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落とし穴11掘:日常とお約束 後編

日常とお約束 後編





side:ユキ



「あー、ども」

「なんだい君は?」

「いえ、一応ここの代表のユキといいまして……」

「ああ、君がユキ侯爵か、お初にお目にかかる。私はジャーマ・ラブルセ。今回の視察に来た一団の一人だ」


なんとも、対応は普通だ。

いや、息子なんで公爵でもなんでもないんだがな。

まあ、次期当主って感じで振る舞ってるんだろうな。

セラリアに知れたら、血の雨が降りそうだな……。


「はあ、で、シェーラの事で何か用事とか?」

「ああ、そうだ。君はシェーラ姫を労働力として扱い、厄介者扱いしているね」

「いえ、それはほん…」

「君はシェーラ姫を預けられた理由をわかっていない!! 姫をあのように扱えば、きっと抗議がくる。それでは本末転倒なんだ。わかるかい? 彼女は大事に扱われないといけないんだ。王が君を信頼して預けたらしいが、これでは駄目だ。君は僕に姫を預けたまえ」

「えーと、ジャーマさんに姫を渡せばどうなると?」

「君は姫を扱う重荷から解放され、僕は姫を自領で大切に扱い、ロシュール、ガルツからの覚えめでたくなる。ほら、どっちも得だろう?」


あー何というべきか、表情報だけをしっかり聞いているタイプか。

なるほど、これならセラリアの夫である俺に強く出れるわけだ。

重荷をこちらが持ってやるんだから感謝しろと。

ま、どれほどラブルセ領が凄いかはしらないが、ロシュール王都とそれなりの交流があるのだろう。

そこにシェーラを受け入れれば、シェーラの当初の目的は果たせて、ロシュール側はまあ嫌だろうが、王都じゃないからまあ良しとして評価も上がるだろう。

ダンジョン側を非難する格好の理由としてもいい。


が、前提がシェーラが行きたがってて、俺達も邪魔だったらな。


「いえ、申し訳ないですが。シェーラは望んで仕事をしていて、夫婦仲も悪くないので遠慮します」

「は?」


あらら、断られるとは思ってなかったのね。


「ちょっとまってくれ。今断ると聞こえたのだが?」

「ええ、断ります。しかも、この件は王から直々に賜った褒美でもあるのです。それをまだ、公爵の位を譲ってももらっていない、無名の貴方に譲ったとあっては、大問題ですがお分かりで?」

「私が無名? 私はラブルセの長男で次期…」

「今は只のご子息ですね。正直、公爵である貴方の御父上の教育を疑問視しなければいけないのですが」

「父上の何が疑問なのだ!!」

「人の妻を横から掻っ攫おうという心根ですよ。これはセラリアやロシュール王に報告してもよいので? お家が傾きかねませんが? おや、まさか御父上の提案とは言いませんよね? それなら反逆罪もいい所だ」

「ぐっ…!?」


ふむ、自分が無茶を言ってるのは理解できてるのか。


「まあ、シェーラは美人ですからね。そう言う気持ちも分からなくはないです。ですから、今回は見なかった事にしましょう。若気の至りということで」

「……本当にシェーラ姫がここでの生活を望んでいるのだな?」

「ええ、そうですよ。シェーラ入っておいで」

「はい、ユキ様」


そういうと、部屋の外で控えていたシェーラが入ってくる。

勿論俺の横にストンと座る。


「ジャーマ殿、私はこのダンジョンで望んで仕事をしていますし、ユキ様の妻で嬉しく思っております。お心使いはありがたいですが、特に厄介者ともあつかわれていませんし、むしろここに来てよかったと思うくらいです」

「そう…ですか…」


ジャーマはそう言ってがっくりと頭を落とす。


「納得してもらえましたか?」

「…ええ、申し訳ない。ユキ侯爵、今回の件、貴方の言った通りに穏便にお願いできるか?」

「まあ、仕方ないでしょう。この件はココだけの話ということで。さて、他の視察の皆さんもジャーマさんがいなくて驚いているでしょう。戻って安心させてください」


そう言って扉を開くと、様子を伺っていた、ラッツとエリスが立っていた。


「おおっ!! そう言えば君達の夫はまだかい? シェーラ姫は残念だったが、君達が来てくれるなら、それも些細な事だ」


おいおい、シェーラの前でそれを言うか?


「……ユキ様、もうこの失礼な男コロシテイイデスカ?」

「落ち着け、キルエがマジになるからな。キルエ冗談だ、軍用ナイフをしまえ」

「……はい」


そんな事をしていると、ラッツとエリスもいい加減切れそうだ。


「私はオマケではありません!! ふざけないでください!!」

「……まあ、そろそろ口を閉じてくださいな。私達の夫にぶちのめしてもらいますよ?」

「何をそんなに怒っているんだい?」


あ、だめだこいつ空気よめてねえ。


「私達の夫はそこにいるユキ侯爵です」

「だからいい加減にやめてください。セラリアを呼びますよ?」

「は、君達の夫がユキ侯爵? な、なんでだ!? 僕の方がずっとすごいだろう!? どうして、こんな男に君達みたいな女性が集まるんだ、あり得ない!!」


とうとう理解の範疇を超えたか。

お前、自分では何もしてないじゃん。

ま、俺がイケメンかと言われればノーだが、積み重ねがあるかな。


「あ、もう駄目です」


ラッツが笑顔でそう言う。


「どこからどう見ても、ユキさんの方が上です」


エリスは無表情で圧力が上がる。


「ユキ様。申し訳ございません。妻として、夫への暴言を見逃すわけにわけにはいきません。そうよねキルエ?」

「シェーラ様の言う通りでございます」


シェーラとキルエも臨戦態勢。


「な、なんだ!? 君達どうし……」



そうやって、ジャーマは視察の残りの日々を病院のベット上で過ごす羽目になった。

ちなみに、ギャーギャー言ってはいたが、セラリアの耳に今回の件が入り、さらなる地獄を見たとか。



この話は後に、人の嫁に手を出すな。という定番の話として語り継がれることになる。

さらに、このジャーマも定番のお邪魔虫役として、キャラクターが固定化され、あらゆる物語で足蹴にされている。



「なんだかな……南無」

これにて、小話終わりw

長引いたw

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