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落とし穴40掘:子供と思い出

子供と思い出





side:セラリア



「あーうー」


私の腕の中には天使がいる。

ぱっちりと目を開けて、私の指を小さな両手で捕まえて遊んでいる。

既に生まれて3か月近くだが、サクラの可愛さはとどまる所をしらない。

目をしっかり開けた時なんか、娘の瞳の綺麗さは世界一だと思ったくらい。


「う?」

「どうしたのかしら?」


私は娘の視線の先へ目をやると、そこにはラッツとその娘のシャンス。

シャンスと言う名は、地球のどこかの国で幸せという意味があるらしい。

と、そんな事はどうでもいい。

娘は恐らくシャンスのある場所に目が行ってるのだろう。

私だって、サクラがいなければシャンスのあそこを触りたいもの。

サクラとシャンスどっちがという意味ではないわ。

どちらも私とラッツの可愛い娘。

しかし、サクラとシャンスにはある明確な違いがある。


ウサミミだ。


当然、兎人族のラッツの娘なのだから、兎人族特有のウサミミと丸尻尾がある。

わかってはいた。当然子供にもそれがあると。

しかし、それはやはり経験を伴っていなかった。

あの小さな可愛らしい容姿に可愛いウサミミがついてるのだ。

初めて、それを見た瞬間、鼻血をだした。

可愛すぎたのだ。

このサクラも私と同じように可愛いものが好きに決まっている。

だから、シャンスから目が離せないのだろう。

本当にユキがラッツたちを妻に迎えて正解だと思うわ。

こんな可愛い娘をみて触れないとか、拷問だし。

獣人の誘拐が起こるのも納得しかけた。

あとは、トーリ、リエル、カヤ、シェーラの子供がケモミミつきだから、うーんとても楽しみだわ!!


「うー」

「おや、シャンスどうしましたか?」


あら、シャンスの方もこちらを見ているみたい。

それでラッツもこちらに視線を向てくる。


「なるほど、お姉さんが気になりますか?」

「あーあー」


シャンスはそう言うと、こちらに手を伸ばし、その様子を見てラッツは頷いて近寄ってくる。


「セラリアいいですかね? シャンスがサクラお姉ちゃんに興味深々なもので」

「いいわよ。でも、こんな時から姉妹って認識があるのかしら?」

「さあ、どうでしょう? と、シャンス、貴女のお姉ちゃんですよ~」

「サクラ、貴女の妹のシャンスよ。かわいいわね」


そう言って、サクラとシャンスの顔合わせをする。


「うー?」

「あー?」


別にこれが初めての顔合わせではないのだが、子供たちにとっては毎日が新鮮なのだろう。

可愛い瞳を真ん丸にしてお互いを見つめている。

もう、このシーンも可愛いわ。

写真を取らなくちゃ、でも両手が塞がってるのよね。

だれか、いないかしら?

そうやって、辺りを見回していると、パシャっと音がする。

私とラッツは慌てて其方を向くと、愛しい夫がカメラを持ってこちらをみて微笑んでいた。

まったく、子供ができてからカメラが必須になったわね。

ついでに横には、妹のエルジュもはぁはぁ言いながらカメラを持っている。

……うん、我が妹ながらその興奮の仕方はないと思うわ。あとで、お話しましょう。


「あーあー!!」

「あうー!!」


と、私が視線を子供たちから目を離しているうちに何かあったみたい。

視線を戻すとサクラとシャンスはお互いに体を触って遊んでいた?

その光景を私とラッツで微笑ましく見守っていたのだけれど……。


「うー!!」

「あうっ!?」


サクラが突然シャンスのウサミミに手を伸ばし、思いっきり握りしめた。


「あうーー!!」

「ふぎゃぁぁーーー!!」


獣人族のケモミミはとてもデリケートだ、大人でも触られるのを嫌がる。

だから、幼子であればなおさらだ。

大声を上げて泣き出すシャンスに流石に私も慌てた。


「こらサクラやめなさい!!」

「ふぇ!? ふぎゃぁぁーー!!」


私の声に驚いたのか、サクラもびっくりしてシャンスの耳から手を放して泣き出す。

その隙をみて咄嗟に私とラッツはお互いに距離を開ける。


「よしよし、お耳は大丈夫みたいですね。痛くないですよ~」


ラッツはそう言って泣きじゃくるシャンスをあやす。

私もおいたをして泣いているサクラをあやしながら、ラッツへ頭を下げる。


「ごめんなさいラッツ」

「いえいえ。しかし、子供はどう動くか想像もつきませんね。本当に目が離せません」

「ええ、本当に」


まだ、ハイハイもできないのに、なんでウサミミをガッシリ握ってしまうのかしら。

本当に可愛いモノ好きだと言うなら末恐ろしいわね。

でも、まだまだ幼い我が娘たち、少し遊べば疲れてすぐ寝てしまう。

ちゃんと一人一人の専用ベッドに寝かしつけて、仕事に戻りましょう。

勿論、ちゃんと子供の世話をするキルエやその日の当番の妻がいる。

で、今日は私の当番ではないのだけど、何というか、その時タイミングよくベビー室に私だけが残った。

トイレに行きたいという事で、私がかわりに残ったのだが、その時に1人の子供が起きて泣き出した。


「エリアどうしたのかしら?」

「ふぎぁぁぁぁーー!!」


エリスの娘エリアが突如泣き出したのだ。

すぐに抱き上げて、様子を見るが、オムツの交換というわけではないし、いったいどうしたのだろう?

だが、その疑問はすぐに解ける。

抱きかかえたエリアが私のおっぱいに手を伸ばしては服を邪魔そうに握っているのだ。

なるほど、私は察しがついて、すぐにエリアにおっぱいをあげることにする。


「んく、んく……」


予想通り、エリアはすぐにおっぱいに吸い付き、大人しくなる。

うん、お腹が減ってたのね。

沢山飲んで大きくなるのよ。

優しくエリアの頭を撫でながら、必死におっぱいを飲む姿に微笑む。

私のお母様たちもこんな気持ちだったのだろうか、と、子供を授かってから何度も思う。

そして、幼い私たちを残して逝ってしまうことをどれだけ悔やんだだろうか。

私ならそんな状況に耐えられそうにない。

泣き叫んで、何とか生き残りたいと、子供の成長を見届けたいと言っただろう。

でも、私たちのお母様たちはそんな素振りを一切見せず、最後まで私たちの優しい母でいてくれた。


「いつか、あなたたちの顔を見せに行かないといけないわね」

「う?」

「ごめんなさい。ゆっくり、おっぱい飲んでていいのよ」

「うー、んく、んく……」


そう、いつか、ロシュールの王家の墓へ、そこに眠る母たちに我が子たちを見せにいこう。

生身でいくから心配だけど、夫も否定はしないだろう。

我が子たちを見せた後、色々なことを話そう。

愛しい夫との可笑しな出会いとか、今までずっと剣を振って生きて来たのに、夫にいきなり台無しにされたとか、気が付けば世界を背負う夫と一緒に歩いていくと決めたとか、神様と気軽に話してるとか……。

ふふっ、お母様たちはこんな嘘みたいな話についてこられるかしら?


「あら、セラリアが当番でしたか?」


私がそうやってエリアと一緒にいると、いつの間にかエリスが来ていた。

確か、今日はエリスとリーアが当番のはず。


「いえ、ちょっとキルエが席を外したから戻ってくるまでかわりよ」

「なるほど、と、エリアですか。すみません」

「いいのよ。エリスだってサクラの世話してくれるでしょう。というか、全員私たちの娘よ」

「そうですね」


そんな話をしながらエリスが私の隣の椅子に腰を下ろす。


「今でも不思議な感じです。この子が私のお腹から生まれた。そしてこの子のお父さんがユキさんだって」


エリスは私のおっぱいを飲んでいるエリアを見てそう微笑む。


「なに言ってるのかしら、私たちの中で一番ユキと頑張ってたでしょう」


そう、このエリス、大人しそうな顔をして、夜の方はユキがへろへろになるくらい頑張るのだ。

何度か見たことあるけど、流石に私もあれはできそうにない。


「い、いえ、そういう事ではなくてですね。……その、まだ奴隷から解放されて漸く二年とちょっとになるかってところです。あの時からさほど時間は経っていないのに、ってとても不思議なんです」

「ああ、そういうことね。……確かに、大忙しだったわ」

「はい」


エリスの言う通り、ここ数年で大忙しだ。

もう、伝説に残る勇者さまたちの偉業を越えてしまっているのではないだろうか?

私がダンジョンに行ってから、僅か半年でロシュールから独立し、建国して、魔王は倒し、新しい大陸の調査に乗り出している。


「でも、大忙しなのに、こうやって自分たちの子供を産んで、育てることができている。凄いですよね。エルフの知識にもない事を、私たちの夫はやってしまうんです」

「ええ、普通なら私たちの子供は乳母たちに任せきりで、仕事ばかりでしょうし」

「それどころか、私はセラリアとも会う事はなかったでしょう。奴隷に落ちた時点で、人生は決まったようなものでしたから」

「普通はね。でも、夫がいた」

「はい。あの時、私なんか、皆の代わりにユキさんと話したんですよ。もう、怒りでも買ったらその場で斬り捨てられるとか、動物の相手でもさせられるかと思いましたよ」

「確か、ラビリスにダンジョンマスターってばれて、そのまま話をしてたんだっけ?」

「ええ、おかげで、ユキさんと話しても生きた心地がしませんでした。でも、身がまえてた結果が旅館での好待遇の生活でした」

「あははっ、それは驚くわね。まったく、その時から夫は変わらないわね。と、エリアは寝ちゃったみたいね。エリスあとはお願いするわ」

「あ、はい。お仕事頑張ってください」


私はそう言って、そっとエリアをエリスに渡して、部屋をでる。


「うーん、子供たちに癒されたし、お仕事頑張りましょう!!」


私は軽くガッツポーズをして、溜まっている仕事を片付けに向かう。

でも、ユキの本当の目的は殆ど進んでいない。

いや、まだまだ気が遠くなるほどの時間がかかる使命なのだ。

その手助けになるのなら、私も頑張ろう。

きっと、我が子たちの幸せな未来に繋がるのだから。

へい、ベイビーの話と、今までの無茶苦茶っぷりだぜ。

思い出した、僅か3年足らずで、国を作って、魔王を下して、他所の大陸にいってるんだ。

ハードどころじゃないぜ。

でも、最初からユキの目標ぶれてないし、性格も変わっていない。

ま、できることが大幅に増えてるけど。

物資制限はほぼ解除だし、魔物と言う人手なら自由に増やせる。

さあ、まだまだ物語は続く。

なにせ、まだ魔力枯渇のことは殆ど情報がないから。


勘違いしてる人がいるようだが、これは内政チートや無双のお話は、あくまでも余剰だ。

魔力枯渇を調べる上で邪魔なものを排除するための行動。

おまけ。


未だユキは、その真価を発揮していない。



さあ、残る聖剣使いはどう動くのか!!

ローデイ国との関係は!!

ミフィー王女は無事停戦にこぎつけるのか!!

が、ユキにとっては本来の目的を遂行する為のオマケイベントにすぎない。

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