第120掘:学校のお仕事
学校のお仕事
side:ユキ
とりあえず、学校についた。
よし、今までのマイナスは仕方がない。
回避しようのない不可抗力という奴だ。
まずは、仕事に集中しよう。
これで、仕事には誠実だと見せれば、全体的に評価があがるだろう。
「あら、ユキ先生。おはようございます。今日は遅かったですね」
「どうも、おはようございます。今日から私も新人をつけるようになりまして。彼女がそうです」
「どうも、リーアといいます」
「はい、よろしくお願いしますリーアさん。私はこの学校で教師を勤めているミミアといいます」
挨拶はすんなりいったぞ。
まあ、ここで躓くようなら、どうしようもないと思うが。
「ユキ先生の新人といいますと。学校のみならず、色々お仕事をされる予定で?」
「あー、そうですね。ゆくゆくはという感じです。いい加減妻達も多忙すぎて心配と言われてまして」
「それはそうですね。今までのユキ先生のお仕事を考えると、とてもじゃありませんが一人でこなすにはむりですからね」
「それをわかってるから、ミミア先生達に頼んで学校や授業を頼んではいるんですが」
「学校だけですからね。他は殆どユキ先生の手腕ですよね? 正直無理をして倒れられると生徒も心配しますから、無理はしないでくださいね」
「肝に銘じておきます」
過労で倒れる様な事はしないように、スケジュールは組んでるつもりだが、やっぱり周りから見れば忙しく見えるんだろうな。
「と、こんな感じでユキ先生は無理をする方なんです。私は学校という場所でしか、支えられませんが、リーアさんはこれからユキ先生のお付きになるみたいですから、どうかユキ先生をお願いします。彼はウィードの柱なんです」
「は、はい」
お、なんかミミアさんの怒涛の攻めで初めて動揺してる感じだな。
「ミミア先生今日はリーアに一日先生を勤めてもらおうと思っているんです。流石に自分に合わせて、軍部に商業区にと行ったり来たりを初日にさせるのは忍びないですから。私がいない間、リーアの事をよろしくお願いできますか?」
「はい、大丈夫ですよ。しかし、初日ですか? 訓練所が終わるのはまだ2日ほど先では?」
「ああ、彼女は以前から検討してた、奴隷商人の誘致で来たんです。まだ二日目ですが、算術や話術などのスキルを持つ有能な子でして、訓練所に預けるよりは、代表達で直接指導をした方がいいのではという話になりましてね」
「なるほど。すでに算術を、それは代表達の様にするのが適切かもしれませんね」
「ですが、訓練所に行ってない分ウィードの常識に疎いこともありますから、そこら辺もよろしくお願いします」
「はい、わかりました」
ミミア先生に話を通して、他の先生にも一応同じように通知する。
学校と名を打っているが、実際生徒はそこまで多くない。
200人後半程。300人にはぎり届かないぐらい。
しかも、まだ小学生4・5年生ぐらいの授業まで。
で、リーアに簡単に授業内容をまとめた紙を渡して、確認してもらう。
内容は以下の通り。
ウィードの授業
ウィードの成り立ち
独自のルール
ダンジョンコアの説明
など
算術の授業
掛け算
割り算
分数
面積計算
など
国語の授業
文字を教える
本を読めるように
契約関連の文面説明を読めるようになる
など
魔術の授業
魔術の説明
魔術の基礎
適正属性を調べる
初級魔術を覚える
など
冒険者の授業
体力作り
武器の扱い
魔物の知識
トラップの判断
ギルドの説明
野営の説明
など
歴史の授業
各国の歴史
村や街の位置を確認する
など
科学の授業
基礎的な事を教える
電気について
酸素などの元素
など
これに加えて、先生達のほとんどは、宿舎で生徒達の面倒を見る保護者としての仕事もある。
殆どの子供達が孤児な故。
「というわけ、これだけ勉強が出来ればお仕事には困らないだろう将来」
「そ、そうですね」
ありゃ、こっちの内容も驚いているのかな?
「リーアさん、大丈夫ですよ。ゆっくり教えればいいですし、私達も学ぶことができるんです」
「どういう事でしょうか?」
「大抵の人が文字を読めなかったり、計算ができなかったりするからな。一般にも教えてるんだよ」
「はい。ユキ先生の考案で広く人々に開かれている所なんです。おかげで、この3か月で文字を読める人がちゃんと増えて、計算も簡単なものならできるようなっています」
「す、すごい」
「そうか?」
「ユキ先生はこんな感じで色々考え方が突飛ですから、ついて行くのは大変かもしれません。ですけど、必ずリーアさんの為になりますから、頑張ってください。あ、無理はダメですよ?」
「はい、わかりました」
正直、俺の好感度よりも、ミミア先生の好感度の方が上がってね?
しかし、仕事の話だしな。
現場にあまりいない俺が口出しするより、ミミア先生の方がいいだろうし。
ま、焦らなくても、リーアとは基本一緒なんだからいいか。
そうだよ、セラリアやエリスにせっつかれて行動してたけど、流石に今日明日で恋人になれるわけもない。
じっくり行くべきだよな。
「さてと、空いてる机は……と」
「それでしたら、ユキ先生の横につけるべきでは?」
「でもな。空いてないし、無理に頼むのな……」
断ろうと思っていると、ライヤが声をかけて来た。
「別に俺は移動してかまわんぞ」
そうライヤとカースは冒険者の授業と魔術の授業の担当だったりする。
モーブは冒険者ギルドで新人の担当。
そして、そばによってこそっと話しかける。
「勇者の件は聞いた。ウィードの人々の為だ。頑張れ。協力は惜しまん」
「代わる気は?」
「ない」
コノヤロー。
そのまま俺の横を通りすぎて、リーアに声をかける。
「この学校で冒険者の授業を担当しているライヤだ。現役の冒険者でもある。冒険者関連で聞きたいことがあれば聞いてくれ。お互い同じ仕事場だしな、頑張ろう」
「はい、宜しくお願いします」
そうやってさりげなく、机の上の物を片付けて、空いている席へ移動する。
クソ、俺の胃に穴を開けたいのか。
そんな事をしつつ、リーアに机の使い方を説明し、授業に必要なものを揃えていると、チャイムが響く。
「と、この音が授業開始の合図だ。ちょっと遅れてるな。ついてきてくれ、今日は何も持ってこなくていいから」
「はい」
そうやって、俺の担当の教室に入っていく。
ここ最近祭りや、会議で行ってない日がおおいから、いける日はしっかり行って皆を安心させないとな。
流石にリーアの為だけに、子供達を蔑ろにはできない。
未来のウィードを作るのは子供達なのだから。
「おはよー。皆元気か」
「「「おはようございます!!」」」
「ひゃっ!?」
おう、朝からビリビリくるな。
子供はこれぐらいがいい。
リーアは驚いたみたいだが。
「今日は新しい先生を紹介します」
「「「わーわー!!」」」
「算術を教えてくれるリーア先生だ。挨拶をするぞ」
「「「よろしくお願いします」」」
「はい、よ、よろしくおねがいします!!」
うむ、子供の勢いに押されてるな。
無反応でいるのもつらいよな、子供ってのはそういう力がある。
恋人はともかく、少しでもリーアの心が安らげばいいと思う。
「リーア先生、この子達は3年生1組の生徒たちだ。子供達の中で一番授業が進んでるクラスで、この学校ができた時からいる子達だ」
「ユキお兄様、いえユキ先生の言う通り、授業はどうかわかりませんが、学校ができた時からいるのは本当です。このクラスの委員長をしているヴィリアです。よろしくお願いします、リーア先生」
「えっと、はい。よろしくお願いします」
ヴィリアは歳の割にしっかりしてるからな、だからリーアをここに連れて来たんだが、何か問題があっても対応してくれるだろう。
アスリン達もいることだし。
そう思ってアスリン達に目をやると。
分かっていると頷いてくれる。
「さあ、今日はリーア先生は初めてですから、私の授業を生徒と一緒に聞いて参考にしてください」
「あ、はい」
「リーア先生ー私のよこがあいてます~」
アスリンが手を振って横の机を指さす。
うん、ナイスだアスリン。
今日は家でなでなでしてやろう。
「今日は、俺からの授業は算術だ。ちゃんと勉強できてるか、基礎からいくぞ」
「「「はーい」」」
元気な声に頷いて、わざと足し算、引き算からやって皆が怒ったのは内緒だ。
それで子供達が笑うと、つられてリーアも笑っている。
うん、焦る必要はねえよな。
いいか、決して俺が爆死したくないとかが原因ではない。
実際、学校の学習レベルを公開してませんでしたので、リーアの仕事説明に合わせて、紹介しました。
この大陸ではトップクラスの学習制度です。