第278堀:ファンタジー世界の変なゴブリン
ファンタジー世界の変なゴブリン
Side:スティーブ
「はぁー」
今日も日がな一日、図書室でむさい男と2人っきり。
そして、ここは新大陸ジルバの王都。
出会いを求めようにも、この新大陸ではゴブリンの身分は奴隷以下。消耗品である。
いや、ウィード以外ならどこでも同じか。
前に、ミノちゃんの所に手伝いに行ったときは、エージルとかいうマッドな美少女に解剖されそうになるし。
なんでこう、いい出会いがないかね。
「はぁー」
再びため息をつく。
すると、横で同じように本を見て調べ物をしているザーギスが反応する。
「……ため息をつきたいのはこっちなのですが。本を読むのに飽きたのなら、兵の調練にでも行って来たらどうですか?」
「いやっすよ。ジルバの王様、ことあるごとに仕えないかの勧誘っすよ? それを毎度断って、ほかのお偉いさんの視線が痛い痛い」
「あー、それは私もですね。魔術の研究とはいえ、簡単に魔術を教えすぎましたね。やはり、常識というのは地域で違うんでしょうね」
「だから、こうやって調べ物を手伝ってるっすよ」
「いや、調べ物に従事している理由はわかりましたが、ため息の理由になっていませんよね? 勧誘が邪魔なのは私もですし」
「あー。えっとその、あれっすよ」
「あれ?」
くそ、これだから研究馬鹿は。
おいらが何でため息ついてるかぐらい、察っせっす!!
「……いい出会いがないかーって」
そして、少しの沈黙の後。
「ああ、またですか。くだらない」
ザーギスはそう言って、すぐに本へ視線を戻す。
あんまりな反応に、目が点になって絶句してしまったっすよ。
「ひっど!? ザーギス、ここはおいらを慰めるところっすよ!!」
しかし、何とか正気を取り戻して抗議の声を上げるおいら。
そう、これはゴブリン虐待である。
いや、人としてどうかと思う。
傷心のゴブリン相手に、この態度、人の所業とは思えないっす!!
「誰が慰めますか。もはやスティーブの失恋は日課でしょうに」
「日課扱いされたっす!? 流石にそこまで節操なしじゃねーっすよ!?」
なにその認識!?
引き籠りの研究職のくせして何で世情に詳しいんすか!?
いや、俺が連敗を重ねているのを肯定しているわけじゃないっすよ?
「……引き籠りな研究職でもですね。ウィードの街ぐらいは出歩きますよ」
「あれ!? 心が読まれた!?」
くっそ、ただの研究馬鹿ではなかったか、伊達に魔族でないな!!
「……非常に不愉快なことを考えているようですが、今はスティーブの話ですね」
「ん?」
「わからないって顔してますね。ウィードを出歩くなら当然、街で情報収集をしますよ。ユキがよく言っていますからね。発想とは身近なところや、自分が興味の向かないところにあったりすると。と、言うわけで、行きつけのバーで話を聞くんですよ。そこで、マスターからよく聞くんですよ。どこぞのゴブリン将軍が、また恋敗れて飲みにきたと」
「ちょっと待つっす!! そのバーって……」
「ウィード娯楽区の4丁目、裏手通りにある……」
「ぎゃーー!! なんであの穴場を知っているっすか!? 大将が趣味でこっそり作ったバーっすよ!? ラッツ姐さん、エリス姐さん、ミリー姐さんに頼んで作ったバーっすよ!?」
そのバーだが、酒場とは全く違う。
雰囲気を楽しむための、高級酒場? と言ったらいいだろうか。
当初はラッツ姐さん、エリス姐さんはこの話に難色を示していたとかなんとか。
あ、ミリーの姐さんは最初からナールジアさんと組んで乗り気だったっす。
そこで、大将がラッツ姐さん、エリス姐さんに頼み込んで、文字通り体を代価に、店舗を構えることができたっす。
無論、ノウハウは無いので、ネットで調べただけの知識でカクテルとか作ったっす。
でも、やっぱり元々の文明差が大きいんで、あっさり知る人ぞ知る、高級酒場、スノウバーとして穴場になったっす。
スノウは大将のユキを英語読みしただけっす。安直っすよね?
で、それを何でこのひっきーが知っているかって事っす!!
その事実を確かめるため、ひっきーことザーギスを睨むのだが……。
「いや、ユキから直接感想が欲しいと言われて、教えてもらいましたから」
「くっそー!!」
ですよねー!!
おいらだけなわけないっすよね!?
姐さんたちだって来てるのに、このザーギスに黙っている理由ないっすもんね!!
そして、不意に思ったのだ。
そういえば、この研究馬鹿もおらと同じでないか?
モテない同志のはずだ。
「聞いていいっすか?」
ここは、率直に尋ねるべきだろう。
ザーギスに浮ついた噂など聞いたことがない。
つまり、ほぼ完璧に、この男はモテないのだ!!
「……なんですか?」
少し疑う視線がおいらを貫く。
しかし、その疑いは自分が独り身だと耐えている視線と思えば、なんというか、親しみを持てるっす。
「ザーギスは独り身っすよね?」
おいらがそう言うと、ザーギスは少し泣きそうになる。
ああ、やっぱり同志だったっすね?
「……ええ、独り身で間違いないです」
「じゃあ!!」
俺が友よ!! と言いかけて、ザーギスの言葉は続く……。
「バツ2です」
「は?」
おいらの言語理解能力を超えてしまった。
バツ2?
……ああ、罰2。
セカンド。
つまり、2回怒られたと。
そら、四天王(笑)で失敗ばかりだから、リリアーナ魔王さんから色々厳罰が下ってもおかしくないっすね。
かってに妖精の里潰したし、挙句おいらたちに捕まったし。
それは大変だったっすね。
おいらもよくセラリアの姐さんとか、エリスの姐さんに怒られるっすよ。
セラリアの姐さんは剣での試合でもっと本気になれとかいうし。
おいらのバトルスタイルはガン&ソード。
つまりスタイリッシュな戦闘方法なんすが、セラリアの姐さんはガチガチな異世界ファンタジーを地で行くので、剣オンリーの試合を臨むっす。
セラリア姐さんも剣一筋だけあってか、剣の腕前はウィード随一といっていいっす。
おいらの剣は所詮、銃と組み合わせるのが前提の使い方なんで、ちょいと及ばないっす。
というわけで、そもそも剣オンリーの試合自体が公平とはいいがたく、姐さん本人はおいらのフルスペックを知っているので、おいらが負けると本気をだしていないと怒るっす。
ま、セラリアの姐さんも最近は銃器の有用性を理解して、使い方を覚え始めていますけど。
原因は無論、大将が手取り、足取り、腰取りで教えたから。
ちくしょー!!
次に、エリスの姐さん。
エリスの姐さんにどう怒られるのか?
これは旅館や一般の前ではまず見られないっすが、仕事モードのエリス姐さんは別物っす。
会計の鬼。
ウィード全体の予算を握っている部署のトップ。
別名、ウィードのLASTBOSS。
分かりやすくいうなれば、ラスボス。
ウィードの女王、セラリアの姐さんですらエリスの姐さんには頭が上がらない。
予算の、お金の使い道を文字通り、一銭まで記入して、提出し、認可を貰わなければいけないっす。
当然、ウィードの住人の血税なんですから、これぐらい当たり前なんすが。
当たり前なんすが……、実際予算を組んで、必死こいてつくった書類を駄目だしされて、やり直しと言われるあの苦痛。
一切の遠慮なし。
お金に強いラッツの姐さんとかは一発で書類通ってるみたいっすけど、ほかは結構何度も作り直しっす。
ミリーの姐さんや、トーリの姐さんも泣きついてたっす。
まあ、この2人は色々部下が多いので、作り直しも簡単なんすが。
で、例外は大将。
いつも思い付きで色々イベントやるんすが、この予算はエリスの姐さんが組んでくれるっす。
やっぱり、世の中愛情が優先されるっすね。
……そうか、愛が世界のゆがみっすね。
「……スティーブ? 聞いていますか? 私はバツ2です」
「はっ!?」
罰と聞いて、色々思い出してたっす。
しかし、今はザーギスを慰めなければ。
そう思って、口を開こうと……。
「意外かもしれませんが、既に2回結婚して、2回別れています」
「はい?」
バツって罰じゃなくて、離婚のバツ?
このザーギスが?
研究に没頭する、改造魔物を作り上げるマッドな変態が?
「うっそだー。お前みたいな変態が結婚できるわけないっす」
思わず本音が口から出てしまう。
「……スティーブからそう言われるのは心外の極みですが。まあ、そう言いたくなるのもわからないでもありません。でも、事実です」
「なん……だと」
このザーギスが既に別れているとはいえ、結婚していただと!?
いや、落ち着け。落ち着くんだ。
これは高度な心理戦だ。
おいらを動揺させて……、何をするつもりっすか?
「ま、でも、愛があったのか? そう聞かれると、私はちょっと困りますね」
「どういうことっすか?」
「そうですね。私の四天王の地位に対して、縁を組みたかったというべきでしょうか」
「……ああ」
それはそれで嫌っすね。
権力や立場のための婚姻っすか。
「一応、向こう側、女性側からの申し出でしてね。研究の足枷になるとわかっていたのですが……」
「受けたんすか?」
「ええ。私が断れば、その女性たち、一応それなりな良家の出ですが、役に立たない女はいらないですからね。全く、2度とも夜中に来られて、そのまま押し返しても傷物扱いされて、私の評判が落ちて、女性たちは家に居場所がなくなる」
「うわぁ……」
そんな結婚いやすぎるっす。
おいらが望むのは、大将みたいな、笑顔がたえないアットホームな家庭っす。
「ま、幸いなのは2人とも、信頼の置ける恋人がいたということですね」
「恋人っすか?」
「ええ。ですから、一度私の妻として迎え入れてから、別れるという形を取れたのですが。そうすれば、彼女たちに非はないですからね。私の責任ということになるわけです」
「……それで別れた奥さんたちは?」
「無事に、その恋人たちとよりを戻したというか、望んでいた結果になっていますよ。表の部分だけを知っている真黒なんかは、私のことを毛嫌いしていますけどね」
「あー、真黒さんがザーギスを嫌な目で見てた理由はそこっすね」
「ええ。とまあ、私はそういうことがあって、恋人や結婚にあんまり興味がないんですよ。スティーブにとっては贅沢な話でしょうが」
「……なんつーか。悪かったっす」
「いえ。私が言うのもなんですが、焦らなくてもきっといい人が見つかりますよ。焦ると、私が相手にしたような権力狙いっていう輩を身内に抱え込むことになりますから」
「忠告感謝するっす」
ああ、そう言えば、大将の結婚も権力狙いってわけじゃないっすけど、大将の能力目当てや、制限を目的に送り込まれてきた人もおおいっすからね。
そういう面倒を、全部なんとかしているんすよね。大将は。
ピー、ピー……。
そんな会話をしていると、コールからの呼び出しがかかる。
「と、すみません。呼び出しっす」
「何かあったんですかね? 私には連絡来ていませんが」
「さあ? おいらだけっすし、そこまで大事じゃないっすよ。どうせ、色々と都合のいいゴブリン部隊を送ってくれとかじゃないっすか?」
「……それは、ごくろうさまです」
で、コール相手は大将。
やっぱり、便利屋の増援ってところっすかね?
「もしもし?」
『お、スティーブ。ちょっと問題が起こった』
ほら、やっぱり。
「で、またゴブリン部隊を送れって話っすか? ウィードの方に残りがまだいるっすから、出撃の書類と予算はそっちで組んで……」
でも、その言葉は最後まで言えなかった。
だって……。
『現在、すぐに使用可能な陸戦兵器はどれだけある?』
「は?」
今日は、本当によく言語理解に障害が出る日だ。
なんか、大将から現代兵器の質問があった気がした。
『だから、陸戦兵器だ。無論、現代兵器メインでな』
「ちょっ、ど、ど、どういうことっすか!?」
意味が分からないっす!?
地球の現代兵器、陸戦兵器だけと言っても、この世界には過剰戦力っすよ!?
その使用可能を聞くってことは……。
『どういうことって、ウィードの陸戦戦力を集める事態になってるんだよ。ま、すぐに聞いてわかる内容じゃないから、確認とってくれ。現代兵器管理はお前の直轄だろ?』
「ええ、まあ。で、その事態って?」
『それは、後でウィードの会議室で説明する。一時間後に来てくれ』
「了解っす」
そしてコールが終わる。
「……ものすごく物騒な話が聞こえましたね」
「聞き間違えじゃないっすよ」
「ウィードの現代兵器を投入するほどの事態ですか……」
「とりあえず、使用可能な兵器の確認を取ってくるっす」
おいらがそう言って席を立つと、ザーギスも一緒に席を立つ。
「私も手伝いましょう。私も兵器の研究をしていますし、足手まといにはならないはずです。最悪、使用不可の兵器も動かす必要性もありそうですからね」
「……助かるっす」
さっきまでの、のんびりな空気は消えていたっす。
お互い、兵器の使用確認と聞いて、顔がこわばっているっす。
今まで一度となく、戦闘運用をほぼしなかった兵器群を、投入する事態なんすから。
「とりあえず、現代兵器運用部隊の招集をかけるっすから、ザーギスは兵器保管庫へ行って、使用可能な兵器の確認をお願いするっす。こっちからも連絡は先に入れときますから。場所はわかりますよね?」
「わかります。では、先に失礼します」
そう言ってザーギスは先にウィードへ転移をする。
『もしもし、なんですか隊長?』
コールの向こう側でのんびりしているブリットが映る。
ゴブリン隊のナンバー2.
こいつも現代兵器を運用できる貴重な戦力である。
「現代兵器運用部隊、全員招集をかけてくれっす。集まったら、使用可能な兵器の確認を急ぐっす。使用可能な全部の兵器の確認っすよ? 先にザーギスも行っているけど、確認はしっかりするっす」
『へ? ちょ、ちょっと!? マジですかそれ!?』
「冗談じゃないっす。大将から招集があったっす。ミスト将軍には適当に言い訳しといてくれっす」
『……了解。直ちに招集をかけ、武器の確認を行います』
あとは……、ミノちゃんを抜くのは不味いか、エナーリアで将軍としてお偉方から接待を受ける日々だし、ならジョンの奴だな。
『……んー。どうしたお前から連絡とか? またふられたか? そんなときはキュウリ喰え』
「キュウリ喰って、心が癒されるわけねーっす。どっかの野菜豚じゃねーんだし」
『お、喧嘩を売りにきたか?』
「いや、冗談はここまでっす。現代兵器運用部隊の全員に招集がかかったっす。使用可能な全兵器の確認を頼まれたっす」
『……了解。直ちにウィードに戻る。事情は?』
「まだっす。1時間後、情報をそろえてからってことになってるっす。とりあえずジョンは部隊の統括を頼むっす。ザーギス、ブリットが使用可能な兵器の確認を取っているっすから」
『わかった。フォローに回る』
流石、付き合いが長いだけあって、すぐに行動してくれる。
さて、おいらはパソコンで弾薬量の確認をしないといけないっすね。
ああ、1時間でどうにかなるかな?
さて、そこからはもうただひたすらに仕事に没頭するのみ。
冗談抜きで、武器の確認を怠ることは、自分の生死に直結するっすからね。
ここは、いつもは抜けているゴブリン隊も真面目にやるっす。
「隊長。乗車兵器の報告書です」
「こっちは携帯火器の報告書になります」
「部隊員に欠員無し。現在待機中だ」
そう言われて、3人から情報を受け取る。
まず、ブリットが行った乗車兵器の確認。
「……M1エイブラムスは3台整備中っすか」
「はい。この前の演習のあと大規模整備中です」
「うーん。ま、仕方ないっすね。砦攻略の時に姐さんたちに正式に認めてもらって、予算を組んで、配備を増やしたっすけど整備が追い付かないっすね」
「ですね。代わりに装甲車は全車使用可能です」
「そいつはよかったっす。と言ってもM20っすからね。二次大戦レベルのおもちゃが動いても……」
「それは、一応コスト面もありますし。輸送が主な目的でしたから」
「12.7mm弾は、ドラゴンクラスだと豆鉄砲っすからね」
「そこは携帯火器で補うしかないかと」
ブリットにそう言われて、携帯火器の方へ視線を送る。
「……特に問題のある携帯火器はないっすね。整備中も許容範囲と」
「ですね。問題は武器弾薬がどれぐらいあるかですね」
「そっちは問題ないっすよ。予算が増えたから、弾薬も増えているっす。ま、一度の任務で使い切れる量じゃないから、給弾がいるとして、別働で輸送隊を作らないといけないっすね」
「個人のアイテムボックスに入れればいいのでは? みんなできるでしょう?」
「ああ、ザーギスはしらないっすよね。現代兵器運用部隊では必要最低限の武器弾薬しか持ち歩かないっす。ま、多少アイテムボックスには放り込むっすけど」
「なぜですか?」
「鹵獲を恐れてっす。おいらたちが戦死した際は、武器弾薬を回収して、出撃に書類に照らし合わせて、武器の返還を行い、損失や盗難がないか調べるっす。そうしないと、この世界に銃器がバラまかれるっすからね」
「……なるほど。たんまり持っていけるのは、それはそれで問題なわけですか」
「そういうことっす。で、ジョン。部隊員の士気や体調は?」
「特に問題はない。平常通りだ。普通に任務に従事できる」
「そいつはよかった。さて、大将に報告にいくっす。……そうっすね。ブリットは部下たちのまとめを、おいらとジョンは大将の所で作戦の詳細を聞くっす。ザーギスはどうするっすか?」
「私も行きますよ。違う視点も要るでしょうし」
さて、報告を聞く限りは、普通に問題はないっす。
でも、大将が全員招集かけるってことはそれだけ厄介な出来事ってことっすよね。
そして、大将と合流して、報告書を提出したっす。
大将はすかさず書類に目を通して確認を取ってくる。
「よし。この書類通りで間違いないな?」
「ないっす」
「なら。出撃ゲートの防衛に使っている以外の兵器を集めて、待機。あ、武器弾薬はいつもの通り少し多いぐらいでな」
「了解。で、何があったか聞いていいっすか?」
「ああ。簡単に言うとな……」
そして大将が今回の招集のいきさつを話してくれる。
「アンノウンですか」
「そういうこと。どんな敵が出てくるかわからんから、陸戦兵器で固めた。まあ、空戦兵器は俺たちが生身で飛んで撃つ方が効率いいからな」
「ま、そうっすね。ドラゴン隊は下手すると的になるっすから」
「ああ。陸戦の場合は俺のダンジョンマスターのスキルで一気に障害物を取っ払って、撃ち合いに最適な状況を整える。空戦だと地形関係ないからな……」
「そういう意味でも陸戦ってことっすね」
「ま、何もなければそれはそれでありがたいんだけどな」
「聞いた話からすれば、何もないのもそれはそれで問題っすね」
「まあな。でも、このパターンだと。怪獣王クラスが出てもおかしくないからな」
「……陸自に任せません?」
「いねーよ。しかも怪獣王と交戦経験がある陸自はまた別の陸自だしな」
映像の中の陸自っすよね。
「小型の強力なタイプって可能性もあるからな。そっちも考慮に入れてくれ」
「了解。そっちはそっちで厄介っすね」
「とりあえず。明朝、予定通りアマンダとエオイドを連れて……、いや竜騎士アマンダの力を借りてクリーナの国に行く予定だ。それまでに準備を完了してくれ」
「わかりました。って、あの2人巻き込むんすか?」
「建前上巻き込まないといけないんだよ。ま、やばかったら真っ先に逃がすから。あの2人の退避後、出撃って感じだな」
「ありゃ。あの2人をウィードに逃げ込ませるきっすか?」
「まあ、出撃ゲートだけだしな。その後、すぐに学府に戻すつもりだし」
「なるほど。じゃ、準備に取り掛かるっす」
「おう。任せた」
そうして、おいらたちは大将と別れて準備に取り掛かる。
「しかし、本当に怪獣王みたいなのがいれば勝ち目はなさそうですけどね」
「ま、そん時はそん時だ」
「そうっすね。その時はできるだけ情報を集めて、生き残るっす」
「……2人とも思ったより落ち着いていますね」
「「そりゃ、大将とは付き合い長いから」」
なんだかんだ言っても、大将だから信頼できるっすよ。
さて、怪獣退治をする初めてのゴブリンになりますかね。
あー、剣と魔法の世界でおいら何やってるんだろう。
さあ、仕事モードのスティーブ達が発進!!
剣と魔法の世界に降り立つは……。
ただのゴブリンにあらず