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4話「オモテとウラ」
「これ? 携帯だよ」

マユは黒いローブを脱ぎながら平然と今まで起きたことが当たり前であるかのようにそう言った。

「いや、さっきから絨毯とか穴とか、火の球とか・・・・・・普通の携帯じゃないだろ?」
「これがフツー何だけどなぁ。」

白いシャツに白いショートパンツ姿になったマユは脱いだローブを焚火の中に放り込み、地面に座った。
不思議なことにローブは燃えたり、焦げたりすることなく
全体に染み渡った水分だけがジュッ!ジュジュッ!と音を立ててる。

「そうだ、聞きたいことが山ほどあるんだった。 ここって・・・・・・」
「ちょっと待った」

真司が話そうとするのを止めるマユ。

「質問が山ほどあるのなら、いちいちキミに説明するアタシの身にもなってよ」
「な、なんだよそれ・・・・・・俺、いろいろ分からなくて混乱してるんだ・・・」
「・・・・・・」

黙りこくるマユ。





10分ほど沈黙が続いた。
焚火(たきび)に薪を()べながら、マユがようやく口を開いた。

「キミが元々いた世界はオモテと呼ばれる場所。
 キミが倒れていた砂漠やこの洞窟はウラと呼ばれる世界よ」
「世界が・・・・・・世界が2つあるって言うのか?」

水滴がついた携帯電話の画面を拭いながらそう尋ねた真司。
そうよ、と頷くマユ。

「2つの世界は互いにバランスを取り合って交わらないようになってるんだけど。
 数年前に2つの絵会が1つになろうと融合してるの・・・・・・」
「よく分かんないけど、深刻なんだな」
「きっと、キミがこっち側に来たのも境界線が歪んでるせいだと思う」

マユは焚き火の反対側にいる真司を指差して、そう言った。

「これ以上は長くなるから、そのうち話すわ」
「なら、次はその携帯のことだな」

再び薪を()べながら、マユは話を続ける。



「これは、魔法コードという文字列を打つことで魔法を発動することができる機械よ」
「・・・・・・魔法? ただの携帯電話じゃないのか?」
「携帯電話? これは携帯魔法発動機だけど」
「へぇ〜・・・・・・って俺の携帯、壊れた・・・・・・」

液晶画面にはきちんと待ち受け画面が表示されているが、在りえない日時が表示されていた。

「どれ、見せてみて?」

焚き火の反対側にいたマユが真司の隣に座り、携帯電話を覗き込んだ。

「・・・・・・うん、これは至って正常ね」
「はぁ?! 『88月88日 88時78分』って表示されてるぞ?」

マユは自分が持つグレー色の携帯電話の画面を真司に見せて話を進めた。

「さっき、融合してるって話したでしょ?」
「ん、あぁ」
「融合の現象が現れてから、この世界で日時の概念が消えたの」

真司はう〜ん、と唸りながら眉間にシワを寄せている。

「つまり、ず〜っと『今日』ってこと」
「だから外は、昼か夜か分からない感じだったんだな・・・・・・」
「そうね・・・・・・でも、時間の概念が消えた代わりに 融合を示す数値が現れた」

立ち上がったマユは黒いローブを着て、再び真司の横に座った。


「その数値ってのが、この意味不明な数字で、『融合値』ってことか・・・・・・」
「それは少しずつ減るみたいなの」
「最終的にはゼロになるとか?」
「・・・・・・たぶんそうじゃないか、って学者は言ってるけど」

画面に映し出された数値を見つめながら、マユはそう呟いた。

「アタシは、このウラ世界の人間が融合を止めないといけないんじゃないかって思う」
「オモテの世界じゃ、こっちみたいな異変は起きてないしな・・・・・・」
「今後、オモテでも異変が起きるかもしれないわ・・・・・・」

マユは真剣な眼差しで真司を見て、そう言った。


「確かにそれはあるなぁ(この子、由里に似すぎ! ってか、全く同じに見える・・・・・・)」
「・・・・・・(コイツ、よく見たらあの男にそっくり)」
見つめ合う二人。





ハッ、と我に返った真司とマユは、頬を赤く染めてそっぽを向く。

「と、とりあえず、これからどうするんだ?」
「え、えと・・・・・・街に向かう予定だけど、今日はもう寝るわ」

そう言ってマユは焚き火の反対側に行き、静かに横になった。



「・・・あれ?(お、女と一緒にね、ね、・・・・・・寝るだとぉッ?!)」

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