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手触りが柔らかくても、思いっきりぶつかってこられると かなり痛い。
「…も、もう止め……」
僕の必死の声も聞こえないのか──聞こえていて無視しているのか──、プル達はますます勢いをつけてぶつかってきた。
あまりの痛さに僕の意識は朦朧としていき、ついに途絶えてしまった。
次に目を覚ました時、僕はまた草原に佇んでいた。
さっきまで感じていた痛みはすでにない。
周囲を見回してみても、大量にいたプルの姿は影も形もなかった。
「………?
夢でもみてた…??」
そう呟き、
念のため もう一度 叢をじっ‥と見つめると、自分の周りだけ草が短い事に気付いた。
「もしかして‥ッ」
ある事を思い付いた僕は その叢を掻き分け、そして予想通りの物をそこに見つけた。
そこには薄っすらと光りを放つ魔法陣。
その光りは僕が見た事に気付いたかのように、ゆっくりと消えていった。
「あ〜〜‥、
って事は僕、最弱モンスターにやられたワケ?」
すでにこのゲームのような現象に慣れ切っていた僕は、すんなりその事実を受け止めた。
というか、段々面白くなってきていたのだ。
どのように造っているのかは解らないが危険は無いみたいだし、こんな体験 なかなかできるもんじゃない。
どうせなら楽しんでしまおう‥と思ったのだ。
「ぅあ゛〜〜
かっこわる〜〜…」
ゲームでならプルにやられたりしないのに……。
思わずしゃがみ込み頭を抱えると、近くの叢から例のプルが転がり出てきた。
プルは僕の姿に気付くと、またしてもコロコロと僕の目から逃れようとする。
反射的に手を延ばそうとしていた僕は、もう片方の手に握り締めていた物を思いだし、にまり‥と笑みを浮かべた。
「さっきのお返し〜!」
剣を振り上げ、プルに向かって思いっきり振り下ろす。
剣は狙い違わずプルに突き刺さった。
次の瞬間、
ぶぎゃあぁああぁぁ!!!!
プルは物凄い断末魔の悲鳴をあげ目に鮮やかな赤を巻き散らし、ビクビク痙攣しだした。
「……………え…?」
思わず呆然とし、自分が振り下ろした剣と地面に横たわっているプルを見る。
剣もプルも赤黒いどろりとした物にまみれていた。
「う、うわあぁああッ!!!」
僕は思わずその剣を遠くに放り投げたが、プルに剣を刺したあの独特の感触は手から離れなかった。
辺りは錆臭い匂いに包まれていった。
「……ぐッ!!!」
吐き気が込み上げ手で口を押さえ膝をつくと、痙攣しているプルが目に入る。
プルは僕の方を見つめていた──。
その眼は虚ろに濁っていて、僕を憎み怨んでいるように見えた。
いや、実際は怨むなんてもんじゃないだろう。
僕は恐くて恐くて、体が震え出すのを止められなかった。
プルの段々生気が失われていく眼なんか見ていたくなかったけれど、体が硬直したように動かず、僕はソレが虚ろな空洞になるまで目を離すことが出来なかった。
やがて、プルの体の痙攣が治まり、ぴくりとも動かなくなると、
ちゃらりらら〜〜ん♪
場に似つかわしくない軽快な音楽が流れた。次いで……
レベルが上がった!
体力が2 上がった!
気力が8 下がった!
賢さが11 上がった!
素早さが4 上がった!
新しい特技、透視を覚えた!
と、お決まりのレベルアップ時の言葉が今や死体となったプルから流れてきた。
けれど普段のゲームで感じる爽快感は全く無い。
胸にあるのは治まらない吐き気と深い悔恨の念だけだ。 |