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第254堀:子供の頃、毎日が冒険だった。

さあ、学生の人は勿論、社会人の方々も、今回の話を呼んで、ワクワクしてください。

いつか忘れてきた、あの心を思い出してね。


子供の頃、毎日が冒険だった。



side:ユキ




それは、いつの日か通り過ぎてしまった懐かしい学生の記憶。

学府の図書室の窓から夕日が差し込む。

ここは異世界なのに、その風景に懐かしさを感じずにはいられない。

いや、図書室なんざ利用することはほとんどなかったがな。

学校の授業で使うぐらいだろ?

それか、読書感想文とかで無理に書かないといけない時に、本を借りるぐらいで、そこまで出入りする理由はない。

いまどき、調べ物とかパソコン開いてできるしな。

……図書館の意味ねーよな。


と、そんなことはどうでもいい。

現在は異世界、そしてこの大陸の歴史書や、数多魔術の知識を詰め込んだ、魔術学府が誇る図書館である。

当然、電子書籍化なぞしていないし、ネット大辞典に乗っているわけでもない。

だから、俺たちが直接調べないといけないので、様子見にきたのだ。

しかし、この図書館は課題を片付けるためや、勉強する為だけじゃなく、魔術の向上を望む生徒で結構にぎわっている。


「そもそも、意識が違うからな……」


日本だって、最高学府では図書館はひっきりなしに利用者がいるだろう。

そして、この異世界の学府も、この大陸に於いて最高学府。

俺が通っていた学校の学習意識レベルと同じにしては失礼か。

……でもきっとここで色々調べ物してたら眠くなるわ。


「うん、寝てしまう前にさっさと用事を済ませよう」


そう、俺はこの図書室に用事があってきたのだ。

寝に来たわけじゃない。


「本当にあると思うんですか?」


ついて来ているリーアは周りを見回しながらそう聞いてくる。

で、俺が答える前に、タイキ君が答える。


「そりゃ、あると思いますよ。だってここは魔法学校なんだから!!」

「え? 魔術学府じゃないんですか?」

「あー、いやいや、リーアも見ただろう? ロリー・アウトと不思議な部屋」

「あー、あの映画ですね。なるほど、確かに雰囲気は似てますね」


リーアは何とか納得して、あの映画と今の状況を比べるように、辺りを見回す。

ま、タイキ君の言っての通り、俺たちは某映画を参考にして、学府で探検を行おうとしているのだ。

なら、エリスを通して学長に頼めばいいんじゃね? って話になるが、聖剣使いにつながる可能性がある情報をあっさり話す理由もないし、そんな簡単に話していい内容じゃない。

親友ってエリスのことは認めているらしいが、だからこそ教えるわけにはいかないだろう。

俺たちの立ち位置を知らないのだから、教える理由も見つからない。

お互い、大事な情報を伏せたまま、相手の情報はすべて欲しい。

てなわけで、こうやって、俺たちは秘密の部屋がありそうな場所を探しているというわけだ。

あ、エリスやトーリ、アスリンたちは、あのワイバーン騒ぎの説明で大忙し。

メインは従えたアマンダさんが一番割食ってるがな!!

クロちゃんの件は、クロちゃんはエリス達やサマンサお嬢さん、アマンダさんの証言で、魔物の守護者という立場は確立した。

まあ、クロちゃんは堅苦しい言葉で喋っていたし、アマンダさんは「姫」のことをサマンサお嬢さんを指す言葉と判断。「アスリン」のことを指すとは思わなかったらしい。

普通に考えりゃそうだよな。

で、攻撃から守ってくれて、ワイバーンが人を襲ったことに対して、謝罪をしている時に、学長が攻撃をしたという事になっている。

うん、学長頑張り損。

まあ、負けたことは、誰にも知られていない。

あの戦闘が始まって、即座に生徒たちはワイバーンのワイちゃんに乗って撤退したからな。

人数が多くて飛べないとワイちゃんはのたまったらしいが、アスリンが頑張ってといって奮起させたらしい。

アスリン恐ろしい子!!

アスリンは命令を出したあと、同じテイマーの才能があるアマンダさんの指示に従えと言って、こっそりエリスたちと、クロちゃんと学長の様子を見に戻ったのだが、結構な大事になっていて、即座に応急措置をして、俺を呼んだわけだ。

まあ、俺たちと同じように、聖剣使いのニーナは様子見してたから、なにかしら接触はあるかもな。

そっちは霧華たちに監視を任せてるし、俺たちは学校探検というわけだ。

建前は学府を自らの足で歩き回って、教室とかの間取り、場所を覚えるということだ。


「でもユキさん。俺たちがチート持ちじゃなけりゃ探索なんてしないですよねー」

「だな」

「え? 何でですか?」


リーアは不思議そうに首を傾げる。


「リーア、君は今勇者の力や、ウィードでの訓練で力を付けたってのはわかるだろう?」

「はい」

「それが無い状態で、色々な防犯設備という名の危険がある学府の探索をやれるか? 簡単に言えば、この学府はトラップ満載のダンジョンと言っても間違いじゃなんだ」

「なるほど。それは普通なら探索しませんね。死にたくないですし」


あの映画、番犬にモンスターとか、人食い本や、呪いの本、部屋自体が移動するとか、もうあの学園、普通に人死にでそうだよな。

階段は動くし、転落死とか絶対すると思うんだよ。

ま、映画を参考にして、探索道具を揃えて、こうして来たわけだ。


「ユキさん、探索の云々はわかりましたけど。既にダンジョン化していて、この学府は勿論、街もぐるっと制圧下に置いてマップ見れますよね?」


リーアは周りに見つからないように、こっそりコール画面で、この学府の立体図を出す。


「ああ、でも、この学府は曲者だ。パッと見て、どこが隠し部屋かわかるか?」

「え? えーと、ほらこことか、さっき見た教室とか、奥に封鎖されたみたいな場所とか……。ほら、ここも。って、あれ? 沢山ある!?」


そう、この学府、歴史が深く、増改築を繰り返して、どこにでもデッドポイントが存在している。

分かりやすく、ポツリと隠してある地下室でもあればいのだが、地下室にしても、隠し部屋、増改築のミス、デッドポイントが10以上。


「まあ、見て分かったとおもうが、パッと見ただけでも、それだけ色々ある。というか、恐らくその内のどれかが当たりで、どれかがワザとな仕掛けで、残りは本当に増改築のミスでデッドポイントになっただけだ」

「……どうして図書室を?」

「「勘」」

「勘って……」

「タイキ様。御国を救ったときは、英知に長けていらっしゃったのに……」


リーアとアイリさんが悲しそうな目でこっちを見てくる。

今回の探索、タイキ君は嫁さん連れだ。

まあ、イベントが起きすぎて、新婚旅行って感じじゃなかったしな。

学府内だし、問題が起きてもタイキ君が守ってやれると判断して、今日は一緒にきている。


「いやいや、勘と言っても総合的に考えてだから、高確率で当たりだと思うんだよ」

「……本当ですか? タイキ様は腑抜けになったわけではないんですね?」

「うんうん。ほら、図書室って本を置く場所だろ? だから、木を隠すなら森の中ってことで、大事な蔵書を蔵書に適していない場所に隠すのはよろしくない。よって、この図書室の隠し部屋は大事な本を隠している可能性が高いわけだ」


タイキ君の言う通り、そういうことで図書室に当たりを付けたわけだ。


「ちぇ、ユキさんが疲れてるって言って、ベッドで添い寝しようと思ったのに」

「おい」


全く、嫁さんたちは油断ならん。

迂闊に冗談も言えんな。

特に、セクハラ発言は嫁さんには絶対言えない。

そのままベッドに連れていかれるからな。

きゃーとか、いやーとか、可愛らしいお約束の反応はなく、そのままウェルカムで食べられてしまう。

嬉しいのやら、悲しいのやら……。


まあ、そこは今関係ない。

正直言えば、俺とタイキ君はわくわくしていた。

学校探検。

小学校の低学年で誰でも一度はやったと思う。

俺の場合は授業の一環で、簡単な地図を渡されて、その地図に部屋の名前を書いてうめていくってことでやった。

どっかの映画を例に出したり、隠し部屋云々など言っていたが、俺たちにとっては冒険をする為にとってつけた理由だ。


そう、子供の頃、誰だって、毎日が冒険だった。


あの頃からずいぶん遠くに来たと思う。

いや、物理的に遥か彼方まできてるけどな。

だからこそ、こういう学校に似た場所に来ると、郷愁を感じる。

そして、学校に通っていた頃を……。


「ユキさん。俺わくわくしてきましたよ」

「ああ、異世界に来て、慣れてしまった心が動き出すのが分かる」


秘密の部屋を探す。

学校の噂話を確かめるようなこと。

昔は先生などに叱られるから、敬遠してきたが、ここでは大義名分のもと探索ができる。


「で、どこから手を付けるんですか? 見たところ、この図書室だけで3つは隠し部屋みたいな場所がありますよ?」


おっと、落ち着かなくては。

夕方とはいえ、まだ利用者が結構いる。

いきなり、出入り口近くにある隠し部屋を発掘するわけにもいかない。

学長に知られないように、こっそりやる必要があるのだ。

そういう意味もあって、図書室の蔵書を調べるという話を通しているから、学園見学と言って歩き回るより、遥かにそれらしい理由になっている。


「ま、さすがに出入り口にある隠し部屋を見つけるのは不味いだろう。誰でも知っている公然の隠し部屋ならともかく、それを聞くわけにもいかないからな。奥にある2か所を調べて、人がいなくなってから、出入り口近くの隠し部屋だな」

「ですね。じゃ、奥に行きましょう」


そう言って、タイキ君がアイリさんの手を取って図書室の奥へ行く。


「私たちも行きましょう」

「おう」


リーアと俺も手を握って、図書室の奥へ歩いていく。

……嫁さんだが、可愛い彼女でも間違いじゃないよな。

うん、これがきっと青春っていうんだろうな。


「ここですか?」


俺が青春気分を味わっていると、冒険譚の場所までやってきてしまったようだ。

さっさと、青春野郎から冒険心マックスな童心に戻ろう。

あ、いや、調査です。調査。


「ああ、ここだけど。……すごい本の山だな」


リーアが疑問形で聞いてきた理由がわかる。

隠し部屋云々の前に、通路が本で埋もれている。

蔵書の整理できてないのな。


「で、タイキ君たちはどこだ?」


一方通行で見失うはずないのだが、タイキ君たちは見当たらない?

まあ、大きな音も上がっていないし、特に問題はないのだろうが。


「こっちですよ、ユキさん」


そんなことを考えていると、すぐに横から声をかけられる。

本の山の向こうにひょっこりと顔を出している。


「よく見てください。本ばかりで分かりにくいですけど、本を壁にして通路ができてるんですよ」

「んー? あ、本当だ」


タイキ君の忠告でよく見てみると、わずかに人1人が通れる通路が確かにある。

山ほどの蔵書というカモフラージュと、それに近寄りたくないという心理を使った隠し道と言えるだろう。

でも、俺はその通路に足を踏み入れることなく、タイキ君とそのまま会話をする。

すぐに後を追おうとしたリーアは引き寄せて、抱き留めている。


「うへへ……、ユキさんの匂いだー」

「……。タイキ君こういうのってどっかを引き抜いたら、全部崩れるとかじゃないか?」


リーアの顔がにやけているのはとりあえず無視して、俺はこの通路の懸念を言う。

この蔵書量だ、崩れれば人1人ぐらいあっという間に下敷きになる。

本というのはバカにならないもので、日本でも地震で本棚が倒れ、飛び出た本の山の下敷きになって、死亡したという事件がある。


「ああ、それがですね。本を触ってみればわかると思うんですけど、動く気配がないんですよ。いや、俺が全力でやれば問題ないですけど、並の人なら動かせもしませんよ」

「お、ホントだ」


試しに、山になっている入口の、手が届く一番上の本を取ろうとしたのだが、全部がアロンアル○ァで固定されているのか、動きもしないし、本をめくれもしない。

俺もタイキ君の言う通り、力を引き上げればどうにでもなるだろうが、その場合、本はぶっ壊れると思う。

あれだ、週刊誌を両手で引きちぎる一発芸みたいに。

……いつの間にか、そんなことを考えている自分に驚いた。


「……ユキさんどうしました? 何か楽しい本でも見つけましたか? というか、とっても優しい微笑みです。うらやましいから私にもしてください」

「あ、いや、なんというか、昔の思い出を見つけたんだ。だから、そんな風に微笑んでいたんだろうな。無意識だから、意図的にやるのは無理だな」

「思い出?」


そう、思い出。

週刊誌を引きちぎるってのは、男同士であつまって、力自慢でやってた。

いやー、くそ。本当に色々思い出すな。

あの馬鹿をやっていたのを、今では微笑ましい、懐かしい思い出だとか。

……リーアに言ってわかるだろうか?


「ああ、思い出だな。俺も学校に通っていたのは知ってるよな?」

「はい」

「で、当時、というか今でもだが、毎週漫画の雑誌が発売されるんだ。いろんな作家の人が書いて、毎週出版される。それを俺たちは毎週楽しみにして読んでいたんだ。でも、毎週お金を出すのはつらいから、友達同士でローテーションで回したり、隣のクラスから借りたりな」

「それを思い出したんですか?」

「あー、そんなのありましたねー。それで、読まなくなった古い号を両手で引きちぎるとか。あー、丁度ここら辺の本と同じ厚さですね」


俺とリーアの会話にタイキ君が参加する。

とりあえず、軽く様子見をして戻ってきたようだ。


「えー、本を引きちぎるってもったいないですよ? というか、こんな分厚い本を引き千切れるわけないじゃないですか。で、それに何の意味があるんです?」


リーアは本棚にある、取り出せる本を手に取って、あきれている。

勇者の力や、戦闘用の力を解放すれば簡単に千切れるだろうが、彼女本来の力では無理そうだ。

うーん、と頑張っているリーアは可愛い。


「いや、リーアさん。それで実演しちゃだめだから。というか、意味自体は、ほらあれだ、男の力自慢大会みたいなものでね」


うんうん。意味など聞かれてもこまるが、一応力自慢だよなアレ。

女性からはやっぱりこんな反応か。

バカな学友は週刊誌引き千切りでモテるんだとかいってたが、やっぱ嘘か。

いや、俺自身彼女とか興味なかったしな。

本当に少しでも気を抜けば、毎日冒険だったし。

と、昔話はいい。

今は隠し部屋の探索だった。


「で、タイキ君。奥はどうだった?」

「えーと、結構通路自体は長いですけど、奥は文字通り本が積んでありました」

「……本を綺麗に積むために、魔術で固定してるって可能性もあるわけか」

「ですね。この魔力が枯渇している大陸で贅沢な魔術の使い方ですよ」


魔力枯渇の件を考えると、本当にこの学府は不思議だ。

何が原因で多くの種類の魔物が生息しているのか、この図書室のように、生活へ役立てるために無駄な魔術を使うのかと。


「奥は行き止まりか。でも隠し通路はこの先だよな?」

「ええ。その位置は途中にあるんですけど、少しも動かせない本の壁の先です。俺1人で色々するのは不味いかなーって思って戻ってきました」

「なるほどな。一緒に行ってみるか」


正しい判断だタイキ君。

万が一、アイリさんと2人で通路を発見しても、俺たちが追えない可能性が出てくる。

そして気が付けば、だれもいない、学府のみたこともない場所に引きずりこまれて、お約束の幽霊とかに追われるんだ。

……異世界の学校に来てまで怪談に想像がいくとか、俺も興味なかったとはいいつつ、心には残ってたんだなー。

いや、何度もいうが、学生生活は俺にとっては鬼門だったけどな。

ま、俺の年齢から考えれば、人生のほとんどを学生で過ごしたんだから、心に残って当然か。


「これが隠し部屋があるところを防いでいる本の壁か……」

「うわー、本当に本の壁ですね……」

「タイキ様、本当にこの先に部屋があるのでしょうか?」

「うん、あるよ。ほらコール画面を見ても、図面通りならこの先があるはずだ」


タイキ君の言う通り、確かにマップ画面ではこの先が存在している。

しかし、その前に存在している本の壁、本棚もないのに、綺麗に縦に本が垂直に4メートルほど積んである。

これは魔術を使わないと、どう考えても無理だ。


「さて、これはお約束だな」

「ですね」

「どういうことですか?」

「タイキ様?」


女性2人はこの本の壁は破壊するしかないと思っているみたいだが、色々なお約束を見てきた俺たちにはこの壁の突破方法は手に取るようにわかる。

いや、何種類かに絞れる。


「こういうタイプは、どれか動かせる本があるはずだ」

「そうそう。それを動かすか、それとも複数ある本を入れ替えるとかして、正しい配置にすると、奥の部屋に行けるとかですね」

「ぶっ壊すのは最後の手段だな。騒ぎはなるべく避けたいし。ということで、2人とも、動かせる本とかを見つけても、動かさないように」

「え、なぜですか?」

「トラップの可能性もあるからな。少しでも動いたら、それ以上動かさず、俺たちに知らせてくれ」

「色々安全を図ってから動きますから」


この手合いのトラップはガスとか、落とし穴、本の山が崩れるとかが定番だからな。

万全に準備をさせてもらう。

ま、そんなことで、その縦4メートル、横に5メートルはあろうかという本の壁を調べることになった。

無作為に調べると、調べた場所が重なって無駄なので、とりあえず、4分割にして割り当てを決めて調べる。

全員、俺のダンジョンマスターのスキル付与で空を飛べるので、上空4メートルにある本を調べるのも問題なし。


しばらく調べているが、蔵書は無茶苦茶だ。

料理のレシピ集から、大魔法の使い方まで。

俺にとって、どれがこの新大陸において貴重な書なのかさっぱりわからんが、大魔法の使い方とか、レアなんじゃないだろうか?

でも、びくともしないので、取り出すのはやめておく。

しかし、この新大陸にも活版印刷という、本を量産する体制は整っていない。

つまりは、手書き。

それで、この蔵書は恐るべしだろう。

そんなことを考えつつ、俺の担当範囲は調べ終わる。

特に動かせる本はなかった。

うーん、一つぐらいはあると思ったんだが、もしかして、この通路すべてのどこかに動かせる本があるとかじゃないだろうな……。

そうなれば、気の長くなる作業だ。

その時はこの本の壁を吹き飛ばそう。

冒険というものには憧れるが、進みの悪い冒険譚は読む気にはならん。

物理的に物語をめくる。飛ばすともいうがな。こうペラペラといい場所まで。


「ユキさんこっちは駄目でした。そっちはどうですか?」


俺がそう最短冒険ルートを考えていると、タイキ君も調べ終わったのか、こちらに寄って来る。


「いや、こっちも動かせる本はなかった」

「うへー、もしかしてこの通路全部が対象ですか?」

「かもしれないな。あとは、最初の1個動かせば、次が動くようになるとか……」

「それもいやですね……」


俺たちが話している間にリーアも調べ終わったが、リーアのところも動かせる本は無し。

これは、通路全部を調べる系か?

そんなことを考えているとアイリさんが、動かせる本を見つけた。

2つも。


「……魔術師とは何か。と」

「……夜の営みを豊かにしよう。ですね」


俺とタイキ君が1つずつタイトルを読み上げるが、これはギャグか?

二択になっていない。

魔術学府において、魔術の探求は当然だ、夜の営みは全く関係ないじゃん。


「……いや、これはひっかけか?」

「……なるほど。魔術だけでなく、広く知識を持つべきってやつですね?」


俺とタイキ君は深読みをする。

この手合いは、この問題を作った人によって答えが変わる。

……どっちだ?

真面目で通すか、バカを取るべきか?


「生きていくか死ぬかそれが問題だ」

「……真面目なセリフにしても、選択肢は真面目とバカしかないですけどね。でも思い悩むって意味だから、その名言が使える。人間ってくだらねー」

「ま、それも生きる醍醐味だろ。ま、俺たちで悩んでも仕方ないし、リーアたちはどう思う?」


結局はどっちかを引き抜かなければいけない。

答えを探そうにも、この問題を作った相手を知らないから、判断のしようもない。

なら、適当にやるしかない。

俺とタイキ君は悩みすぎたし、リーアやアイリさんに任せた方がいいだろう。


「うーん。私は夜の営みが読んでみたいです。ユキさんとの夜が更に楽しくなりそうですし」

「私も夜の営みがいいです。タイキ様に喜んでもらいたいですから」


2人は同意見か。

なら悩む必要はないな。

トラップ対策を十分にして、夜の営みを豊かにしよう。を手に取って引き抜く。



ゴゴゴゴ……。



そんな音を立てて、本の壁が動く。

これが正解かよ。

……この問題を作った人は、人の反応を見て喜ぶタイプだな。

そして、本の壁が動きをやめると、その先には小さな一人用の扉がポツンとある。

ささっと、トラップがないか調べるが、特に細工は無いようで、扉を開ける。

すると、その先には……。


「エオイド? じゃない? 初めまして、私はクリーナ」


彼女はそれだけ告げて、すぐに本へ視線を戻す。

クリーナの容姿は赤色の髪を肩まで伸ばし、オシャレなのか、少しだけ髪を綺麗な髪留めで止めている。

体系はツルペタ。

でも、全然体型が気にならないほどの、美少女。

……まいど思うけどさ、なんで異世界は美少女率がこんなに高いかね。

と、しかし、挨拶だけで、すぐに視線を本に戻すとか、あれですか?


「ユキさん。あの対応、本好きの寡黙美少女ですよ」

「ですよねー。で、クリーナってエオイドから聞き覚えがあるな」

「ええ、エオイドがこの学園で仲良くしている1人ですね。こんなところで会うとか、トラブルですね。フラグですね」

「……くそ、あのなんちゃって主人公は俺たちの邪魔をいやでもしたいのか」


俺とタイキ君はそうやってこそこそ話していると……。


「「あのー、私たちどうすればいいんですか?」」


リーアとアイリさんがそう呟いた。

あ、とりあえず、あの読書少女の気を引くか。




さあ、学生は夏休みだ。

冒険にでよう。

あとで、なろうに自伝で投稿してね。


社会人の方々は、小さい頃、知らない場所をうねり歩いた時を思い出したのではないでしょうか?

学校とは、ある意味未知の空間が多い場所、卒業まで一度も入らなかった場所もあるのではないでしょうか?


今、代わりにユキとタイキが冒険をします。

冒険してほしい場所を言ってみてください。



さて、別件ですが、階段下り損ねて、足挫いた。

非常に痛い。

皆も気をつけてな。


また次回。

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