乙女ゲーム地獄
タイトルそのままです。
……今日、私は死にました。寝不足で自転車に乗って、川に落ちたのです。
落ちた理由は「不注意」。情けなくて涙も出ません。
そんなこんなで私は「あの世」にやってきました。うちは仏教徒ですから、行くのは極楽か地獄です。
地獄に行くような悪いことはしていませんが、極楽に行けるかはわかりません。ドキドキしながら閻魔大王の裁きを待ちます。
「鈴木ハナコ 十四歳 ゲームで徹夜をしたのが原因で、川に落ちて溺死」
情けない死因を読み上げられました。勘弁してください。
「地獄行き」
「は?」
「じごくいき」
「な、なんで!私、悪いことなんてしてない!!」
何かの間違いに決まってる、絶対そうだ!地獄に行くのはすごく悪いことをした人だって、おばあちゃんが言ってたもん。
「親より先に死んだ子供は、賽の河原へ行かねばならん」
「さいのかわら?」
川で死んだから?と聞くと閻魔大王は首を振った。
「親より先に死んだ子供が行く地獄だ」
「それって、小さな子が行くトコでしょ!おばあちゃんが教えてくれたもん!!私、もう中学生だよ!!」
「義務教育までが対象だ」
えー!賽の河原って、石を積み上げるやつだよね。積み上がったら終わるんだけど、その前に鬼が壊しちゃうから永遠に終わらないっていうアレ。
……面倒だな。
「ただ最近、中学生が賽の河原で不正行為をしたので、十歳以上用の新たな地獄ができた」
不正行為って、なんですか。そっちが気になります。
「こちらも、永遠の責め苦であるのには、変わりないが」
責め苦って、いーやーだー。勘弁してください!!でも、「新しい」って言葉には心惹かれます。
「お前には『ゲームの登場人物』になってもらう」
……はい?今、なんておっしゃいましたか?
「げーむ…?」
聞き返すと、真面目な顔で閻魔大王は答えてくれた。
「お前には、永久に終わらないゲームをしてもらう」
「!!」
キター、これってタイプは違うけど「ゲーム世界に転生」ってやつじゃないの!?ラッキーじゃない!?
「石を積むのと、ゲームと、どちらを選ぶ?」
もちろんゲームです。でも、どんなゲームかにもよります。
「……ジャンルはなんですか?」
格ゲーとかシューティングは苦手だ。できればRPGかシミュレーションゲームを希望する。
「乙女ゲームだ」
来た、マジで。よっしゃあ!!やってやろうじゃん!!
「ゲーム地獄に行きます!」
「そうか」
側近がなにか書き留めている。
「ならば、やりたい方のキャラを選びなさい。
①頑張って恋人同士になった瞬間に、また始めからやり直しになる『主人公』
②主人公に最愛の恋人を、毎回奪われ、捨てられる『ライバル』
お前はどちらになる?」
……嫌な二択。
「……ちなみに、真面目に『恋愛』をしないと、攻略キャラは『ヤンデレ』化してお前は死んだほうがましな目にあって、もう一度始めからやり直しになる」
なんですか、それ。中学生には推奨しちゃダメでしょう!!
「好きなほうを選べ」
「やっぱり、石でいいです……」
「駄目だ、もう記録をした。では、次の者」
ガーン、地獄決定。ごめんなさい、浮かれちゃってごめんなさいぃ。こんなゲームはイヤだぁー。努力や労力が報われないのはやだー。駄々をこねたけれど、結局鬼に賽の河原へ連れてこられてしまいました。ぎゃふん。
………こうして、私の地獄の日々が始まったのでした……。
ループする乙女ゲームってつらいね☆
そんなふうにタイトルが浮かんだので書いてみました。