第161掘:まっとうな戦い? 裏側
まっとうな戦い? 裏側
side:ユキ
「と言うわけだ。頑張れ」
「頑張れじゃねーっすよ!! 馬鹿にしてますか? してるっすね大将!!」
「いや、できると思うんだけどな」
「むーり!! いくらなんでも、2500の兵士を向こうに回して。俺たちゴブリン隊だけで抑えろとか!!」
「別に、全滅させろとか、一年持たせろとか言ってるわけじゃないんだし。小一時間ほど敵の目を引けばいいだけ」
「死ぬっす!! おいらたち死んじゃうっす!! 酷い!! 死んで来いとか、あまりにも無情っす!!」
「いや、調べた結果は言っただろう? 相手の風姫騎士が一番レベルが高くて72だ。他は30前後。レベルがスティーブは300超え。部下ゴブリンも150から200と、まあお高い!!」
「どこかの通販番組みたいに言ってもだめっす!! 数が違いすぎるっす!! 万が一を考えろって大将はいつも言ってるじゃないですか!! レベル300超えしてても、種族としての能力が低いっすから、セラリア姐さんに負けますけどね!!」
「たまには勝ってるだろう?」
「たまにっす!! ええい、なら銃くださいっす!! それなら全滅させてみますっす!!」
「馬鹿。そんなことすれば目立つだろう。現代兵器はダンジョン防衛の時のみだ。それ以外はこっちの文明レベルにあわせろ。剣と魔術な」
「ひいぃぃぃぃいぃ!! なんという時代錯誤!! 今時、剣と魔術なんて流行らないすっよ!!」
「流行ろうが流行るまいが、とりあえずやるしかない。俺たちの立場を明確にするためにもな」
今回は150前後で、風姫さんの軍、2500を相手にしないといけない。
現代兵器を使えば楽勝だが、それでは禍根を残す。
俺たちを監視、もとい、後方から様子をうかがっている亜人や、攻めてきた風姫さんの軍もどちらともだ。
そんな武器を使ったから、勝てたのだ。と敵も味方もそう言う奴が出るだろう。
だから、今後の展開がスムーズに行くように、こっちが実力で勝ったと思わせなければいけない。
いや、現代兵器を使うのも実力の内なのだが、大体負ける奴は、敗因を自分たちが及ばなかったのではなく、相手との相違を探そうとする。
いや、戦力分析としてはとても正しいのだが、それを盾に言い訳しても結果は変わらない。
俺たちが、強硬な姿勢のままこの新大陸を席巻するならそれもいいが。
お生憎様、目的はそんなことではない。
だから、正面から同じと、いや、自分たちが有利と思える状況で、敵を叩き潰す。
敵さんは、地力が違うと理解するだろう。
理解不能な現代兵器で殲滅されるのとは違い、確実に理解する。
絶対的な力の差があると。
そして、日和見していた連中は、俺たちが少数で勝てる見込みが少ないと、逃げる準備をしているがこの結果、逃げ出していた奴らは俺たちに文句を言えなくなる。
と、スティーブには説明したんだよ。なのに……。
「いやっす。いくらセーフゾーンのレベル帯とはいえ、新大陸でなにが起こるかわかないし、その風姫騎士さんっすか? それが持ってる魔剣もよくわからないっす。不確定情報が多すぎるっす。それで、部下に囮になれなんて言えないっすよ」
「なんだかなー。誰に似たんだ? その安全対策重視は?」
「大将にですよ」
俺ってこんな感じだっけ?
「だけどさー、スティーブたちが正面に行ってくれないと、僕たちが側面つけないじゃん。なにか代案あるのスティーブ?」
「じゃ、リエルの姉さんが正面に一緒に立ってくださいよ。少しでも多いほうが安心出来るっす」
「いやいや、獣人であるリエルやトーリ、カヤは奇襲側に回らないとだめなんだって」
「なんでっすか?」
「亜人がいたから敵の先陣を止められた。って日和見している連中が言いそうだから」
「あー、なるほど。敵じゃなくて後ろの方が問題になるっすね」
「そういうことだ。かと言って俺やリーア、モーブたちや、アスリンたちがスティーブたちに協力するわけにもいかん。奇襲はあくまでも、俺たち傭兵団がやったことにしないといけないからな」
「そうしないと、リエル姉さんたちの戦果だと、日和見連中が駄々こねるわけっすか」
「ああ。少しでも面倒事は減らす方向がいいだろう? そして、敵からしてみれば、攻めやすいと思わせなければいけないしな。ゴブリンだけの部隊と俺たちが混ざっている部隊とどっちが警戒するだろうな?」
「奇襲をしたいこちら側としては、侮られやすいおれっちたちの部隊だけの方がいいですね。なにせ、この新大陸でもゴブリンの強さ階級は低いみたいですから。敵さんは喜んで蹴散らして、すぐに後方の援護に回るか、そのまま村に行こうとするっすね」
ゴブリンというスティーブの部隊は、どこからどう見ても最高の囮になるのである。
というか、戦力評価としては、風姫騎士さんの軍相手では100回戦って、98回は勝てるぞ。スティーブの部隊だけでな。
2回の敗北は、スティーブたちの自爆。滑って転んで頭打って死ぬとかな。
そもそも、レベル的に、スティーブたちに致命傷を負わせられるのは魔剣を装備した姫さんのみ。
ほかは痣は出来るだろうが、致命傷にはよほど一方的にやらせないかぎりならない。
だって、ナールジアさんお手製の、一般装備風のチート武具一式を装備してるんだよ、ゴブリンたち。
「はぁ、わかったっすよ。俺たちが死んだら、お墓にはシーザーサラダ添えてください」
「それお前の好物だよな。つか、ゴブリンだから肉とかもっと他のにしない? なにエリスの好物と被ってるんだよ」
「ゴブリンだって野菜が美味しいんだもの!! あと、大将の嫁さんと好物が被ったのを文句言われてもどうしようもないっす。つか、エリスの姉さんは好物は大将だと思いますよ?」
「なにその好物!? 俺は食い物じゃねえよ?」
「いや、多分食い物に見えてるっすよ?」
それは別の意味でだろう? エリスは夜はすごかったからな。
「そこはもう置いておこう。とりあえず承諾したな?」
「ええ、やるしかないっすよ」
「よし、なら褒美をやろう」
「いや、普通にこれで同じ給料だったら暴動ものっす」
「それよりも、いいものだ」
俺がそう言うと、アスリンたちが入ってくる。
彼女たちも今回は作戦に参加する。
いつまでも後方待機というのは、甘やかしすぎと、他の嫁さんに怒られたからだ。
だから、今回のスティーブの囮はアスリンたちを助けるためでもあるのだ。
「おや、これはアスリン様」
スティーブもアスリンは名づけの親でもあるので、俺以上に敬意を払っている。おい。
アスリンを連れてきた目的は簡単だ。
俺以上に敬意を払っているなら……。
「難しいお話はよくわかんなかったけど、スティーブたちが頑張るんだよね?」
「まあ、そうです」
「うん。ありがとう。スティーブたち頑張ってね」
「「「頑張ります!!」」」
スティーブの後方に控えていた他の指揮官ゴブリンたちが盛大に返事をする。
「でも、無理はだめだよ? みんなで帰って美味しいご飯を食べようね」
「「「了解しました!!」」」
「あ、できれば敵の人も殺さないようにしようね。きっと家族の人が泣いちゃうから」
「「「わっかりました!!」」」
アスリンが言い終わると、ゴブリンたちは一斉に散って、あちらこちらで怒声が響く。
「お前らいいか、この戦いは俺たち頑張りにかかっている!!」
「アスリン様が美味しいご飯を一緒に食べようといっている!!」
「いいか、決して死ぬな、アスリン様を泣かせる様なことをするな!!」
「「「了解!!」」」
などと、こうやってゴブリンの士気は最高潮になり。
結果は、ゴブリン部隊が風姫さんを含む突撃部隊を消滅させた。
そのおかげで、俺たち奇襲部隊は、余裕で後方の本隊を粉砕。本陣を陥落させた。
勿論、敵は1人も逃亡さえできなかった。
まあ、奇襲部隊の方に俺たちがいたからある意味、こっちが本隊だよな。
あとは、風姫さんとどう再会を果たすかね。
これが舞台裏。
アスリンによるブーストもかかっていましたので、勝目など微塵もありませんでしたw
ふいー、今度は風姫さんと交渉開始。
まあ、心折れてる可能性があるけどねw
あと、明日休みの予定。
執筆がちょい間に合わなくなってきた。
ここ二日程5000文字超えは数回あって、気力を使いきっている。




