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第218掘:戦

ゴールデンウィーク楽しんでいるかい!!

俺は仕事だ!!

そんなことより本編どうぞ!!




さて、いきなりではあるが、戦とは何なのだろうか?

曰く、戦争とは軍事力を用いて様々な政治目的を達成しようとする。

つまりは、自衛や利益の確保を目的に武力を行使することである。

国と国のぶつかり合いだけを戦や戦争というのではないということ、人の意志で戦争と思えば、個人で戦争というのもありなのだ。

そう、傍から見て、小競り合いや前哨戦と言われる物自体も、大きな戦争の一部とみるか、それが1つの戦争とみるかは、個人個人の主観によって違うということだ。


歴史という観点から、戦を振り返ると一番意味が分かりやすいだろうか。

数多の戦いや戦争があるが、必ずある場面が存在する。

その戦争の流れを変えた、あるいは終わりを引き寄せたと言われるであろう戦い、転換期、起点、色々呼び方はあるが、人々のなかでこれぞと言われる記憶に残る戦いだ。

たった1つ、1地方の小さな戦いが、全ての流れを変えたといわれる。


そして、その戦争の流れを変えると思われる戦いが、ジルバ帝国とエナーリア聖国の間で起ころうとしていた。

かの2国は大陸において、遥か昔から国として存在し、他の国を退け、平らげ、大きくなっていった。

お互い、周りの国の対応で忙しく、それなりに距離が離れていたため、昔はぶつかり合う事はなかった。

だが、ここ近年で周りの国はほぼ従属か、取り込み、あとは残った強豪国相手に戦争をしてる状態。

無論、その残った強豪国相手はお互いにジルバ帝国、エナーリア聖国も含まれており、今まで散発的ではあるが、国境争いが起こっていた。

その中、ジルバ帝国が好機と見たのか、この大陸における最強の駒と言うべき、魔剣使いを3人を一点に集め、驚くべき速度でエナーリア聖国の砦と街2つを陥落させたのだ。

この報告を聞いたエナーリア聖国も、大陸で2人といない、二刀流の魔剣使いを将軍の筆頭に、さらに魔剣使いを投入し、10万を超える大軍で奪還作戦を行うが、不幸なことに自然災害により、この10万は行方不明となってしまう。

しかし、これは行方不明となっただけで、実際は10万のほとんどが健在であり、未だ、この地方における戦いの行方は知れず、互いに、増援が到着するまで膠着状態が続くことになる。

無論、お互いに増援が到着するまで色々な手を打つことになるが、この戦いは最終的に増援が到着した互いの軍がぶつかり合い、結果がでると誰もが思っている。



しかし、エナーリア聖国、増援部隊指揮官ブーリス・ウーリーはその考えを持っていなかった。

彼はエナーリア聖国でも、屈指の名将であり、魔剣という飛びぬけた力はないものの、優れた戦術眼の持ち主で、多くの戦いを勝利に導いてきた。

今回の増援部隊の指揮官という役どころは、本来であれば、一軍を任せられる彼には相応しくない地位であるが、彼は事態の重要性を理解し、即座に8万もの寄せ集めをまとめ、出立するという、見事な采配を見せた。


side:エナーリア聖国 増援部隊指揮官ブーリス・ウーリー将軍


「いいか、この戦い、プリズム将軍と合流してからでは遅い」

「どういう意味でしょうか?」


私はこれから取るであろう行動を、部下たちと移動しながら話している。

いちいちテントを張って、戦略会議などしている暇も惜しいと言う事だ。

無論、歩兵の状態をよく保つ為に、休憩や休みはちゃんと入れるがな。


「この戦いはいかに、増援が素早く到着し、仕掛けるかがカギになる」

「え、プリズム将軍の指示を仰げと言われていませんでしたか?」

「ブーリス将軍らしくないですぞ? 他人の戦場で名を上げるつもりですかな?」


部下たちはやはりこの事態をあまり重く見ていないようだ。

だからちゃんと意味を伝えておく必要がある。


「我らの目的はプリズム将軍を連れて帰ることではない。プリズム将軍と共に砦と街を奪還し、そのままジルバへとなだれ込むことだ」

「はい」

「そうですな」


まずは、私たちがどの様な目的で増援として来ているのかを確認する。

部下たちもその命令は知っているので問題なく頷く。

だから、本隊であるプリズム将軍と合流というのは、当然と言う流れになるのは仕方ない。

だが、現在の状況はそこまで甘くはない。


「未だ、プリズム将軍が遺跡から脱出できたという連絡はきていない、そして、崩落現場は既に敵が制圧してしまっている。しかし、その崩落現場の敵兵の数はそこまで多くはない。この意味はわかるか?」

「それは当然、我らから奪った砦や街に戦力を集め、防衛能力を上げているのでは? たしかに、3人の魔剣使いはいますが、戦力差は現状5倍以上。あっと言う間に飲み込まれると思っているのでは?」

「ですな。ジルバは3万に及ばない兵数の少数精鋭で3つの拠点を落とし、その兵数をさらに3つに分け、防衛にあたっております。崩落場所に割ける人員がそこまでいないということでしょうな」

「そうだ。だからこそ、我々はいち早く、敵の、ベータンの街へ攻め込まなければいけない。我々だけが増援にきているわけではない。敵のジルバも増援を送っているはず。素早く仕掛け、こちらが先手をうたねば、プリズム将軍との合流も困難なものになる。逆にこちらから仕掛け、分隊で崩落現場の制圧を行えば、そこからプリズム将軍たちの救出、合流が可能となるのだ」


私がそう言うと、部下たちは思案顔になる。

この2人も馬鹿ではない、むしろ私の代わりに軍の指揮ができるいい器の持ち主だ。


「なるほど、プリズム将軍と素早く合流するためにはそれが一番かもしれませんね」

「しかし、砦を瞬く間に制圧してしまった魔剣使いたちが……くるわけないか、相手もこちらの出方が分からず、増援を待ち、守りに入っている。この場で睨み合いや、堂々と崩落現場で救出作業をする方が、我々にとっては不利になりますな。相手の出方を窺うより、先に手を打ち、相手の行動を制限するのですな?」

「そうだ。こちらから攻めれば、相手は守っている拠点から動くことはできなくなる。だが、これでは相手が万が一出陣した場合、後方を突かれ酷い被害を受ける可能性がある」

「そうですね。相手も何かしら手を打たないと各個撃破されてしまうのはわかるでしょうから」

「なるほど、ここで私たちが相手より数が勝っていることを利用するのですな?」

「ああ、騎馬を中心にベータン以外の方へ2千ほどの部隊を送り牽制させる。そうすれば見張りにもなるし、相手の伝令兵を叩き、相手を情報から孤立させることも可能となる」


これで相手は、私たちの動きは疎か、味方がどこまで来ているかすらわからなくなる。

敵の将軍格はともかく、一般の兵はその状況に耐えられなくなるはずだ。


「ふむ、それならその間を抜け、奥に兵を送ってはどうでしょうか?」

「どういうことだ?」

「相手の増援を遅らせる為です。相手からみれば、まだ砦や街が健在のはずなのに、私たちの軍が敵の増援部隊を発見すればどう思いますか?」

「ふむ、当然砦が落ちたと思うだろうな。将軍、これは妙手ですぞ」


確かに、そのまま戦闘にならなければ、足止めとしても使えるし、相手の増援の情報も得られる。


「その作戦を採用しよう。ベータンの街は領主のホースト殿が離反を約束しているし、5万の数で当たり、崩落現場へ1万、砦ともう一つの街へ5千ずつ、そして合間を抜け敵の増援の足止めを5千」

「残りの5千はどうするおつもりですか?」

「徹底的に、相手の情報を塞ぐ役だ。1人とて、各街や砦から逃がすな。そして、増援部隊本隊以外は牽制のみにとどめよ。相手が出てきたらすぐに距離をとり、離脱を繰り返せ。時間を稼ぎ、相手の動きを封じるのが目的だということを忘れるな」

「「はっ」」


この一戦、負けるわけにはいかない。

数字上、現在の状況を見れば負ける可能性は限りなく低い。

しかし、プリズム将軍たちは自然災害により思わぬ窮地と足止めを食らった。

私たちもそれが無いとは限らない。

いま使える数の力を存分に使い、慢心なく、油断なく、確実に勝利をつかみ取るのだ。



side:???



「へぇー、なるほど。数の力を存分に使ったってところね」

「そうですね。あれ程の数で広域に展開されると連携が取りづらいのですが、それを感じさせません。あの作戦は恐らく私たちの情報と言う目と耳を塞ぐつもりなのでしょう」

「あら、兵法をたしなんでたかしら?」

「いえ、旦那さまのところに来てからですね。というか、あれ程の知識があって知らぬふりを出来るのは愚か者ですよ」

「そうよね。まったく、私たちの夫は凄まじいわ。ただの知識、でもそれは使いよう。それを分かっていて、私たちに惜しみなくこの知識を教えてくれた」

「はい、旦那さまは私たちを信じてくれた。自分の手でなく、私たちが自ら、自分たちの住む世界を守れるよう色々な知識を教えてくださいました」

「なら、その邪魔をする愚か者はどうすればいいのかしら?」

「道を正しましょう。それが元聖女であり、あの人の妻である、私が望むあり方です」

「道ねー。私は只夫の前に立ちふさがるモノをなんであれなぎ倒す。それが、剣を持って生まれた理由なのだから」


そんなことを聖女様と私は話しつつ、エナーリアの情報封鎖部隊と思しき軍の進軍を阻むように、のんびりその道を歩く。


「女か……、身なりからして、それなりの身分なのだろうが……、今の命令は何人たりとも、我らの存在を知られるわけにはいかん。斬り捨てよ!!」


私たちの姿を見て、すぐに騎馬に乗った兵士が剣を抜き、こちらに向かってくる。


「あら、立派。命令を忠実に遂行する。いい兵ね」

「はい。ですが……」


お隣の聖女様は目を細めて、棒術にも使える杖をトンッと地面に突き立てる。

すると、目の前に迫っていた騎馬が倒れ込み、兵士は落馬してその場から動けなくなる。


「私たちの力量を見極められないようでは、まだまだです」

「何をしたのかしら?」

「重力……と言いたいのですが、重力の概念はいまだ私は理解しきれていませんので、魔力そのものを当てて、そのままと言うわけです」

「あー、てっきり風系でも使ったかと思ったのだけれど、魔力そのものか、良くも悪くも夫に似て来たわね」


しかし、これじゃ私の見せ場がないわね。

しかたない、私が尋問しますか。


「ぐっ……、なにが起こったのだ」

「さあ、なんでしょうね。とりあえず、なんで私たちにいきなり斬りかかってきたのか教えてもらいましょうか?」


私は剣をそのまま、兵士の首に突き付ける。


「……言わぬ。さっさと殺すといい」

「あら、潔いこと。まあ、でもあらかた予想はつくし、全員がだんまりってわけでもないでしょう」

「……私を殺したところで結果はかわらないし、お前がどうにかできる甘いものではない」

「そう、楽しみだわ。分散している5千ほどと、砦と街、そしてそれを無視し、奥深くに進軍している各5千。私たちの相手を出来る人物がいることを祈りましょう」

「なっ、なぜ、それをっ……!?」


相手の言葉を最後までまたず、意識を刈り取る。


「ごめんなさい。そっちが教えてくれなかったから私も教えるつもりはないわ」

「もう、気絶してますよ?」

「いいのよ、雰囲気ってやつよ。さて、さっさと情報封鎖してる奴らを片付けて、サクラとスミレのところに帰りましょう」

「そうですね、他所はみんなが行ってますからね。けど、久々に動くっていいですね」

「そうね、気持ちがいいわ。運動と気分転換を存分に楽しみましょう」

「はい。でも頑張って早く終わらせて他所の応援もいいかもしれませんね」

「いいわね。ルルア、本当に変わったわ」

「セラリアのこういうところは昔は理解できませんでしたが、今は少しは理解できます」

「なら存分に楽しみましょう」


剣を鞘に納めて、敵がいる方向を眺める。


「さあ、前哨戦、小競り合い、そう言われる戦場ですべてが決するとは思っていないでしょうね」


相手の将軍がこの報告を聞いてどんな顔をするのか楽しみだわ。


と言うわけで、相手の増援部隊の将軍は決して無能ではありません!!

各方面へ5千、そして情報封鎖に5千、セラリアとルルアはどう立ち回るのか!!

ベータンはついに敵の猛攻にさらされる!!

ピンチだぞ!! 心配しろよ!!

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