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第332堀:次なる地の前のお話

次なる地の前のお話




Side:ユキ





「今回の事は非常に感謝している。事態が落ち着けば、祝いの宴を2、3必ずやろう」


そう言って、俺たちの出立を見送るのは、アグウストのイニス姫と近衛のビクセンさん。


「そうですね。その時はゆっくりと話しましょう。ラビリスたちの件も含めて……」

「それは何度も頭を下げたし、謝罪の品の一覧も渡しただろうが!? まったく、怖い御仁だな」


当の犯罪者は既に送り返されていたし、エリスやラッツが先に落としどころを用意してくれたので、俺が口を挟む暇はなかったが、ラビリスのおっぱいに触るわ、アスリンは泣かしておっぱい揉むわ。

俺直々処刑してもよかったぐらいだ。

ヒッキーとかいったけ?

俺の前に現れたら、名前の通り二度と外に出られないようなトラウマを植え付けてやったのに、惜しいことをした。


「ま、冗談は置いて、今は緊急事態ですからね。この件を学長に伝えた後、ローデイ、エナーリア、ジルバへと伝えなければいけません。陛下に略式でのあいさつで申し訳ないと、伝えておいてください」

「ああ、父上もそのところは理解しているから、わざわざ私から伝える必要はないとおもうが、ユキ殿からの願いだ、ちゃんと伝えておこう」

「感謝します」


俺としては好都合なことに、ヒフィーが仕掛けた戦争を誰かに擦り付けようかと考えているときに、実際に、ヒフィーと同じように暗躍している連中がいたので、それに全部押し付けることにした。

デリーユの活躍のおかげで、思わぬ名前が出てきて、アグウスト首都では王様と大臣で緊急会議中だ。

エクス王直々の手紙なのか? それとも偽物なのか? 俺たちと同じ疑問で会議が紛糾している。

実際被害を被っているのだから、俺たちみたいにどうでもいいやー、とはいかない。

国も隣接しているし、とりあえず、エクス王国に接する国境の守りを固めるように指示しているみたいで、兵士がエクス王国方面へと慌ただしく動いている。

もともとアグウストとエクスは地理的にお隣同士で、国境争いをしている。

その関係で仕掛けてきてもなにもおかしくはないのだ。

一方、ジルバ王国とエクス王国は友好関係にあり、まあ表向きな国境争いみたいなものはあるが、予定調和みたいなものだ。

ジルバはその関係で、エクス王国との国境にそこまで兵力を割かず、いままで、エナーリア方面、南方の小国家群、中央にあるランサー魔術学府とは違う山々に潜む亜人たち、この3方に軍の主力を向けている。

内1つのエナーリア方面は既に片がついているけどな。

ということで、ジルバも本当にエクス王国が暗躍しているなら、危なくはあるが、丁度いいことに、立場の上がったスティーブとザーギスがいるので、この機に乗じて、立場を更に上げてもらおう。

ジルバ王国の被害? いやいや、自国ぐらい自分たちでまもろーぜ?

今回俺たち関係ないし。前任者とか駄目神いないし。

スティーブとザーギス置いてるだけ感謝して。


ということで、俺たちとしてはそこまで焦ってはいないのだが、現在のアグウスト内での立場は竜騎士アマンダの護衛なのだ。

今の状況はアグウストの要請により、学府が竜騎士を派遣したという体裁になっている。

緊急事態ゆえに、そう言うことになっていたが、一応、一息つける状態になっているので、これ以上無意味に竜騎士アマンダを手元に置いておくと、アグウストにとっては今後色々なところで面倒になるのだ。主に政治的な関係でな。

今の状況も実はあまりよろしくない。

竜騎士が挨拶に来たのを、そのまま戦へ投入してしまっているのだ。

一応、ポープリと話はついているものの、挨拶に来た他国の客人を最前線に投入しているのだから、非常識極まりないだろう。

つまり、現時点でも、学府、竜騎士には多大な借りができているのだ。

どこかで大々的に今回の協力に対する謝辞を示さないと、国としてのメンツが潰れる。

大国って大変だね!!

とまあ、そう言うわけで、これ以上竜騎士アマンダを拘束、戦力として扱っているように見られるのは不味いので、即刻立ち去るようにと、ポープリから、いや俺経由で連絡を入れたわけだ。

俺たちも俺たちで、黒幕については調べないといけないからな。

慌ただしいアグウストでは動きがとりづらい。

ということで、俺たちは学府へと帰還ということになったのだ。

……新婚旅行が遠のいたけど、こんなところでしても慌ただしいだけだし、嫁さんたちには我慢してもらおう。

なんか、家族サービスのフォローの方が大変な気がするけど、こっちの方面で忙しいのはまだいいんだよな。

今回みたいに、他人の尻拭いで色々合わせないといけない方が辛いわ。

まあ、散々憂さ晴らしはさせてもらったが。


「イニス先輩。また必ず来ます!!」

「ああ。アマンダ後輩。その時を楽しみにしている。達者でな!!」

「はい!!」


気が付けば、アマンダと姫様の挨拶も終わり、いよいよアグウストから飛び立つ時がきた。


「竜騎士アマンダ、そして護衛の傭兵団に敬礼!!」


ザッ!!


ビクセンさんがそう言うと、慌ただしく動いていた兵舎の兵士たちが一斉にこちらを向いて敬礼する。

……ここまでやれるなら、何かあってもちゃんと対応できるだろう。

ま、直通の拠点は確保してるから、やばそうなら手伝うけどな。

クリーナの家族のファイゲルさんもいることだし。


「みなさんお元気でー!!」


アマンダは兵舎が見えなくなるまでずっと手を振っていた。

……言いたくはないが、腕、疲れないか?




さて、帰りは直で戻ることになっている。

自国に帰るのに、わざわざ鈍足に偽装する理由もないからな。


「あの、みなさん。今回は私のわがままに付き合っていただいてありがとうございました!!」


籠の中で、アマンダはそう言って頭を下げる。

まあ、今回の安請け合いは、俺たちがいなければ本当に大問題だったからなー。

不味いという自覚がないと、今後非常に怖いが、実感はあったみたいだからいいか。

俺たちも、目的を達成するために後押ししたようなもんだし。


「いいのよ。ってこれは前にいったし。今回は何が駄目だったか、ちゃんと聞いてみましょう」

「え?」

「いい、アマンダ。貴女が謝っているのは、私たちを危険に巻き込んだから。そうよね?」

「あ、はい。そうです」

「ほかに、ちゃんと自分の立場としての危険性も分かったかしら?」

「はい。エリス師匠たちがいなければ、きっとトンデモないことになってたと思います」

「うん。それが分かっているのならいいわ。決して自分の腕を過信してはだめよ? 伝説の竜騎士である前にアマンダは女の子。新婚さんなんだから、エオイドとの時間を大事にしなさい」

「はい!!」


うん。エリスもちゃんとそこは釘刺しているし、よほどのことがない限り、無茶はしないだろう。


「そういえば、ユキさん。戻ったらどうなるんでしょうか?」


エオイドがそう聞いてくる。

さて、エオイドの言う通り、これが問題だ。


「まずは、ポープリ学長に話してからだな。学府にも魔剣を持った連中が潜伏している可能性がある」


いや、トーリ、リエル、カヤが連絡後速やかにボコボコにしたけどな。

ポープリがこっち側で助かるわ。やりたい放題。


「その後は、学府から各国に緊急連絡だろうな」


面倒なことは、すぐにホワイトフォレストへ行けないことだ。

名目上、学府に一度戻らないと怪しいし、あの状態のアグウストから、亜人の国へ出国手続きなんてすれば疑われる可能性がある。

いま、アグウストは南のエクス王国の仕業か、北のホワイトフォレストかとピリピリしているからな。


「やっぱり、アマンダが連絡役でいくんでしょうか?」

「それはないな。今回、アグウストで戦闘に巻き込まれた。いや首を突っ込んだから、黒幕に顔が知られた可能性がある。下手によその国を飛び回っていると、そこを襲われかねないからな。だって一番邪魔だからな」

「そんな……」


まあ、その場合、正しく竜騎士は機能しているということなんだけどな。

俺たちの弾除けって言う役割。


「だから、学長がそんな危険を冒すわけがないから、学府で待機だろうな。なに、デリーユとかも残るし、問題はないだろう」

「え? その言い方だと、ユキさんたちはいないんですか?」

「俺たちはローデイに向かう予定だよ。サマンサがいるからな。繋ぎが楽なんだ」


そう。

俺たちは、アグウスト方面からではなく、既に信頼厚い、サマンサの親父さん、ローデイのヒュージ公爵家の伝手でホワイトフォレストに向かう予定になっている。

この前の、決闘大会の映像も届けて、ビデオカメラによるローデイ内での地位を確立してほしいからな。

ビデオカメラの受け渡しも急がないといけない。

この前は聖剣使いたちもいたし、竜騎士アマンダもいて、さっさとサマンサを貰います、OKって話で簡単に切り上げたからな。


「なるほど。エナーリアやジルバはどうなっているんですか?」

「幸い、エナーリアの方は、エージル将軍が来ているから、そちらに話して届けてもらう予定だな。ジルバ方面は既に学長の知り合いに連絡を出している」


ま、エナーリアの方は既に片が付いているから、エージルに学府での戦果報告も兼ねて戻らせるような感じだ。

で、ジルバはいま、待ち構えている状態なので、余計な横槍が入らないように、こちらから情報封鎖だ。

スティーブとザーギスが上手くやってくれるだろうさ。


「そういえば、エクス王国には連絡どうするんですか?」


ああ、そうか、アマンダとエオイドは黒幕がいることは知っても、誰が黒幕なのか見当もついていない。

流石に機密だしな、こんな学生にポンポン話すわけにはいかないよな。

エクス王国が黒幕候補なんて……。


「そっちは、アグウストの方から使者が行くみたいだ」


なんてのは嘘で、あのわかりやすい手紙のおかげで、真っ向から聞いてもちゃんとした答えが返ってくるわけもないし、最悪、使者が死者になって帰ってくる可能性があるから、どうしたもんかということになっている。

この関係で、俺たちが調べてきまーす。なんて手を上げることはできないので、とりあえずホワイトフォレストを先に調べようってことになったのだ。

その間にエクス王国が動いたら確定だし、直通通路があるから、アグウスト、ジルバがやばくなっても援軍として駆けつけられる。


「そうですか……。あの、道中気を付けてください」

「ああ」


エオイドは自分がついて行けないのが気になるのか、言葉を濁しながら、俺にそう言ってくる。

いや、心配するなって方がむりか。

エオイドとも付き合いは短いとはいえ、同じ釜の飯を食ったからな。


「心配するなって。行くのはユキさんだ。それより、自分の心配した方がいいぞ?」

「え?」

「俺は残るからな。ビシバシしごく。学府だからって安全とは限らないからな。鍛えて、鍛えて、鍛えまくるぞ」

「……はい」


頑張れ若者よ。

で、その隣で話を聞いていたアマンダは、エリスとホワイトフォレストの話をしている。


「ホワイトフォレストは一年の殆どが雪って話ですし、エリス師匠、暖かい服を着てください」

「ええ。大丈夫。ちゃんと準備してるから」

「あ、そうだ。かわいい手袋置いてある店があるから、そこでプレゼントさせてください。今までお世話になってますし、願掛けなんです」

「願掛け?」

「はい。学府では、旅の時に使う道具をプレゼントすると、残る人と、旅に出る人に繋がりができて、無事に帰ってくるって」

「……そう。なら、かわいいのを選びましょう」

「はい!!」


どこにでもそういう願掛けはあるんだな。

何かに願いをかけたくなるのは、人の性かね。

しかし、ホワイトフォレストはどこの情報からも雪国みたいだな。

……その場合畑作は夏の一時だけだろうし、殆どが漁獲とかか?

そういえば、中世での極寒地の生活ってよく知らないな。

現代でも、水道が凍るとか、交通の便が悪いとか聞くのに、この文明レベルで過ごすのはすごいことじゃないか?

……まあ、今までの歴史から、好き好んで北辺の地に住んでいるわけでもなさそうだけどな。


しっかし、当初はこっそりやるつもりだったのが、何でこうなったかねー。

人生、上手くいかないもんだ。




アグウストの前任者問題は収束!!

だが、次から次に問題は起こる!!

これは、まあ必然なんだけどね。

スポーツ選手でも、会社でも、競争に勝てば勝つほど、大きい舞台へ連れていかれるのさ。

それから考えると、初期段階で魔王とか、国を相手にを大勝をおさめているから、これはもう当然だべー。って話。


じゃ、次回は忘れ去られている、あの人の話だ。

簡易人物表つくったし、明後日はそれでだれか調べてみよう!!



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