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その扉を見るともなしに見ていると、その中の一つが 殊更ゆっくりと……まるで僕に見せつけるかのように開いていった。
僕の頭は「逃げろッ!」と警鐘を鳴らしていたが、体はそれに反し全く動かず 見開いた眼でその扉を、中から出てくる“モノ”を凝視していた。
中からのっそり出てきたモノは人の形をしていたが 見目はまったくの別物だった。
顔や体はどろりとしていて まるで焼け爛れているかのように滑り光っている。
ソレは僕の方を向くと にたり‥と笑った。
かなり距離がありそんな細かな表情まで見えるはずはないのに、僕にはソレが笑っていることがはっきりと感じられた。
僕の体は凍りつき、背を冷たい汗が流れていった。
そいつはゆっくりと近づいてきたが 僕は金縛りにあったかのように動くことができなかった。
その時 ふいに背後から扉の軋む音が聞こえた。
その音につられるように後ろを振り向いた僕は、扉の隙間からこちらを睨む 幾つもの瞳を見つけた。
プルだ!!!!
背筋に戦慄が走り それが僕の体を突き動かした。
僕は慌てて立ち上がり前へ一歩を踏みだし‥
ぐしゃ!!!
頭に物凄い激痛と何かが潰れたような音を感じた瞬間、意識を無くした。
次に気付いた時、僕は室内の扉の前に座り込んでいた。
また‥死んだのか。
さっき感じた痛みはなくなっているものの ぼんやりとした頭でそう思う。
視界の端でさっき敵が出てきた扉が再びゆっくり開いていくのが目に入った。
しばらくしたら後ろの扉も開くのだろう。
恐怖心はまだ残っているけれど、さっきよりは混乱もなく冷静にそう考えた僕は階段を目指して歩きだした。
物音を立てないように極力 足音を忍ばせて行動する。
考えてみればプルも、焼け爛れた姿をした敵――グールもそれ程 素早くないのだ。
こちらが動きを止めたりしなければ追い付かれることはないだろう。
ゲームでの知識を思い出しながらそう冷静に判断を下し、それでも見つかれば危険な事に変わりないので 僕は静かに息を潜めて階段を登っていった。
階段を折り返し地点まで登った辺りで僕は一度、下の様子を見ておこうと階段の手摺りに身を潜め一階を窺ってみた。
扉から出てきたグールは僕を探しているのか キョロキョロと辺りを見回していた。
入口の方を見ると 薄く開いた扉の隙間から少しずつプルが押し入ってきている。
それと共に 一階にある全ての扉がゆっくりと開いていき、中から次々とグールが現れだした。
手摺りを握っていた手の平にじっとりと汗が吹き出してくる。
あのまま下に残っていたら‥、どこかの扉を開いていたら一巻の終わりだった。
いや、実際は終わりではなく ただセーブの所に戻されるだけなのだが 誰が好き好んで痛い思いをしたいというのか。
そんなことは誰も思わないだろう。
僕は静かに息をつくと再び階段を登りだした。
このままここに居てはいつ見つかるか解らない‥。
もう、先に進むしかないのだ。
僕は意を決して二階を目指した。
二階を覗くとそこは先が見えないくらいの細長い通路だった。
どんな構造になっているのか解らないが、もうこの世界で常識を期待しない方がいいだろう。
当てにできるとすればゲーム内の情報だけだ。
僕が用心深く辺りを見回すと、左右等間隔に無骨な鉄鎧が飾られているのが見えた。
僕の足が ぴたり‥と止まる。
何故ならその鎧にゲーム内で見覚えがあったからだ。
僕は一瞬 逡巡したが それでも前に進むしかないんだ‥と思い直し二階に足を踏み入れた。 |