表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
319/2171

第265堀:ローデイでの暗躍準備

ローデイでの暗躍準備




Side:ユキ



……とりあえず、昨日の、あのことは忘れよう。

そう、記憶から完全抹消だ。

あのデータもどこかに封印する。流石に消すと、心証悪そうだしな。

本音を言えばデータを完全消去したい。が、あのデータ1本だけとはとても思えないから下手に消すと後から巧妙にあのデータが放流されるだろう。

そうなれば、俺は引き籠りになる自信がある。

と、いかん、いかん。

今日は挨拶も終わって、本格的に拠点を探してローデイの行き来を楽にする必要がある。

ついでに、捕まえた聖剣使いたちを防衛が完璧なダンジョンに放り込まなければ、俺たちが安心して眠ることはできない。

まあ、アスリンの十魔獣が寝ずに見張っているみたいだが、それをずっとお願いするのも無理な話だ。

できなくはないだろうが、絶対隙ができる。

万が一逃がせば、聖剣使いたちはこちらに見つかるような行動はさけて、裏で地味に動くだろう。

今までの大々的な活動は、自分たちは誰にも負けないという、根拠のない自信から来ているので、俺たちというイレギュラーを知った今、裏で足が付きにくい活動に切り替えるはずだ。

そうなれば、追いかける俺たちも面倒なことになるので、絶対にそれは避けたい。

なので、拠点の確保が急務なのである。


「と、言うわけだ。今から親父さんと掛け合って拠点を探してくるよ」


俺は護衛の4人、サマンサを含むメンバーを連れて、アマンダの護衛と聖剣使い監視のメンバーにそう言う。


「うむ。こちらは任せておけ。と言っても、特にやることもないがのう」


デリーユはそう言って肩を竦める。

聖剣使いとの戦闘もなかったし、デリーユとしては物足りないんだろうな。


「デリーユ、気持ちはわかりますが平和が一番ですよ。これを機会にアマンダにも色々教えてはどうですか? 彼女自身も強くなくては困りますし。私もいるので回復には困りませんよ」


ルルアがいるし、確かに訓練には問題ないかな。即死しない限り。

まあ、ルルアの言う通りアマンダ本人が弱いままだと、それはそれで問題だ。

最悪、ワイバーンを国から取り上げられて、彼女はワイバーンのブリーダー、というか世話役にされる可能性もある。

……そんなことをすれば国が滅ぶけどな。主に、ワイちゃんのせいで。


「……そうですね。アマンダ、あなたにやる気があれば鍛えてあげられますけどどうしますか?」

「え? 私がですか?」

「はい。今のままではワイバーンだけを取り上げられる可能性があります。実際には不可能ですが、アマンダ自身が弱いと思われると、その分侮ってバカな行動を起こす人が増えます。それを払いのけられる力が今の貴女にありますか?」


エリスも俺と同じ結果に思い至ったのか、アマンダに訓練をしてみないかと言っている。

無理強いして身に付くものじゃないしな。

中途半端な覚悟は怪我の元ってやつだ。


「……魔術ぐらいなら」

「魔術だけではまず足りません。最悪、不意打ちで、複数の巨漢の男に組み敷かれる可能性もあります。その時、あなたは対処できますか?」

「……無理です。でも、教えてもらって身に付くんですか?」

「それはアマンダのやる気次第ですが、教えるデリーユやルルアはある分野では私以上の実力の持ち主ですよ。ちなみに、アマンダが可愛がっている4人もです」

「ふぇ!? アスリンちゃんたちもですか!?」

「「えっへん」」


アスリンとフィーリアが胸を張っている。

間違いでもないが、教えられるほど習熟もしてないんだよな。

ま、俺がそう思ったのと同時に、ラビリス、シェーラからげんこつを落とされる。


コン。


軽くではあるが殴られて、2人とも「ふみゅ」って声を出して頭を押さえる。


「もう、だめよ。そうやって学校の皆に教えられなかったでしょう?」

「そうですよ。怪我はたいしたことなかったからいいものの、大怪我するところだったんですから、安請け合いしてはいけません」

「「ごめんなさーい」」


2人は、ウィードの学校では好成績者だ。

無論、俺が、学校ができる前から教えたりしたこともあるだろうが。

それで、カースが魔術の授業を行った時に、魔力調整が上手くいかないほかの生徒たちへ補助を頼まれて、2人はやる気満々で手伝いをしたが、魔力調整が上手くいかないという問題を解決するために、魔力をボンと渡してしまったのだ。

分かりやすく言うのであれば、たき火を燃やす際、一般的な薪を使っていて、火が大きくならないからとダイナマイトを渡した感じだ。

結果はわかる通り、大失敗。魔力の調整が上手くいかない生徒に、制御しきれない魔力を渡して暴発。

大事には至らなかったが、多少火傷する生徒がいて、当時はルルアやエルジュが学校に飛んで行ったぐらいの事件である。

俺やカースとしては、魔術の暴発の危険性を生徒に伝えられたり、アスリンとフィーリアの感覚がまだ幼いというのが分かってよかったのだが、当然嫁さんたちには結構怒られた。

そういうことがあって、あの事件は不慣れな魔術の魔力暴発と言うことで表向き処理されたが、原因はアスリンたちの過剰魔力譲渡が原因だと、2人には教えて、それ以降は教える役や補助には回っていない。

戦闘訓練に至っても、この2人の先生は主にセラリアやデリーユという、ウィードでもトップ3に入る面々から訓練を受けているので、一般的な、というにはかけ離れている。

あと、個人技能という点では、アスリンはテイマースキル、フィーリアは鍛冶スキルがあるが、これを教えるのは更に難しい。

この個人技能に限っては、身内の誰も追いついてはいない。

と、こんな感じで教えられることは無いので、あまりそれを押し出して、安請け合いで教えたりすれば、後で厄介ごとになりかねない。

なので、2人が事故に巻き込まれないためにも、ちょっと厳しくしている。

今のエリスのセリフは、単にアマンダより強いですよって言っただけだが、アマンダがアスリンたちにこっそり教えてもらおうなどと思っても困るからな。

アマンダの実力はサマンサに及ばないものの、無詠唱もこなせる。

それを知っているアスリンとフィーリアは、自分たちが、威力が低くて使い勝手の悪いと思っている魔術や、自分たちが使えない大魔術を教える可能性もあるわけだ。

それが一般的にどの程度のレベルなのか知りもしないで。

まあ、今はその一般的なレベルをセラリアや、冒険者だったトーリ、リエル、モーブたちが教えていたりする。


「まあ、アスリンたちもアマンダより実力は上ではありますが、まだ子供なので、間違っても2人にこっそり教えてもらおうなんて思わないように。消し飛びますよ」


あ、エリスもちゃんと釘は刺したか。


「は、はい」


アマンダも手加減ができないと察したのか、首をがくがく上下に揺らす。

見た感じ、問題はなさそうだし、俺たちは公爵に拠点の話でもしに行くか。


「そっちのことは任せた。訓練もほどほどにな」

「はい。気を付けて」

「うむ。任された」

「行ってらっしゃいませ。旦那様」

「お兄ちゃん、お土産―!!」

「兄様、私も!!」

「もう2人とも。あ、私はお菓子がいいです」

「……シェーラもじゃない。私は髪飾りがいいわ」


うん。ちびっこ共はお土産な。

……これは他の場所にいる嫁さんたちにも買って帰らないと問題になるな。メモ帳に書いておこう。


「あの、俺はどうしたらいいですか?」


と、俺がメモにお土産と書き込んでいるときに、忘れ去られていいたエオイドが声を上げる。

ああ、エオイドは昨日親書を渡してお役御免だよな。

かといって、1人で帰るのは危険だし、意味ないし、アマンダとの件もあるし……。

さて、どうしよう?


「なあ、エリス……」

「ユキさん、エオイドは一緒に連れて行ってください。アマンダの訓練を見るより、街を見て回る方がいいでしょう。アマンダも自分が訓練しているとこは見られたくないでしょうし」

「え? 私はべつに?」

「……ボコボコにされるシーンを、そんなに見られたいのなら止めませんが」

「エオイド、ユキさんたちに迷惑かけるんじゃないわよ!!」

「わ、わかったよ」


凄い変わり身だったが、まあ、学長を完封したエリスと同じレベルの相手だから、ボコボコにされるというのは想像できたのだろう。

そんな姿、恋人には見られたくないわな。

ま、変わり身が早すぎて、エオイドが引いているけど。

……百年の恋も冷めないといいけどな。

そんなやり取りをして、公爵の政務室の前に行くと、執事さんが立っていて深々と会釈をする。


「お待ちしておりました」

「お待たせして申し訳ない」

「いえ、旦那様も一息ついたところで、奥様も先ほど来られました」

「そうですか、それならよかった。では、昨日の話の続きの件で」

「はい。承知いたしました」


執事さんはそう言うと、洗礼された動きで扉をノックし……。


「旦那様。ユキ様がいらっしゃっています。昨日の件の続きとのことです」

「構わない。入ってもらってくれ」

「はい」


そんなやり取りがあって、扉が開かれ中に俺たちは入る。


「やあ、ユキ殿。いや、義息子よ。と言うべきか?」

「あなた、何をいっているのですか。ユキ殿の立場を考えれば私たちがへりくだるのが当然ですよ?」

「いえ、普通に息子で構いませんよ。義父さん、義母さん」


俺がそういうと、親父さんは満面の笑みを浮かべ、ヴィーユさんもとりあえずたしなめただけなのか、同じように綺麗な微笑みを浮かべている。


「ほら、ヴィーユ。息子もこういっている」

「はぁ、煩わしかったら言ってくださいね。遠慮せずに、もう私の義息子でもあるのですから」

「ええ。その時は遠慮なく義母さんに言います」

「遠慮がないな。だが、そこがいい!!」


この家族は貴族でありながら、かなり気持ちのいい人たちだ。

未だあっていない、長男や長女もこの分だと、心配はなさそうかな?


「と、すみません。仕事中に押し掛けたのは私たちなのですから、すぐに本題を言うべきですね」

「何を言っている。既に私たちは家族だ。仕事など、片手間でやるから、用件を言ってくれ」

「ええ。夫の言う通りよ。大事でないのに、仕事の方を優先する大黒柱など、家族を持つ資格はありませんから。遠慮せずに言っていいのよ」

「では遠慮なく言わせてもらいます」


俺たちはソファーに座って、執事さんがお茶を出す前に、すぐに本題に入る。


「昨日の、ビデオカメラの件です」

「ああ、あのビデオカメラか。あんな伝説級の魔道具のことは、無論口外したりしないよ。中には義息子と娘の素晴らしい愛が詰まっているのだから」


こふっ。


クソ、こいつら俺を未だに攻めるか。

いや、違うか。勘違いなんだ。

公爵たちはビデオカメラが唯一無二でそうそう手に入るとは思っていないから、その秘匿の話だと思っている。

こっちは、そのビデオカメラを大量に譲ろうと思っているのだ。色々条件付きで。

だから、双方の考えが最初からずれているので、無理やり話を押し込まないと、永遠とあの告白シーンの話になってしまう。

それは、俺の精神をガリガリ削る行為だと気が付いてくれ。


「そうだ、ヴィーユ。あのシーンを演劇で公演するのはどうだろうか?」

「確かに、あの不安でありながらも愛を貫くシーンは、貴族のみならず、庶子にも受けると思うわ」


や、やめてくれ。

他人のラブストーリーは片手間で聞いてどうでもいいが、自分が原作とかやめてくれ。

マジでやめてくれ。

いや、精神攻撃で固まっている暇があったら、さっさと本題をねじ込むんだ。

そのついでに、演劇の話も潰してやる。


「話はうれしいですが、ちょっと私が言いたいことは違います」

「そうなのか? と、堅苦しい言い方はやめてくれ、何せ家族だからな」

「……では失礼して。簡単に言うと、ビデオカメラは大量に手に入れることが、作ることができる。それで、どっか空いている土地くれない? そこを、作業場兼、保管庫みたいにするから」

「「「は?」」」


その言葉で親父さんやヴィーユ、そして執事さんも固まった。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。土地や屋敷なら無論用意してやるつもりだった。しかし、ビデオカメラが大量に作れる? そ、それは本当か!?」

「本当だよ。ちょっと制作方法が特殊なので誰にも教えるわけにはいかないけど」

「それは当然だ。しかし、そう簡単に私たちに教えてよかったのか? これは一財産という規模ではないぞ? これはそれだけ、凄い物なのだぞ?」


親父さんはビデオカメラをもって言っている。


「逆ですよ。俺たちは今まで傭兵団として動いてきた。これではこんな大発明を売り歩くわけにはいかない。すぐに色々な横槍が入る」

「……確かに。これほどの物。よからぬことを考える者は直ぐに飛びつく、周りは敵だらけになるな」

「だから、信頼のおける親父に話を持ってきたんだ。まあ、色々問題に巻き込むような形になって申し訳ないけど」


俺がそう言うと、親父さんは机をバンッと叩いて立ち上がる。

ありゃ、流石に怒ったか? まあ、それだけオーパーツなんだよな、ビデオカメラはこの文明において。


「構わん!! 問題など私が薙ぎ払ってくれよう!! 息子が私を信頼して、こんな重要なことを言ってくれたのだ。私がそれに答えねば男が廃る!! 構わんな、ヴィーユ」

「ええ。家族として当然。そして、お家としても、このチャンスを不意にするなら存在する意味はありません。ヒューズ公爵家が全力でユキたちを守りましょう」


……暑い。いや熱いか。

嬉しいんだけど、なんでこんなに熱血なの?


「しかし、ユキ。わざわざ危険を冒して、別の場所で作る理由はないのではないか?」

「そうですね。この公爵の家で作れば、警備は万全ですし、不審者が近寄ればすぐにわかりますよ?」


でも、流石に公爵なのか、すぐに俺の話の不自然な点を見つけて質問するあたり、凄いわ。

ま、一々そこら辺から説明する手間が省けて楽なんだが。


「そこが狙いだよ」

「そこ?」

「わざと近寄りやすくするということ?」

「そう。ビデオカメラの能力は知ってるよな?」

「ああ。初めて見たときは驚いたが、こうやって、このボタンを押せば、今の風景を記憶できる……そうか!!」

「なるほど。不逞の輩をこのビデオカメラで動かぬ証拠として捕えることができるのね」


うんうん、頭の回転がスゲー速い。


「どうせ、いつかはヒュージ公爵家がビデオカメラの出所とばれる。そして、それをよく思わないものも出てくる。だろ?」

「なるほど。やはりユキは今まで傭兵団をまとめていただけのことはある」

「……これで、我が家にちょっかいを出していた所も、まとめて借りを返せますね。動かぬ証拠を用意できるのですから」


おお、サマンサの母さん、美人だけど怒ると凄みがすげー。

オーラ出てるよ。いや、目には見えないけど。


「まあ、そんな理由もあって、俺たちがメインで使うより、親父さんたちの方が、上手く使えるんじゃないかと思ってな。いくら名のある傭兵団とはいえ、コネがないし、ビデオカメラ自体もうたがわれる」


貴族は証拠があっても相手の立場が低ければもみ消そうとするからな。

いや、これは地球でも同じか、問題のもみ消しはお偉いさんの得意技だしな。

どこかで大爆発を起こした某国は、無駄に情報封鎖とかしてるしな。

どう見ても、あの爆発で死者100とかうそだろ。1000単位だっての。


「……任せておけ。言い訳などさせぬように、ビデオカメラの説明を私から陛下へしておく」

「ええ。陛下や宰相が事実を知れば、あとは言い訳などできませんからね。あなた、さっそく陛下への謁見準備を。さっさとごみを駆除します」

「そこら辺は任せるけど拠点にするのに、どこかいい場所ある?」


ここら辺で話を切らないと終わりそうにないしな。


「おっとすまん。まずは場所を用意しないと始まらんな」

「少し、興奮しすぎましたね。とりあえず、サマンサから連絡を受けて、住まいの場所は選別してあるわ。それから製作場所として使えて、見張りやすい場所といえば……、3か所ぐらいね」

「じゃ、あとで見に行って考えるよ。場所は?」

「いや、それは私たちも付き合う」

「そうですね。夫婦だけの話であれば、口出すつもりはありませんでしたが、ビデオカメラの生産となれば、私たち全体の問題でもありますから。いいわね、サマンサ」

「はい。心得ています」


もう、拠点の場所は確保できたも同然だな。

じゃ、あとはアマンダの件だな。


「で、これが一応最後の話で、竜騎士、アマンダのことはどう扱いたい? アマンダはサマンサと同じ学友でそれなりに縁がある。無論、俺たちも学友の立場ではある」


そう、サマンサとの結婚話やビデオカメラの話は一応着地点が見つかったが、問題は今の所は学府側の戦力である、竜騎士アマンダを公爵としてはどう扱いたいかを聞いておかなければいけない。

万が一、ローデイに取り込むように動くなら、それなりに牽制しないといけない。

竜騎士アマンダという移動力は俺たちとしても欲しいし、学府に席を置いてもらえれば、他国へ向かうには一番便利がいい。


「その心配はしなくていい。我が公爵家は竜騎士アマンダに手出しはしない。無論、横恋慕もだ。逆に竜騎士アマンダに協力して友好な関係を築きたいと思っている」

「……横恋慕ってことは、前からアマンダのことはご存じで?」

「見れば分かりますよ。エオイドと言う少年だけに見せる花の様な笑顔。それを引き裂くなど無粋でしかありませんからね。ま、怒りを買えば炎の海に沈みかねませんし」


……ワイちゃんの能力なら出来るから怖いわ。

と、俺がそんなことを考えていると、親父さんがエオイドが持っていた親書を机から取り出してきた。


「ヴィーユの言う通り、竜騎士の怒りを買うことも理由の1つではあるが、こっちが1番の原因だね」


そして、その親書の中身を俺に見せてくれた。

親書は3枚。

1つは魔物大氾濫の予兆。

1つはサマンサの成績や評価、そして結婚相手の俺の話。

最後の1つは竜騎士アマンダについて。

しかし、それにはたった一行しか書かれていない。


『竜騎士アマンダとエオイドに手出したら、ぶっ潰す』


……うん。

分かりやすいぐらいの、学府の戦力だーって意思表示やな。

なるほど。ポープリの今までの実績からこういう我儘を通しやすいのか……。


「ポープリ学長からの直々の宣言だ。これで、竜騎士アマンダを害するような行動をとれば、国として危うい。……まあ、ユキは、どこかの馬鹿貴族が、アマンダとエオイドを引き裂いたり、移動手段を奪われるのを心配しているのだろうが、殆どその可能性はない」

「なぜ?」

「まあ、竜騎士という手札は魅力的だが、それが暴れた場合、被害の想像がつかない。元々学府自体、制御不能な天才を押し込めるという側面があるのは知っているか?」

「ああ、そういうことか。つまり、手元に置くと痛い目に遭いそうだから、学長の案を飲んで、都合のいい時に派遣してもらえればってことか」

「そういうことだ。竜騎士を国が取り込んだとしても、そんな突出戦力は扱い辛いし、今まで現場で働いている者たちにとってもあまり嬉しくない。上に至っては今の立場から蹴落とされる心配もあるからな。国のトップの者たちは序列がいきなり変わったり、仕来りの横紙破りをそうそう認めるわけにもいかん。しばらく内部が荒れる。確実に」

「なるほどな。手札に加えるには、色々面倒か。普通に考えればそうだな」


日本の内閣に、いきなり変な部署作って、今まで全く関係の無かった外国人を入れるようなものか。

……日本だと絶対不可能だな。外人に対する理解度はあまり高いとはいえないし、米国みたいに数年住めば国籍を発行するという柔軟な発想はない。

まあ、数年住めば国籍発行とかすれば、もうそれはそれで大問題になるってわかるんだけどな。

お隣の某国とか大量に今ですらいるし……。

とりあえず、国は大変ってことだ。

その分、多国籍の移住で作ったウィードは、そこら辺、楽でいいわ。

維持するべき文化もないし、表向き武力で侵攻できない。裏から政治を操るしかないのだが、それには選挙を潜り抜ける必要もある。

だけど、それはどこの国も考え付くし、足の引っ張り合い、更に特定の国に譲歩するようなことを言えば、すぐに裏の繋がりが懸念される。

まあ、10年、20年後はわからんけどな。

その頃は俺たちは隠居だしー。その時は若者たちが頑張ってくれ。


「そう言う事だ。竜騎士アマンダや、その周辺の人達に迷惑をかけようとする馬鹿は少なからずでるだろうが、それは即座に処罰される。どこの国も学府と竜騎士を敵に回したくないからな」

「じゃ、ビデオカメラをアマンダに持たせて、証拠を撮らせればすぐに対応できるか」

「できる。と言うか、そこが狙いか」

「こっちも竜騎士とは仲良くやりたいですし、ビデオカメラの有用性を示せるのですね。私たちが内輪もめで有用性を示しても、権力争いの延長ですから、陛下も色々考えなければいけません。しかし、竜騎士、学府の友好の為ならあっという間にバッサリやりますね」

「……ふむ。なら、竜騎士アマンダへ面会申請を通して、さっさと証拠を集めるか」

「ええ。余計なちょっかいを出している貴族もいますし、竜騎士アマンダには事前に話を通して……」


さて、これでローデイでの地盤はほぼ安定したかな。

アマンダには少し馬鹿貴族の相手をしてもらうが、それで終わりだ。

……相手がな。



あとは、行方不明の聖剣使い2名か。

たーちゃんたちが追っているのに未だ見つからない。

恐らく転移で直接とんだか……。

聖剣使いたちの自白が本当かわからんが、学府はともかく、クリーナの国が心配だな。





さあ、必要な処置は終わりました。

次はクリーナの所へ結婚挨拶をしに行きましょうね?

ユキの精神は持つのか!?


え、聖剣使い? なんですかそれ?

そんな事より、国相手の方が大変なのよ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] サマンサが初登場時(第244堀)に「フレディ公爵家が娘・・・」となっていた。しかし度々「ヒュージ公爵」という単語が出ており、この回ではサマンサの母から「ヒュージ公爵家」という単語が出て…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ