表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 学府編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

304/2194

第252掘:大魔術師出陣

いい所を見せる学長。

きゃーかっこいい!!

ほら、みんなも。

大魔術師出陣




side:ポープリ・ランサー ランサー魔術学府学長



「んー、美味しー!!」


私は親友からもらった、とーーーっても美味しい、高級な飴玉を舐めて、至福の時を過ごしていた。

ああ、君は本当に親しき友だよ。エリス。


「どう見ても、餌付けされて、飼いならされているようにみえますけどね」


ララはそう言って睨んでくるが、まったく説得力も迫力もない。

だって……。


「ララがケーキを食べていなければ、まだわかったんだけどなー」


そう、ララもエリスから特別なケーキを貰って、ただひたすらに消費している。

というか、2ホールの種類違いのケーキを交互に食べては、エリスがくれた特製の紅茶を飲んで惚けている。


「こ、これは親友である、エリスからいただいたケーキですから」

「ふーん」

「ケーキは長持ちしませんからね。これは、仕方なく、食べているわけです。親友からいただいたケーキを腐らせるなんて人の道を外れる行いですから。だから、日持ちする飴玉を湯水のごとく口に放り込んでいる学長とは違うわけです」


はっ、モノは言いようだねー。

まあ、簡単に言えば、私たちはどちらも、餌付けされて、飼いならされたという方がしっくりくる。

別に悪いことじゃないし、そう、親友だから!!


「ふうー。しかし、エリスさんには感謝ですね」


2ホールを食い尽くしたララがそんなことを言う。

うん、確かに感謝なんだけど……。


「感謝はわかるけど、どのことを指しているの? 今食い尽くしたケーキのこと?」

「いえ、ケーキではなく。いや、ケーキの件は感謝していますが、本題の方ですよ。決闘で負けたのに、あんなズルを教えてくれるとは」

「ああ、あっちね」


そう、私はあの決闘に負けた。

被害無視の全力をだしたわけではないが、決闘場でできうる限りの力をだしたが、そのすべてを相殺されてしまった。

ありがたいことに、まったく同じ魔術でだ。

何をどうすれば、私の魔術の発動後での後手撃ちで同じ魔術で迎撃相殺する威力調整ができるんだよ。

きっと、被害無視の全力だしても負けると思う。

嫌なものを思い出すよ。聖剣使いとか、ガードワールドとか。

あいつら、基本的に魔術ダメージ軽減っていうルール違反気味のスキル持ってるからね。

私とは相性が悪すぎる。

ま、なんとか対抗手段は編み出したけど、それは文字通り対抗手段で聖剣使いとガードワールド相手専用の手段だ。

ガチな魔術での打ち合いじゃ、エリス相手に勝ち目はないだろうな。

と、別の方向に思考が行っちゃった。

えーと、そうそう。決闘で撤回してもらおうかと思った「私たち編入生への行動を妨害しない」の一文。

傍目から見たら、意味不明、間違いじゃね?

と言われるような一文だが、よくよく読めば、私たちにとっては最悪の一文となった。

あれがそのままの意味だけでとらえていれば、学府はエリスの手によってもてあそばれることになっただろう。

いや、実際はそういうつもりはなかったみたいなんだけど。

と言うか、基本的に新婚さんの邪魔をした私たちが悪かったんだけどね。

いやー、エリスが目に涙を溜めて、謝ってください!!って叫ぶまで気が付かなかったのは失態だったと自分でも思う。

うん、自分でも新婚生活を邪魔されて、仕事漬けにされたらキレるわ。

相手はいないけど、エリスみたいにあれほど心底、夫のことを大好きだって言える相手の邪魔をされれば、誰だってああなる。

さて、本題に戻ろう。


・私たち編入生への行動を妨害しない。


だが、さっきララが言っての通り、ズルを教えてもらったのだ。

ララという身内を挟んだとはいえ、審判役に確認してもらった約定を反故にするのは学長としては非常にまずい。

だから、あの一文を撤回、改変することはできなくなった。

なので、和解したエリスからズルを教えてもらったのだ。

どういうズルかと言えば……。


『あの、条約は学長たち、すなわち学府に対して効力を発揮するものです。だから、学長や学府の関係者として手出しはできませんが、友人として手出しをすることは可能なのです』


そんなことをしれっと、エリスは言い放ったのだ。

屁理屈に聞こえるかもしれないが、何も条約には反していないし、それを設けた本人がOKを出しているので何も問題はない。

つまり、エリスは自分たちと設けた契約を理由に、いや、盾に、囮にして、問題がある生徒や教師を徹底して叩き直せるということだ。*2 *1に同じ。

この学府、魔術科は実力主義なので、その実力を持つこと=偉い。

なんて勘違いするやつが多い。で、色々問題を起こすわけだ。いじめは当たり前、難癖つけて街で暴れるとかするんだけど、更にたちの悪いことに、そういう奴らに限って、私たち学長や実力トップの生徒たちの前では大人しくしている。

こっちとしては、さっさとしょっ引きたいのに、噂だけなのだ。

被害にあった人たちは一様に口を閉ざす。

おそらく脅しをかけているってやつだ。

いくら私たちが守ってあげるといっても、四六時中守れるわけもなく、被害に遭っている人たちからすれば、私たちはその問題を起こした生徒や教師の同類なわけで、信頼してもらえるわけもないし、報復が怖いというわけだ。

そこで、エリスが言った条文が役に立つ。

友人として、いや、親友として、学府の問題解決に手伝ってもらうのだ。

エリスとの契約で、私たちは学長や副学長という立場では手出しができない。*3 *1に同じ。

つまり、私たちがしょっ引きたい、相手に対してエリスたちが行動を起こして、トラブルを誘い、現行犯で逮捕できるわけだ。

ああ、因みに、私たち学長という側面をみて、その問題を起こしたバカどもはエリスたちを悪く言うだろう。

証言が彼女たちだけだと、エリスたちが間違っていると、まあ色々な手を使って私たちに助けを求め、エリスたちに脅しを掛けるだろう。

だが、ここで学長として手出しができないという一文が役に立つ。

そう、学長として助けを求められても、私はエリスとの条約で学長として手助けができない。

だから、助けなくても、何も非はないのだ。

で、エリスたちにそのバカ共が罪を認めるまで、お仕置きしてもらって、そのあと、親友として、解放してもらうように頼むのだ。

うん、完璧すぎる。

実に私向けのズルだ。

ま、これも一つの使い道。

学長として手を出すわけにはいけないというのも多々あるが、学長だから手を出さないといけない事情も多々あるのだ。

それを、エリスたちを挟むことで拒否できるわけだ。

そして、それをたかが決闘での約束だ。なんていえば学府に対しての侮辱になるし、更に相手をドツボに嵌めることができる。

くっくっく、今まで私が頭を下げて回った苦労をお返ししてやるわ。


「学長、非常に悪い顔をしていますよ」


ララが澄ました顔でそんなことを言う。


「いや、無表情でそんなことを言う、ララの方が怖いけどね。今、持っている書類はそうなんだろう?」

「はい。これが、裏で魔術を悪用して、威張り散らし、学府の評判を下げている小物たちです」


そう言って、書類を渡してくる。


「ふむふむ、ってこれ小物かい? 公爵の息子までいるじゃないか」


目を通すと、政治的に手の出しにくい、サマンサと同じ立場の公爵の息子が載っている。

この公爵の息子は、魔術の才能は中の上ぐらいで、最近伸び悩んでいる。最初のころはこの学府で勉学に励んでいたのだが、最近の停滞で腐ってしまって、権力を振りかざすバカになっているのだ。

特殊なスキルを持つ、エオイド君に負けてからさらにそれが顕著だ。

本人的にはエオイド君を叩きのめして、スッキリしたかったんだろうが、魔力操作を持つエオイド君を盗人と侮って負けた。

で、最近はさらに荒れている。

いい加減、どっかで釘を刺さないと、学府の処罰だけでなく、法の下に裁かなくてはいけなくなる。

そうなると、その息子の国と関係が険悪になる可能性が高い。

なるべく早急に改善したいのだが、学長の私がでても、公爵の息子としての立ち振る舞いはできるので、のらりくらりと苦言を躱して、腐っているのである。


「小物でしょう。腐っていじけて、ほかの生徒に八つ当たりとか」

「いや、そうだけど、相手は公爵の息子だよ? さすがにエリスに任せるのは……」

「いきなりというのはアレでしょうけど、ちゃんと事情を話せばわかってくれると思いますよ。エリスさんたちの立場もただの編入生というだけではありませんし」

「ああ、ユキさんが、ジルバ、エナーリア王族の血族だっけ? あれは流石に驚いたよ。なるほど、継承権は無いにしても公爵相当だよね」

「はい、しかも、2大国から公式に認められています。これを相手にするのはただの国の一公爵では厳しいです。というか、相手取るだけでバカです。で、ユキさんの奥様であるエリスさんたちですから……」

「丁度いいか。でも、さすがに結構大仕事だから、変な要求されそうだけど」

「……まあ、その公爵と私たちだけで揉めて、起こる国家間問題よりはマシだと思います」

「だね。僕たちが少し被害を被るだけで、それを回避できるならいいか。というか、今まで手を打てなかった、私たちの責任だし、必要経費かな?」

「ですね」


そんな会話をしつつ、飴玉を食べていると、学長室の扉が乱暴に開かれる。


「が、学長、大変です!!」


物凄い表情で、中年頭のアレが後退している男性教員が入ってくるので、思わず、飴玉を飲み込んでしまった。

仕方ないじゃん、物凄い表情で頭の上がふさぁってなってるんだもん。


「んぐっ、ごほっ!!」


いくら小さいとはいえ、固形で硬い物体がのどを通れば、小さいぴちぴちボディを持つ私には危険なことだ。

やばっ、笑いを堪えて、飴玉飲み込んだのが死因とか新しすぎる。


「学長、落ち着いてください。この紅茶を」


ララが即座に私に駆け寄って、紅茶を口に運んでくれる。

よ、よかった。さすがララ!!

紅茶を飲み、なんとか飴玉を胃に流し込む。


「ぶはっ、し、死ぬかとおもった」

「はぁ、よかった。で、何があったのですか?」

「あ、はい。実は、魔物の森でワイバーンが確認されました!!」

「いや、ワイバーンがいるのは観測で分かってるでしょうに」


ワイバーンって、飛龍種で、一番力が弱いといわれている。

いや、私が現役の時代は確かに弱かった。

だけど、それは私たちの実力がとびぬけているだけで、今も昔も龍と冠するだけあって、相当強い。

というか、下手すりゃ城や街が落ちる。

今ではそのワイバーンも学府の近辺でしか見なくなってしまった。

魔物の森の奥深く、山脈に住み着いているのだ。

たまーに、森の方まで飛んでくることが、最近の観測で分かっている。

手出ししなけりゃ襲わないし、空飛んでるやつに、手の出しようもない。

魔物退治ギルドには見つけても手を出すなって厳命しているし、学府の生徒も魔物の危険性の勉強はさせているので、その頂点に近いワイバーンに手を出すバカはいないと思う。


「それが、ワイバーンは、今日1階生の魔物退治見学のところに出現しまして……」

「は? そんな浅いところに出たの!?」

「はい。それで、叫び声が聞こえたところに降下したと、逃げ帰ってきた、生徒たちが言っているのです」

「まずっ!?」


なんでそんな浅い場所に、ワイバーンが出現したかはわからないけど、今はそんなことを考えている暇はない。

すかさず、杖を握り、窓を開け放つ。

どのワイバーン種かしらないけど、1階生や付き添いの3階生が相手取れる相手ではない。


「ララ、最悪の可能性を考えて、救助隊を編成して急行させて!! 私は先に行って、間に合うなら、助けてくる!!」

「はい、こちらは任せてください」


流石ララ、まっすぐな信頼の瞳で見つめてくれてうれしいよ。

その視線をうけて、窓から飛び出す。


「が、学長!?」

「慌てなくて大丈夫です。学長の2つ名をお忘れですか?」


後ろでそんな声が聞こえるが、返事している時間も惜しい、杖に魔力を注ぎ、風の魔術を展開させ、一気に空へ飛ぶ。

久々の空中高速移動術だけど、違和感なし、もっとスピード上げるか。


「あ、あれが、小さい大魔術師ポープリ」


後ろで、いらん声が聞こえたので、魔術を放っておく。


「ぐあぁ!?」

「……学長に対して小さいは侮蔑になりますので、注意してください」


さあ、間に合うか?

私は、更に速度を上げ、魔物の森へ急ぐ。


「サマンサたちや、エリスたちが襲われてたら持つと思うんだけど……」


移動しつつ、今回の魔物退治の班を思い出していく。

その中で、唯一ワイバーンを退けられそうな班はたった1つ。

学府で10本指に入るサマンサと私を退けたエリスたちがいる班しかない。

ほかの班にワイバーンが襲い掛かっていたら、既に手遅れだろう。

サマンサとエリスたちの班でさえ、1階生を守りつつになるから、かなり厳しいと思う。


「……小さい子の亡骸は見たくないな」


長く生きてはいるが、やはり幼子や子供たちの亡骸ほど、胸がきつくなるものはない。

そして、さほど時間がかかることなく、5分ほどで、魔物の森の上空にたどり着く。


「どこ!?」


私はあたりを見回すが、わかりやすい煙は上がっていない。

ちくしょう、炎を吐くタイプのワイバーンじゃないのか。

森では炎の魔術の使用は山火事の関係で禁止しているし、これじゃ探しようが……。



ウォォォーーーン!!



その大きな咆哮が響き、私は咄嗟にその発生源を見る。

そこには、サマンサとエリスたちが1階生の生徒たちを背に庇い……、ワイバーンと、とても信じられない大きさのブラックウルフと対峙する姿が目に入った。


あれは不味い。

私は肌から感じるブラックウルフの魔力を受けて心底思う。

距離があって、ここまで魔力を感じるなんて、よほどの魔力を持つ魔物だということだ。

ブラックウルフの後ろに控えるワイバーンですら、この距離があると魔力を感じられないのにだ。


「……あの時代の残りか? でも、あんなタイプは見たことない」


というか、私の目算が間違っていなければ、聖剣使いや、ガードワールドでさえ上回っているように見える。

でも、そんなことを考えている暇はなさそうだ。

巨大なブラックウルフが口を開き、私に感じられる魔力が高まる。

なにか、攻撃をするつもりだ。

あんな、魔力を集めた攻撃はとてもじゃないが、サマンサやエリスたちが1階生たちを守りながら防げるわけがない。


「私の生徒たちに、手だしてんじゃねーー!!」


咄嗟に、無詠唱でできる、最大の魔術、炎を極め、閃光にまで昇華した極熱を放つ。

サマンサやエリスたちに多少被害は行くかもしれないが、そんなことを気にしていてはきっとあのブラックウルフの気は引けない。


ドンッ!!


そんな地響きが響き、辺りには粉塵が舞い上がり、視界を塞ぐ。

空中からの完全な不意打ち。

ワイバーンぐらいなら一撃で倒せるレベルの威力だ。

多少は効いているはず、その隙に生徒たちには逃げ出してもらって……。

だが、その考えは甘すぎたようだ。

だって、煙が晴れる前に、空中にそのブラックウルフが飛んできて、私を正面に捉え、空中で静止したのだ。


「……なんの冗談だよ」


空中を飛んで、その場で静止するとか、ワイバーンや飛ぶ専門の魔物や、魔術を極めたリッチ系ぐらいしかありえない。

四足の魔獣と分類される動物型の魔物が、そんな高度な魔力制御を行えるわけがないのだ。

だから、目の前の光景に対して、冗談としか言えなかった。


「……小さき魔術使いよ。何故我を攻撃した」


そして、そのブラックウルフが喋る。

もう、私の理解を越えている。

わかるのは、これを仕留めなければ、生徒はおろか、学府と街は消え去ってしまうということだ。

即ち、この大陸の最高戦力が敗北するということ、それは……。


「答えよ」


目の前の怪物はそう地の底から響くような声を上げる。

そう、学府が落ちれば、もう誰もこの怪物を止められない。


「まったく、聖剣使いたちの計画の前に滅びるとか、笑い話もいいところだ」


あの人との約束のために、ここまで踏ん張ってきたのに、どっちかの答えが出る前に、どっちも全滅とか、そんなの悲しいじゃないか。


「……もう一度聞く。なぜ我を攻撃した」

「うっさい、私はあんたを倒す!!」


どのみち、交戦は避けられない。

言葉を交わしたとして、この強さは時間を置いてどうにかなるレベルではない。

だから、今この場で、倒すしかない!!

不意打ち、この近距離で狙えば!!


ズズーーン!!


そんな音が空中に響き渡る。


「みんな逃げるんだ!! 私がここは抑えるから!!」


咄嗟にできた時間で、全力で地上にいる皆に叫ぶ。

何かこっちに叫んでいるようだけど、ちゃんと聞いている暇はなかった。

煙の中から、その怪物が飛び出して、私にその巨体で体当たりをしてきたのだ。


「ぐうっ!?」


一瞬空中浮遊の魔術が解け落下しかける。

くそ、魔力防壁をあっさり抜いてきたよ。

というか、私レベルの魔力障壁でなければ、既にミンチになってる。


「もはや、問うまい。我が身を傷つけたことを後悔しながら、死ね」


そう怪物が吠えると、いきなり、数多の氷槍が出現し、私に向かって飛んでくる。

うそ、魔術まで使いこなすの!?

私は必死に、躱しながら、攻撃を加えていく、が加えるたびに、私の心がひしゃげ、つぶれていくのが分かった。

まったく、通じない。

不意打ち以降、まったく魔術が通らない。

攻撃すればするほど、自分と怪物の差を思い知らされる。

完全に地力が違うのだ。

唯一優っているといえば、空中での戦闘だろう。

相手は四足の魔獣。だから、空中での戦闘に慣れていない分、私が優位に動き回れている。


「ふっ、ふっ……」


もう、余裕などない、必死に怪物の一撃をもらわないように回避するしかできない。

今の自分の顔をみれば、あの時みたいに絶望に染まっているのではないだろうか?

そして、綱渡り状態はあっけなく終わる。

振り上げた前足を振り下ろされ、地面にたたきつけられた。


「が、ぐっ、こほっ……」


咄嗟に衝撃を緩和させたが、緩和させただけ。

前足を受けた右腕はへし折れてるし、落下の衝撃で肋骨が折れる音が響き、内臓でも傷ついたのか、吐血をする。


「ひゅー、ひゅー……」


自分の呼吸が変なことに気が付くが、もう体はいうことを聞かない。

意識が遠くなっていく。

……こんな結末か。でも、ある意味ふさわしいかもしれない。

だから、霞む視界を自ら閉じずに、最後までこの世界を見つめていよう。


「……ん!! だめ……!!」


気が付けば、視界にはエリスたちと一緒にきた、小さい女の子があの怪物を相手に立っている。

その光景に、涙があふれる。

女の子が死んでしまうという悲しみの涙ではない。

あの日、私を助けてくれた、あの人の影がなぜか重なった。

ああ、あなたはそうやって、私を助けてくれたよね。

最後に幸せを思い出して死ねるか……。


そうして、私の意識は途切れた。




Side:アスリン



「もう、クロちゃん!! 駄目だよ、弱い者いじめしちゃ!!」


私は今怒っています。

クロちゃんがワイバーンさんを説得するために出てきたのは、良い子だと思う。

だけど、そのあと、学長さんと喧嘩をしちゃったんです。

クロちゃんの姿は慣れてないと怖いんだから、あれぐらいの攻撃で怒っちゃだめ。


「し、しかし、姫。この小娘は、姫からブラッシングしてもらった、体を焦がしたのです!?」

「ちょっとだけ、焦げてるだけじゃない!!」


私はそう言いつつ、怪我をしている学長さんに回復魔術をかけていく。

……診察でしらべたけど、結構な大怪我。

もう、ルルアお姉ちゃんやエルジュお姉ちゃんにいじゅつのこと教えてもらわなかったら、助けられなかったかもしれない。

本当に危ない状態だった。

早く、お兄ちゃん呼んで治療してもらわないと。


「で、でも、我にとっては大事でありまして……」


でも、クロちゃんはまだ言い訳を続けます。

もう、私はぷんぷんです。


「悪い子は、今日ブラッシングをしてあげません!!」


私がそういうと、クロちゃんはその巨体を仰向けにして、絶対服従のポーズをとり……。



きゅぅぅぅーーん。



と悲しそうに泣きます。

でも駄目です、悪い子にはお仕置きが必要なの。


あとで、ワイバーンのワイちゃんと一緒にお説教です。




と言う事で、シンプルで分かりやすい図式を。


アスリン>>>クロちゃん>>ポープリ=聖剣使い=ガードワールド>ワイバーン


ね、簡単でしょ?


まあ、薄々気が付いていたかもしれませんが、今回の話を読んでのとおり、学長は前任者と関係があります。

そろそろ、今まで新大陸でちりばめた、フラグを回収する作業がはじまるぜ?

いや、まだこの新大陸での主人公が強くないから、少し先だけどね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ