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第145掘:細かい説明

細かい説明





side:エルジュ




現在、連合軍の大将を勤めているエルジュです。

ウィードでの華々しい復活宣言と、魔族への救援、及びルーメルへの魔王軍侵攻。

その関連で周りが忙しく、聞こうにも聞けなかったことが多々あります。

私自身は名目上、連合軍の大将という立場ですが、軍の指揮、戦略、などなどは全くしたことがありません。

なので、ちぃ姉様を補佐として迎え入れて、軍を動かしてきました。

私がやったことと言えば、書類の採決と将兵の士気を上げるための演説を数回。そして、攻略対象への攻撃開始宣言。

正直、私はあんまり活躍していません。


現在はそのゴタゴタも一旦落ち着き始め、ルーメルへ侵攻した魔王軍への対応をしているので、思ったより大きな動きもなく、私もドッペルに代わりをまかせて、家に戻っています。

今はなぜか、ちぃ姉様がクッキーを量産したので、その処理を皆で食後のお茶でしています。


「あ、そうだ。ユキさんお聞きしたいことがあるのですがいいでしょうか?」


私は、今お菓子を食べているときが周りの目もないので丁度いいと思って声をかけます。


「聞きたいこと?」

「はい、色々あるんですが……」


そう、本当に色々あるんです。

とりあえず、時系列的に処理していきましょう。


「えーと、まずは私はロシュール王都で死亡が確認されていましたよね? いえ、ドッペルですけど、なんでそのことに周りは何も言ってこなかったのでしょうか?」

「あー、その事な」


ユキさんは適当にクッキーをかじりながら説明を始めます。


「簡単に言うと、状況に流された国民と、情報隠したかった国の結果だな」

「どういう事でしょうか?」

「つまり、国民的には確かにエルジュは死んだと認識されたけど、今現実にエルジュは生きていると大宣言の時に大々的に発表された。なんて言われて発表されたか知っているか?」

「それは私が言った通り、魔王の生贄にされそうになったのをリリアーナさんに助けられたと言う事では?」

「そういう事だ、つまり、エルジュは生きていたという結果があるわけだ。そうなると、前に目撃されたエルジュの遺体は何だったのか? という疑問が湧いてくる」

「はい、そこが不思議なのです」

「まあ、答えを言ってしまおうか。魔王がなにかやって誤魔化したって勝手に国民が納得したわけだ」

「いえ、それだけで信じるには……」

「しかし国は否定してないだろう? ついでにドッペルゲンガーという魔物もいる。魔王は魔物が使えるというか、これは前から周知の事実だ、だから替え玉として利用したと結論付けたわけだ」

「なるほど。でも、大半の人はそう思っても、疑問を持つ人もいるのでは?」

「そりゃ何事も疑問を持つ人はいるだろうよ。でもな、エルジュの件について調べようとしたら各国が妨害するはずだ。だって、そうしないと3国で戦争開始になりかねないからな」

「あ」

「わかったか? エルジュの件はもう暗黙の了解で手を出す事が禁止なんだ。各国では特にな。今ではエルジュは魔族とのつなぎ役。これを崩す様なことをすれば大混乱だ。まあ、そこら辺は間違いが無いように、生贄で強くなる魔物を魔王役で配置しただろう?」


いました。

あの名前のない魔物は私の為でもあったのですね。


「と言う事で、連合軍にも生贄を必要とした化け物を知らしめて、早期に倒せた。エルジュが生贄にされそうになったことはあの時点で事実となったわけだ。リテアとしては少し煩わしいだろうが、まあ平和なんだ、表だって文句の言い様もないだろう。というか、アルシュテールが色々粛清しまくって、政治も上向きで支持も厚い。エルジュを始末して安定を図る必要はないだろうよ。寧ろ今エルジュをどうにかしてしまえば、大混乱間違い無しだろうな。ガルツとしても、エルジュは魔族とのつなぎ役だから重宝するだろう。こっちも問題無しだな」


各国は各々の理由でもう私に手を出せないのですね。


「私の死の偽装に対する反応の理由はわかりました。他にもあるのですが、いいでしょうか?」

「んー、作戦の都合上問題なければ教えるぞ。とりあえず言ってみてくれ」

「はい。では、ルーメルへの援軍をなぜユキさん自ら行かないのですか? 聞けば同じ世界出身だとか、強力な仲間は一人でも多く欲しいのでは?」

「あー、そこか。皆も聞いててくれ。いいか、タイキ君の件は運よくあちらがやってきて、無抵抗を示し、話し合いに応じたからできた結果だ。だが、ルーメルの勇者たちがそうとは限らない」

「え?」


私は一瞬何を言っているか分かりませんでした。


「俺が名前を隠している理由にもなるんだがな。エルジュが疑問を持ったのが問題なんだよ。異世界出身者の全員が全員、善人ってわけじゃないし、たとえ善人でもタイキ君みたいに使われている可能性も大いにある」


ユキさんが、真剣に言葉を吐きだします。

その言葉でその場の全員が一端呼吸を止めて静かになりました。


「なるほどね。色々忙しくて、あなたがなぜ偽名なんて使ってるかわからなかったけど、そういう事ね」


ちぃ姉様は察しがついたらしく理解を示しています。


「おう、俺の名前は異世界の日本の独特な名前でな、同じ日本出身ならすぐ俺が日本人だとばれてしまう。それが善人ばかりならともかく……」

「悪意を持った相手なら、名前を知っただけで変に近寄って取り込もうとするか、手におえないなら始末するわね。私ならそうするわ」

「そこが問題なんだよな。善悪の判断をこちらがつける前に、相手の方に俺の情報がわたるのは危険すぎるんだよ。あと、俺のいた日本はこのウィードでやってる戸籍って言うのが当たり前に普及しているからな、下手すれば俺の情報がダダ漏れだ。異世界に来て本名名乗ってるやつは余程の馬鹿か、あえて囮にしてるかだな」

「それは、日本人だと知って接触してくるということかしら?」

「ああ、接触してくる相手が日本人でなくても、確実に当たり外れはあるだろうが、情報を持っていると言う事だ」

「えーと、つまり、信用しすぎるなって事でしょうか?」

「そうだな。だからルーメルとは、俺の情報やタイキ君の情報は伏せたままで交渉しないといけない。こっちの軍事力を見せるなんてもってのほかだ。でも、相手も同じだろうよ。侵攻軍30万の半数以上を壊走させた戦車群。あれを召喚したのか、生み出したのか知らないが、勇者か俺の友人か、どちらも接触するのは難しいだろう」

「当然ね。向こうにとっては最高戦力。そして奥の手。あの大戦果だもの、情報は極力抑えるでしょうね」

「かと言って無理に接触しようとすれば……」

「ルーメルから侵略の意思ありと見られるわね」

「そう言うことだ。俺としてもあいつとは話がしたいが、あいつが敵か味方かわからない以上、接触は勿論、此方の情報をホイホイ渡すわけにはいかん。寧ろあいつは何としても敵に回してはダメだ」

「そのタナカだったっけ? そんなにすごいの?」

「あいつがチート能力……。いや異世界に来て目覚めた力が何か知らんが、戦車が有った以上その類だと見るべきだろう。俺たちの異世界の兵器を自由に操れるタナカを相手に事は構えたくないね」

「……そういう事ね。考えただけでも恐ろしいわ」


そうです。

超遠距離から、敵の部隊を粉砕してしまう戦車などを自由に扱える相手だとすれば、ユキさんが警戒する理由もわかります。


「つーわけだ。ルーメルの情報は集めるが、俺たちが出向くのは無しだ。当面は何にも背後関係の無いロシュール、ガルツ、リテアに交渉はまかせる」

「そう言うわけで、ウィードを除く3か国連合軍に支援物資を持ってルーメルの援助に行かせたのね?」

「おう、支援物資も無償提供させて、相手の出方を見る。まあ、今までは大人しかったから他国への侵攻の意思は無いようだが、あの勇者たちの圧倒的戦力を加えどう動くかわからないからな、友好の姿勢は取っておいて損はないだろう」


最早、ユキさんは気軽に同じ異世界出身の人と顔を合わせるわけにはいかないのですね。


「で、皆へのお願いだ。皆は仕事上色々な人と出会うだろう。だけど日本人と言われて、間違っても俺の事は話すな。タイキ君やルーメルの勇者たちの事を言ってくれ。安全のためだ。あと、俺の本名を言った奴は特に警戒しろ、どうにかして俺の情報を集めているって事だ」

「「「わかりました」」」


なんというか、本当に色々考えて動いているのですね。

なぜ偽名を使っているのかと、聞こうかと思っていましたが、その話もまとめて出てきました。


「あ、そうそうタイキ君で思い出したが、ランクスの方だが……」


私の質問が終わり、再びお茶を飲みながら雑談に興じていきます。

しかし、その雑談をしつつもユキさんの中では数多の考えや悩みがめぐっているのでしょう。


私は今回の件で、自由? になりました。

ロシュールに戻るのか、ウィードでちぃ姉様と一緒に盛り上げるのか、はたまた別の選択か……。


お茶を飲みつつ、これからの身の振り方を考えるのでした。

申し訳ない。

そう言う理由で、タナカとは当分出会えません。

タナカは別ストーリーが出来上がっていますので……時間があれば書くかも!!

それか、必勝ダンジョンが終わってからタナカストーリーの続きを……。

まあ、ユキとタナカは別の物語なので、殆ど絡むことがありません。それはご了承ください。

奴ら2人が会えば最終戦争勃発になりますので。

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