表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸編 魔剣と聖剣

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

248/2194

第202掘:けっ

けっ




side:ユキ



ホーストが治める街、ベータンの一角で小さな淡い光が溢れる。

その光が収まる。


「ほれ、治ったぞ。男の子がいつまでも泣くとお母さんが心配するぞ」


俺がそう言うと、膝を擦り剥いて、泣いて男の子がきょとんとして、自分の足を見てからピョンピョンして痛みがないか確かめる。


「おじちゃん、ありがとう!!」

「こ、こらっ!! も、申し訳ございません!!」


治ったと分かったのか、小さな元気な男の子が俺に向かって礼を言う。

横の母親は俺のことを知っているのか、顔が青ざめている。

ま、占領軍のトップだし、ご時世、この世界の常識から見ればそうなるのは当然か。

だが、俺はそう言った横暴を働くつもりはない。

街の人たちから受けれてもらわないといけないので、紳士的に振る舞う。

いや、この程度で怒るやつは日本でも異常だと言われるぞ。

あ、女性に対しておばちゃんは保証しないけどな。相手が子供でも容赦しない女性がいる。


「気にしないでくれ。その子から見れば立派なおじちゃんだ。ああ、怪我は魔術で治したけど、見ての通り血だらけだ、どこかで洗うか拭くかした方がいい。水場とかは近くにあるのか?」

「うん、あっちにあるよ。おじちゃん」

「こ、この子は……」

「元気があっていいじゃないか。よし、膝を治したお礼だ水場まで案内してくれるかな?」

「いいよ、こっちだよおじちゃん!!」


そうやって、子供が俺の手を引いていく。


「おっと、急ぐとまた転ぶぞ」

「大丈夫だよ。さっきのはちょっとゆだんしただけなんだ。で、おじちゃんの横にいたおばちゃんたちは一緒にこないの?」

「「お、おばっ!?」」


あ、リーアとジェシカも地雷の言葉だったか。

顔が引きつってる。


「お、お許しください!! どうか、どうか!!」


お母さん、さっきより必至だわ。

同じ女性、どれだけ禁句か分かったんだろうな。


「君は女の子の気持ちがわかっていません」

「そうなのです。その言葉は言ってはいけないのです」

「紳士の言葉ではありませんね。もっと女性には優しくしないと」


俺の横について来ている、ちびっこアスリン、フィーリア、シェーラがそう男の子に諭す。

いや、理解できるわけないぞ。


「なんだよお前ら。おじちゃんの子か?」

「違います!! お嫁さんなんです!!」

「そーなのです!!」

「そこは訂正してください。妻です。間違ってもユキさんの子供ではありません。寧ろその子供を産む方です」


シェーラもマジに説明するな。

本当にわかるわけないから。


「ま、いいや。おじちゃん、こっちに井戸があるよ」


ほっ、理解できないことはどうでもいいタイプでよかった。

説明を求めたら色々こじれるわ。


「あの歳の子は仕方ないわ。皆も落ち着いて」

「うにゅー。ラビリスちゃんがそう言うなら」

「むー。分かったのです」

「……そうですね。少し大人げありませんでした」


ラビリスの言葉でちびっこたちは大人しくなる。


「いいえ、子供の言うことですから。どうかお気になさらずに」

「はい、その通りです。お子さんに大事が無くてよかった」


リーアとジェシカもそうやって母親と話している。

因みに、獣人組は流石にまだ街の人にどう扱われるか分からないので、屋敷で待機。

そうやって皆の様子を見つつも男の子に手を引かれて、水場へと軽い駆け足で向かう。


「なあ、おじちゃん。あの胸になんか大きいの2つ入れてる女の子いるけど、重くないのかな? 邪魔じゃないかな?」

「……どうだろうな」


うん、そうだよな。

それが普通の反応だ。

ラビリスのあのぱよぱよが本物だと思うのは、生を見た人しかありえない。

それぐらいに大きいのだ。でも、不自然さはない。

ラビリスがその胸に慣れていると言う事だ。

ま、動けばブラをつけていてもたゆんたゆん揺れるので、よく見れば本物だとわかる。


「わー!! ラビリスちゃん落ち着いて!!」

「流石にその刀は不味いのです!!」

「街が防壁まで真っ二つになってしまいます!!」

「色も知らない子供に私の胸を邪魔とか言われたの!! 止めないで!!」


やめろよラビリス。街が壊滅しかねないから。


「ここだよ、おじちゃん」


後ろの叫び声に耳を傾けていると、井戸、水場についてしまったらしい。

護衛のリーアとジェシカはこの子の母親と話していると思ったが、いつの間にか俺の横にいる。

んー、護衛の仕事をこなしてくれて嬉しいね。

1人で街をぶらぶらすることはかないそうにない。


「へー、ありがとな。君はさっそく膝を洗って綺麗にしてきな」

「うん」


俺がそう言うと男の子はそのまま井戸へと向かって、すぐに水を引き上げるためにロープを引く。

すぐ横には、いつの間にか母親がいて、間違って落ちないように注意深く見守っている。

こちらと目が合って、軽く頭を下げる。


「ここが水場、井戸ね。分かっていたが、不便で危ないな」

「それは仕方がないと思いますよ」

「ウィードが異常なんです」

「そりゃ、な。でも、分かりやすい改善場所としてはこれ以上のものはないしな」

「ですね。食事の改善についてはホースト殿も受け入れていますが、それはお金を食に回せる余裕がある人々だけです」


そう、胃袋で人々の心を掴もうにも無料で永遠に提供するわけにもいかないので、販売という形を取ることになる。

無論、お金が無い人、つまり生活に余裕のない人には関係のないことになる。

その為の解決策が、水場の改善。

この大陸は予想通り、井戸から水を引き上げて使うのが主流だ。

だからポンプなどを導入して、領主と俺たちからの公共事業ということにする。

そうすれば、裕福の有無にかかわらず人々が水を汲むという労働に手を力を割かずにすむ。


「慣れてきたら水道も配備するけどな。まずはこれからだ」

「そうですね。いきなり上下水道配備とか、街の人たちの理解が追い付くわけがありません」

「その関係で、トイレは当分先だよな……」

「……トイレの設置は優先していいんじゃないでしょうか?」

「……ですね。リーアの意見に賛成です。衛生面のことでもあります、人々の命に直結しますので、理解の有無にかかわらず設置すべきです」

「匂いが酷いとか、自分の用足しを見られたくないからとかいう意味ではないんだな?」

「「……」」


横を向く2人。


「いや、別に悪いとは思わん。嫁さん2人の用足し姿なんて余所の男に見せたいわけないしな」

「ありがとうございます!!」

「……えっ? 今2人といいましたか?」

「おう、言ったぞ。流石にこんな状況に巻き込んでおいてポイする気はないからな。ジェシカさえ望めばってことだ。ま、俺以外でもいい男はごまんといると思うから、この指輪は受け取らなくてもいい」


そう言って、懐から豪華なケースに入った指輪を見せる。

デザインは無論他の嫁さんと同じだ。

と言うか、いい加減、俺から言ってやれと嫁さんたちから叱られていた。

ジェシカは実直なので、自分からは決していいだすタイプじゃないし、まず義務が優先してそんな感情を抱くのは難しいと。

このままでは、一生、俺の護衛で独り身になる可能性が高いから責任を取れと。


俺の変な告白と、指輪を見せられたジェシカは口をパクパクさせながらも、指輪のケースへと手を伸ばし受け取る。


「……混乱してるなら、また後日でもいいんだぞ? 無理に……」

「無理に受け取りはしません。流石の私でもそれぐらいの判断はできます」


俺が言葉をつづける前にジェシカがすぐに言葉を紡ぐ。

ジェシカは指輪を取り出して、こちらに渡そうとする。


「やっぱりいやか」

「い、いえ!! 違います!! 指輪は男性からはめてもらうものでしょう!!」

「……そっち?」

「そっちとはなんですか!! 本当に変なところで気が利きませんね!!」


ジェシカにしては珍しく声を荒げてまくしたてる。

言い分ももっともなので、指輪を受け取り、彼女の左手の薬指へ指輪をはめる。


「あー、そのなんだ。ごめんな気が利かなくて」

「……いえ。私も少し子供すぎました。でも……」

「でも?」


なんか、他に地雷踏んでたか?


「……ううっ。リーア、こんなに嬉しいものなのですね……」


そのまま泣き出して、リーアにすがる。


「あらら、駄目ですよジェシカ。こういうのは夫の胸を借りないと」


リーアはそう言って、すかさずこちらにジェシカを押し付ける。

避けるのは空気が読めなさすぎるので、ちゃんと受け止める。


「……尽くします。一生貴方の、ユキの剣と盾となり、妻として支えます。ぐすっ……」


そのままジェシカを抱きしめて、あることに気が付く。

井戸周りの皆さまが、にやけた顔でこちらを見ている。


「みてみて、お母さん!!」

「あら、占領軍の人だと思って怖かったけど、随分可愛らしいのね」

「いいものを見たな」

「……でも旦那の方は少しぶっきらぼうすぎない?」

「……ばかね。こんな人前で告白するほうが凄いと思わないの?」


しまった。

ジェシカのことだから、淡々と受け取るか断るかの二択だと思ってました!!

感極まって泣くとか思いませんでしたよ!?


「いい、素早く連絡するのよ!!」

「わかりました!!」

「わかったのです!!」

「キルエ、もしもし!! ジェシカさんが妻入りしました!! 今日は盛大に祝います!!」


ちびっこたちはすかさず他の嫁さんと連絡を取っている。

恐るべし。


「……こんな感じだが、本当にいいのか?」

「……これがいいんですよ」


流石にその場でキスなどはなかったが、近場でお互い見つめ合って、自分たちの状況に笑ってしまった。

うん、人生わからなすぎるわ。

とくに女心。




side:下っ端ゴブリンたち 



おいらたちは、一応奴隷扱いという名目で、本日街の治安維持と街の地図作成の任務をこなし……。



大将とジェシカ姐さんの場面を見かけました。

ま、近々こうなるのは分かってましたよ。

でも、これをやらせてください。


「「「けっ」」」


人生、いやゴブリン生は不平等だ。


あ、スティーブ隊長にまた連絡入れとこ。

ムービー撮ったやついるかな?

はい、みんなゴブリンと同じようにならないことを祈ります。

ジェシカの方は、指輪を渡されてようやく、軍人としてではなく、本来の感情が出たような感じです。


ま、リア充爆発しろ。


と、ジェシカの話がオチをもっていきましたが、ちゃんと街の開発にも着手してますからね。

ポンプの設置。

定番です。

ユキはちゃんと仕事をしてるので、誤解なきように。

でも、嫉妬がなくなる理由にはならんがな!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ゴブリンズにも結婚相手ができると良いですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ