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第154掘:とりあえず、どうしようか?

とりあえず、どうしようか?




side:ユキ



「「「申し訳ありませんでした!!」」」


一斉に頭を下げる男衆。


「ふんっ」


1人だけ簀巻きにされてそっぽを向くのは、俺の一撃で沈んだセットという、ウサミミダンディ。


「こら、あんた!! 命の恩人にその態度なんだい!!」


奥さんなのか、体格のよい。いや、お腹のふくよかな女性がセットに拳を振り下ろす。


ゴン


体重の乗った一撃だ。

うん、あれは痛いぞ。音的にも重低音だったし。

案の定、ウサミミダンディは、余りの痛さに簀巻きのまま転がる。

痛い所を押さえられないと、そうするしかないよな。


「謝罪は受け入れます。ところで、この村の代表者はどなたでしょうか? 改めてお話をお聞きしたいのですが」


そう、大事なのは、これからどうするかということ。

ジルバ帝国の重鎮か知らんが、その一部をひっ捕らえたのだ。

こいつらの処遇を決めないといけないのだが、一応村の人たちにも話を聞いて決めないとまずいだろう。

人数は大したことないとはいえ、全滅したらなにかしら動きがある。

いや、逃がしても報復行動に出るだろうから、村人が逃げるならよし……じゃねーな。

ダンジョンはここにあるんだし、どのみちこの拠点は守らないといけないわけか……。

くあー、もうどうでもよくなってきたな。

いや、落ち着け。

この村人たちが移動するなら、この地域一帯は、ダンジョンの能力行使で、防衛は鉄壁にできるからとてもやりやすくなるな。

村人が残るなら、配慮して戦ったり、ダンジョン機能を制限したりしないといけないよな……。

いっそ、村人が残るって言いだすなら、ウィードに送るか?

そんな感じで考えていると、集まった村人たちの奥から、キリッとした老婆が出てきた。


「わしがこの村の代表、長老のエーテリじゃ。今回、村を救ってくれたことは誠に感謝する」


そう言って、老婆は頭を深々と下げる。

特に俺たちの中に人間がいるからって、忌避感はなさそうだな。

それとも、年の功で隠しているか?


「して、ユキとか言ったのう。なにを聞きたいのじゃ?」

「そうですね。俺たちは別の大陸から、あなたたちが大事に祭っている遺跡から来ましたので、こちらの情勢に詳しくないのですよ。捕らえた、ジルバ兵をどう扱うべきなのかも聞かないといけませんし。というか、こうやって敗走させて、全員を捕縛しましたが。これでは結局、ジルバ帝国が、本腰を入れてこの村に来る日も遠くはないと思うのですが、どうでしょう?」

「ふむ……、前半の遺跡を通ってきたという話は、俄かに信じがたいが、ジルバ帝国の動きはこれから、この村に向くのは確かにお主の言う通りじゃ」


長老がそう俺の言葉を肯定すると、周りの村人が騒ぎ出す。

そりゃ、しかたないよな。これから定期的にジルバ帝国の先兵が来るかも知れないんだから。



「静かにせい!! この御仁とまだ話を続けておる。この村を捨てるか、守っていくか、恐らくじゃが、この人たち次第じゃろうて」

「どういうことですか、長老!!」

「なに、簡単じゃよ。たった10人そこらで、ジルバ帝国の兵300人をあっと言う間に抑えてしまいよった。見た感じ、恐らく本気でもなかったようじゃのう」


あらら、このご老体凄まじい観察眼してますな。やりにくいわ。


「はっ!! 300程度、俺たちにかかれば簡単よ!! 長老、こんな奴らの手助けなど要らぬわ!!」

「セット。そう言うのはせめて、この御仁に圧勝してから言うてくれ。さっきは、ちょいと本気になったこの御仁に、一撃で沈められてたしのう」

「ぬぐぐぐ!!」


セットのおっさん。現実を見ろや。気持ちはわからんでもないがな。


「でじゃ、お主の話が本当ならば、遺跡から出入りしておるのじゃし、ここを守らないとまずいのじゃろう?」

「はい、その通りです」

「なるほど。わしらがどう動くのかを、聞きたいわけじゃな?」

「はい。俺たちは遺跡を中心に動く予定なので、特定の勢力に奪われるのは遠慮したいのです。ですが、ここに来て……」

「わしらが、遺跡を中心に村を築いていたと?」

「ええ。俺たちは、そちらの行動で色々取るべき手段が変わってきます」

「ほう? 逃げて滅びるか、この村を守り抜いて滅びるか、ぐらいしか選択はないかと思っておったが?」

「そうですね。付け加える選択肢は、一国を作るか、俺たちの拠点に逃げ込んで安全に暮らすか、ですね」


俺がそう話すと、長老は目を丸くしたあと、心底可笑しそうに笑い出した。


「うひゃひゃひゃ!! いや、すまぬ。この歳で、心から笑うようなことがあるとは思わなくてのう」

「冗談ではなく、大真面目ですが?」

「それはわかっておるわい。だから、面白かったのじゃよ。お主らが村を守ってくれるなら、村が滅びることはないと思っておったが、わしも随分歳をとったのう。保守的になりすぎじゃな。お主らの力を見れば、すぐにそんな回答は出ただろうに」


そこで一旦言葉を切って、長老は俺たちの顔を一人一人眺めていく。


「うむ。どこからどう見ても、並の魔力ではないのう。確かに、国を作ることは不可能ではないな」

「無理に付き合わなくていいですよ。俺たちの拠点で安全に暮らす事も出来ますけど?」


寧ろ俺として、そちらを押したい。

どう考えても、足手まといだし。


「いや、よそ者のお主たちにここを守ってもらうのじゃ、手ぐらい貸すわい。というか、わしらが今まで守ってきた誇りもあるんでのう」


でしょうねー。ありますよね、誇り。

というか、いきなり、よそ者に村の守りとか任せませんよね。


「とりあえず。わしはその方向で村の衆と話してみる。お主らは、なにかいろいろできそうじゃしのう。勝手にするといいさ、明日には正式な返答をするとしよう」


そう言うと、長老は村の皆を連れて、去って行った。

といっても、村のど真ん中なので、会議に参加しない村人は、そのまま村の再建に取り掛かる。


「ふう、とりあえず話は終わったな」


モーブが疲れたと言わんばかりに、腰を下ろす。


「いや、お前はなにも喋ってないだろうが」

「しかし、私たちはこれからどうしましょうか?」


俺がモーブにツッコみすると、リーアが質問をしてくる。


「とりあえず、村とジルバ帝国の捕虜は後回しだ。明日の回答を待とう。まあ、流れ的に守らないといけないだろうがな」

「そうだね。僕も助けておいて、あとはほったらかしは嫌だもん」

「ですね。私もそう思います」


リエルとトーリは村の皆を守ることには賛成か。

まあ、これから新大陸のことを考えると、必要な人材ではあるよな……。


「……問題はジルバ帝国の動き」


そう、カヤの言う通り。そこが一番の問題だ。


「明日の回答で、ジルバ帝国の動きが決まるだろう。まあ、村に大軍が来るのが、遅いか早いかの差になるだろうが」

「そりゃ当然だろう。俺たちが、敵なんかふっ飛ばすからな」

「……モーブのセリフには同意したくないが、そうなるだろうな」

「まあ、そうなるでしょうね」


モーブが馬鹿を言うが、ライヤやカースの言う通り、結局は敵が来たら撃退するしか方法がない。

交渉という手もないこともないが……。


「話をしようにも、既にジルバ帝国の兵士を捕らえてしまっていますからね」

「……そうね。同じぐらいの勢力なら、交渉の余地はあるでしょうけど……」


シェーラとラビリスは、現状を見て交渉は無理に近いと言う。

だよねー。こんな力があるように見えない村に、兵士が捕まったりしたら、全力を挙げてつぶしに来るよね。

面子とかのために!!

交渉するのは、何度か撃退してからになるだろうな……。

つまり、此方の力を思い知ったあと、ということだ。

それまで、面倒な戦いをしないといけないわけか……。


「それなら、村がどの様な返答をするにしても、こちらはダンジョンの力を今の段階で、無尽蔵に使うわけにはいけません。ですから、予定してた調査をさっさとしてしまって、戦力を整えるべきでは?」


ザーギスの言う通りか。ダンジョンを広げて広範囲にトラップを作ろうにも、魔物軍団で押しつぶそうにも、魔力枯渇問題や、魔力の減衰による能力変化も調べないと、いざってときに問題になる。


「戦力を整えるってことは、それに関連した調査を優先ってことか」

「そうですね。枯渇問題を探るより、とりあえず、防衛に使える魔物を調べて、戦力の水増しをした方がよいかと。物資も運び込むだけで手間ですし」


だよなー。物資の運び込みはやっぱり魔物が一番なんだが、この魔力枯渇でどうなるかわからないから、初日は連れてくるのはやめたんだけど、これは予定前倒しにして、さっさと頭数を揃えるか。

だって、いきなり戦争しそうなんだから。



俺はこの新大陸ではひっそり生きたかった……。

平穏は訪れない!!


あと、子持ちエルフ人妻は「ヒリヤ」から「ナーヤ」に改名しました。

ヒギルとか、ヒエラとか被りすぎだったわ。

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