第244掘:学府編 完
まず言っておく、おわってるってツッコみをした人は、
ファンファンを部屋で一人で踊ること。
あと、これは酷い。 もアウトな。
side:ユキ
俺たちは、宿屋の一室でのんびりと座って話している。
「なんだか、長いようで短かったな……」
「そうですね。ユキさん」
そう言って、宿屋の窓から覗く、魔術の学府の塔を見る。
「ここまで色々ありましたね」
「ああ」
タイキ君も俺と同じように塔を見て、そんなことを呟く。
本当に色々あった。
沢山の思い出が、頭の中を浮かんでは消えていく。
「異世界に来て、また学校に通う事になるとは思わなかったな」
「ですねー。でも、こっちに、異世界に来てから学校がどれだけありがたかったかわかりますよ」
「そりゃ、あれだ、失くして初めて気が付くってやつだろ」
「まあ、向こうに戻っても、既に4年ぐらい遅れてますからね。日本の学校に戻るのは怖いですよ」
「あー、そうか。でも、社会人じゃないだけマシだぞ。ほぼ詰んでるからな」
「うわ、それは嫌だな。でもそこら辺がいまの日本の問題ですかね」
「だな。と言っても、普通は異世界に誘拐されてたなんて信じてもらえないしな。ただ単に今まで遊んでたと思われるから、あながち間違っている判断ともいえなんだがな」
「本当に今まで遊んでたんなら自分の会社に入れたいとはおもわないかー」
「まあ、誘拐されたことが事実としても、仕事が出来ない人を雇い入れる理由にはならんからな。あるとすれば、会社の広告替わりか」
「……世の中厳しいですね」
「異世界の方が、履歴書とか書かなくていいし、完全な実力主義の冒険者って職業もあるしな。ある意味こっちの方が楽かもな」
「あーあ、地球でもダンジョンとかあればよかったのに……」
「あったら、あったで、日本とかなら完全にダンジョンに入る為の免許制とか作って、ダンジョンに入るまでが大変そうだけどな」
「そんなラノベありましたね。でも、やっぱ現実と照らし合わせるとそんなもんかー。世の中楽はないですね」
「地道に生きていけってことだな」
俺たちは、この場から離れるのを少しでも遅らせようと、会話に華を咲かせる。
しかし、終わりと言うのは等しく訪れる。
ドアのノックが部屋中に響き、俺たちはその時が来たのだと自覚する。
「すみません。そろそろ、チェックアウトしていただいてもいいでしょうか?」
宿屋の主人だ。
彼も仕事なのだから、当然のことを言っているに過ぎない。
俺たちも既に準備は出来ているし、抵抗する理由もないので、すぐにドアをでる。
「「お世話になりました」」
俺たち2人は今日までお世話になった宿屋の主人に頭を下げる。
気のいい人で、宿屋の仕事以外でも色々相談に乗ってくれたりした。
正に、いい男というに相応しい人だろう。
「いえいえ、また機会があれば来てください。勿論、また楽しい話も用意してるよ」
「はい、また来ます」
「ありがとうございました」
宿屋の主人の見送りを背に、俺たちは宿屋を出る。
さあ、これからは忙しい日々だ。
この学府での経験を糧に、また頑張って行こう。
学府編 完
「って、終わってないよ!? なに、もう半年学生やってましたって流れになってるの!? 終わるどころか、まだ始まってもいないからね!! まだ、この学府の街についたばかりだよ!?」
そう言って俺たちの後を追ってくるのは、エナーリア側の代表で編入生のエージルだ。
その後ろに白い眼でこちらを見ているジルバ側の代表たち、つまり俺たちの嫁さんや仲間。
嫁さんや仲間たちには、俺とタイキ君で必死にフラグの恐ろしさを伝えて回った。
だから、渋々ではあるが、俺たちの方針に従ってくれている。
だが、エナーリア側のエージルには説明をしている時間もフラグの意味も分かるわけがない。
なので、交渉役は俺が引き受けるということで、ジルバ、エナーリアの王たちに許可をもらって、色々小細工も頼んだ。
ということで、エージルは何も知らされず、俺たちに任せておけばいい、という命令が下っているのだ。
だから、エージルは焦っている。
交渉を任せたら、編入せずに帰ろうとしているから、俺たちに待ったをかけているのだ。
うん、当然だね。
というか、一番の目的は停戦書類の預けと宣言をしに来たのだから、それすらしないのは大問題。
「ねえ、ユキ。いったい何があったんだい!? 任せておけって命令はもらったけど、流石にこれは無いと思うよ!? このまま帰ったら僕の首が物理的に飛ぶから!! 説明してくれ!!」
エージルはもう半泣きだ。
「……ねえ、ユキさん流石に説明してあげない? 可哀相だよ」
「……これは酷い。ユキ、女の子を虐めちゃだめ」
「私も、そう思います」
リエル、カヤ、トーリが見かねたのかそう言ってくる。
そう、今回の同行者は子供がいないメンバーが多い。
学校と同じだからな、子供持ちの嫁さんは流石に遠慮したのだ。
勉学に対する姿勢としては不適切すぎるってセラリアは言ってたっけ。
それで子供を蔑ろにしたくもないって言ったのはデリーユか。
無論、獣人である3人は見せかけを誤魔化す魔術を施してある。
カヤの幻術でな、流石狐人族。
と、エージルにこれで勝手に行動を取られたら、せっかくのフラグ折って更に楽しようぜ作戦が無駄になる。
「分かった、説明するから宿屋に戻ろう」
「本当かい? また帰るとかいわないかい?」
「本当本当、これも予定の一貫なんだよ。まあ、こんなアホな事態が起こるとは思っていなかったんだが、起こしたからにはちゃんと迷惑料は貰わないといけないんだよ」
「迷惑料?」
「ま、それは宿屋に戻ってからにしよう」
そう言って、出てきた宿屋に向き直ると、そこには宿屋の主人がいまだに立ってこっちを見ている。
「すいません。部屋空いてますか?」
「ああ、たった今団体客がでて行ってな。ちょっと、部屋の掃除に時間がかかるがいいか?」
そう言って、宿屋の主人、いやおっちゃんはニヤリと笑う。
「じゃ、半月でよろしくお願いします」
「おう、またよろしくな」
そう言って握手を交わす。
うん、このおっさん本当にいい人だわ。色んな意味で。
タイトル変更:編入前のフラグをへし折る
ということで、また宿屋に戻ったわけだが、とりあえず今までの経緯をエージルだけでなく全員に説明しておく必要がある。
さっきも言ったがアホな事態が発生したのだ。
つまり、お約束、フラグが立ったのだ。
まさか、編入する前から、こんなイベントが起こるとはな。
俺とタイキ君も、予想はしてたが、流石にそれはねーよなーと笑いつつ対策を立て、無駄になると思っていたぐらいだ。
「で、一体なにがあったんだい? 編入する為の道具でも買いにいくかと思えば、帰る宣言とか、僕は物凄く焦ったんだ。納得のいく説明をしてもらうよ」
エージルは部屋に戻って、すかさず先ほどの説明をしろと言ってくる。
後ろのメンバーも同じだ。
「分かった分かった。とりあえず、話は長くなるから、座れ。あとお茶を。リーア、頼む」
「はい、分かりました」
リーアがお茶の準備を始めたのがきっかけで、皆は漸くテーブルやベットに腰を下ろす。
大部屋なので結構の人数がいまこの部屋にいる。
まあ、学府潜入のメンバーぐらいは軽く入る。
「で、ユキさんどこから話すんですか?」
タイキ君は俺の横に座りながらそう聞いてくる。
「とりあえず、とんぼ返りした原因でいいんじゃないか? ほかのフラグは話しても通じないし、編入の件には関係ないしな」
「あ、そっか。でも、お約束というか、意図的にフラグを建てようとしてるレベルなんですが」
「ま、そこは後で相談だな」
俺たちがそんな話をしている内に、全員にお茶がいきわたったようだ。
「さてと、なにがあったかと言うと……」
俺たちは学府の入口に立っていた。
漸くと言うべきか、簡単にここまでこれたと言うべきか……。
「ユキさん、対応は任せていいんですね?」
一緒に来たタイキ君はそんな風に念を押すように聞く。
「ああ、予定通りに行く。だが、話した通り、横やり系のフラグはそっちに任せる」
「ええ、わかりました。と、言ってもここまで問題なく来れたんですから、まあ、気構えだけってとこですね」
「だな。そう簡単にお約束があっても堪らんしな」
そう言って、笑いながら敷地へ足を踏み入れると同時にそれは起こった。
「あら、貴方たち、ここが魔術の学府、ランサーと知ってのことかしら?」
後ろからそんな声をかけられる。
声は女性、しかし嫌な予感がバリバリする。
あ、因みにランサーと言うのがこの学府の名前である。
文字通り、槍を意味して、魔術の最先端ということを表してる。
と、そんな事はどうでもいい。
「聞こえてますかしら?」
そう、さっさと振り向いて編入生だと言う事を説明すればいいだけ……。
だが、この口調を聞いて俺もタイキ君もやべぇ、と思っている。
なんだ、この学府はトラップだらけだと言うのか!?
「ユキさん、走り抜けます? 振り向きます? と言うか、敷地に踏み入れて一歩目でイベントとか怖いんですけど。地雷原ですかここ」
俺と同じ思考に至っているな。
くそ、こういうタイプのイベントは俺が対応なんだ。
メインストーリーのお約束は俺、サブストーリーはタイキ君ということに分けたのだ。
無論、フラグをへし折るけど。
「あ、すみません。あの塔に見惚れて、気が付くのが遅れました。おい、タイキ君、後ろに人」
「え、ああ、どうもすみません」
しかし、俺たちの予習復習に抜かりはない、不審に思われる行動もそれらしい理由をつけて連携して躱す!!
で、振り向いた先には、金髪をクルクルの巻いた、ドリル娘が存在していた。
顔つきは、美少女で問題はない、が高貴なオーラをばら撒いている。
いいか、ばら撒いているだ、滲み出ているとかじゃない、自分は偉いぞって宣伝してるような恰好と立ち振る舞いなのだ。
その姿を確認した俺たちは、その女性に頭を下げながら、さらにやべぇと思う。
「ユキさん、笑っていいですか? 俺の所の貴族でもあそこまでのは中々いませんよ。なんですか、あの意味もなく豪華な服。笑ってそのまま床叩いていいですか?」
「やめろ。タイキ君が笑ったら俺もきっと噴き出す。耐えられん。というか、あの服装はきっとこの学府だからだ、各国から魔術の勉強をする為に集まるからな、分かりやすいように服で権威を見せてるんだよ多分」
「すっげぇ、その理由なら納得です。笑いをこらえられそうです。どっかの紅白のド派手な衣装が来ても耐えられそうです」
「いや、俺はそんなのが来たら、走って逃げながら笑うわ」
うん、イメージするだけで笑えるわ。
「何をこそこそ話してますの? で、貴方たちは何用があって、この学府に足を踏み入れたのかしら? 教員や用務員ではなさそうですが……」
じろじろとこっちを値踏みするように見てくるお嬢様。
服装は貴族とは言えない恰好してるからな、普通に冒険者の恰好、いやこの大陸では傭兵か。
と、このままでは警備の兵士でも呼ばれて騒ぎになるな。
それは、俺たちが狙っている展開とは程遠い。
「はい。編入生としてきたのですが、学長殿に取り次いでくれますか? まだ、この場所には慣れてなくて」
俺はそう言う。
停戦関連云々はこのお嬢様が、ジルバとエナーリアの敵国の出身なら言うわけにはいかないからな。
勝手に情報を開示するわけにはいかないので、編入生を前にだして学長と会おう。
「はぁ? 編入生ですって? あり得ませんわね」
しかし、そのお嬢様は俺の言葉を馬鹿にしたように笑って否定する。
「えーと、あり得ないと言われましても、とりあえず学長にお取り次願えますでしょうか? 確認していただければ、わかると思いますので」
停戦云々に伴う編入の件は、先に早馬をだして、学長から直々に編入を許可する旨の返事をもらっている。
だから、確認してもらえばわかるはずなんだが……。
「確認を取るまでもありませんわ。編入とは各国の王の認可と学長の許可があって、初めて認められますのよ? それを護衛もつけていない傭兵風情が編入生を名乗るとは、極刑に値しますわよ。おわかり?」
お嬢様はそう言うと、魔力を集中させ、なんとこの新大陸では魔剣使いぐらいしかできない、ノータイムの魔術発動、つまり無詠唱をして、氷の槍みたいなものを1本ずつ俺とタイキ君に向けた。
「ユキさんこれってプランAですよね?」
「そうだな。ここまで分かりやすい門前払いを喰らうとは思わんかったが」
この状況は、お約束、フラグの1つだ。
編入に難癖をつけられて、盛大にやらかしたあと、お偉いさんに共に怒られて、喧嘩を吹っかけられた相手と因縁が続く。
相手が同性の場合はライバルか序盤の咬ませ犬、異性の場合はなんやかんやあって恋人フラグが立つ可能性が非常に高い。
「まあ、私を魔術の競い合いで退けられるなら、編入生と認めますわよ? 無論学長にも取り次ぎます。どうします?」
うん、お約束すぎるわ。
そうやってバトルしてる間に、学長が来て、喧嘩両成敗ってことになるんだよ。
こっちは悪くないのに、騒動を起こしたからって色々不遇な扱いを喰らう。
だから、俺たちはこの手段を用いる。
「いえ、結構です。この場で帰りますので。で、代わりにこの手紙を学長にお渡し願えますか?」
俺はそう言って、あらかじめ用意してもらった、門前払いを喰らった時に渡す手紙を差し出す。
「競う気概もないのであれば、どうあれ編入生だったとしても失格ですわね。で、そんな怪しい相手の手紙を渡すとでもお思いですか?」
「思いますよ」
「なぜでしょうか?」
「あなたはどこかの素晴らしいご令嬢であり、この学府の一員であることに誇りを持っているように見えます。そんな方が、まさか、頭を下げて預けた手紙を届けず捨てるとは思えません。中身は確認してくださって結構ですが、よろしくお願いいたします」
そう言って、俺たちは頭を下げる。
「分かりました。貴方たちは怪しいですが、礼儀はしっかりしているようです。この手紙はローデイ国のヒュージ公爵家が娘、サマンサが確かに届けましょう。さ、用が済んだのなら帰りなさい。街に宿もありますし、多少は観光でもして帰れば土産話もできると思いますわ」
「「ありがとうございました」」
俺たちは再びお礼を言って、すぐに学府を離れる。
あの場で手紙を開けられないかとひやひやしたが、そこまではしないようだ。
というか、ローデイ国の公爵令嬢かよ!!
エナーリアの大臣と繋がってた国のところですか!!
やべー、本当に色々フラグが乱立してるよ。
「しっかし、上手くいきましたねユキさん」
「ああ、これで、相手はどう転んでも俺たちに対して、一歩引いて迎えるしかない」
「「学府編 完 作戦成功!!」」
「……と言うわけだ」
「いや、門前払い喰らって普通に帰ってきちゃだめだろ!?」
エージルはすかさずツッコミを入れる。
「なんで、もっと喰らいつかないんだよ。もういいよ、僕が行ってくるから!!」
そう言って、席を立つエージルを捕まえる。
「落ち着け。これには理由があるし、勿論ジルバ陛下、エナーリア猊下に許可も取ってある。説明するから聞け。今までの話はなにがあったかだ。これからが本番」
「うー、わかったよ。でも納得できなければ僕が行くからね」
渋々席に戻るエージルを見て、説明を始める。
「まずは答えから言うぞ」
「答え?」
「ああ、この行動から得られる利益だ」
「はい? よくわからないんだけど? 門前払いがなんで利益につながるんだい?」
やっぱりエージルはこの手の駆け引きは苦手なのか、だから王様たちは俺主導でやれと言ったんだな。
「そこからか。まあいい、先に答えから言うぞ。この行動の結果、学長、及びランサーという学府は俺たちに1個借りという状態になった。いや、規模からいえば1個借り状態じゃないけどな」
「うーん、研究以外の分野はあまり得意じゃなくてね。分かりやすく言ってくれないかい?」
「分かりやすくね。そうだな。前もって停戦の届け出と編入の許可を貰ってる相手を、学府の学生が勝手に追い払ったんだ。これはどう見ても外交問題だ」
「え? 学生が悪いだけじゃないの?」
「そこで済ませてしまうのは、いい人なんだろうが、こういう国の交渉事はそれではだめだ。まず、編入生の云々を周りに伝えて、迎え入れる体制を整えていなかった学府全体の問題だということ。さらに、停戦関連がメインだから、追い返したという事実は各国に、どこかの国に与していますと言うようなものだ」
「あ、あー。そう言う意味になるね」
流石に説明をすれば、頭は悪くないのですぐに理解する。
「……あれ? これって学府にとって凄く不味くない?」
「不味いどころじゃないな。どこまで他の国とつながりがあるかわからんが、この話が広まれば、援助とか中立地帯ってのは意味がなくなるな」
「……つまりユキは、わざとこの状況を作って、学府に対して有利に動こうってわけか」
「そういう事。だから、編入の話は2人でわざと勘違いされやすい服装で行ったんだよ」
「なるほど、性質が悪い。で、読まれてもいい、あらかじめ作ってもらった手紙ってのは?」
「中身は、追い返されて、学府との付き合い方を考えなければならないっていう、ジルバ陛下とエナーリア猊下連名の苦情文」
「うわー。でも手紙を捨てられたりとかしたらどうするんだい?」
「それなら、堂々と学府に文句をいえるな。外交でもかなり有利だ」
「手紙を受け取っていないって学生が言えばそれまでだと思うんだけど?」
「いや、俺たちがこの学府を訪れてるのは、入口の警備や、この宿屋の主人が知っている。しかも、王様の直筆の通行許可証を見せてな。しっかり驚かれただろ? これで俺たちが学府を訪れたのは確定なわけだ」
「……ひどいね。ユキ、君は悪魔かい?」
「外交ってのはこんなもんだよ。で、手紙を渡したローデイの公爵令嬢様がどう動くかで、多少話が変わるな」
「あー、自分で手紙の中身を見てたら、すかさず僕たちを捜しに来るし、学長にわざわざ渡せば、学長に対して僕たちが圧倒的有利に立てるわけだ。わざわざ正直に持って行ったその子は大目玉だろうけど」
「当然の結果だな。俺たちは最初から丁寧に対応してたし、決闘ごっこをして騒ぎも起こしてないから落ち度は全くない。彼女の責任だな」
「わかったよ。寧ろ、普通に受け入れられるより、より美味しい状況になってることだね?」
「そういうこと」
「あとは、結果次第で行動がかわるわけだ。どちらにしても両国としては利益がでる形で」
「それまではのんびり宿屋で大人しくしててくれ。外にでるなよ」
「なんでだい?」
「ここまでの失態をしたんだから、相手もこっちの落ち度を見つけて、お互い様ってしたいはずだ、宿屋の外にでれば、色々工作されても不思議じゃないからな。向こうからこの宿を見つけてくるまではここで大人しくってことだ」
俺がそういうと、全員見つめる目が冷たい。
「うん、やっぱりユキは悪魔だね」
エージルがそう言うと、全員が頷く。
さて、準備は済んだし、学長さんはどう動くことやら。
「ユキさん、あっちの方はどうします?」
タイキ君があの話をしてくる。
ああ、そう言えば帰り道で出くわしたな。
「今はほっとけ、学府でどうせ会うだろうしな」
「まあ、そうですよね。でも、面白かったですよね。あからさまな主人公ってあんな感じなんですね」
そう、帰り道に会った、いや目撃したのだ。
テンプレな主人公を!!
どうか、関わりがありませんように。
さあ、最初のフラグはぶち壊した。
後は彼女がしつこく来る可能性があるが、大失態したから、可能性は低い。
あと、最後の言っていた主人公とは!?
ユキとタイキが黒いっていうな。
今までのオタク経験をいかして、全力で回避した結果だ。




