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第225掘:お転婆姫とのお話

お転婆姫とのお話




side:セラリア



ふぅ、大体今日の会議は終わりね。

まったく、休む暇もないわ。

でも、新大陸の件が無ければ、進展なく、ウィードと諸外国の外交だけなのよね。

それだと、私が退屈で死ぬわ。

サクラのことを考えれば、安全な平和な時がいいのでしょうけど、この世界はいつ魔力枯渇で均衡が崩れるかわからない。

なら、夫の背を押して、それを支えて、進むのが私の理想。

ん、夫の背を押して支えて?

あ、忘れてることがあったわ。


「……って、あなた、ジルバへの報告はどう済ませるのよ? というか、エナーリア方面のトップとしてきたお飾りのお転婆姫との話はどうなったの? 聞いていなかったわ」


そうそう、私たちが暴れたせいで、お転婆姫が大博打をしなくて済んだのだけれど、そのお転婆姫との会話を詳しく聞いていないのよね。

ジェシカから、あの新大陸でのいい後ろ盾、もとい、いい嫁候補って聞いてたけど、私自身が暴れるってことでわくわくしてて、忘れてたわ。


「そういえば、その報告は聞いてませんでしたね。お兄さんが確か、ジルバ帝国王族の末裔とかいう、お話でお姫様との関係悪化を防ごうとしたんですよね?」

「はい、その通りです。その情報を前もって、オリーヴ様がベータンを訪れて教えてくれました。口裏を合わせて欲しいと」

「そうですよねー。わざわざ、内側が乱れるようなことはしたくないですからねー」

「ラッツ多分そこは違うわ」

「ん? なにがですか?」

「恐らく、ジルバの王は、私たちとことを構えるようなことを避けたかったのよ。無論、内輪もめをしたくなかったという理由もあるかもしれないけど、一番の理由は私たちを敵に回さないことよ。だって、そうなれば、確実に、奪った領土が無くなるし、私たちが敵にまわるからね」

「はい、多分、セラリア様の言う通りだと思います」

「話を聞く限り、ジルバの王はそこまで馬鹿じゃないわ。流石に大国をまとめているだけあって、ちゃんとそういうところの、パワーバランスは理解してるのよ。まあ、私たちみたいな常識はずれが来て、さぞかし頭が痛いでしょうけどね」


私だって、夫と初めて会った時は、理解の外の出来事ばかりで、混乱してたし、それを考えると、夫の能力を判断し、協力を仰いだクソ親父はそれなりにまともなのだろう。

でも、私の中ではクソ親父なのだが。


「と、話がそれたわ。あなた、結局そのジルバのお姫様とは面会したのでしょう?」

「会ってきたぞ。嫁さんたちが暴れるから、そこら辺の言い訳もしとかないと大混乱になるからな」

「あら、なにか不機嫌ね」

「そりゃな、終わったこととはいえ、嫁さんたちを戦場に連れてくるような真似したからな。正直、心配でたまらなかった。今までは、すぐにサポートできる位置にいたからなー」


夫の言葉で私たち、妻たちが頬を染める。

夫にとっては、この世界で初めての家族なのだから、その気持ちはわかる。

こういう人なのだ、私たちの夫は。だからこそ手助けをしたい。

というか、さっさと押し倒してしまいたい。

……よし、今日は布団にもぐりこんで、朝までやろう。

はっ、いけない、いけない、いい加減話を進めないと。ジルバの王女様との話を聞いて、夫がジルバにどう報告するかで、エナーリアと停戦するにしても、動きがかなり変わってくる。


「あなたの愛情は全員が理解してるわ。それより、面会してなにを話したのか、そして、報告はどうするのかで、今後の行動が変わるから教えてくれないかしら?」

「だな、ちゃんとジルバの姫との面会も話さないとな。じゃ、ジェシカ、あの時の話を頼む」

「え、私がですか?」

「報告書は一緒に作っただろう? 会話した本人よりも、第三者の視点で、会話の様子とか話した方がいいんだよ。主観も無論必要だけどな。ついでに、ジェシカはジルバや周辺諸国の知識もあるから、俺たちが気が付けない点も気が付くかもしれないからな」

「そうね、夫の言っていることはもっともだわ。ジェシカ報告頼めるかしら?」

「分かりました。では……」


ジェシカはそう言って、席を立ち、まとめた報告書を私見も交えながら読みはじめる。



side:ジェシカ



とりあえず、会議に向かうところから話した方がいいでしょう。

実際あの時は、セラリア様の発言で、大幅な作戦修正が必要になりました。

ホースト殿への説明や、斥候のルートをわざわざ変更するようにしないといけませんでしたからね。


「では、そうですね……ベータンの街を出る所からですね」


私は、当時を思い出しながら、報告書と照らし合わせて、その時のことを話始めました。



「じゃあ、砦へ行ってきます。敵が来るとは思えませんが、気は抜かないでください」

「はい。お任せください」

「一応、ゴブリンたちは残しておくので、なにかあれば言ってください。ホースト殿たちには協力するようにいってあるんで」

「わかりました。心使い感謝いたします。こちらもいらぬ心配でしょうが、どうかお気をつけて。今やユキどのたちはベータンになくてはならないのですから」

「ホースト殿もですよ。万が一の時は街なんか捨ててみんなで逃げてください。命があれば街はまた作り直せる」

「ははっ、あっさり、手に入れた街を放棄するように指示するのはユキ殿ぐらいですぞ」

「街とみんなの命は、秤にかけることではないってことですよ」

「……そこまで思っていただき感謝します」


ホースト殿たちとそんな会話をした後、私たちは車、マローダーに乗り込んで、出発します。


「ねぇ、ユキさん」

「ん、どうしたリエル?」

「さっきはあんな風にホーストさんたちと話し込んだけど、日帰りだよね?」

「そうだな。それがどうした?」

「いやー、あんな会話して、日帰りってのもなんだかなーって」


確かに、あんな会話をした後で、日帰りは多少変な感じがしますね。


「気にするな。いつ戦いが起こっても対処できるようにって話だしな。いついかなる時も油断するなってことだ」


確かに、ユキがいうように、こういう心構えは大事です。

日帰りだろうが、一か月かかろうが、ああいう心構えでいれば問題があっても対処できるでしょう。


「ユキさん。そういえば、砦にいるミフィー王女様への対応ってどうするんですか? わざわざオリーヴさんが口裏合わせにまでやってきましたし、なにか考えているんですか?」

「そういえば、そうです。私たちはなにも聞かされていません。これでは私たちに話を振られても対応できませんが?」


リーアの言うことに私も賛同します。

言われて思い出しましたが、ミフィー様は王家であることを誇りに思っておられます。

ユキのように、適当な受け答えでは、色々不味い気がするのですが……。


「あー、それは大丈夫。俺一人だけが子孫ってことで、みんなはなにも知らないってことにするからさ。ジェシカは、そのミフィー王女と会う時仲介役してくれ、その方がスムーズだろ」

「ええ、それは構いませんが……」

「そういえば、ジェシカと結婚したって話はどうする? 伝えるか?」

「ふぇっ!? な、なんでその話になるんですか」

「いや、上司のマーリィもいるし、何も話さないまま、ジェシカのお腹が膨れたらそれはそれで問題だろ?」

「た、確かにそうですが……」


砦で、結婚発表ですか!?

いえ、確かにユキに身も心も捧げましたが、マーリィ様の手助けは続けていきます。

だから、隠す理由もないですけど、なんと言いますか……。

結婚したといえば、つまり、ユキと子作りをしたというようなものでして……。

いえ、子作りは好きですよ。大歓迎です。

じゃなくて、これでは騎士としての威厳が……。


「んー、なんか歯切れ悪いな。ミフィー王女とかが既婚者嫌いとかあるのか?」

「……はっ!? そうです!! ミフィー様が問題です!!」

「ひゃっ!? ジェシカいきなり大きな声ださないでくださいよ」

「あ、リーア、ごめんなさい」

「もう、私はわかっていますよー。ユキさんとのあんなことやこんなこと考えて、思考停止してたって」

「ち、違いますよっ!! ユキ違いますからね!! 決してやましいことを考えては……」


そんなことをして、リーアとじゃれた結果……。


「リンゴジュースこぼしちゃった……ふぇぇぇーん」


アスリンが巻き込まれて泣いてしまった。


「ちょっと、いい大人がアスリンを巻きこんで、なにやってるのよ!!」

「大丈夫ですかアスリン!!」


ユキの膝上に座っていたラビリスと、助手席にいたフィーリアがアスリンの泣き声で飛び込んできた。

ついでに車が停止して、ジュースをこぼしたところがシミにならないように、処置をすることになりました。


「まったく。2人ともユキさんの護衛なんだからしっかりしてよね」

「アスリンを泣かすのもだめ」

「「すみません」」


車の掃除をしているあいだ、リエルとカヤからお説教されていました。


「まあまあ、2人とも反省しているし、許してあげよう」


トーリが私たちを庇ってくれるのですが、正直、自分たちが悪いのは自覚しているので、本当にすいません。


「うーん、べたべたするー」

「ウエットティッシュで拭きましょう。それでべたつきは取れると思います」

「ありがとう、シェーラちゃん」

「アスリン、とりあえずこれを着なさい」

「ありがとう、ラビリスちゃん」


泣いちゃったアスリンは、シェーラ様やラビリスと一緒に後片付けをしています。


「兄様、シートはどうですか?」

「うーん、特に問題ないぞ。そんなに大量にこぼしたわけでもないしな。ついでだ、少し休憩をしよう。で、ジェシカとリーアはこってり絞られているみたいだな」

「「ごめんなさい」」

「ま、反省しているみたいだし、俺からはとやかくいわないよ。それはいいとして、ミフィー王女が問題だとか言ってなかったか?」

「あ、そうです。身に余る光栄であるのですが、ミフィー様は私に憧れてくれていまして、その、魔剣使いと数合でも剣を打ち合わせられる女傑と」

「あー、なるほど。そりゃ、ジェシカと結婚しました。なんて言うと問題になりそうだな」

「はい、説明をすればわかってくれるでしょうが、そんなことで時間を割くわけにもいきません」

「だな。今回は結婚の報告は先送りにするべきだな」

「それがいいと思います」

「しかし、どれだけ慕われているんだ? それによっては、俺はあまりジェシカと近くにいない方がいいかもしれないぞ?」

「そこまで公私混同するような方ではないので、私の役職を言えば普通に接してくれると思いますが」

「ふーん、ならいいか」


そんなことを話しつつ、休憩を取ったあと、砦へとマローダーを進め無事に着いたのですが……。


「騎士ジェシカ、よく無事で!!」

「え?」


砦の門をくぐる前に、ミフィー様が抱き付いてきたのです。


「傭兵団、いえ王族との仲介役ご苦労。あなたのおかげでいらぬトラブルを抱えずにすんだわ、ありがとう」

「い、いえ。これもジルバの為です」


……私自身がユキといたいからとか言えませんよね。


「しかし、現在の状況はとても厳しいの」

「わかっております。だからこうして砦で会議をすると」

「ええ、ですが、まず先にしておかなければいけないことがあります」


そう言ってミフィー様はようやく私から離れます。


「何かありましたか?」

「はい。と、後ろの方たちが例の?」

「はい、その傭兵団と王族の末裔の方、ユキです。ユキ、こちらがジルバ帝国、第5王女、ミフィー・ベージズ・ジルバ様です」

「どうも。このような恰好で申し訳ない」


ユキが無難に頭を下げる。


「いえ、お気になさらないでください。今は国の危機。その瞬間に手を差し伸べてくれた貴方方に感謝いたします」


ミフィー様も丁寧に挨拶を返します。


「ミフィー様、この挨拶が先にしなければいけないことなのでしょうか?」


私は先ほどミフィー様から言われたこと確認していた。

しかし、わざわざ自己紹介を慌てて砦の門前でやるようなことではない。


「ああ、違うのよ。騎士ジェシカ、今この時をもって仲介役を解任。そして、私、ミフィー・ベージズ・ジルバの側近となりなさい」

「は?」


なにを言っているのでしょうか?

理解がまるで追いつきません。

奥で姫様、マーリィ様が手を合わせて謝っていますが、どういう意味でしょうか?


「これから起こる戦いは、生半可ではないわ。戦力を聞けば、傭兵団の方には魔剣使いがいないとのこと、ならば戦力が低いベータンの補強をしなければ、あっという間にベータンが落とされ戦線が崩壊します。ですので、ジェシカを私の側近にし、オリーヴをベータンに向かわせます。いいですね? ユキ殿もそれでよろしいかしら? これを前提として会議を進めたいのだけれど……」


ユキもどう返事をするのがいいのか悩んで即答できずにいます。

私は、正直、結婚してすぐ引き離されるとか絶対嫌で、つい……。


「断ります!! ユキと結婚していますので!!」


「「「は!?」」」


「あ」


やっちゃいました。

ジェシカは結構乙女です。

爆発しております。

色々と。


と、話はかわりますが、

「必勝ダンジョン運営方法 1」

発売まで一週間!!

いやー、実感わかないわ。

みんなよろしく!!


では次回。

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