンサ様はその身で夫の財や人脈を体現しなければいけません。お肌の荒れようなど見せれば、妻までせわしく働かせていると、後ろ指を指されてしまいます」

「そのような古い風習はいらないと思いますわ。私は魔術師。戦場や現場で活躍するべきだと思うのだけれど?」

「そうですね。サマンサ様が独身、或いは旦那様の身分が低ければ引っ張っているということで、大丈夫なのでしょうが。その場合は旦那様の顔を潰すということになります」

「……それは駄目ですわね。神の使いか同等の存在であるユキ様にそんなことできませんわ」

「旦那様、ユキ様はあまり、気にされないと思いますけれど」

「私が気にするのです!!」

「では、我慢してくださいませ。もう、何度目ですかこのお話」

「むう……」


確かに、前に同じような会話をした記憶がある。


「旦那様のことはご心配なく。本当に危険であれば、キルエ先輩と協力して、しっかり捕獲します。お嬢様は明日の親書の件がどのようにすれば中央へスムーズに伝わるか、ヒュージ公爵、お父様との話の内容をお考えください。所在が未確認の魔剣を大量所持。ともすれば国が傾きます。ローデイ存亡の危機です。アグウスト、エナーリア、ランサー魔術学府は既にユキ様の手が伸びていて問題はありませんでしたが、ローデイの首都はノータッチです」

「存じていますわ。早急にお父様に話をとおして、首都へと向かわなければいけません。陛下にホワイトフォレストへの通行許可もいただかないといけませんし」

「はい。ユキ様の予定をスムーズに進めるためにも、ローデイへの伝手であるお嬢様が万が一にも侮られるようなお姿では困るのです。惚気るのはいいのですが、それでユキ様の足を引っ張るようであれば、私が強制的に寝かせますよ?」


冷たいものが首筋に当たる。

鏡越しにサーサリを見てみると、剣の柄が当てられている。

サーサリはいつもの通りニコニコしているけど、これはいい加減にしろという合図だ。


「……サーサリ、本気ね?」

「当たり前です。惚気すぎでユキ様に捨てられたら、お嬢様はどうします?」

「……死にます」

「でしょう? そんなことは決してさせません。ということで、お早くお休みくださいませ」

「わかったわよ……」


このままだと強制的に寝かせられそうなので、一応自分から布団に入る。


「仕方がないので私は寝ますわ。サーサリ……」

「存じております。旦那様より先に休むことなどあり得ません。ご安心を」


バタン……。


ふふっ、サーサリは行ったわね。

甘い、甘すぎるわ。

未婚の女性には分からないでしょうけど、愛する夫を差し置いて寝る妻なんていないのです。

遠方で、離れ離れならともかく、家に帰ってくる夫を放っておいて爆睡とかありえませんわ。

だが、焦ってはいけない。

あのサーサリのことだから、私がすぐに寝るとは思っていない。

しばらくはこちらに意識を向けているはず。

子供の頃はそれでいつも、夜に抜け出すのを止められていた。

最近は、ユキ様の特訓で実力を更にあげているから、感知はとんでもない力量になっている。

しかーし!! 私だって実力を上げていますわ。

ユキ様との特訓で、隠密や気配遮断を覚えたのです。

魔術師が気付かれることなく攻撃するには必要だと、理に適ったスキルですわ!!

ということで、サーサリの気がそれたぐらいの時間帯に……。

あ、れ?

なんで、こんなに……眠気が?


「お嬢様の考えそうなことは百も承知です。睡眠香でどうかぐっすりお休みください」


扉の向こう側から、サーサリの声が聞こえる。

睡眠香? そんなもの聞いたこと……って、ユキ様からね!?


「……サー、サリ」


謀ったわね……。


「ありゃ? サーサリが外にいるってことは、サマンサはもう寝たか?」

「あ、あれ? だ、旦那様!? お、お早いお帰りで」


ああ、ユキ様……、愛しのサマンサはここにいます!!


「いや、十分遅いけどな。ま、寝ているならいいか。明日はサマンサに頼ることになるし、ゆっくり休んでもらおう」

「そ、そーですね!! 流石、旦那様!! ささっ、サマンサ様の眠りを妨げてはいけませんし、向こうでお茶でも」

「そうだなー。すぐに風呂入って寝るのもあれだし、お茶飲むか」

「はーい」

「そうですね」

「リーア様、ジェシカ様もこちらに」


……サーサリ、絶対、明日、泣かす。

グー……。





「ふむ。話は分かった。私宛の手紙も読んだし、陛下宛の親書もある。ビデオカメラの件は決闘祭の映像もあるから伝えるには、十分だ。問題はないだろう」

「では、お父様?」

「ことは非常に緊急性が高い。今すぐ出る。本来ならば、移動の手筈も私が整えるのが道理だが、婿殿の馬車なら更に速度が出せるし、鉄の馬車なら安全性も高い。どうか使わせてはもらえまいか?」

「はい、かまいません。道中で決闘祭の内容も確認しやすいですし」

「あら、それなら私もいくわ、あなた。息子の活躍を1人で見るなんてずるいわ」

「そうだな。みんなで息子の勇姿を見ようではないか!!」

「もう、ユキ様は最高にカッコよかったですのよ!!」

「や、やめてくれ……。え、映像の、か、確認だけで……」

「何を隠すことがある? 息子の活躍はこちらにも噂が届いているぐらいだ!!」

「ええ。違う術を同時に操り、相手を圧倒した、伝説の魔術師ってきいているわよ!!」

「お父様、お母様、そんなにユキ様をいじめないでください。恥ずかしがりやですから」

「ああ、なるほどな。しかし、陛下にも見せることになるからな、慣れておけ」

「そうよー。一押しで陛下に見どころを押し付けるから」


と、こんな感じで、お父様やお母様とのお話は滞りなく進んでいまして、ユキ様は奥ゆかしい性格のせいか少し、緊張しているようです。


「では、準備を……。と、そう言えば、サーサリはどうした?」

「そういえばそうね。サーサリちゃんはどうしたの?」

「ああ、ちゃんと外に待機していますわ」

「外に?」

「何でかしら?」

「ふふふ……。ほら、サーサリ。お父様とお母様がお呼びよ」


流石にこの呼び出しは拒否できるわけがないので、扉を開け、サーサリは渋々その姿を現す。

サーサリの首にはこう札が下がっている。


『独身』


普段であれば、こんな無体な命令など聞きはしないのだけれど、昨日のことは悪いと思っているのか、顔をひくつかせながら、その札を下げました。

ユキ様の所はどうか知りませんが、サーサリぐらいの歳で独身というのは、それ嫁き遅れを示す言葉。

普通は誰も決して触れない話。

だが、あえて自分でそれを示すというのは、非常につらいものがあるのです。


「……えーと、そのなんだ……」


お父様は何と言っていいのかわからず目をそらします。

何を言っても逆効果になりかねませんからね。

そのいたわりの気持ちを察することができる、出来たサーサリは更に顔を真っ赤にします。


「まーた、なにか喧嘩したのね。でも、これは流石にやり過ぎよ。サーサリちゃん。外していいわよ」

「あ、ありがとうございばす!! お、お嬢様が、お嬢様が!!」


ちっ、お母様は甘いんですから。


「サマンサがごめんねー。でも、ここまでやることはそうそうないのだけれど、何があったのかしら?」

「あ、そのえーと。ごにょごにょ……」

「ふむふむ。なるほど。うーん、私なら裸で吊るすわね」

「お、奥様!?」

「冗談よ。ま、どっちの気持ちもわかるわ。でも、ちゃんと仲直りしなさい。こんなことで息子の足を引っ張るんじゃないわよ? 出発準備が遅れてるんだから」

「「……はい」」


ということで、結局喧嘩両成敗とされてしまいましたわ。

私もサーサリもよくあることなので、お互い最後には笑っていましたが。


「しかし、見本の魔剣も渡してもらったが、これは確かに脅威だな」

「ええ、あなた。これがローデイの首都に多数あるのだとしたら由々しき事態です。陛下への取次はお任せします。私は、王都の魔術警備隊へ協力を打診するわ」


車の中で、お父様とお母様は、ビデオを見る前に王都での行動を確認している。


「え、お母様。魔術警備隊っていえば……」

「そうよ。私の娘、貴女の姉。ヒュージ家長女ルノウを連れていくわ。取次で許可を貰って探しだすのは遅すぎます。先に捜索をします。いいですね、あなた?」

「頼む。こちらも手早く取次と説明を終わらせて許可を貰い、合流する。無理はするなよ?」

「ええ。そこら辺は心得ていますとも」

「え? お、お母様も出るのですか? そ、それなら私やサーサリも……」

「だめよ。あなたはポープリ学長から直接頼まれたの。あなたが顔を出さないわけにはいかないわ」

「そうだ。お前がいないことで、逆に時間がかかる可能性が高い。ユキ殿もだ。分かってもらえるか?」

「はい。しかし、義母様は心配ですから、こちらからも同行者を出したいと思います」

「それは助かる。ふふっ、しかし、こういっては何だが、久々の騒動だ。私の分が残っているといいな」

「いいわね。あの頃のあなたをまたみられるのね」


……なんか、本当に胸焼けがするラブラブっぷりですわね。

私も見習わなくては!!


「ま、それは到着してからだ。今は決闘祭の映像を見ようではないか」

「あ、そうね。堅苦しい話はなし。楽しめる時に楽しみましょう」

「そうですわ。じゃ、ユキ様。見ましょう」

「……ソウ、デスネ」


ああ、やっぱりユキ様はかっこいいですわ!!

お父様もお母様も大絶賛!!

何度も、何度も、同じシーンを見てましたもの!!


「……イッソ、コロセ」



ん? ユキ様、なにか言ったかしら?



めったにないが、持ち上げすぎ、期待されすぎ、などが羞恥プレイになることがある。

当人たちは全く悪気がないのが一番厄介。


こわいよねー、人の善意や好意って。



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