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最終話 あふれる思い
「なにこれ!?」
カレンダー状のワクの中に、その日の予定を書き込んであるのは普通だが、それと一緒に奇妙なマークが付されている。

相撲の星取表のようでもあるし、天気記号に似ていなくもない。
一年と二年の途中までは多彩なマークがひしめいている。でも、三年にいたっては、●と△のオンパレードだ。

不可解な思いを抱きつつも、ゆっくりとページをめくっていく。
体育祭、修学旅行、文化祭……一枚めくるごとに、こみあげる懐かしさで胸が一杯になり、気がつけば、時が経つのを忘れていた。

手帳の書き込みは卒業式の日で終わっていた。
この日、正孝は、少し離れた所から、「卒業おめでとう」と言ってくれた。
自分も同じ言葉を返したと思う。

「あっ!」
そこに付された◎を見た時、そのマークの持つ意味が、まるで天啓でも得たように理解できた。
会えなかった日は●、目が合った日は○、そして、言葉を交わした日は……。

時計の針は午後六時五十分を示していた。
携帯電話に伸ばしかけた手を引っ込めて、モモは、はじかれたように立ち上がった。

(たぶん無理、ううん、今すぐタクシーで駅に向えば……)
答えを出す前に、夢中で表に走り出た。

耳元で風の音がする。
全力疾走なんて、高校の頃以来だ。
正隆の手紙の最後は、こう結ばれていた。

「もしも、そうでないのなら、今度はあなたが、僕に会いに来て欲しい」

新幹線に乗ってしまったら、今日中に帰ることは不可能だ。
そんな思いは、空車ランプを付けたタクシーを見つけた途端に、消し飛んだ。

(あなたに会いたい、あなたに会いたい、あなたが好き、あなたが……)

ずっと胸に秘めていた言葉が、今にもあふれだしそうだ。
宅急便の送り状を握り締めたまま、モモはちぎれるほど手を振った。

―了―
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