第261堀:勝敗は決した。色んな意味で。
今回は特に前書きはない。
え、なら書くなって?
いや、なんとなく書きたいじゃん?
では、本編どうぞ。
勝敗は決した。色んな意味で。
Side:セラリア
「まったく、夫にも困ったものだわ」
『ええ、本当に』
「良くも悪くも1人で、現存戦力でどうにかしようとするのよね」
『有能なだけに、それがこなせてしまうのでたちが悪いです』
私はエリスとのんびり会話をしている。
無論、夫の話だ。
「今回のクリーナは運がいい方よ。リーアが連れて来て、私たちに紹介しなければ、そのまま放逐よ? あんな優秀な人材は抱え込むべきなのに」
『ユキさんとしては、そんな理由で妻を増やしたくないのでしょうけど』
「年頃の娘を仲間に引き入れているという事態だけで、十分不味いのだけどね。普通ならお手付きになってると思われるわ」
『そうですよねー』
「男の協力者ならともかく、女性相手に指定保護だけでついてこいって言うのは無責任よ。ジェシカのこと覚えてるでしょう? 仲間に引き入れて、そのまま放置。ジェシカは現状を理解して維持するだけで精一杯」
『あのままだと、気が付けば老衰ですよね』
「私たちが蹴飛ばして、ジェシカの嫁入りをさせたからいいけど。あのままだと、ジェシカの女人生は無くなってたわよ」
『ユキさんは、恋して結婚というのを重視しますから』
「はぁ、ロマンチストなのがここで邪魔なのよね。こっちに巻き込む時点で、すでに普通の人生は歩めないのだし、ある意味責任を取るという意味なんだけどね。というか、役に立たない嫁なんて嫁入り認めないし」
『当然ですね』
「クリーナの立場はそこまで強くないけど、魔術に対する知識欲、そして、絶対夫を最後まで裏切らないという意思が見えたから嫁入りを認めたのよ。エリスだってそうでしょう?」
『はい。ただユキさんの権力や財力に惹かれただけの小物なら追い返してますね』
「死刑よ。私の夫を食い物のように見るような奴は。指定保護をすればいいって安易な考えもダメよね。指定保護が万が一外れて、離反されたらたまったものじゃないわ。愛と指定保護、この二重がベストよね」
首輪は何重にもかけておくべき。
まあ、私たち本人はこれを首輪なんて思っていないけどね。
『立場が強い権力者相手は、婚姻がベストなんですよね。特にサマンサ』
「ええ。離反される理由は想像がつきやすい。モーブたちとかザーギスは離反するメリットは殆どないけど、権力者は、夫を敵に回すメリットを必ず見つける。というか、指定保護だけかけて、放置って言うのが女性相手には不味いのよ。特に貴族社会は、お手付きにしたのに無下に扱っているといわれかねない。そこを突かれて面倒なことになりかねないのよね」
『ウィードの大陸は有力な元お姫様たちが周りを固めていますから、問題はないですけど、こちらの新大陸はジェシカだけですからね』
「そう、そこが問題なのよ。私たちの権力が意味をなさないから、夫は変な女に言い寄られて、食い物にされる可能性があるのよ。それの矢除けに丁度いいでしょう? サマンサは」
『お家もローデイの公爵ですし、それなりに名が通っています。そして、何より性格はまっすぐですし、好感がもてます。ユキさんが嫌いなのであれば、無理に結婚を勧めたりしないのですが……』
「……私の聞いた限り、サマンサは夫に惚れていると思うのよねー。エリスはどう? 実際に見てみて?」
『惚れていますね。ユキさんが股を開けといえば、喜んで開くと思います』
「……そこまで?」
『そこまでです』
「なら、相手の思いも汲み取れて、裏切る心配もない。そして、都合のいいことに、問題のローデイの関係者。万々歳の婚姻なのに。あの夫ときたら……」
『ですね。まあ、今回は告白をしろって脅していますし、サマンサも断ることもないでしょうし、大丈夫でしょう』
「そうね」
あそこまで言ったんだし、流石にヘタレたりしないでしょう。
『それはそうと、ポープリ学長やララ副学長はどう思います?』
「うーん、あの2人は結婚自体に文句はいわないだろうけど、義務って感じが強いのよね。あの2人を夫と結婚させたら、もう二度と、夫は私たち以外と結婚しないって言うわよ? 愛がない結婚なんて針のむしろだし、私たちも見ていてつらいわ」
『ですよねー。でも、そう言って、私たちに依存してくれるのも嬉しかったり……』
「ああ、それはわかるわ。夫を私たちの愛と肉体で溺れさせたいと常々思うもの。というか、今までの成果からして、爛れた日々を送ってもルナは文句言わないと思うのよねー」
『まあ、ウィードやら、こっちのこともありますし、当分は先のことでしょうけど』
「そうねー。その時が来れば子供たちも大きくなっているでしょうし、ウィード関連は全部丸投げで、夫とのんびり……」
と、そんな風に、私とエリスの話が結婚関連の話からずれたとき、トーリが部屋に入ってきた。
「エリス。今いいかな?」
「どうしたの?」
『トーリ?』
「あ、セラリアもいたんだ。丁度いいや。さっきね、サーサリさん、サマンサの従者が訪ねてきたんだけど……」
そして、トーリから、サマンサがべた惚れなのを聞いて、ユキからの告白を見るため、サマンサからの告白を止めたということを聞いた。
『よくやったわ!!』
私は思わずそう叫んだ。
これはレアなシーンなんだもの。
相思相愛、昔の私たちの結婚式前、あのとろけそうな告白を見れるなんて。
垂涎モノだわ。
「ですね。ユキさんも言っていました。結婚や告白は男から申し込むものだって」
『ええ、確かに言っていたわ。うん、夫の意思を汲んでいるのだから、これは私たちの娯楽のためではないの。夫が男らしい所をみせるための舞台を整えているのよ!! ほかの皆に連絡を取りなさい。準備が終わった、動けるものは録画の準備よ!!』
「はい、わかりました」
「えーと、サマンサとはユキさんからの告白云々の説明で今日の授業後会うことになってるけど、皆はどうする?」
『それは私も参加するわ。サマンサを見極めるいい状況だし』
「そうですね。問題はないとは思っていますけど、ほかの皆にも顔合わせしておいた方がいいでしょう」
『あ、トーリ。夫に今日は告白しなくていいって言って。まあ、あの人が即日告白するとは思えないけど』
どうせ明後日の出発直前まで言わないだろうし。
「わかった。ユキさんにはそう言っておくね」
トーリはそう言って、すぐに部屋を出ていく。
しかし、これは面白くなってきた。
ここまで忙しいのですもの、こういう娯楽はあっていいわよね?
夫のカッコいい姿は何度でも見たいもの。
ま、サマンサと顔を合わせるまで、時間はあるし、子供たちの世話をしつつ、仕事を片付けますか……。
……で、いざ子供の世話や仕事を始めると、時間は過ぎるのは早いもので、既にサマンサと合う時間が迫っていた。
「あら、もうこんな時間。サクラ、お母さんちょっと新しいお母さんと会ってくるわね」
「あう?」
「おっぱいは大きいみたいだから、一杯飲めるかもしれないわ」
「あい!!」
もう、やっぱりサクラは可愛いわ。
このまま連れて行って、この愛らしさを見せびらかしたい。
でも、それは危ないし、できるわけがない。
仕方ないので、キルエにサクラを預ける。
「キルエ、サクラや子供たちを頼んだわ」
「はい。お任せください。私の代わりにサマンサ様の見極めお願いいたします」
「任せてちょうだい」
そして、転移を使って、学府の部屋に行くと既にサマンサは来ていたみたいで、ほかの妻たちにぺこぺこと頭を下げていた。
噂通りに、ちゃんと礼儀はわきまえているじゃない。
そして、サマンサは私を見つけ従者を連れて、私の前に出て膝をつく。
「あら? どうしたのかしら?」
「セ、セラリア様でお間違いないでしょうか」
ん?
この反応、誰かが私の立場を伝えたのかしら?
「ええ、そうよ。もしかして、私が何者なのか聞いたのかしら?」
「は、はい。某国の女王陛下だと」
「そう。で、どうかしら? 私の立場、権力を知ってなお、夫を欲するかしら?」
「いえ、私はユキ様に尽くしたいのです。セラリア様のお邪魔をしようとは思いません。ですから、どうかユキ様の側に置いていただければ……」
「そんな、建前の言葉を聞きたいのではないわ。サマンサ。あなた夫のことが好き?」
私は殺気をたたきつけて、サマンサと従者を威嚇する。
さあ、どうでるかしら?
ここで怯えて引くなら、クリーナ以下だし、夫には必要ないわ。
周りの皆もわかっているようで、黙って事態の推移を見守っている。
ほんの少しサマンサが震え、その後大きな声が部屋に響く。
「愛しております!! あの人のためならこの命捨てても構いません!! どうか、末席に加えていただきますよう!! どうか!!」
「ローデイと縁を切れと言われるかもしれないわよ?」
「そんなことは百も承知です。私はユキ様に未来を見たのです。きっとあの人とならどこまでもいけると」
ああ、なるほど。
私がなんでサマンサに興味が惹かれたのかよく分かった。
「ふふふっ」
「?」
つい、口から笑いが漏れる。
それを見たサマンサは不安そうに首を傾げている。
「ごめんなさい。決してサマンサを侮辱しているわけではないのよ。そうね、かつて夫に同じような未来を見て、ついて行った女がいたのよ。今までの停滞や、不安をぶち壊してくれそうな夫に、王女という立場を捨てて、ついて行った女がね」
そう、そんな女がいた。
その女は王女でありながら、剣を振り回し、それこそ国を守る方法だと必死に頑張ってきた。
でも、その頑張りもむなしく、国はどんどん良くない方へ傾いていく。
そんなとき、変な男が現れたのだ。
あっという間に、その男は女の考えもつかない方法で問題を解決した。
そして、女はその男の作る未来が見てみたくなった。
結果、女は小国なのに、大国に勝るとも劣らない、発言力と財力を兼ね備えた国の女王になってしまっているが。
「それは、もしや……」
サマンサも察しがついたのだろう。
その女が私であることに。
さて、もうここにきて、問答は不要。
「ええ、私のことよ。そしてサマンサ。あなたの嫁入りを認めるわ。あなたの夫を見る目は間違いでないと、私が保証する」
「あ、ありがとうございます!! では、宣言通りにまずは家と縁を切り……」
「それはいいわ。今の夫には横のつながりも必要。それが分からないあなたでもないわよね?」
「はい。……しかし、私などの立場でお役に立てるのでしょうか?」
「いえ、寧ろ絶対に夫には必要なの」
「私が……? クリーナみたいに魔術が秀でているわけでもないのに? ユキ様みたいにジルバ、エナーリア王族の血筋や、セラリア様の夫でもないのに?」
「……これから言うことで、その意味が分かると思うわ。でも、これを聞いたら引き返せない。なかったことにはできない。いいかしら?」
「何度もそのような質問は要りません!! 私は最後まで、ユキ様について行きます!!」
「その覚悟やよし」
サマンサの覚悟を再確認し、今までの経緯と、ローデイに迫る危機に関して簡単に説明をする。
まあ、本格的に説明をすれば一か月はいるしね。
「……というわけで、かつての勇者。聖剣使いがローデイを、いや人類を滅ぼさんとしているの」
「……そんな。ユキ様はそんな果てしない使命を背負っていたなんて」
「……なるほど。それでお嬢様のお立場が必要なわけですね」
「というわけで、協力してもらえるかしら?」
「はい。喜んで、というか、寧ろ我が祖国のために動いてくださり感謝の言葉もございません」
「……しかし、このような状況で、ユキ様からの告白を待つのはいかがなものでしょうか?」
「そ、そうですわね。私から告白し、傍に置いてもらうように懇願するべきでは?」
「あー、それは駄目。夫は男が女性をリードするべし、って思っているのよ。夫を立てることも覚えてあげて。まあ、すぐに出立できる準備はしているし、そこまで心配しないで」
「わかりました。ユキ様に相応しい妻になってみます!!」
「ふふ、期待しているわ。と、そういえばサーサリはどうするのかしら? キルエみたいに、ユキに嫁ぐ?」
「いえ、それはお断りいたします」
「え、サーサリ!? セ、セラリア様申し訳ありません。普段はこのようなことは……!?」
あら、珍しい。
恐縮することなく断るとか、ほかに思い人でもいるのかしら?
「ご厚意とても感謝いたします。ですが、どうもユキ様は私に合わないと思うのです」
「どうしてかしら?」
「その、私は駄目な男の方がそそられまして……。ユキ様はその、完璧すぎて……」
「「「あー」」」
凄い納得のできる理由だわ。
夫が駄目なのは女関連であって、ほかはそつなくこなすから、夫を支えようと思う妻としては不満なのよね。
私たちで不満が多少でるんだから、駄目な男の方がいいって公言するサーサリには合わないだろう。
「仕える主としては全く不満はありません。ですので、その、ウィードに拠点を移した際、彼氏さがしの許可をいただければ……」
「それは構わないわ。でも、夫や私たちに迷惑をかけるような男に引っかかっては駄目よ?」
「はい。それは大丈夫です。性格的に駄目な男が好みというわけではなく、こう磨きがいがあるというか、育てがいがあるというか……」
「……なるほど。自分好みの男を育て上げたいってやつかしら?」
「はい!!」
「というか、その話はすごく興味があるわ。実際に始めたら話を聞かせてくれるかしら?」
「もちろんです。理解ある奥様で嬉しいです」
そう言って、私とサーサリは硬く握手をする。
うわ、サマンサよりサーサリの方が面白いかもしれないわ。
「あ、あのー。では私はこれからユキ様の告白を待つということでいいのでしょうか?」
「え? ええ、そうね。こっちから夫の告白のタイミングは探って教えるから、あなたは一番綺麗と思う姿でいなさい。片想いの男から告白されるっていうのは一生で一度あるかないかだし」
「はい、ありがとうございます!!」
さて、後は夫に確認を取るだけね。
サマンサの期待している顔をみてると、夢を壊さないように、それとなく、告白の仕方を一緒に考えてあげるべきね。
Side:ユキ
なんか、告白をやめて、ローデイを見に行きたい作戦をセラリアに伝えたら、ゲンコツを落とされた。
ついでにクリーナも含めて全員の視線が冷たかった。
なんでや?
一緒に考えたタイキ君もアイリさんから睨まれているし、一体なにがいけなかったんだ?
どちらも傷つかない完璧な作戦のはずなのに!!
「はぁ。このことに関しては、あなたに任せた私がバカだったわ。本当に前もって確認して正解ね」
「な、なんでだよ。結婚しなくても……」
「結婚しなくてもいいなんて言わないでよ? あの子を足掛かりに、色々やるつもりでしょう?」
「そりゃ、な」
「そうやって半端に手をだして、ほったらかしとか、あの子嫁の貰い手なくなるわよ?
いいの? あなたの目的のために、一人の少女が生涯寂しくすごしても? 最初のジェシカのように、使い潰すつもり?」
「……あーもう。わかったよ!! 告白はする!! だけど、サマンサが断ったらそれまでだからな!! で、断られたあとは、サマンサに協力してもらうだけにするからな? ちゃんと、サマンサが結婚できるようにフォローもする。いいな?」
俺がそういうと、嫁さんみんなが笑顔になる。
なんだよ?
告白が成功するとでも思ってるのか?
いや、違うか。
告白するということが重要なのか? まあ、俺が嫁さんたちの約束を破って、安全策に走ろうとしていたのは事実だし。
まあ、しゃーないか。
サマンサが傷ついたら、嫁さんたち全員でフォローさせよう。
「で、告白って言ってもな。ああいうお嬢様にはどんな告白がいいんだろうな?」
俺がそう呟くと……。
「お前が欲しい。じゃないかしら?」
「激しいキスをいきなりして、その後に愛しているとかは?」
「そうじゃのう。お姫様抱っこをして愛をささやくかのう?」
「優しく抱きしめて、そのまま布団に押し倒して、大好きだ。は?」
「……」
「……」
「……」
出てくる出てくる。
俺が絶対できないような、劇中でしかやらないような告白のリクエスト。
やべ、なんか気が遠くなってきた。
なんで、俺がそんなクサいセリフを言わないといけないんだ?
というか、もう告白どころか、結婚してくれってレベルになってね?
あれ? これってお付き合いのための告白だよな?
結婚のためのプロポーズの告白じゃないよね?
そうだ。タイキ君がいる。
ここでタイキ君と一緒に嘆願するんだ。
2人でまた、告白を考えると!!
一縷の望みをかけ、俺はタイキ君に視線を送る。
タイキ君も気が付いていたが、現実は非情であった。
そのアイコンタクトのやり取りが以下である。
ワレ、エングンヲ、モトム。
ヨジョウセンリョク、ナシ、キカンノブウンヲイノル。
なん……だと?
俺がタイキ君の返事を聞いて驚いていると、またアイリに首根っこを掴まれて、サメの映画のようにタイキ君は消えて行った。
なんてこった。俺は、どうすればいい!?
「さて、あなた? もう、時間もないのだから、明日には告白、いえプロポーズしましょうね?」
「ちょっとまて、告白だろ? お付き合いしてくださいってだけだろ?」
「あ? 貴族社会でお付き合いしてくださいって言うのは、結婚してくださいと同じことだとわかってるわよね? 恋愛結婚なんてめったにないのを知らないわけないでしょう? まさか、サマンサを交渉相手に立てるだけで済むなんて思ってないわよね? そんな事すれば、向こうの家はますますサマンサを気に入ってくれてると思って、サマンサを押してくるわよ? それでサマンサは私たちへの外交の切り札で、永遠に独り身よ? なに? 最初のジェシカみたいにするつもり?」
「……はい。プロポーズしてきます」
嫁には勝てなかったよ。
はぁ、こういうところは時代の違いなんだろうね。
未だに、慣れていないが、やっぱりセラリアの言う通り、貴族社会だと結婚でもしない限り、サマンサの立場は危ういんだよなー。
ああ、そうか、一応結婚して、ウィード連れて来ていい人がいればその相手と一緒にさせればいいか?
ごまかしなんてどうにでもできるし。
しかし、嫁さんたち、なんで告白が成功すること前提なのかねー?
ああ、胃が痛くなってきた。
……聖剣使いをどうこうするほうが楽だわ。きっと。
side:ニーナ 聖剣使い
日が沈み始める、薄暗い森の中。私たちは未だにその場にいた。
「ねえ、リーダー。まだローデイにはいかないんですか?」
「我慢しろ。これも予定通り。前に話しただろう?」
「うーん。分かってますけど、やっぱり退屈ですよ。あ、カーヤ狐耳触らせて」
私は暇で死にそうなので、仲間の狐耳を触って荒んだ心を癒そうと思ったのだ。
「もう。仕方ないわね」
「ぬふふふ。あー、カーヤの耳は相変わらず気持ちいいよ」
「どうも」
「ふふっ、私たちはこうやって、人だろうが亜人だろうが仲が良いのにな……」
リーダーは私とカーヤのやり取りを見て微笑み、そして悲しそうにする。
「きっと、良くなりますよ」
「はい。もうすぐです」
私もカーヤもこの大規模な作戦の後に訪れる幸せな未来を夢見る。
誰もが仲良く暮らせる。幸せな世界を。
「……そうだな。その為に、この場に5人も聖剣使いを集めたんだ」
そう、今この場には、リーダー、私、カーヤ以外にもあと2人聖剣使いが集まっている。
スィーア、キシュアは捕まっていて多少不足しているが、残り2人は別行動で他の場所に行っている。
そして、この場になぜそんな過剰戦力を集めたのかと言うと……。
「私たちの最大の障害となりうる、あの傭兵団をこの場で殺す。恐らく、ポープリが何らかの方法で無理矢理ローデイへ向かわせるはずだ。相手は私たちがローデイを攻めていると思って道中はそこまで警戒しない筈、そこを一気に狙って潰す」
これは、私たちの敵、傭兵団の主力をここで潰すため。
ここで主力をつぶせば、残りの傭兵団はどうにでもなる。
「幸い、ワイバーンをテイムした学生がいるらしいから、ワイバーンを移動手段として使ってくるだろう。そこを、この雷の聖剣で上空から叩き落とし、それで終わる。万が一生きていても、残りのお前たちで楽にやれるはずだ。高いところから落ちれば、それだけでかなりのダメージになるし、聖剣使いでもなければ、空中で減速できるわけもない」
……ポープリ、ごめんね。
大事な生徒が1人死ぬかもしれない。
けど、これでポープリが私たちに協力してくれれば、学生たちは死ななくて済む。
これは、必要な犠牲なんだ……。
side:どこかのワイバーン
「こら、地上警戒をちゃんとするっす!! すぐに蜂の巣になるっすよ!!」
そんなどこかで聞き覚えのある声がして、銃声が連続で鳴り響く。
『ちょっ!? まって!?』
「ただでさえ狙いやすい上空飛ぶんすから、しっかりするっすよ!! ほら、RPG!! 当たると死ぬっすよ!!」
『ひぃぃぃー!?』
そのRPGを回避した後に、上空から雷が私に直撃する。
予想していなかったので、あっさり気絶して、地面に落下する。
しかし、すぐに顔に水をぶっかけられて覚醒する。
目の前には、ワイバーンである私をいとも簡単に倒したゴブリンが立っている。
「ほら起きるっす。この世界は魔法もあるっすよ? 下からも上からも、色んな角度から攻撃が飛んでくるっす。それを忘れちゃいけないっす」
『……空、飛びたくない』
「ワイバーンがなにいってるっすか? 飛べないワイバーンなんてただのトカゲっすよ? 近々アスリン姫とその他大勢を乗せて飛ぶんすから、この程度で落ちないようにしてくれっす。落ちた程度でアスリン姫たちは怪我なんてしないっすが、足が止まるのは問題っすからね。というか、さっさと起きるっす。この程度で休憩なんざできないっすよ」
『……ワイバーン虐待』
「心配するなっす。この程度大将のに比べればまだ甘いっす。万が一、アスリン姫に迷惑かけたら、お前はウィードの全魔物から特別コースっすから」
『ひぃぃぃぃー!!』
くそー!?
何だよこのゴブリン!?
あのクロちゃん様より強いとか、頭おかしいよ!?
いかがだったでしょうか?
これから起こることをワクワクして待っててください!!
え、結果が分かってる?
そんなのは、最初から分かってるでしょう?
どんな風に結果につながるかを楽しむですよ。このお話は。
相手に合わせる理由がない
と、書いてありますし。
で、話は変わりますが、今日から御盆です。
自分もネットが通じていない爺様の家に向かうので、更新が4日、5日ほどできないかもしれません。
ああ、PCで打って投稿なので、スマホから投稿ってのは苦手なんですよ。
なので、その間更新が無いかもしれません。ご了承ください。
では、皆さんもお気負付けて帰省を。