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第291堀:暴れん坊お姫様

暴れん坊お姫様




Side:ルルア




イニス様との謁見?は終わりましたが、正直に言って、セラリア、シェーラ、エルジュ様、ローエル様などとはまた違うタイプです。

いえ、ガルツのローエル様が多少似ている気がします。

弟にいろいろ任せて、戦うのが好きみたいですし。

しかし、旦那様との会話を聞く限りでは、とても気持ちの良い性格の方みたいで、アマンダやエオイドのことは心配しなくてもよさそうです。

普通に図書館の閲覧許可もくれましたし、人を見る目は確かなものだと思います。

まあ、ちょっと性急すぎるような気もしますが。


「こちらがお部屋になります。何かありましたら、そちらのベルを鳴らしてください」

「はい。どうも」


今回の部屋割りは、竜騎士アマンダとエオイドで一部屋。

傭兵団の私たちは、まとめて一部屋ということになりました。

これはポープリさんが気を使って、私たちを一部屋に案内するように手紙で書いていてくれたからです。

バラバラに泊まると、ジルバみたいに襲われかねませんからね。

トーリ、リエル、カヤは兵士を吹き飛ばすぐらいで終わったみたいですが、私の場合は旦那様以外には肌を見られたくないので、殺してしまうでしょう。

幼いアスリンやフィーリアも心配なので、みんな一緒の部屋はいいことです。


「で、師匠。ポープリ学長に告白したって話は?」

「ぐっ、覚えておったか」


案内のメイドが出て行ったあと、一緒に同行してたファイゲルさんへ、娘であるクリーナが先ほどの告白云々の話を聞きます。

無論、私たちも興味津々なので、周りに集まっています。

旦那様だけは興味がないのか、窓から覗く庭を見て、こちらを見ようとはしていません。


「さあ、早く話して楽になるといい」

「わしが黙っているという選択もあるんじゃがな」

「それなら、戻って学長に聞くだけ。師匠が教えてくれなかった分、学長の話すことを全面的に信じることになると思う」


今すぐにでも、詳しい話はきけるのですけど、

ここは、ファイゲルさんのお話しを聞いたあとで、こっそり事実確認をするべきでしょうね。


「ええい。あのババアの話なぞ全くあてにならんぞ!!」

「なら、話して」

「ぐっ。わかった。じゃが条件がある」

「なに?」

「わしにとっては恥ずかしい話じゃ。それをきくのじゃから、クリーナもユキ殿との馴れ初めでも話してもらおうか」

「ん。かまわない。馴れ初めどころか、初体験も話す。幸せ一杯」

「ちょ、ちょっと、クリーナ。それは俺が恥ずかしいのだけど」


慌てて出てくる旦那様。

クリーナにとっては、素敵な思い出で、恥ずかしがるようなことではないのでしょうか、流石にそう言う話はするのは、身内だけがいいですね、私も。


「いや、流石にそれは聞かん。こっちが痛々しいわ。……ユキ殿。こんな娘じゃが、本当に良いのか?」

「ま、これもクリーナのいいところですよ。お互いの不得手なことをフォローするのが夫婦ですしね」

「……どうだ。ラブラブ」

「……クリーナ。今お前が迷惑かけた、と言う自覚はあるか?」

「?」

「はあ。いい旦那で本当によかったわ。わしなら放り出しとるな」


ええ、ファイゲルさんの言う通り、旦那様はいい旦那様なんです!!

私たちにとっては世界で一番なんですよ!!


「さて、学長に告白した件じゃったかな」


ファイゲルさんはそう言って、ソファーに腰掛けます。

私たちも同じように、思い思いに空いている所に座って、お話を聞く準備をします。


「まあ、そのままの話なんじゃがな。当時のわしは、イケイケの美少年じゃった……」

「嘘」


クリーナが即座にダメだしします。

一応、それはお約束みたいなものですからね。


「やかましいわ。こういうのは普通に聞き流すのが常識なんじゃ」

「ユキ、そうなの?」

「そうだな。こういう前置きみたいなのは話を盛り上げるために必要なんだ」

「わかった。師匠が必死に取り繕うためと理解した」

「……本当に、なんでこんな娘に育ったもんか」

「師匠のせい」


少しの間、火花を散らせる2人でしたが、ファイゲルさんがすぐに折れて、お話を続けます。


「まあよい。わしも当時は純真で優秀な生徒として、あの学府の門をくぐったのじゃ。その時、1人の少女、そうじゃな、そちらのお嬢さんぐらいの、クソババアとあったのじゃ」

「うにゅ?」


アスリンはクソババアがポープリさんを指す言葉とはいまいち理解できてないみたいで、首を傾げています。


「おお、すまんな。クソババアと言うのはポープリ学長のことじゃよ」

「ポープリお姉ちゃんはクソババアじゃないよ?」


ファイゲルさんが分かりやすいように訂正するけど、アスリンにとっては面倒見のいい、ただのポープリお姉さんなんですよね。

ポープリさんもアスリンや、フィーリアのことは気に入っているみたいですし、なんというか、体形的になにか感じ入るものがあったのでしょう。

……実力も負けていますが。

と、そこはいいとして、ファイゲルさんのお話の続きですね。


「そこがあのポープリ学長のいやらしい所よ。いや、お嬢ちゃんにはちゃんと優しく接しておるかもしれないがのう。わしに対しては、本当に入りたて、幼年組を装っておったのじゃよ」


ああ、なるほど。

お得意の容姿を利用した変な探りを入れていたのですね。


「当時のわしは、人並みの心のやさしさを持っておったからな。そうやって、1人で門のところでウロチョロしている、学長、いや、しらんかったから、迷子の子供と思って接したのじゃよ。そして、年上と手を引き、職員室まで連れて行ったのだが、教員は全員妙な目で見ておってのう。今では理解できるが、わしを哀れと思ったのじゃろうな」


……あまり、ポープリさんをフォローできない内容ですね。


「で、その日の入学式であのクソババアが学長として壇上にあがり、わしら入学生の総評をしおった。まあ、そこはいい。しかし、最後に自分をちゃんと丁寧に職員室まで手を引いてくれた若者がいたことを褒めて、挙句、惚れそうになったとかぬかしおったのじゃ」


ダメですね。

アウトです。


「おかげで、わしは入学初日から、クソババアに迫った変態幼女趣味の烙印を押されたのじゃ」

「……師匠。ドンマイ」

「ドンマイだけですむか!! その噂を払拭するために、あのクソババアをボコボコにしてやろうと必死に頑張ったが、それも思いを通すためのアピールと取られるわ、まったく勝てないわで、わしの心はボロボロじゃよ……」


全面的に、ポープリさんが悪いという内容でしたね。

赤裸々どころか、ポープリさんの評価を落とす話でした。

まあ、容姿を思う存分に利用しているという点は、上に立つ者として評価するべきなのでしょうが……。

そこで、ファイゲルさんの話が終わって少しの間、沈黙が降ります。

その静寂を縫うように、この部屋へ走り寄ってくる音が聞こえてきて、思い切り扉が開かれます。


「よし、手紙は書き終わったぞ。受け渡しをしたいのだが……。ん? アマンダ後輩の部屋ではなかったか。まあ、ユキ団長の相席もいるだろうから、丁度いい、ついて来てくれないか?」

「え、ええ」


旦那様は顔を引きつらせつつも、イニス姫様の話に同意を示します。

本当に豪快な人ですね。

で、そのイニス姫様にため息をしつつも、先ほどまで色々話してくれたファイゲルさんが近寄ります。


「ノックもせずに扉を開ける人がありますか!!」

「すまんすまん」

「ええい、この方たちは、姫様の後輩ではありませんぞ!! お客人に対してあまりにも不作法です!!」

「何を言っておるか、建前上、傭兵団も学府の生徒だろう? ならば、後輩も同然だ。それにクリーナや、ローデイのサマンサ殿も後輩だし、問題はあるまい?」

「ありまくりですわ!! クリーナはともかく、サマンサ殿はローデイの公爵家のご令嬢ですぞ!!」


ファイゲルさんの言う通り、これは普通ならば外交問題になってもおかしくないのですが……。

その、叱られている本人はキョトンとして、不思議そうな顔をしながら、サマンサに視線を向け、口を開きます。


「サマンサ殿は、私の対応が不満で外交問題にするのか?」

「い、いえ、そのようなことは。寝ている所に踏み込まれたわけでもないですし、このようなことで、両国の仲をこじらせるようなことはありませんわ。イニス姫様も学府の先輩として訪問していると仰ってしますし、これで文句をつけるのはいささか狭量かと……」


サマンサは咄嗟にそう紡ぎます。

流石、公爵家の令嬢。こういう手合いの作法は習っているようですね。

これなら、新大陸の権力者相手の交渉はサマンサを中心にやっていく方がいいでしょう。

新しい妻の実力を確かめられて嬉しい限りです。


「ほれ。何も問題はないようだぞ?」


そして、イニス姫様は、何事も無いようにファイゲルさんに言います。

恐らく、自分の立場や周りのパワーバランスを無意識に自覚して、こういう行動を取っているのでしょう。

ある意味、物凄い人ではありますが、周りが付いていけないので、下手すると大火傷する可能性がありますね。

義理堅い人であるようですし、そう言った意味では信頼がおけますので、友人という形を利用するが最適ですね。

こういう相手は、自陣に引き込まず、友好的若しくは中間的な立場で支援する形がいいでしょう。


「はぁ、わかりました。わかりましたから、これ以上、わしの寿命を縮めるような真似はやめてくだされ。皆さま、本当に申し訳ない」


ファイゲルさんがイニス姫様に代わって頭を下げる。

……胃の痛い立場ですね。

これじゃ、ポープリ学長といい、このイニス姫様といい、女性に苦手意識があって当然ですね。

私の旦那様がこうならなくて本当によかったです。


「さ、アマンダ殿の所に行って、手紙を渡して、さっそく竜を見に行こう!!」


……本当に凄い人ですね。

というわけで、隣の部屋のアマンダとエオイドの所へ突撃して、キスする寸前の2人を引っ張り出して、さっそく手紙を渡すイニス姫様。

アマンダは顔を引きつらせていましたが、私なら、吹き飛ばしているレベルです。

そんなことがありまして、その日の内に、また兵舎へと戻ってきました。


「姫様!? な、なにかあったのですか!?」


イニス姫様はアマンダを後ろに乗せ、私たちの乗る馬車を置いて、単騎で駆けていき。

ワイちゃんの面倒を見るために戻った、ビクセンさんが驚いてイニス姫様を迎えていました。

それは、お姫様が単騎で兵舎に向かっていたら、それは驚くでしょう。


「ビクセン、竜を見せてもらいに来た!! ついでに空を飛びに来た!!」

「は?」


ビクセンさんは理解が追い付いていないみたいだ。


「ちゃんと竜騎士アマンダ殿もいるから問題ない。というか、お前と部下だけが空を飛んだと聞いたぞ!! そんな羨ましいこと見過ごせん!!」

「あ、いえ。それは任務上仕方ないことなのですが……」

「そんなことはどうでもいい。私も空を飛びに来たのだ」

「さ、流石に、姫様に危険な事をさせるわけには……」

「なんだ? 竜が危険と言うのか? それとも空を飛ぶことがか? 今兵舎がこうして無事だし、ビクセンもぴんぴんしているのだから、どっちも問題ないと思うがな」

「私の一存では、許可が出せる内容ではありませんよ」

「そのことなら心配するな。ほれ、ファイゲル老師も来ている」


そう言って、馬車からいそいそと降りている私たちに、ようやくビクセンさんが、気が付きます。

因みに、イニス姫様と一緒に並走していた護衛の騎士は、見た感じ大丈夫そうに立っていますが、イニス姫様とビクセンさんの会話に入って行かないところを見ると、よほど疲れているのでしょう。わずかにですが、遠目からでも肩が上下しているのが分かります。

私がそうやって観察をしていると、ビクセンさんはファイゲルさんに慌てて近寄り話を聞きます。


「ファイゲル様。よろしいのですか?」

「……お主も分かっておろう。あれはもう止まらん。なるべくわしらが同行して、被害を最小限にするのじゃ。まったく、旅疲れが残る竜騎士殿や傭兵団のお客人を巻き込むなど……」

「護衛はどうするのですか? 竜の籠は安全ですが、姫様1人だけというのは不味いでしょう」

「そうじゃな。とりあえず、わしが責任者として姫様に付き添うことにする。ビクセンは竜が姫様の希望で空を飛ぶと兵舎の皆に伝えよ。間違っても攻撃するなとな」

「はっ。かしこまりました」


そうやって2人は、イニス姫様の暴走をフォローするために色々話し合っているのですが、当の本人は……。


「アマンダ後輩、竜の所に行こう!! 年寄りは話が長くてかなわん!!」

「え、え? いいのかなー?」


アマンダは疑問に思いつつも、とりあえず、立場上一番偉い人のお願いですから断れるわけもありません。

その姿を見た旦那様が慌てて、2人の会議を止め、追いかけていきます。

旦那様をも振り回すとは、恐ろしい人です。



「これが竜か!!」


私たちがイニス姫様に追いつくと、彼女はワイちゃんを見て感激していました。

ワイちゃんは困惑しつつも、アマンダからの命令も特にないので、攻撃したりもしません。

私たちが来たのを確認して、こっそり旦那様に視線を送っていますが、旦那様は首をゆっくり横に振ってあきらめろと言っています。


「はい。ワイバーンです」

「ワイバーンか!! 遥か昔には、下位の竜種と言われていたらしいが、これで下位か!! 一個連隊、100人をもってしても倒せそうにないな!! 威圧感が半端ないぞ!!」


イニス姫様は目を輝かせて、ワイちゃんを眺めています。

しかし、そうやって興奮してはいますが、自ら手を伸ばそうとはしません。

そこら辺はちゃんとしているようです。


「あの、触ってみますか?」

「できるのか? この手の配下になった魔物は主しか触れることを許さんと聞くが?」

「大丈夫ですよ。ワイちゃんはとても賢くて、優しいので、触れられたぐらいで怒ったり暴れたりしません」

「ワイちゃんというのか。……いや、そういう名前を付けられるという精神こそ、アマンダ後輩を竜騎士にしたのだろうな」


いえ、名付け親はアスリンです。

というか、アスリン>>>私たち>>>スティーブたち>>アマンダ>エオイドになっています。


「ワイちゃん。私が触れてもよいだろうか?」


イニス姫様はしっかりと、ワイちゃんの目を見てそう言います。

本当に度胸のある人です。

そして、ワイちゃんはそれに応えるように、顔を近づけ、イニス姫様の腰の位置まで下げます。

そのしぐさに驚きつつも、ゆっくり手を伸ばし、頭を撫でます。


キュー。


そんなワイちゃんの鳴き声が広がります。


「なんと大人しい」

「ワイちゃんも気に入ってくれたようですね。このまま首に乗りましょう」

「なに? 落ちたりしないのか?」

「大丈夫ですよ。ワイバーンは首に乗せる人には特殊な力場を作って落下させないようにする力があるんです。あと、普通に鞍をつけていますし。普通に、手すりを持っていれば落ちることはありません。ほら」


そう言って、アマンダはワイちゃんの首に飛び乗り、両手放しでアピールします。

それを見たイニス姫様も、アマンダに続くようにワイちゃんの首に飛び乗りしがみつきます。


「……これが力場か。確かに、これは落ちる心配がない。なぜだかそう分かる」

「多分、これが、竜騎士が活躍できた理由だと思うんですよ」

「確かに、竜に乗っているだけでは騎士とは呼べん。しかし、これなら武器を持って共に戦うことができるな。人馬一体ではなく、人竜一体と言うわけか。まさに竜騎士だな!! さあ、アマンダ後輩、飛んで見てくれ!!」

「はい。行きますよ!!」


そう言って意気込む2人だが、ワイちゃんは空を飛ぼうとはしません。


「「?」」


2人は首を傾げていますが、ワイちゃんはそっと、私たちの方へ顔を向けてくれます。


「「あ」」


盛り上がるのは構いませんが、私たちを忘れてもらっては困ります。

イニス姫様も大概ですが、アマンダも乗せられすぎですね。

エリスが横でこめかみをピクピクさせています。

あとで、お説教ですね。

早くしないと、そろそろ夕方です。

まずは、空を堪能してもらって、お話はその後ですね。

色々忙しくはありますが、旦那様とまた空でのデートと思えば嬉しいものです。





暴れん坊将軍とか、水戸黄門とか この桜吹雪が目に入らぬか。 は古いかね?

じいちゃんとかとよく見てたけど。



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