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アイドルの楽屋

作者:桜井 慎
とある町の小学校。
楽屋と書かれた貼り紙がなされた教室。
書かれている文字は『プロトタイプ』様。
『プロトタイプ』は三人組の売れない新人アイドルグループ。
軽く紹介をしよう。

薦田祝子こもだ のりこ
  黒髪ロングで大きな瞳。16歳。153㎝、胸はかなり大きい。
永丘右京ながおか うきょう
  つり目で茶髪のツインテール。16歳。162㎝、胸は普通に大きい。
◆アシュリー=オーレン
  金髪碧眼日本育ちの純性北欧人。14歳。145㎝、胸は相応。

今日はそんな彼女達の楽屋を覗いてみよう。

――――――――――――――――――――――――――


「はあー…」

「いやー。今日も緊張したねぇ。何度やっても人前出るのは慣れる気がしないなぁ」

「緊張…した」

「アタシらの時あんま盛り上がってなかったねぇ。
 相変わらずお客さんどころか司会のお姉さんも微妙な笑顔で笑ってるだけだったしぃ…」

「…せやな…」

「まあ歌わせてもらった場所も小学校の体育館だからねぇ…。
 加えてお客さんの層が中高年メインだったし…。いや勿論それをいいわけには出来ないんだけど…。
 知名度の低さを思い知るよ。もっと売れないとダメなのかねぇ…」

「…悲しい現実やね」

「はあぁー…」
●◆
「…」

「…よいしょ。
 あ。そうそう、アシュちーアシュちー」

「何ですか右京姐さん」

「この後アタシん家遊びに来ない?丁度ね、昨日お母さんが…」

「…はあー…」
●◆
「…」

(…うぜぇ…。けどやっぱり触れた方が良いんだろうなぁ…)

「…どしたの?コモ。何でそんなにテンション低いのよん」

「…聞いちゃいますか?聞いちゃいますか右京さん。
 開いてしまいますか?私の内なる禁断の扉を」

(目が輝いてるうぜぇ…。地雷踏んだんじゃんこれぇ)

(見えとる地雷も地雷言うんかな)

「うん…。非常に不本意だけど開門するわその扉。早く溜まったゴミを垂れ流しな」

「ゴミじゃないですよ。夢です。夢が溜まっているんです」

「はよ。垂れ流しはよ」

「…実は私、アイドル辞めようかと思っているんです」

「…はい?」

「アイドルを辞めようかと思っているんです!」

「いや聞き取れなかったわけじゃないからそんな宝塚調で2回目言わなくてもいいって…。
 …てか何?本気なの?本気で辞めるの?」

「はい。本気です。本気も本気です」

「…祝子姐さん」

「…まあコモが一度決めたら動かない性質なのはよく知ってるし止めはしないけどさぁ…。
 急だねぇ…。せめて辞める理由くらいは聞かせてよ」

「…はい。私はアイドルを辞めて、声優になろうと思っているんです」

「…Excuse me?」

「さすが右京姐さん。完璧な発音や」

「アイドルを辞めて!声優に!」

「聞き取れなかったわけじゃないっつぅのぉ!!宝塚調はやめろぃ!」

「…声優に…声優になろうと思っています…」

「…小声で言い直す必要ないよねぇ?
 …え?てか何なに?何で声優になろうと?今までそんな話したことさえなかったよねぇ?
 子供の頃からの夢だったの?理由は?理由はよ」

「…そうですね まず第一に私アイドルの才能ないなって気付いたんです。
 このままじゃトップアイドルなんて夢のまた夢だなって」

「え。ちょっと待て。前提から色々気になるんだけど。コモってトップアイドル目指してたのん?」

「何を言ってるんですか右京さん。
 この世界に入った以上、トップを目指さなくてどうするんですか」

「お、おう…?
 おかしいな…。アタシの思い違いかな?
 コモって歌は下手とは言わないけど、なんかこう歌ってると言うよりは唱えてる感じだし…」

「お経的な奴やな」

「うんうん。それそれ。
 あと、本番どころかレッスンの時も、まともにダンスを踊れない程度の実力だった気が…。
 その口から…トップアイドル?お戯れを仰る」

「お戯れではないですよ右京さん。私はご主人様にトップを取ると誓ったんです」

「マネージャーの事ご主人様言うのやめなさい。
 そう呼ぶように至った経緯は今後も聞かずにいてあげるから」

「だから様々なアイドルの研究もしました。そんな中気付いてしまったんです。
 私の実力では二次元のアイドル勢にも遠く及ばないんじゃないかって…」

「…ああ。マスター的な奴とかスクール的なあれの事…?」

「活動的なものもあります。活動的なものも」

「そこの詳細はいいからぁ…って。
 いやいやコモ。基準おかしいでしょ。張り合う相手間違ってないそれ?
 今ならローマ字3文字のやつとか、週末ヒロインだったりするところじゃないの?」

「二次元アイドル達の活躍をまざまざと見せつけられて思ったんです…。
 声優さんって、声優さんすごいなと!」

「議論飛躍がすごくね?アタシ会話のキャッチボールがしたいなあ…」

「そして声優としてならどうにかトップを目指せるんじゃないかって。
 どうにかトップを目指せるんじゃないかって思っているんです。
 あと声優なら体型を気にしなくてもいいので」

「それが本音かこの甘党怪獣め」

「怪獣じゃありません。ちょっとばかりたくわえてしまっただけなんです。ちょっとだけなんです!」

「…うりうり」

「ああっ!やめてください!お腹握るのは止めてくださいっ!そこは弱いんです!弱いんです!」

「祝子姐さんがの声が艶っぽくかすれてて妖しい響きや」

「くっそ…。腹どころかまた胸までしっかりたくわえやがってこのやろぉう…」

「…このやろー」

「わ、私、声優を目指します。腹肉に一喜一憂する生活はもう嫌なんです。
 私、普通の女の子に戻りたいんです!」

「往年のアイドルの名言をここでぇ!?
 てか声優さんも一般的には普通の女の子じゃないんじゃないの!?
 そもそもアタシらみたいな売れてないアイドルなんて普通の女の子に毛が生えた程度なんだけど!?」

「出た、右京姐さん怒涛の三段ツッコミや」

「女の子に毛だなんて卑猥ですよ。右京さん卑猥です」

「アタシ本人が卑猥みたいな表現は止めろぃ。誤解を生むから。アタシは純な乙女だからねっ」

「え?」

「え…」

「…何だね。この空気は」

「右京姐さんは空間さえ操る能力を持つんや」

「ははは。アシュちー面白い事を言う。でも褒めてないよねそれ?うん?」

「…そないな顔で睨まんで下さい…」

「…こほん。まあそれは置いといて。
 で?コモは何でそんな戯れを口にするのかな?腹肉に踊らされてこの様なの?」

「戯れじゃないですよ右京さん。大真面目です」

「大真面目にそんな事を言うって事は…さっき変なところでもぶつけたりしたの?
 マネージャー…時田さん呼んでくる?病院行こうか?付き添うよ?割とマジで」

「止めてくださいっ!私ごときの事でそんな大げさな事は!
 ご主人様の手を煩わせるなんて畏れ多いです!」

「大げさな溜息でアピールかまして、腹肉ごときで深刻な口調のその口で言うの…。
 へぇ…ほー…ふーん…」

「…いいんです。私に才能がない事が解った以上アイドルを続けてもご主人様はもちろん、
 右京さんとアシュリーさんにも迷惑をかけるだけなんですから…」

「…アタシとアシュちーがおまけみたいな言い方が腑に落ちないがまあ許そうか。
 てか思った以上に症状が深刻そうじゃないの。腹肉ごときで。大丈夫なのこれ…」

「人生の分岐点やな」

「出会いたくもなかった衝撃の瞬間だねぇ…。
 まあアタシはコモからアイドルになるって話を聞いた時に一度体験してるから2度目なんだけどねぇ…。
 うぅっ…あの時の走馬灯が…」

「右京姐さん。胃薬と水や」

「アシュちーマジ天使…」

「安心してください右京さん。私はまだ2回変身を残しています」

「かたやこっちは異星人かな?
 安心できない気がするのは気のせいだと信じたいけど信じられないよね、うん」

「善処しますっ」

「逃げの常套句や」

「はあ…んで?声優になるって具体的にどうするのさ。
 トップを目指すって言ってるくらいだし、具体的な展望もあるんでしょうねぇ?」

「気合と根性です」

「おーいコモぉ?それコモがアイドルになろうって言った時と同じセリフだよねぇ?
 あの時の再現かと思うくらい完璧な間と口調だったんだけど、どこかで練習してるのそれぇ?」

「努力、友情、勝利、ですっ」

「ハイそれも聞いたー、残念!
 コモには主人公補正なさそうだからなあ…って前も言ったけども。
 やっぱり体型を気にしての逃避先をぼんやり考えただけで深くは考えてなかったんでしょ」

「…信じる者は救われるのです」

「何かの勧誘みたいになってるじゃん」

「ググったところ、声優になるんはいくつか手段がある。
 一つは声優養成学校に入る道や。可能ならば自分が入りたい声優事務所の養成学校がええやろな。
 そこでなら売り込みなんてせえへんでもそのまま事務所との繋がりが出来るし。
 後は学んで実力をつけてデビュー。これはやる事とやるべき事、流れも解りやすいな。
 ただ今のご時世声優なりたい言うんは山ほどおる 学校に行くんは最低条件やな。
 あくまで皆と同じスタートラインに立つ言うだけや。
 そこで拾ってもらえるかどうかはやってみな解らんやろな。

 もう一つは声優とは別の形で有名になってコネクションで強引にねじ込んで貰うやつや。
 世の中コネやな。
 例えばネットで声を売りにした動画配信したりするんがイメージしやすいな。
 他にも個人で声の仕事を募集してゲームや音声作品作っとる同人サークルに提供するのもある。
 配信が人気出たり声を当てた作品が話題になれば必然声の主もクローズアップされるっちゅうわけや。
 まあせやけどこれは夢物語や。こんな上手い話そうそう転がってへんで。
 ネットで人気が出るノリとプロとして求められるもんは違うやろうしな。
 個人同士の金のやり取り起きるんも問題や。金は人を変えるんやで。
 うちらみたいな若輩もんが手え出しても面倒なトラブルに巻き込まれるんが目に見えとるわ。

 それらを踏まえて具体的な提案やな。
 せっかく今アイドルと言う肩書を持っとるんやしそのコネを使わん手はないと思うで。
 うちはこのままアイドルも続けつつコネデビュー目指すんがええと思うな。
 声優業界としても、無名の新人が実力だけでのし上がっていくんを育ててじっくり見守るだけ、
 実力あるやつがやって来るんを待ってるだけっちゅうわけにはいかんやろ。
 現役アイドルの肩書があれば、向こうさんも色々使いやすいと思てくれるんちゃうかな。
 それに祝子姐さんの顔はお世辞抜きでも上の方やと思うし、それ武器にせんのはもったいないで。
 どのみちアイドル一本でも声優一本でもかなりの実力と運がそろわな厳しいには違いないしな。
 二兎追うものは、言うてもうちらなんて手探りもいいところの段階や。
 色々やってみるんは悪ないはずやで。
 売れてない分時間だけはあるし、正直祝子姐さん声質は中々特徴的で声優向いてると思うで。
 声優になるためのレッスン受けつつアイドル続けんのも無理やないと思うけどな。

 つまりまとめると、アイドルの肩書を捨てるメリットがない。これに尽きる。
 このままうちらと『プロトタイプ』を続けながら声優を目指すんが一番やと思う。
 …一緒にいたいしな。
 ただ、祝子姐さんは表現力とか演技力が絶望的や。バラード歌とてもロック歌とても全部同じやし。
 そこは何や根本的に改善せな使い物にならんと思うで。
 宝塚の真似みたいな一発芸的な声は出せるんやし、それをもっと他にも回せばええんやないかな」

「…」

「やめたげてよぉ!マジレスのダメ出しは!
 コモが今にも泣きだしそうになってるからぁ!」

「…あ…ぅ…すんません。
 けどうち祝子姐さんの事を思うとどうしても」

「…」

「ああ…これダメだ。アタシにしがみついてくるのは一番怯えてるやつだわ。
 コモー大丈夫だよー。そこのお姉ちゃんはコモをいじめたりしないよー」

「うぐぅぅぅ…」

「あー、よしよし。
 そんなたい焼き欲しそうな鳴き声ださないでねー」

「…あ、あの。うちお姉ちゃんやないねんで…」

「アシュちー…そこなのか。そうかあ…」


 コンコン


「入るぞ」

「あ、あれ?マネージャー?」

「時田の兄貴」

「ご主人様ぁ!!」

(うわぁ…)

「抱き着くな。ステイ薦田」

「わんっ!」

「何て朗らかな吠えや。
 まるで数年間離れ離れになっとったご主人が帰ってきた時のハチ公のようやで」

「まあコモは無視するとして…。
 時田さん、もうここ出なきゃだめですか?すみませんまだ…」

「ああ、違うんだ。取れ高は充分だろうし、キリもいいので回収にな」

「取れ高?」

「これこれ」

「…はあ!?マイク!?
 何ですかそれ!?そんなの仕込んでたんですか!?」

「それは…A国とJ国共同出資の某社製小型マイク。
 通称伝説のEP-MAX
 (ちなみにこれは型番にちなんだ語呂合わせの通称や。
   実際の型番とは違うから調べる際は要注意やで)

 そのサイズに見合わん集音性とクリアな音で業界が慄いた至極の一品…。
 しかし圧倒的スペックゆえに犯罪利用が懸念され流通する前に発禁となった幻の品や。
 現存するんは世界に50とないはず…。
 兄貴、何でそんなもん持って…」

「この世界に生きていると、色々あるんだよ」

「…兄貴…。最初会った時から思てたけどあんた一体何もんや…」

「そもそもアシュちーが何者だよ。何でそんな事知ってるんだよぉ」

「まあ平たく言うとお前達の楽屋トークを盗聴させて貰った」

「さらっと何言ってんですかこの人」

「前々から思ってたんだよ。お前達の普段の会話面白いなって。
 壇に上がって緊張してる時はまあ毒にも薬にもならんつまらんトークしかしないんだが。
 んで、それを何かプロモーションに使えないかなって」

「アイドルに対して会話面白いは褒め言葉なんでしょうかね…」

「はいっ!どうぞお使いください、お使いくださいご主人様!」

(うぜぇ…)

「と言うわけで今回の楽屋トークを録音したものを試験的にDL配信してみようと思う。
 ものは試しと言うやつだが、お前達の知名度じゃあまあどうなるかは解んないけどな」

「ちょ…マネージャー…。それ個人情報的なあれがあれで…」

「まあ芸能人のプライバシーなんてあって無いようなものだし大丈夫大丈夫。
 それにさっきの話の中には事務所的にNGな内容は…ないな。うん。ないない」

「大分適当ですけど!?」

「さすが時田の兄貴。鬼畜や、現代の鬼がおるで」

「はい!どうぞ売り捌いてくださいっ!私の個人情報なんていくらでもご主人様に捧げますぅ!」

「アカン。あの顔は飼いならされたメス豚の顔や」

「ははは。勢いで内臓でも何でも喜んで差し出しそうないい笑顔だよ」

「薦田の内臓とかいらないぞ」

「はいっ!内臓はNGですねっ!」

「内臓OKのアイドルがいたら世も末だからぁ!」

「あと、アイドル辞めるとか言うな。今辞められたら投資した額がもったいないからな」

「はいっ!辞めません!」

「…アタシ何であんなのとアイドルやろうと思ったんだろ…」

「気の迷いってやつじゃないのか?」

「時田さんが言うんですか!?」

「…よかった。姐さん達とこれからも一緒や」

「いい話っぽくまとめないでぇ…」


――――――――――――――――――――――――――

【登場人物紹介】


薦田祝子こもだ のりこ

少しお肉を気にしているバディの持ち主。
顔やスタイルと声質は中々メディア向きだが、スキル面が残念。
人前で緊張はしないタイプだが、基本フリーダム。
実はどこかのお嬢様らしいが詳細は不明。
マネージャーである時田との関係は二人のみぞ知る。
調教済み。
ドM。


永丘右京ながおか うきょう

祝子の幼馴染で保護者。
平凡な家庭に育った非凡なツッコミの才能の持ち主。
地味にスタイルが良いが、色んな意味で霞んでいる。
祝子に誘われてアイドルになるが、今ではやりがいを感じている。
人前で異様に緊張してしまうのが悩み。
双子の弟がいる。


◆アシュリー=オーレン

両親はノルウェーとデンマーク出身。
本人は日本育ちなのでバリバリ日本語を喋れる。
祝子と右京が二人で『プロトタイプ』を組んだのち、追加で参加した。
二人を姐さんと慕っている。
極端な人見知り。
歌ったり決まったことを喋ったりは出来るが、アドリブに弱く人前では無口気味。
背が低いのを気にしている。


時田時次ときた ときつぐ

『プロトタイプ』のマネージャー。
基本事務的な人だが、三人の事はよく見ている。
祝子との関係は謎。
多分一方的なやつ。

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