第107掘:すいませんでしたっ!!
すいませんでしたっ!!
side:ユキ
「よっと」
着地成功。
結構動けるな。
本体は久しぶりだから心配だったが、問題は何もないか。
「おっと、コールセラリア」
あの場面見てたし、セラリアにちゃんと説明しないとな。
…
……
………
?
「あれ? 忙しいのか? じゃエリスでいいか。コールエリス」
『ユキさん!! 大丈夫ですか!! 心配しないで、直ぐに皆がそちらに行きます!! あの馬鹿姫はすぐに処刑しますから!!』
あれ?
大事になってね?
『勇者もすぐに血祭に上げますから!! 死なないで!!』
「ちょっとストップ!! 聞こえてる!? 聞こえてますか!? お姫様の方はパフォーマンスでお願い!! 勇者とは演技だから、ね!! 聞いて、国際問題になるから!!」
あれ、何がいけなかった?
俺が吹き飛んだのってどう考えても演技にしか見えないだろ?
「コールラビリス!! でて!! 嫌な予感がする!! 出てくれラビリス!!」
『ユキ、大丈夫!? 待っててすぐにこの女の首を刎ねてそっちに行くから!!』
『兄ざまーーー!! 大丈夫えすが!!』
『お兄ちゃん!! ひっく、えぐ、嫌です!! お兄ちゃんがいなくなるのはいやでず!!』
『お兄様、ひっぐ、ああ、ふえーん!!』
『お兄ぃ、お兄ぃ……どこ、えぐ』
「落ち着け、色々事情があるから、そのお姫様とは演技って事にしろ!! 演目だ!! 今、ボコるのは拙いから!!」
『ぶ、無礼者!! 3国を瞬く間に制したランクスの姫にこんな事をしてタダですむと思うな!! ええい!! 親衛隊何をやっている、そんな魔物はさっさと片付けて、この小娘を斬り捨てなさい!!』
ひぃぃぃ!?
お姫様煽ってる!?
『スティーブ!! そいつ等の首をすぐにあげなさ……』
「祭り時に血なんて見せるな!! 落ち着け、頼む。落ち着いてくれ!!」
『でも、でもっ!! ユキをっ!!』
「俺は大丈夫だから!! なんでも言う事聞くから!!」
『……なんでも?』
ん?
地雷踏んだ?
「そ、そうだ!! なんでもだ!! 頼むから演技ってことで姫様とその一派拘束しててくれ!!」
『……わかったわ。すぅー、さあ、ご覧にいただけましたでしょうか? 我がダンジョン内の防衛力と魔物の力を!! この度は精強で有名なランクスのご協力でお送り……』
よし!!
流石ラビリス。
俺の記憶を漁ってるだけある。
機転はよくきく。
こういえば、取り押さえられてるし、面子を保つ為に演技ですと言うしかない。
「えーと、大丈夫そうですね」
勇者が着いたか。
「そりゃな、あれぐらいでどうにかなるほどひ弱じゃねえよ」
「ちぇ、俺もそれぐらいのチート欲しかったですよ」
「どうだろうな。これでも関係者の記憶は消され…というより、いなかったことになってるらしいからな」
「うげ!? それマジですか!? 俺戻っても意味ない!?」
「ああ、俺は勇者召喚じゃないから、違うと思うぞ」
「ほ、本当ですか? ああ、すいません。タイキ・ナカサトって言います。っと、中里大輝です」
「おう、俺は鳥野和也だ。そっちは見た目通りの年齢か?」
「どういう事ですか? もしかして……鳥野さんって」
「ああ、25だ。前は」
「はぁ、なんか無茶苦茶ですね。この世界」
お互い苦笑いをする。
そうするとセラリア達がこちらに来るのが見える。
「あっ、やべ!? タイキ君防御しろ!!」
「へ?」
「へ? じゃねーよ!! 一応このダンジョンの代表に手出したんだ、しのげ!! そうじゃないと死ぬぞ!!」
「うっそーー!?」
慌ててタイキ君が剣を抜く。
「嫁さん達に傷つけたら殺すからな!!」
「ちょっ!! 達!? ハーレムですか!!」
「よし、その余裕があるなら大丈夫そうだな。説得するまで耐えろ!!」
俺は基本魔術派だ、防御壁を展開してりゃすぐにあきらめるだろ。
タイキ君にはああいったけど、嫁さん達はこの防壁抜けないから、大丈夫……
「ユキィィイィィイ!! おおぉぉぉぉぉおぉおぉおっっ!!」
まず先陣を切ったデリーユが防壁の五層を一気に吹き飛ばす。
「ユキさぁぁぁああん!!!」
ミリーが流れるように双剣で二層破ってさらに防壁にひびを入れる。
「……まっててすぐ助ける!!」
カヤが俺仕込の魔術で連携して、棒術でさらに壁を三層壊す。
「僕がすぐ行くよ!! 勇者ぁあぁぁあてめえ楽に死ねると思うなぁぁぁ!!」
「ひっ!?」
リエルが小太刀で防壁を簡単に切り裂くこと四層。
うん、タイキ君が悲鳴を上げたのは非難しない。
俺も怖いもん。
「ユキさんっ!! そんなにボロボロに!! 許さない!! あああぁぁぁあぁ!!」
トーリが剣で六層、残りの防壁を突破した。
ちょっ!?
あれから改良加えて二〇層の超防壁ですよ。
改良加える前の防壁突破できなかった皆がなんで突破できるわけ!?
「お兄さんから離れろクソ野郎ぉぉおぉおお!!」
ラッツが魔力を槍に乗せて投擲する。
真っ直ぐタイキ君に。
「ちょっとぉぉぉおおお!?」
流石勇者。
レベル232のラッツの投擲を防ぐか。
レベル差100はあるのに流石勇者だな!!
「死んでたまるかぁぁぁぁあ!!」
うん、必死な声わかるわ。
こんなんで死んだら浮かばれないわ。
なんとか槍の軌道をそらす。
お見事。
拍手しようかと思ったんだけど……。
「死ね」
スッと、音もなくセラリアが抜刀の構えで現れた。
あ、やべ。
「え?」
タイキ君は槍を弾いて硬直している。
セラリアに反応もできていない。
タイキ君の首に鍛錬を重ねた抜刀術が迫る。
「こっ、のぉおおぉおおぉぉお!!」
俺も慌てて、訓練していた刀術でセラリアの抜刀を抑える。
確かにメインは魔術だ。
だが近接ができないわけじゃない。
「「「え」」」
それで嫁さん達は止まった。
俺の近接戦闘に驚いて。
全力の近接戦闘は見せたことなかったしな。
前見せたのは相手に合わせてたし。
はぁ、なんで身内相手に最初に手の内がばれるかね。
こういうのはピンチのボス戦でこうかっこよくばれるもんだろ?
また他の方法考えないとな。
「え、え? 貴方も同じ刀? や、やだぁ。言ってくれれば教えたのに。もうっ」
セラリアは俺の手ごと、刀をとって自分のと見比べて喜んでいる。
……俺の奥の手は勇者を守る為に使いました。
はぁ、でもいいか。
これで話がすすめられ……。
「……で? 何か言いたいことはありますか旦那様?」
「あれ、ルルアも来たんだ。何怒ってるの?」
「本体で出ていくことがありますかぁぁぁあ!!」
「すいませんでしたぁぁぁぁああ!!」
ルルアの絶叫で何が一番問題だったか理解しました。
いや、でもさ、アスリンの体が偽物とはいえ、ああなったらいくだろ普通。
ねえ?
ついって奴よ。
あるよねー?
ダメ?
すいません。