第150掘:メンバー選出
メンバー選出
side:ユキ
嬉しいこと、悪いことは重なるものだ。
個人的に嬉しい方が勝っているが、嫁さんたちの気持ちを考えると±0ってところか。
なにが±0かと言うと、嫁さんが妊娠したので、新大陸へ行くメンバーが減ったと言うこと。
俺としては、新大陸ほっといて、セラリアたちが出産して、ある程度子供が育つまで、冒険をやめたいのだけど……。
「ありえないわ。私たちが妊娠したくらいで、歩みを止めるなんて認めないわ」
「そうですお兄さん。私たちは大丈夫ですから、世界を救う使命を止めないでください」
「旦那様、気持ちは嬉しいです。ですが、歩みを止める理由にはなりません」
「その通りだと思います。私たちが歩みを止めれば、その分多くの犠牲が出るはずです」
「妾はついていきたいのじゃが……、流石にお腹の子を危険にさらせん。だから、ウィードは妾たちにまかせて、行ってきてくれ」
「メイドの身で、旦那様の子を孕みましたが、その私を旦那様は優しく受け入れてくれました。ですから、これ以上旦那様の足を引っ張りたくはありません。どうか、使命を……」
と、妊娠した皆は冒険に行けと言う。
「ねえ、そう言えば、ドッペルでついてくれば問題ないんじゃない?」
不意にリエルがそう言うが皆は頷かない。
「あれ?」
「リエル、ドッペルでもだめだよ。赤ちゃんを産むのは大変で、精神的な負担もかけない方がいいんだよ」
「そうなの?」
「ほら冒険者の時にお世話になった、村の村長の娘さんとか、男の子を産めって言われて責任感じてたのか、妊娠したのに産めなかったって話聞いたよ。まあ、そのあとちゃんと産めたみたいだけど」
「えー、あの人が、本当なの?」
リエルが不思議そうにトーリに確認をとってくる。
それを聞いているセラリアが口を挟む。
「トーリの言う通りよ。責任とか、重圧とかを心に感じて負担になりすぎると、子供ができなかったり、妊娠しても流れてしまうことが多いわ。私の母たちはそんなことを気にしない性質だったけど、他の貴族の奥様は子供を安全に産む為に教会にお祈りしてたぐらいよ?」
ああ、こっちの世界の方が、お偉いさんに限っては世継ぎの問題で、子供を産む女性には負担が大きいらしい。
可哀想に……。
「リエル、そういうことだ。ドッペルの腹部を殴られて、実際にお腹には負担はないけど、咄嗟にお腹を庇ってしまったりするだろ?」
「うん」
「妊娠中の女性にとって、お腹を殴られるのは絶対にやられたくないことだ。精神にとても負担がかかる可能性がある」
「あー、だからドッペルでもだめなのか……」
というわけで、完全に妊娠メンバーの出動は禁止。
ウィードの仕事もドッペルのみ。
本体は旅館で安静にしているように言っている。
無論、リリーシュにも手伝ってもらって、専属医師になってもらっている。
病院は大丈夫。ルルアやエルジュの教え子がなんとかする。
まあ、最悪はルルア、エルジュ、リリーシュが出るのは了承している。
「と言うことで、妊娠している嫁さんたちを除いて、新大陸へ行こうと思うけど、妊娠している皆の世話をする人もいるだろうし、そこら辺どうする?」
「あ、それなら私が残りますよ」
この問題は中々話がまとまらないと思っていたら、ミリーが立候補してくれた。
「ミリーいいのか?」
「はい、と言ってもこれも前々から決めていましたから。妊娠すると色々手が回りませんからね。そこら辺の手伝いをする必要もあるってことで、皆で話していました」
おお、素晴らしい連携だ。
でも、これで俺が文句を言って嫁さんたちと穏やかに過ごすことは出来なくなった。
「と言っても流石に私1人じゃ、6人は厳しいですから、デリーユの弟さんのライエ君のところから、アンナさんやリーリに協力してもらうことになってます」
「へー」
「妊娠の件を話したら、喜んで快諾してくれましたよ。ちゃんと大事にされてるじゃない、デリーユ」
「うむ。流石じゃな」
因みに、デリーユの弟、ライエ君はガルツのダンジョンから引っ越して、ウィードで暮らしている。
ガルツのダンジョンは処分したわけでもなく、そのまま運営している。
ウィードの方が安全だから、こちらとしても安心だけどな。
「これで私たちは安心ね。じゃ、私たち、居残り組からの希望を言うわ」
セラリアは自分たちの問題が落ち着いたとみて、俺に希望を言ってくる。
「いや、希望ってなんだよ? ついてくるのは絶対だめだぞ?」
「わかってるわよ。だから、あなたの安全のために、居残り組以外の妻全員は連れていきなさい」
「過剰戦力だと思うけどな」
「それぐらいで丁度いいのよ。新大陸を調べたわけじゃないけど、ドッペルが使えるとも限らないし、ドッペルが使えても、あなたが偽物とはいえ死んだなんて聞けばきっと精神的負担は相当なものよ?」
確かに、俺が偽物でも死亡したと聞けば嫁さんたちの精神負担は馬鹿に出来ない。
「って、ちょっとまて。全員ってまさかアスリン、フィーリア、ラビリス、シェーラもか?」
「もちろんよ。まさか、子供だから連れて行かないなんて言わないわよね?」
「お兄さんの気持ちは分からなくはないですが、アスリンたちも立派な1人の女性です。もうちょっと対等に扱ってくださいな」
「シェーラ様のお立場もきっとお役に立ちます。どうか連れて行ってくださいませんか?」
そうやって、居残り組はアスリンたちを連れて行けと言い。
「お兄ちゃん、今度は私は役にたちましゅ!!」
「兄しゃま!! 私も頑張りましゅ!!」
「……今度は置いてきぼりはいやよ」
「ユキさん、王族としての知識や作法。きっと無駄になりません!!」
ちびっこたちはそう言って、目を潤ませている。
「あー、ユキさん諦めよう。僕置いていけないよ?」
「アスリンたちは今までずっといい子でしたし、連れて行ってもいいのでは?」
「……というか、この子たちより強い人なんて早々いないわ。絶対戦力になる」
と、獣人組も賛成。
これじゃ俺が置いていくと言っても、別行動やこっそりついてきそうだな。
下手に拒否するほうが面倒か……。
「わかった。だけどちゃんと言うことを聞くこと!!」
「「「はーい」」」
返事だけはいいんだよな。
今まで我慢させてたから……いいのか?
深く考えるのは止そう。もう決定してるし、学校には休学届ださないとな。
俺がそんなことを考えていると、デリーユとリーアもなにか話している。
「リーア、お主がいるから妾は安心してウィードで過ごせるのじゃ。頼んだぞ勇者!!」
「デリーユさん!! 任せてください。必ずユキさんは守ってみせます!! 魔王の願い聞き届けました!!」
……なにか間違ってね?
「あ、そう言えばお兄さん。ちょっと提案があるんですが」
「ん、なんだラッツ?」
「いえ、私の案ではなくエリスの提案なのですが……」
ラッツはそう言って横のエリスを見る。
「はい、女性ばかりではなにかと面倒だと思いますので、あの3人を連れて行ってはどうですか?」
「あの3人?」
「はい、あの3人はトーリやリエル以上に冒険慣れしてますし、男です。新大陸では色々役に立つのではないでしょうか? 最近は出番がなくてウィードでごろごろしているだけですし」
「出番って、あれでもウィードの冒険者ギルドの専属だぞ?」
「特に忙しい仕事をしているわけでもありませんし、トーリとリエルの友人のオーヴィクさんたちも、ウィード専属になりたいようですし、丁度いいのでは?」
「ああ、そう言えば、ウィードのダンジョンが多いから専属が足りていないとか報告あったな」
「ええ。ですから、あの3人もそれなりに強いですし、オーヴィクたちも丁度いい訓練になります。なにより、アスリンたちの良い守りにもなるでしょう」
「なるほどな。採用。あの3人呼び出そう」
そうやって、新大陸メンバーが決まった。
あの3人は特に、勇者関連では活躍の場がなかったから、丁度いいだろう。
メンバー決定!!
久々に最初のあの3人が登場!!
あと、明日お休み。