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第299堀:始まるは情報戦

始まるは情報戦




Side:ユキ




俺たちはイニス姫さんから、偵察してほしい箇所の説明が終わり、出発準備に取りかかろうとしていた。


「できれば、父上を助けてくれ」

「はい。できればそうしましょう」

「頼む」


そう言って深々と頭を下げる姫さん。

こういうところはしっかりしているよな。

今までのは演技というか、ミスリードみたいなものか?

そうだとしたらなかなか食えない姫さんだな。


「とすまない。最後にクリーナ」

「……なに?」

「お前はユキ殿と結婚しているのだったな」

「そう。もう人妻」

「怒らずに聞いてほしい。当初の予定ではクリーナを徴集して、アマンダ後輩とユキ殿たちの協力を何としてでも得るつもりだった」

「……」


クリーナの表情が固まり、魔力が集まっていく。

慌てて俺が抱き込み落ち着かせる。


「……最低」


魔力は霧散したが、クリーナはそう姫さんに言葉を吐き捨てる。


「こら、クリーナ!! 申し訳ありませぬ姫様」

ファイゲルさんが慌てて、娘の非礼を詫びるけど、姫さんは気にするなと言わんばかりに首を横に振る。


「いや、よい。私も自分を餌に、周りが死地に赴くよう謀られれば頭にくる」

「……私はユキの足枷になるつもりない。そんなことになるなら、私は今ここで死ぬ」


クリーナはマジなのか、氷の魔術で剣を作り首筋へ持っていこうとする。

が、俺を含め、全員がそれを止める。


「はいはい。落ち着きましょう。クリーナ。お兄さんはそんなこと望んでいませんよ」

「そうです。旦那様は一緒に生きてほしいと言っているのです。それは間違った選択ですよ」

「大丈夫よ。クリーナ。妹分にこんな非道を申し付ける相手なんて吹き飛ばしてあげます」


そう言うのは、ラッツ、ルルア、エリス。

特にエリスはお偉いさんとの交渉でイライラすることが多いせいか、妹分にあんな表情をさせたことに怒っているのかしらないが、今にでも王城を吹き飛ばしそうだ。


「いやだよ。クリーナお姉ちゃん、お勉強教えてくれるっていった!!」

「そうなのです!! お約束したのです、だから死んじゃだめなのです!!」

「ええそうよ。もうクリーナは家族なの。それに手出しするのなら加減なんてしないわよ?」


アスリンとフィーリアは泣きそうな顔で抱き着いているが、ラビリスは威嚇を含めて睨んでいる。

さて、そろそろ俺が口を挟まないと、真面目に王城が吹き飛びそうだな。


「イニス姫様。わざわざこの場で言ったのは、何か別の意図があるからでしょうか? 流石に反感を買うために言うような状況でもないですし」


俺がそう聞くと、姫さんは頷く。


「ああ。しかし、クリーナを利用しようとしたのだ。国のため、政治的な判断としては当然だが、私個人としては絶対に取りたくない。こうやって、真っ向から言って、せめて非難の声や視線を浴びる責任があると思ったのだ」

「イニス姫様がそうやって自身に罰を与えているのはわかりました。お気遣いと、自己満足であるというのはまあ除いて。で、俺たちに伝えるべき、本題はなんですか?」

「自己満足か……。ばっさり言ってくれる。まあ、否定はできんな。で、気遣いの方だが、今回の協力報酬として、私の方からは、クリーナとユキ殿の結婚を正式に認め、アグウストからの徴集を受けなくてもよいと、私が確約する」


なるほど、クリーナをこの一件で自由にすると言っているのか。

まあ、俺たちは一応ポープリの依頼で動いているので、契約の変更を言われたのだから、報酬を支払うべきはポープリであって、姫さんではない。

だから、まずはあの話をして、クリーナが駆け引きの道具として使われる可能性を示唆して、自分がそれを潰す、あるいは、有事の際には協力すると言ったわけだ。

まあ、クリーナをどうこうしようとしたら、俺はもちろん、今のように、ウィードのメンバーに宣戦布告するようなもんだから、火の海だぜ?

文字通りで。


「お気遣い感謝します」

「姫様ありがとう」

「下種な考えをしたのだからな。これぐらいは当然だ。だが、危険な任務に放り込む事実はかわらん。クリーナ、無事に戻ってこい。無論、夫であるユキ殿もだ」

「ん、大丈夫。子供を作って幸せになる予定」

「まあ、できうる限り頑張りますよ」


そして、姫さんは、エオイドとアマンダに頭を下げる。


「同じように。新婚である、アマンダ後輩とエオイド後輩を戦地に送るしか方法が思いつかない私を許してくれ。そして、どうか無事に戻ってきてくれ」

「はい!! 大丈夫ですよ!! イニス先輩と色々話したいですから!!」

「戦いに偵察とはいえ参加するのは、自分たちの意思でもあります。必ず、アマンダを守ります。イニス先輩もどうかご心配なく」

「ありがとう。では、さっそくで悪いが、兵舎の方へ行って、ビクセンを連れて予定通りに偵察に向かってくれ」

「「はい!!」」


2人は元気に返事をする。

初めての戦場に、いやいや行くよりはマシか。

とまあ、竜騎士たちはやる気満々で外へ駆けていく。


「……やる気があるだけマシと思うべきか」

「ですな」


出ていく2人を見て、姫さんは何とも言えない顔で言い、ファイゲルさんも同じような顔をして返事をする。


「さて、老師。命令書と手紙を……」


そして、俺たちに今回の作戦を証明するための命令書と、万が一、国王に会った場合の手紙を、ファイゲルさんを通して渡してくる。


「どうか、あの若者たちを頼みましたぞ。そして、クリーナも幸せにしてやってくだされ」

「……師匠」

「はい。クリーナは必ず幸せにします。いずれちゃんとした式を挙げる時は、どうかご出席ください」

「ああ、楽しみしておるよ。では、無事に戻ってきてくれ。義息子殿」



2人の見送りを受けて、俺たちはアマンダとエオイドの後を追う。

一応、飛び出した2人にはエリスがついて行ったので、お説教をしながらの移動だから、すぐに追いつくだろう。

と、思っていたのだが……。


『ユキさん。ミリーです。いまいいでしょうか? 先ほど兵舎がある門の店で情報収集したのですが……』


ミリーから連絡が来た。

それで、皆に目配せをして、ラッツを先に行かせて、エリス、アマンダ、エオイドと合流して、ビクセンさんに先に会って話を通してもらっておく。

こうやって、連絡が来るということはそれなりな情報があったということだ。

後回しにするわけにはいけない。


「大丈夫。で、何か情報を手に入れたんだな?」

『はい。信憑性はどこまで正しいかわかりませんが。耳に入れておかなければいけない情報がありました。ユキさんの方から聞いた、魔剣と火の杖です』

「だれか兵士が店に来て話していたか?」

『いえ。それが、ヒフィー神聖国へ商人の護衛で行かれた傭兵の方がいまして……』


なるほど、傭兵からの情報か。

それなら、下手な兵士よりはマジリっ気のない、ただの見たままの話が聞けそうだな。


『まず、魔剣につきましては、女でなくても使えるという話を聞きました。実際魔剣をヒフィー神聖国の男の兵士さんが使って見せたそうです。元々から魔術すらも使えなかったらしいのですが』

「そこは、まあ予想通りだな。どういう裏があるのか知らないが、誰でも使えるようにならないと、魔剣が沢山あっても戦争するための戦力にならないからな。魔剣が使えないから」


だが、情報として話が聞けたのは成果だ。

兵士でなく傭兵からの話が一致するということは、本当に魔剣が制限なく使われていると思っていいだろう。

まあ、常時情報は集めて更新し続けるのが基本だが。


『火の杖についても聞きました。そして、これが一番の問題でして』

「銃か?」

「「「えっ!?」」」


俺の適当な答えに、嫁さんたちが驚いた声をあげる。


『……気が付いていたんですか?』

「いや、全然。適当」

「「「えー」」」


今後はあきれの声が広がる。


「まあ、適当ではあるが、想像をしていなかったわけでもないがな。情報が足りなさすぎだから、俺の想像を言うわけにもいかないだろ?」

「まあ、そうですね。で、お兄さんが銃と答えた理由はどこに?」

「そうだな。火の杖というのに限定していることだな」

「火の杖に?」

「ああ。魔剣の属性は分かっていないのに、火の杖ってなんでわかったんだ?」

「そういえば、変ですね。分かっていないなら、エンチャントの杖というべきですよね?」

「つまり、火の杖というのは明確に火の杖と分かる理由があるんだ。例えば一斉に杖で攻撃されたとき、火が出るっていう光景を目にしたとか」

「ああ、そう言うことですか。魔剣は色々剣から出るわけですが、杖の場合は同じような現象が同時に起きて、それを言い現すのにふさわしい呼称が火の杖だったというわけですか」

「そういうこと。そして、俺が銃だと思った理由だが、俺たちが扱う銃にはそこまで、目立った炎は上がらない。でも、昔の銃は思い切り火が上がっていて、銃が火を吹くなんて言葉もあるぐらいだ」

『それで銃と思ったわけですね』

「ああ。しかし、ミリーと霧華の情報は厄介だな。分かったのは、銃を使うだけだよな?」

『……すみません』

「いや、ミリーと霧華はいい仕事をした。それは間違いない。事前にこの情報を得られたのは間違いなく幸運だ。これで銃の種類までわかったら、びっくりどころか、内通者かと疑うレベルだな。その傭兵」

「ですねー」


しかし、面倒だな。

銃がある戦闘はがらっと、戦い方が変わる。

想定はしていたが、実戦は初めてだな。


「……よし。ミリーと霧華は今日の情報収集は終わりだよな?」

『はい。急用と言って出てきましたから。無理に情報収集に戻ろうと思えば戻れますが……』

「いや、2人は一旦ウィードに戻って、スティーブたちに連絡して、航空戦力を整えろと言ってくれ。俺たちはまだ、出発する前だからな、ビクセンさんと顔合わせして出る必要がある。ドッペルに任せてもいいが、兵舎でも情報は集められるだろし、これは俺たちで直接行きたい」

『わかりました』

「あと、セラリアやウィードで待機しているメンバーにも伝えてくれ。銃の戦闘になる可能性が高いってな」

『はい』


とりあえず、今は少しでも情報を集めて、対策を練らないと不味い。

銃があるならなおさらだ。

敵の使用武器、射程、威力、その他諸々を集めないと手痛い被害を被ることになる。

俺が、そんなことを考えていると、ミリーがまだ伝えることがあるようで続けて口を開く。


『最後に、数年前にヒフィー神聖国に聖剣使いを越える英雄が呼び出されたという話が……』

「だろうな。銃なんて武器を思いつくのは、どう考えても外部からの入れ知恵だ。この世界が既に銃を自力で発明した。ってのは考えられなくもないが、最悪を想定するなら。俺やタイキ君と同じように、銃の有用性を知っている誰かが、呼び出されたと考えるのが普通だ」


ただ銃を発明しただけでは、こんなに早く銃を使った軍を組織できるわけがない。

銃も発明された当初は、その有用性を疑われている。

俺たちの世界ですらそうだったのだから、魔術による遠距離攻撃が多彩なこの世界で、銃を作ったとして、コストや威力を考えて主兵装になるまでどれだけ時間がかかるか。

その過程で、銃というカテゴリーの武器がこの新大陸中に知られていてもおかしくない。

だが、銃などと言う発想の武器は、未だに存在していない。

なら、銃の有用性を知っている誰かが、特別な立場で呼び出されて、その立場を利用して揃えるしかない。

例えば、神から呼び出され異世界よりきた、英雄、勇者とかな……。


「ちょ、ちょっと待ってください。旦那様。それでは、今回の相手は……」


ルルアが震える声で聞いてくる。

ほかの皆も、驚きや、どこか悲しそうな表情をしている。


「ああ。おそらく。異世界人だと思っていいだろうな。まあ、都合よく俺やタイキ君と同じ世界ってことはないだろうが……」

「あ、そうですね。お兄さんの世界だけから呼び出されるなんて都合のいいことはあるとは思えませんね」

「そういうこと。同じ世界出身なら、タイキ君と同じように和解に持ち込める可能性もあるが、まったく関係ないという可能性もある。だから、呼び出されたからと言って、俺の知り合いや同郷の人だとは限らない」


俺が、そう言うと嫁さんたちはホッと息をつく。


「よかったですわ。同郷の者同士で殺しあうなんて、そんなつらいことをしてほしくありませんもの」

「ん。ユキが悲しむ姿は見たくない」


サマンサとクリーナがそう言うと、ほかの嫁さんたちも頷く。

本当に優しい嫁さんたちでよかったよ。


「よし。ミリーの話も踏まえて、兵舎に行って各自準備が整うまで情報収集頼むぞ」

「「「はい」」」


さて、どこまで情報を集められるかね。

せめて火縄銃ぐらいだと助かるんだが、そこはスティーブたちの航空戦力での高高度偵察で調べてもらうしかないよな……。

そして、呼び出されたと言われる、特別な立場の人物。

これが、都合よく俺やタイキ君とは全く関係ない、別の世界の住人だというのは、それこそ都合がいい解釈だろうな。


こういうのにはお約束ってのがあるからな……。


せめて、タイキ君みたいに話が通じるタイプだといいなー。

俺TUEEEでハイになっているバカでないことを祈る。




ミリーの情報をもとに、航空戦力?の投入を決定。

さあ、立ちはだかる敵の強さを探るのだ!!


主にスティーブがな!!


あ、そろそろ冬の食べ物、というか12月のクリスマスやな?

クリスマス!!

俺には存在しませんよ?

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