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第140掘:関攻略

関攻略




side:クアル



「……クラック殿」


私は目の前で繰り広げられる茶番劇を見ながら、横のリテアの指揮官に言う。


「この茶番劇はどう思いますか?」

「ユキ殿が言うことなら間違いないだろう。話を聞かず、盲目的に必要と判断したなら間違いだが、ユキ殿が言った話は聞いたのだろう?」

「無論。セラリア様からも伺っています」

「ならばこの茶番劇は必要だ」


クラック殿は部下に指示を飛ばしつつ、魔族を救うという建前を実行し、内応で此方についた魔族を味方、正義とし、敵についた魔族と魔物を敵、悪と断じて、物凄い勢いで、連合軍が関へなだれ込んでいる。

当初の予定通りに、関につく前に、此方へ魔族の男が伝令に来てこういった。


「援軍感謝、しかし関攻略で軍を削る必要なし。どうか、我らに任せて魔王城を頼みます。あなた方が我らの希望なのです」


そんなことを言われ、私たちロシュール陣営で事情を知らない、ロシュール親衛隊隊長のアレス様や連合軍の兵士たちは声を揃えて、エルジュ様に関の味方の援護と救助を嘆願。

予想通りに、関の攻略へと参加をして、味方の魔族を支援、保護し、関を攻略している。


「しかし、もう時間の問題ですね」

「いや、すでに関の扉は味方によって開かれていて、軍は流れるように入っていっている。さらに、本来関の上から攻撃する魔術や弓は内応のせいで殆ど機能していない。内部も同様だ。狭い通路では少数で大勢を迎撃できるが、現在機能を果たしていない」

「ん? クラック殿それは違うのではないですか? 関の門が破られた時点で内部は意味をなさないのでは?」

「それは、言っての通り、軍事目的の防衛としては意味をなさない。が、少数を逃がすために通路で防衛を敷くのは間違っていない」

「ああ、確かに。では少数は戦火を逃れて魔王城へと逃げたと?」

「そうだろうな。でも、向こう側はすでにユキ殿が押さえている。完全に詰みだ。個人として生き残ることはできるだろうが、魔王を中心とした組織はこれでほぼ終わりだ」

「ルーメルへ侵攻している30万が引き返してくれば、分からないのでは?」

「それは懸念の1つではあるが、知っての通りセラリア様、ユキ殿といった上層部はさほど問題視していない」

「なぜでしょうか?」

「そちらも聞いているだろうが、ルーメル侵攻軍はその半分15万がすでに壊走している。壊走だ、もう軍としての機能をはたしていない。そして残りの15万も動揺が激しく、本国、魔王からの攻撃指令があるから、何とか継続して戦いをしているだけだ」

「つまり、既に半分がいなくなっていて、侵攻軍の士気はガタガタで魔王が死んだと聞けば、降伏すると?」

「全部が全部ではないだろうが、過半数は降伏するだろう。なにせ、もう戻る場所もないのだ。絶対殺されると分かっていれば降伏や投降はあり得ないが、リリアーナ殿がその時は魔王に、いや魔族の王に返り咲いているはずだ」

「それに、ユキ殿が言ったあの作戦もあるので、心配ないと?」

「ああ、あれがあってなお忠節を誓うのは、色々な意味で盲目どころか、只の破滅願望だろう」


確かに、あの作戦が成功すれば強硬派はもう倒れるしかない。

強硬派の意味が無くなる作戦なのだから。

そんな風に話していると、関から魔王の旗がついに降ろされ、連合軍の各国の旗が翻る。


「落ちたようですね」

「ああ、しかし呆気ないな。関なら普通10日、いや1か月は攻略にかかるのだが……」

「根回しの結果ですね。僅か4時間で陥落とは。そういえば今日の予定はどうなっているのですか? すぐに進軍を?」

「いや、予定ではこの関にいた友軍と協力する必要があるので、今日はこれで進軍は終わりだ。負傷兵の手当てもあるし、関を落とした後始末もある。1日2日は情報収集という建て前の休息になるだろう」

「後から追加の兵糧も入って来る予定もありましたよね」

「ああ、関が落ちた場合はここを兵糧の集積場所とし、運搬の中継地点とするわけだ。その準備や防衛部隊も置かなければいけない。予定より早かったんだ。急ぐ必要はないだろう」


私たちが話していると、セラリア様が近づいてくる。勿論偽物のドッペル。


「報告を受けてこっちに来てみたけど、問題なさそうね。ロシュールの精鋭とリテア、ガルツの少数支援でどうにかなったみたいね」

「お疲れ様ですセラリア様」

「今回で褒められるべきは最前線に立ったロシュール兵たちでありましょう」

「クラック相変わらず固いわね。確かにロシュールの尽力もあったわ、でもリテアの回復や支援、ガルツの大盾による鉄壁。連合軍がいてこその戦果よ。そして、力を貸してくれた新しき友のおかげ。見なさい」


セラリア様に言われて私たちは関で勝鬨を上げている兵士たちを見ると、ロシュール、リテア、ガルツ、魔族が肩を組んで叫んでいる。

また場所をかえれば、怪我をしている兵士たちをリテアと魔術の得意な魔族が必死に治療している。

どこもかしこも、種族や国などといった差別などない。

ここにいる全てが戦友であり、友なのだ。

そして、これが友好への架け橋となる。


大陸の平和へと繋がる確かな一歩だ。


「きっと、この出来事は歴史に残るのでしょうね」

「恐らくは」

「何言ってるのよ。これだけで満足なんてしないでよ。まだまだ、先は長いわよ」


確かに、これは只の足がかかり。

大陸から限りなく戦争を無くすための只の一手。


「しかし、セラリア様。もう、手筈は整っているのですね?」

「ええ、勿論よ。誰の作戦と思っているのかしら?」

「……ユキ様ですよね。決してセラリア様の功績ではないと思いますが」

「夫の功績は私の功績よ。そうでしょうクラック?」

「あ、いえ。そうですが、そうでないともいえるような」


クラック殿はなにか言いにくそうにしているが、ここでビシッと言わないと、旦那自慢が始まるので、何としても話を変えなくては。


「そういえば、そのユキ様はどうされました?」

「んー、ユキなら家で晩御飯の準備しているわよ」

「「……」」


なんと言うか、ユキ様の性格は知っていますが、これはセラリア様を甘やかし過ぎではないでしょうか?

というか、女王の配偶者で軍の参謀にして、裏では3国いや魔族の国を含めて4国を口一つで動かせる大人物をセラリア様は給仕のごとく扱ってらっしゃる。


「なによその目は、夫が趣味でやってることよ。ご飯も美味しいし、仕事は滞りない。何も問題はないでしょう?」

「まあ……」

「……そうですな」


2人でなんとか言葉をつぶやく。

というか、先にご飯の話で後に仕事が来るのはどうなんでしょうか?

そんなことを話していると、デスト殿が関から戻ってきた。


「……関の完全制圧が完了。これより、物資の搬入を行い、防衛部隊の選定に入ります」

「わかったわ。これから2日程、負傷兵の後送と物資の補充を行います。魔族の扱いは、希望するなら従軍を、負傷しているなら無理をさせず後送で手厚く看護を」

「了解」

「あとは、今日は最低限の防衛部隊以外は酒をふるまいなさい。これが歴史上初の快挙なのだから、祝いましょう」

「はっ、承りました!!」


デスト殿はそう言って駆け出していく。

あ、ちゃんと命令書は渡していますよ?

流石にセラリア様のOKの言葉だけで物資を使うことはできません。

正式にちゃんと書いて、印を押さないとダメです。

そこら辺はちゃんとしています。


「さてと、あ、いたいた。エルジュ」

「あ、ちぃ姉様」


クラック殿と別れ、指示が終わったセラリア様は、予想通りに溺愛しているエルジュ様を探して本陣へ入っていきます。

護衛でもあるので、一応行く先を言ってほしいのですが……。


「どうされたのですか、ちぃ姉さま?」

「そろそろ晩御飯だから戻ってきなさい」

「え、でも、関を落としましたし、私が抜けるわけには……」

「ドッペルに任せときなさい。クアルもいるし適当にやってくれるわ。今日は夫が関を落としたってことで豪勢に色々作ってるから、来ないともったいないわよ」

「う、ユキさんが豪勢に作ってるんですか……」


うん、ユキ様が作る料理は絶品だ。

調味料をバランスよくつかい、食材の味を引きだす。

それが今日はユキ様本人が豪勢と言うほどだ、それは私たちに取っては普段の食事でさえ豪勢だと言えるのに、それを更に上回ると言う事だ。


「って、待ってください!!」

「あら、どうしたのクアル?」

「私は居残りですか!?」

「え、当然でしょう?」


ぬぐっ!! 確かに部下ですし、尊敬もしています。

が、あの食事となれば話は別です。

というか、今回のウィードのセラリア様の親衛隊の不満のほとんどは食事である。

連合軍に合わせて、干し肉や干した果物が多かったりする。

一応、ウィードからの補給物資は十分あるのだが、連合軍としては、まずは自分たちが持ってきたものを消費してという方針になっている。

何故なら、これで各国の兵士がウィードの食品を直接買ってしまう危険性がある。

それを上層部は気が付いて、なんとか兵士が散財するのを阻止しようとしているのだ。

簡単な話、ウィードで直接買う流れができると各国にとっては損になる。

現在の予定では、ウィード産の物を自国に輸入して、値を自分たちでつけて販売する形をとるから、お金は自国で循環する。

が、ウィードで直接お金を使うと、お金はウィードに溜まり、自国ではお金が少なくなる。

それを阻止したいのだ。

これは長い目で見ると色々拙いらしいので、ユキ様も納得してウィードからの物資補給は最低限というスタンスをとっている。

本当に問題があれば、簡単に補給できるが、これが連合軍の食事事情である。


なにが言いたいかと言えば。


「不満です!! 私も連れて行ってください!!」


美味い物を食べるのを分かっていて、放ってはいけないのだ!!




side:ユキ



「ん~?」

「どうしたのかしら?」

「いや、何か人が増えそうな予感がした」

「それはそうね。こんなに豪華なんだもの。誰かが匂いに釣られてくるわ」


ま、人が増えようと早々無くなる様な量じゃないし、ラビリスたちも手伝ってくれてるし、足りないならすぐ作れる。

うん、問題はないな。


「ほい、コレ持って行ってくれ」

「はい、お兄ちゃん」

「はい、兄様」


さて、次はローストビーフでもいってみるか。

今回は一般兵たちの視点でお送りしましたw

普通の人たちから見ればユキたちの行動は人智をはるかに超えています。


と、コメントにチョロイン多くね?

って話ですが、実はチョロイン該当はデリーユ、リーアぐらいです。

他は元が政略結婚だったり。セラリア、ルルア、シェーラが該当。

奴隷で意思を誘導されてたり。ラビリス、アスリン、フィーリア、エリス、ミリー、ラッツ、カヤ、トーリ、リエルが該当。

キルエはシェーラの護衛兼神の指示で意識誘導。


そして、デリーユ、リーア以外は小説内時間は出会ってそれなりに長くユキと過ごしています。

だから、きっかけは多方面の意思が介在してましたが、好きになったのは、ユキの人となりを自分たちで判断した上です。

キルエのお話もわざと最近になって書きました。

今までは義務で仕えていて、自分の意思を抑えていたということで。

キルエがユキの奥さん入りを拒んだのも只のユキの性のはけ口になるつもりが無かったからです。

ですが、いまは喜んでいきますが。


とまあ、チョロインの定義がすぐあって恋に落ちるとするなればですが。

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