表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/2175

第155掘:おや、魔物の様子が?

おや、魔物の様子が?





side:ユキ



「おい、頑張れ!! やればできる子だろう!!」

「……いや、無理だからな。魔力の流失が早すぎる」


俺は、ウィード魔物軍の中で、トップクラスのスラきちさんの弱音なんて聞きたくなかった。


「いや、普通に現実を認めてください。恐らく、魔法生物とされる分類の生き物か、魔物かはわかりませんが、魔力をごっそり吸収され続けるので、体が維持できないのでしょう」

「お兄ちゃん、スラきちをウィードに戻してあげて。なにか苦しそうだよ?」


くそっ、アスリンにそう言われたら仕方ないか……。


「じゃ、ウィードの方頼むぞ」

「おう、向こうならどうにでもなるからな」


そりゃ、魔王ですら、文字通り手も足も出なかったからな。

そうやって、スラきちさんが遺跡に消えていくのを見送る。

とりあえず、あの会議のあと、セラリアたちとコールが繋がる確認をしつつ、魔物をこちらに送ってもらったのだが……。


なんと、レベル50以下の魔法生命体と言われる、魔力で体を維持している、スライムやゴースト、まあ実態を持っていないやつとか、無形生物なんかは、魔力が急速に無くなって消滅してしまった。

とりあえず、生き残っている魔法生命体は即座に帰して、そのトップクラスのスラきちさんで実験をしてもらったが、スラきちさんですら、この新大陸では活動は3時間ぐらいが限界だ。


「こりゃ、妖精族は危ないか?」

「でしょうね。妖精族は魔力が主体ですから」


ナールジアさんや、コヴィルを連れて来なくてよかったわ。


「と言うことだ……」


俺はそっと、魔物の肩に手を置く。


「なにが、と言うことっすか!!」

「いや、スラきちさんは見ての通りでな。現場で指揮取れそうなのはお前だけなんだよ」

「他は沢山いるでしょうに!! なんで俺っすか!!」

「いや、他は恐怖の対象になりそうでな」


この新大陸、魔力枯渇問題で、魔物が極端に少ない。

ゴブリンなら、まだ森に入れば見ることはあるが、オークすら殆ど存在しない状態らしい。

寧ろ、オークなんかは捕獲対象で見世物にされることもあるみたいだ。

だから、オーク部隊は働けるが、いろいろ面倒になりそうなので呼んでいない。

無論、魔法生命体のデュラハンとかも無理。

ブラッドミノタウロスのミノちゃんなんて、こっちに呼んだら討伐軍が組まれかねない伝説級の魔物らしい。


「まあ、頑張れ。1週間ぐらいで、防衛網整えろよ。案は任せる」

「ひっど!! 時間すくな!! 防衛の案、丸投げ!?」

「できないわけじゃないだろうに。今までいろいろ教えてきたんだから。ああ、目的はこの村を守れるようにな」

「いや、確かにできるっすけど、なんか間違ってね!?」

「言いたいことはわかるが、俺も色々理不尽に遭ってるんだよ。あきらめろ。上司命令だ、恨む相手がいる分ましだろう?」

「……なんか、すみません」

「給料はちゃんと、遠征特別給与を上乗せするから」

「頑張ります。……あの、大将も頑張ってくださいっす」

「同情するなら代わってくれ」

「お断りします。じゃ、仕事があるんで、行ってきますっす!!」


っち、逃げやがった。

ま、これで防衛はどうにかなるか。


「どう思う?」

「そうですね。今回送られてきた魔物は、スティーブ将軍が率いるゴブリンですが、数は今のところ村人を刺激しないために50人とちょっとですからね、敵が本格的に攻めてくれば、きついでしょう」

「そこら辺は、長老が話を纏めたら、さっさと増援を呼ぶさ。まあ、村人を守らなくていいのなら、ダンジョン防衛するだけだし、さっききたジルバ帝国の兵士ぐらいなら、一万人いようが相手にならん」

「普通なら、数に押しつぶされるのでしょうが……。ウィードの兵に常識は通じませんからね。未だ、新大陸の情報はそろってないですが、どうにでもなるでしょうし。なにか問題が起これば、逃げるぐらいは出来るでしょう」


それぐらいできないなら、俺はさっさと新大陸から引き上げるな。

死にたくないし、嫁さんを心配させたくないし。


「まったく、ダンジョンの機能を使えないのが厄介だな」

「いえ、今までが楽をしすぎたんですよ」


ザーギスの言う通りだが、たった50人で防衛網の構築はキツイだろうな。


「明日にはスティーブが防衛の資料を提出するだろうし、最悪は銃器を使ってここは守るか」

「あの、異世界のけた違い兵器群ですか……。あれを防衛に使うなら、余程じゃない限り落ちることはないでしょうね」


守るだけなら、良いだろう。

現代兵器と言うチートはとても扱い辛い。

ルーメルで使われた戦車群もそうだが、使った本人は全く身動きが取れなくなってしまった。

誰でも使えるというのは、更に争いを広げる可能性があるのだ。

だから、管理は厳重に行わないといけない。

ま、ルーメルに至っては生産する力はなさそうなので、タナカと言う能力者をひたすら表に出さず、奥の手にすることを選んだようだがな。

俺も、そんなことにならないように、現代兵器を扱っていかなくてはいけない。

俺の場合はDPで取り寄せられるからな。

あ、魔力実験でわかったことだが、DPで取り寄せた物は魔力で構成されているわけではないらしい。

ルナが、自身の力で作った本物なので、魔力枯渇にも影響されない。

この新大陸においては、無類の強さを誇る武器となるだろう。

間違っても盗まれたりしたら、大きな被害だけで済めばいい方で、その兵器が生産され始めたら、新大陸は地球のプチ世界大戦になるだろう。


「しかし、管理をどうするかね……」

「ダンジョンの機能での検索や監視ができませんからね。ひたすら書類提出での使用許可と、対面での受け渡し、保管庫の厳重管理ですかね?」

「それぐらいだよな……」


やっぱり、ダンジョンというチートが無いと危険が増すな……。

現代の世界はこれをよくやってたよな、セキュリティとかトンデモないものばかりだな。

流石に俺に、その手の知識は無いから、こっちで建設のしようがない。

いや、将来的には出来るだろうが、今はどう考えても無理だ。

科学研究班にウィードのセキュリティ部門でも作るか? いや、無理だな。未だザーギスが、電気で電球つけるぐらいしかやってねーし。

俺だって、ラジオを分解して、構造をなんとなくしか理解していない。

現代技術の結晶である電子部品を、この世界の技術で今から作るのは土台無理な話だ。


「出来ることはこのぐらいか……、そう言えば他の皆はどうした?」

「普通に休んでますよ、ほら」


横で、俺たちの会話を聞いてたリーアは、指をさす。

その方向では……。


「肉焼け、肉!!」

「そうだそうだ!! もっともっとだよトーリ!! 僕がお腹減ってるんだから!!」

「野菜も食べろモーブ」

「ライヤさんの言う通りだと思うよ? バランスよく食べないと」


何処から取り出したのか、バーベキューセットを取り出して、焼き肉を食ってやがる。

あー、アイテムボックスの代わりにアイテムバックを持ってきてたな。

そういえば、魔力枯渇の影響はないのか?


「不思議ですね。魔力を駆使して作ったアイテムは、そのまま利用できるみたいですね?」


ザーギスも同じ疑問にたどり着いたのか、首を傾げている。


「どうだろうな。まだ魔力が切れていないか、それとも、魔力は切れてても取り出すまでは使えるのか……」

「なるほど、そう言う考えもあるわけですか」

「と言うか、そもそも魔道具はどうやって動き続けてるんだ?」

「それは色々ですね。魔物からでる魔石を電池みたいに使ったりとか、空気中の魔力を勝手に吸収して永続的に使える様にしているとか……」

「そこも色々あるんだったな」


うーん、やっぱりこの魔力が枯渇している新大陸は、いろいろ発見があって面白い。

これも十分な資料になるだろう。この世界に魔力枯渇問題を認識させるための……。


「あー、気が遠くなる……。放り出してぇ……」

「やめてください。魔力で大半を構成されている生物が死ぬ危険性が、現実味を帯びてきました。魔力量で変化した私、魔族も他人事ではないのですから」

「ああ、そう言えばそんな話だったよな。で、そっちの体調とかは?」

「少し息苦しいという感じでしょうか?」

「ふむ……。ステータス変化は?」

「今のところありませんね」

「気のせいって思いたいな……」

「ですね。明日、起きられなかったりとかは勘弁願います」

「永眠ね。ある意味、安楽死じゃね?」

「死にたくないですからね」

「わかってるって。とりあえず、今は飯を食って明日に備えよう」


俺はそう言って、目の前で焼肉を食っている皆に混ざって楽しんだ。



ああ、色々考えることが多そうだ……。

新大陸編は今回の通り、魔力とはなにか?

という、事を話の軸に置きつつ、ユキの意には反して、戦乱の渦中に身を置くことになります!!


頑張れスティーブ!! お前はこれからどんどんこき使われるからな!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ