ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
横書き読みに合わせて書いてますから、横書き読み推奨です。
何分縦書き風に書くと、横読みの時に読みにくくて仕方ないので……。
プロローグ1
アルデバラン大陸のイーファン帝国。
その帝都であるフォードンは、大陸でも屈指の繁栄を誇る街である。

石畳の床に、煉瓦造りの建物、整備された清潔な町並みを見ればそれも頷ける。
明るい青空の下に並ぶ露店には、イーファンの特産物もあれば、アルデバラン大陸ではお目にかかれない様な品までが並んでいる。
露店に並んだ品々は見ているだけで暇つぶしにはもってこいで、20m程の道幅が取られた通りには人がごった返していた。

そんな通りから少し脇に入ると、個人営業の商店街がある。
豪商達が参加している”商人ギルド”に対抗して、”商業組合”に参加する個人営業主が運営する商店街だった。
商人ギルドの運営しているそれに比べて、数は少ないし、人の出入りも多くないのだが、その代わり品揃えはいつも豊富だった。
安い品を仕入れるには商人ギルドの方が優れているが、質の良い品や珍しい品などは、こちらの商店街の方が優れていた。

その商店街の一角に、酒場がある。
酒場と言っても、”冒険宿”と呼ばれる”冒険者”が下宿する為の宿屋で、1階部分が大衆食堂の様な形になっている事が多いから、酒場の様に思われるのだ。
その冒険宿の1階には今、3人の男達が酒盛りをしている所だった。

「ハッハッハッ! 今回の冒険も絶好調ッ!
 なーんの問題も無く、こうして大金を得た訳じゃあ!」

その中でも年長の男が、一際大きな声で吼えていた。
3人が囲んでいるテーブルの上には、料理が並べられていたが、それと一緒に金貨袋が置かれてもいた。
両手で持って余る程の大きさの金貨袋の中には、ギッシリと金貨”100ゴーブ硬貨”が詰まっている。
100ゴーブ硬貨1枚で、帝都の凡そ一般的な職業の平均月収だと言うのだから、確かに大金だった。

年長の男は、白髪のモヒカンに浅黒い肌を持つ壮年の男だった。歳は50代後半だろう。
随分立派な体格をしており、今は座っているが、立てば優に190を超えていそうだ。
また歳に似合わず体つきも頑強で、同じくテーブルを囲んでいる若い男達に負けていなかった。

「そりゃー、師匠とオレ達が組んだンッスから!
 成功しか無いですって!」

テーブルに置かれたローストビーフを頬張りながら、若い男がそれに応える。
金髪を短くツンツンにハネさせている男だ。こちらも体格は立派で、身長は180を超えていそう。
肩幅も広いし、何より側に槍を携えていた。

「なあ、そうだよな、アル!?」

「あぁ、勿論だ」

ワイワイと騒ぐ男達の中で、唯一平静なのがアルと呼ばれた男だった。
先程の男が20代前半だったのに対し、こちらはまだ20に届いてないだろう。
赤茶けた髪をハードワックスでセットした髪型、赤銅色の切れ長の瞳を持つ色男である。
彼もまた体格に秀でていて、3人の中では最も小柄で年少だが、落ち着いた雰囲気でリキュール(薬草酒)を飲んでおり、頬にほんのりと朱が差していた。

「これだけありゃあ、もう一生暮らしていけるだろうな。
 ざっと100万ゴーブはある」

「だとしても、ワシはそんな事せんがな!
 そんな生活はつまらんッ、つまらん生活など死んでもお断りじゃ!」

「同感です、師匠」

若い男2人は、両方年長の男の弟子の様だった。
だからか、師匠と呼ばれた男は大変上機嫌で、頻りに弟子2人を褒めちぎっては自らを自画自賛していた。

そんな酒盛りも夕暮れになると、終わりにさしかかり、それぞれの酒の酔いも冷めてきた頃だった。

「でも、これだけありゃあ、爵位ぐらい幾らでも貰えるよなー」

男がボソリと呟いた。
その言葉に、師匠が真っ先に噛みつく。

「お前なあ、GGGジージージー
 貴族なんてつまらんモンになって、どうしようっちゅうんじゃい?」

「いや、オレは別に貴族になんて興味無いッスよ。
 なったとしても、次の代まで何とかさせる自信は無いですし。
 でもオレじゃなくて、アルの方は……」

GGGはすぐさま師匠の言葉を否定し、アルを見やった。
アルはリキュールで入ったアルコールを水で薄めている途中で、若いからか、意識は大分揺らいでいる様だった。
しかしまだ話はできる状態の様で、すぐにGGGの視線に気付き、答えをよこした。

「オレだって、貴族には未練も執着も無いさ。
 確かに貴族出身だが、そっちは折角兄貴が継ぐ事になったんだ。
 オレは自由に一般市民を謳歌おうかすりゃ、それで良い」

「そっか」

それでもGGGの顔色は優れなかったが、本人もすぐにそれに気が付き、もう1度そうだよなと言い聞かせ、笑顔を作って見せた。
景気づけに麦酒ビールを呷ろうとして、その手がピタリと止まった。すぐに手が下がる。
気付いたアル、師匠の2人は顔をしかめ、GGGの視線が一点に定まっている事を察し、視線を追った。

視線の先にいたのは、冒険宿の1階、大衆食堂の場には似つかわしくない、甲冑に身を包んだ男2人だった。
マントにはこれでもか、と言わんばかりにでかでかと、イーファン帝国の紋章をあしらえている。

「何じゃい、騎士共が冒険宿に何の用じゃ」

師匠は男達を見て、何とも嫌そうに言ってのけた。
甲冑の上から紋章付きのマントを羽織った人間、と言えば、イーファンでは騎士階級の者しかいなかった。

騎士階級の人間というのは、貴族と大体同じ様なモノだった。
男爵以上の貴族と比べて、騎士階級には軍人が多い傾向があるが、勿論それ以外もいるのでやはり貴族と同じ様な存在なのだ。
つまらない、と今し方言ったばかりの師匠からしてみれば、興を削ぐ存在でしかないのだろう。

「こちらに、アリガン・F・フォー様がいらっしゃるとお伺いしたのですが」

騎士はそんな師匠の言葉に何の感情も示さず、ただ淡々と自らの任務内容を告げる。
しかし男達にとって、その内容は驚愕に値するモノであった。
すぐに、GGGはアルの方を振り向く。

「ワシの弟子に何の用じゃい」

「フォー様は今、どこに?」

「お前さん等の目の前におるわ。
 だから用事を言えと言っておるんじゃ」

師匠の答えを聞いて、騎士2人は顔を見合わせ互いに頷き合った後、口を開いた。

「イーファニア皇室第三皇女、リエンデール・K・F・G・イーファニア殿下が、フォー様との面会を望まれております。
 至急、オードベリア宮殿までご足労願えますか」

「第三皇女殿下じゃとぉ……?」

師匠は、騎士達の口から飛び出した言葉に、ポカンと口を開けた。
リエンデールは、イーファニア帝国皇帝、センテリオン2世の第5子であり三女、即ち第三皇女という身分の少女である。
昨年、帝都で15歳記念式典が催された事は記憶に新しい。今年16歳になるという少女だった。
皇女の中では皇帝から特に寵愛を受けているとされ、見目麗しく帝都での評判も高い皇女として認知されている。

そのリエンデールが、弟子であるアリガン・F・フォーと会いたいと言うのだ。
師匠が驚くのも無理は無かった。

「わかりました。謁見させて頂きます」

「アル」

アルが、席を立った。
引き留める様にGGGが声を掛けるが、軽く手で制して、騎士達に向き直った。

「ウェノタール辺境伯ジョームの次男、アリガン・F・フォーです」

自分の名前を告げながら、アルは懐からあるモノを取り出した。
全長30cmばかしのナイフだ。鞘と鍔とを鎖で封印しているソレには、柄の部分に紋章が施されている。
隼の前に盾があり、その両脇に矢と槍とが並べられた紋章である。

「――確かに」

それが身分証になる事を、騎士達は知っていた。
少しばかり見入った後、静かにそう言い、恭しく頭を下げた。

「じゃあ師匠、GGG。ちょっと行ってくるからな。
 なーに、心配は要らないさ。
 別に悪い事やった訳じゃないんだし」

「――うむ、早く帰って来いよ」

「失礼の無ぇ様にな」

苦笑を返して、アルは騎士達と一緒に冒険宿を出て行った。

習作です。
とりあえずだらだら続けていければ、と思っていますから、よろしくお願いします。
NEWVEL RANKINGに投票する

長編小説検索Wandering Networkランキングに投票する


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。