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第144掘:魔王城攻略 後編

魔王城攻略 後編




side:リリアーナ



「リリアーナ様、第2門の敵引いていきます!!」

「陽動部隊から連絡、南門の開放に成功!!」

「敵東門より別働隊の出撃を確認、速やかに第1門の門を閉じて後方の攻撃に備えてください!!」

「セラリア様へ別働隊の連絡を最優先で伝えてください!! 第2門の内情を知っているものはいませんか。少しでもいいです情報を!!」


現在第1門を突破し、第2門へ差し掛かろうとしている。

第1門は陽動のかいもあって、あっさりと和平派の皆がこちらについてくれた。

門内の火計も問題なく、排除しており、わずかに残った油に火がついてボヤ程度が起きたぐらいです。


「ウィード部隊が既に取り付いているわ。心配しなくていいわよ、敵も退いているみたいだし、このままぶち破るわ」


私がセラリア様や首脳陣たちに報告を送る前にセラリア様が来てくれた。


「聞きましたか、敵の別働隊が既に……」

「ええ、他の首脳陣も聞いているわ。既に物資を門内部へ移動を開始しているから大丈夫よ。第2門が開門したらウィード部隊はそのまま第1門にくる別働隊を迎撃するわ。もともと数が少ないから、こういう使い方が正しいわね。魔王城は他の部隊に任せるわ。内容は知っているでしょうけど、無暗やたらに前に出ると、アレに喰われるわよ?」

「はい……わかっています。もう魔王城ではアレが暴れているのですね」


私は未だ変化を見せない魔王城を見つめて言います。


「ええ、エリスから報告があったわ。城内に残っている主なトップは選別した和平派を残して既に食い尽くしているそうよ。親衛隊の隊長率いる部隊がなんとか押しとどめているみたいだけど」

「彼ですか……」

「あら、知り合い?」

「ええ、私が彼を親衛隊隊長に就任させたんです。実直で勤務態度もよく、実力も人柄も、親衛隊隊長になるべくしてなった人です」

「へえ、ならその彼を死なせるには勿体ないわね。さっさと第2門が開いてくれればって……開いたみたいね」


セラリア様に言われて門を見ていると既に門は開かれていて、先ほどと同じようにローエルさんの部隊が先行して入って道を確保しています。


「じゃ、私はここでお別れよ。あとは頑張りなさいな」


そう言ってセラリア様は私から離れていき、ウィードの部隊に指示を出し始めました。


「クアル、敵の別働隊が東門より出立したのを確認したわ。その数300、ウィードの部隊だけで止めるわ。すぐに部隊を纏めて第1門へ集めなさい」

「了解しました!!」


私はセラリア様を見送って、そのままローエルさんたち魔王城攻略部隊へ加わります。


「リリアーナ殿、第2門は完全に制圧。敵はなぜか混乱しているようです。何かご存知ですか?」

「いえ、特には……。もしかしたら義勇兵が陽動してくれているのかもしれません」


実は知っています。

義勇兵の陽動も確かにありますが、一番の問題は魔王城で魔王が暴れているのです。

でも、それを言うわけにはいきません。

そして一刻も早く魔王城へ行き、魔王役の魔物を倒さないといけません。


「ふむ、私たちは特に魔族の民に危害を加えるつもりはない。邪魔にならないのであれば、真っ直ぐ魔王城へ行くべきではないか?」

「その通りだが、リリアーナ殿魔王城への道は?」


アレス殿がそう言って私に聞いてきます。


「魔王城へは、各門から一直線の位置にあります。東西南北、どこからでも訪問できるよう橋がかけてあります。跳ね橋ですが……」

「跳ね橋か、この状態だと跳ね橋はもう上げられていると見るべきだろう。だが、一刻も早く魔王城に行くべきなのは変わらないと思うのだが?」


魔王城攻略の皆が頷く。


「全軍、この道を駆け抜けよ!! 目指すは魔王城!! 跳ね橋を落とし、魔王ののど元に剣を突き付けるのだ!!」


アレス殿の号令により、攻略部隊が一斉に駆け抜ける。

敵の抵抗は皆無。

魔族の住人は声援を送っている。

今回の門のことで家族を戦争にとられた人が多いのだ、それを殺さず助けてくれた連合軍を邪魔する者などいない。

私が送り込んだ味方の成果だ。


「聞け!! 友が声援をくれている!! 我らが負ける道理も、退く道理もない!! 叫んで答えよ、彼等の思いに!!」


アレス殿が剣を掲げ、先頭を駆け抜ける。

そして後から続く兵士は雄叫びを上げる。


「「「ウォォオオォォォォオォオオオ!!」」」



そして、魔王城の跳ね橋はなぜか降りていた。


「■■■■■■■!!」


聞き取れない、いえ、意味の無い叫びが聞こえる。


「ぐあぁぁあぁあぁあ!! だ、だれかぁ…ぐびゅ」


人が叫ぶ声が最後に異質なモノにかわる。


「くそっ、決してこいつを外に出すな!! 親衛隊の意地を見せてみろ!!」

「「「おうっ!!」」」


親衛隊が例の化け物を押しとどめている。

つまり、もう城内には主だった強硬派の生存者は消えたと言うことだ。

彼はエリスさんの選別から生き残ったようだ。


「ヒエラ!! 連合軍を引き連れてきました!! 援護します!!」


私がそう叫ぶと、親衛隊隊長のヒエラがこちらを振り向き、驚いた顔をしています。


「リリアーナ様、よくぞご無事で!!」

「話は後です。連合軍と一緒にこの化け物を討ち、デキラを倒します!!」

「いえ、もうデキラはいません。既にあの化け物に喰われてしまいました」


その言葉で連合軍の首脳陣が驚きの表情をしています。


「あの魔王デキラは私たちを生贄として、あの化け物を呼び出しました。いえ、あれこそ魔王に相応しいでしょう。あれは、生き物を喰らって成長する正真正銘の化け物です!!」


連合軍は意味が解らないといった表情ですが、それを問いただしている暇はありません。



ズンッ



そんな響きがあって、親衛隊のほとんどが吹き飛ばされます。


「ぐっ、見ての通りです!! あの化け物は喰った相手のステータスを吸収するようです!! 幹部が喰われ、デキラが喰われた後はもう後退するしか我らには術がありませんでした。連合軍の方々、私を信じていただけるのでしたら、どうかあの化け物を城下へ出すのを一緒に防いでいただきたい!! 信じられぬのも当然かと思います。だから私の命をもって……おおぉぉおぉおおおお!!」


ヒエラがそう言って、化け物に斬りかかっていきます。


「……た、隊長」

「剣握れ、まだ……生きてるだろう」

「ああ、リリアーナ様が……生きていた」

「せめて、なんとか突破口をつくらない……と」


気絶していなかった親衛隊のメンバーがボロボロな体を起き上がらせて、ヒエラの後を追っていきます。

ですが、その全てがなすすべもなく、あの化け物の大剣によりあっさり吹き飛ばされ、命を落としていきます。

ヒエラは流石と言うべきか、必死に致死の攻撃を凌いでは僅かな隙を見て攻撃していきます。

ですが、あの化け物はステータスに物をいわせて命を刈り取りにきます。


剣を弾かれ、大きく腕が跳ね上がり、その胴体に凄まじい速度で大剣が振るわれ……。



ガギギギ……!!



「おおおおぉぉぉっぉぉおおおおおぉぉ!!」


ローエルさんがヒエラと化け物の間に割って入り、その大剣を受け流します。


「っくぁ!! まだまだ、セラリアの方が強いぞ!!」


そして、彼女がその言葉を発した瞬間、化け物の胴体に傷がつきます。


「ヒエラ殿、加勢いたします!!」


アレス殿が剣を振りぬいて、化け物に傷を負わせたようです。


「よし、ガルツ隊は親衛隊の救助!! リテア隊は怪我人の回復を!! ロシュール隊は外からあの化け物を牽制!! 絶対に近寄るな!! 将軍たちの邪魔にしかならん!!」


クラック殿が素早く指示を出し、親衛隊を助け治療をはじめます。


「連合軍ばかりに任せるな!! 動ける親衛隊も隊長や将軍たちの援護をしろ!!」



今ここに、完全な連携体制が敷かれました。

敵は1人。

そして、此方は大軍で囲んでいます。

跳ね橋を中心に4000以上もの兵士がただ化け物を倒すために集まりました。

あの化け物が強さを発揮したのは狭い室内や、戦う数が限られた状況であればこそ。



「■■■■■■■■■■■■■■!!」



化け物は必死に生きる為に動きます。

目の前の障害を排除するために。


……ごめんなさい。


私がしっかりしていれば、あなたという化け物を魔王と祭りあげなくて済んだ。

だけど、これが私が選んだ道。

少しだけ、目を閉じ懺悔をして目を開いた瞬間……化け物の首が落ちて、体が消えていきます。


歓声が城下に広がっていきます。

今ここに、魔王は討ち取られ魔族は解放されました。


「……これからが大変ですね」


ルーメルへ侵攻した強硬派への対処、これからの他種族への交渉。

この大まかな二つにもとてつもない労力がかかります。



和平を望んでいた私にとってはこれが始まり。




side:ユキ



「……死んだか」

「はい」


俺はエリスと一緒に、あのただ化け物としか呼ばれなかったあいつの最後を見ていた。


「俺にとっては初めて意図的に死ねと命じた魔物だ」

「……私が命令を下しました、だからユキさんが気に病む必要は……」

「別に気に病んじゃいない。命自体は今まで沢山奪ってきた。策で、罠で、この手で、でもな死ねって言ったのはこれが初めてなんでな、少し気に留めておこうと思ってな」


多分これからも、こういうことがあるだろう。

それが魔物じゃなくて、嫁さんや大事な人だったら俺は同じ選択をできるんだろうか?


「……せめて、俺だけでもあいつのこと覚えていないとな」


そう言って、歓声の中を歩いて本陣に戻って行った。


これで、魔王城攻略終了。

だが、これはダンジョン勇者編だ。

終わりはまだですよ。


そして、ユキにとって初めて自分から意図的に死ぬこと命じた回でした。


あと、明日はお休み予定。

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