第9話 訓練と味方
気付いたら、ブクマが200件を超えていました!
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そして、皆様からスカッとした物語の提案を受けておりますが、物語を進める中で皆様がイメージするスカッととは違う結果になるかもしれません。
これも、性格が捻くれた作者の未熟さ故です。
だとしても、今後とも頑張りますのでどうかよろしくお願いします(ーー;)
リツェアとヴィルヘルムと契約をした2日後、俺はいつもの様に訓練に参加していた。
本当はサボるつもりだったのだが、コッソリ部屋から出るところを海堂とその取り巻きに見つかってしまったのだ。
自分の事ながら、海堂程度に見付かるとは屈辱だ. ‥‥。ちょっと本気で傷付いた。
あの2人を脱出させる準備は昨日の内に済ませておいたので少しの間なら道草を食っても大丈夫だろう。
今日ほ主に模擬戦形式の訓練が中心で行われた。
その中でも、勇者の素質を持った澤輝が周りの奴らより頭一つ抜きん出ている。
その他にも、見所のある生徒はいる。黒色の魔力量を持つ海堂と紫色の魔力量を持つ2人だ。名前は、風巻雫と深海庸平。2人は魔力に頼った澤輝や海堂の戦い方と違って武術を磨いている。
ちょうど今、相手役をしていた同じ紫色の魔力量のクラスメイトをノックダウンさせた所だ。
2人ともまだ未熟ではあるが、戦闘の才能なら澤輝や海堂以上かもしれないな。
他には、あの端の方で戦っている女子の団体は息があっているな。
あれ?あいつらって、まさか‥‥。
おっと、今バラバラで挑んだ海堂の取り巻き含む男子4名が見事に息の合った魔法を受け吹き飛んだな。
「ぅっ、何て息の合った攻撃なんだ‥‥!」
「流石は、澤輝親衛隊‥!」
「俺たちが、手も足も出ない...だと?」
「‥‥燃え尽きたぜ、‥‥ガクッ」
「「「起きろやー!!」」」
「はっ!ラッキースケベの為にリベンジじゃー!!」
「「「おぉぉおおお!!!」」」
男子は何の為に訓練やってんだよ。それに、ラッキースケベを公言した時点でただの変態だ。
それに比べ、あの、澤輝親衛隊の方は、実戦でも今の様に息を合わせて動けるなら、戦闘でも戦力になりそうだな。
「「「「近付くな変態共!!!」」」」
「「「「うぎゃー!!!!」」」」
もうそのまま八つ裂きにしてくれ、澤輝親衛隊の諸君。
あ、俺も対戦相手の攻撃を適当に受けて負けた。
勿論、痛がる演技も忘れていない。
その後、何度か模擬戦が繰り返され午前の訓練が終了となった。
早々にこの場から離れようとした時、海堂たちに声をかけられた。
「おい、ゴミ屑。ちょっと来いよ」
その言葉を聞いて露骨に顔を顰めながらも俺は海堂たちに着いて行く。
ここで騒ぎを起こされたら、折角の計画がパーだ。
建物の裏、地球で言う所の体育館裏の様な場所に連れて来られるなり背中を蹴られ転ばせられる。
そして、次々と魔法が放たれる。
必死に避けている演技をする。
「くっ」
そして、痛そうな声を上げる。
「ぐぅ、いっつ‥‥」
その様子を海堂たちはゲラゲラと笑って楽しんでいた。
まぁ、正直な所、ダメージは負った直後から『医神の波動』の効果で回復するし、魔力で体を強化しているので大した痛みはない。
「おいおい!どうした?その程度かよ」
「よっわー、ってか弱すぎ!」
倒れている俺を取り巻きたちが煽る。
「弱いゴミ屑に、今日は俺の爆裂魔法を見せてやるよ」
その言葉に、100年前魔法オタクと呼ばれた事があるー俺は断じて認めていないー程の魔法好きな俺は、海堂が放つ魔法に興味が湧いた。
「行くぜ!爆裂魔法〝爆裂弾〟」
「それが爆裂魔法?」
思わず声が出てしまった。
それよりも、何だそりゃ!?
魔力操作は下手くそだし、火と風の魔法を中途半端に混合させた事で球体の魔力がさっきから安定していない。そんなんじゃ、威力もバラバラだし、実戦では到底使えない。
「こいつは昨日図書館で見つけた火と風の魔法を合わせた混合魔法だ!本には、爆裂魔法って書いてあってだなー」
その後も海堂が何やら言っていたが、短縮すると爆裂魔法が気にいったそうだ。
何だ?こいつは爆裂にロマンでも見つけたのだろうか。
ってか、その爆裂魔法を発明したの俺だし。
100年前、色々な魔法を試している内に俺が独学で完成させた魔法だ。だが、魔力操作と爆発の規模の調節が難しく俺以外はあまり使わなかったな.....よし、海堂をクソ野郎からクソ弟子にランクアップさせてやる。
‥‥勿論、冗談だ。
あー、因みに、魔法の強さが階梯に分かれているのは属性魔法のみなので、混合魔法に階梯はない。それ以外の魔法は、下位、中位、上位なんて呼び方をする。
俺がそんな思考に陥っている間に海堂の爆裂魔法に対する熱弁が終わった様だ。
「つまり、てめぇみたいな弱いゴミ屑には一生出来やしないって事だ!」
海堂が俺に向かって〝爆裂弾〟を放つ。完成度は低いし、魔力が無駄に込められて不安定だが、命中すればなかなか痛そうだ。
逃亡前にあんまり大怪我したくないし、しょうがない。
俺は防御系統の魔法を発動するーー前に〝爆裂弾〟を3メートルはあるだろう槍が貫き、俺と海堂たちの間に突き刺さった。
海堂の魔法は完全に消滅した。
その結果に呆然とする海堂だったが、直ぐに槍が飛んで来た方向を睨む。
人が近付いて来てる事には気付いていたが、まさかあいつらだとは思わなかったな。
俺も海堂たちに遅れて槍が飛んで来た方向を見た。
そこに立つのは、海堂よりも体が大きく正に巨漢と呼ぶに相応しい青年、深海庸平とその深海に比べるととても小さく見えるが、女子の中では身長が高めでいつも凛としている美少女、風巻雫がいた。
その意外な人物たちの登場に海堂たちは戸惑っている様だ。
「貴方たちは一体何をしているの?」
雫のまるで鈴を鳴らした様な綺麗な声で海堂たちに問うた。
「いや、そのー」
「ただの遊びだって、ハハハ」
「お前らには関係ないだろぉ!」
海堂たちの戸惑いが焦りに変わった。
それは、雫が放つ冷たい敵意と深海が放つ無言の圧力の所為だろう。
「関係ない?私は地球にいた時から、一乃瀬への虐めを止める様に何度も言っていたわよ」
深海の太い右手が前に出る。
「‥‥〝戦の武皇〟」
呟く様に言った低い声に従い、槍が深海の右手に転移する。
「えっ!」
「槍がっ」
やはりこのスキル、100年前俺が倒した獣王が使っていた固有スキルだ。
深海はクラスでも珍しい固有スキルを複数取得した者の1人だ。固有スキルは『戦の武皇』と『武具召喚』の2つだ。
『武具召喚』はアイテムボックスに入っている武具を瞬時に装備出来る。
『戦の武皇』の効果は、全ての武具を使う上で補正がかかる。そして、離れた所にある自分の武器を自分の手に転移させる事が出来るだけの効果だと深海は思い込んでいる。
しかし、それは、『戦の武皇』の能力の一端にすぎない。
「‥‥殺るか?」
深海が重そうな槍を軽々と振り回し、海堂たちに向けて構える。
「そうね。私も、丁度もう一戦したかったのよね」
そう言いながら、白く細い腕で抜いた細剣に黒い模様が浮かび上がる。
確か、風巻の固有スキルは『呪詛の刃』。刃に呪いを付与して、斬りつけた者を様々な効果を持つ呪詛で呪う事が出来る。
えげつねぇな。
因みにこの2人の魔力量は紫と言ったが、黒よりの紫だ。ほぼ黒色と言っても良い。
その魔力量に加え、戦闘に特化した固有スキルと戦闘の才能を持つこの2人に、海堂ならまだしも、他の取り巻きじゃ話しにならない。
「お、おい海堂」
「ヤベェって、ここは‥‥」
「チッ、おい行くぞ」
俺を睨みながら海堂と取り巻きは城の中に向かった。