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若干、キャラ崩壊の可能性もありますので
ご注意ください(笑)
EX話「ボーダーお風呂イン」



オモテ世界か、ウラ世界なのか。
それともハザマか?
どこにあるかよく分からないが、『桜旅館(さくらりょかん)』という建物があるらしい。
そこはあらゆる設定が変化したり、無視することもできる場所。
そんな旅館の正面には4つの人影があった。






「設定無視って聞いたから、一体どんなところだろうって思ったけど・・・・・・」

4つの人影の真ん中にいる黒髪の少年『佐倉真司』が呟いた。
真司は学生服を着ており、肩には大きな旅行用のカバンを引っ提げていた。

「うん、案外普通の場所。 ってか、どこにあるか分からない場所にいる時点でもうメチャクチャだな」

真司の右側に立っている白髪の少年『桜寺シン』が言った。
シンは紅い模様の入った浴衣を着ており、荷物らしい荷物は何1つ持っていない。

「シンさん、浴衣着るの早すぎじゃないですか?」

真司の左側にいる若干赤みがかったミディアムヘアで学生服姿の少女『浅山由里』が旅行用かばんを地面に置きながら尋ねた。

「そうかな?」

シンは呑気にそう言った。

「アンタ、何で荷物が1つもないのよ」

シンの後ろにいる旅行用のカバンを持ち、黒いローブを纏った青い髪の少女『有鞘マユ』が冷静にツッコミを入れる。

「男はさ、ポケットがあれば大丈夫なんだぜ・・・」
「その浴衣、ポケットないから」

カッコよくキメたシンだったが、マユにあっさりと返された。

「と、とりあえず中に入ろう」

真司はそう言うと先陣切って、黒い文字で『桜旅館』と書かれた桃色の暖簾(のれん)の下を通った。
中に入ると、コンクリートの床があり両脇には木製の下駄箱が並んでいる。
年季のある建物ということがヒシヒシと伝わってくる。
和風の建物特有の柱を外に見せた造りである真壁(しんかべ)が正面から真っ直ぐ続く廊下に。



辺りを見渡していた真司はふと玄関を上がった所を見ると、長い桃色の髪の美しい少女が1人。

「サ、サクラ!?」

「いらっしゃいませ」

美しく鮮やかな薄紅色の着物を纏っているサクラはそう言いながら正座で丁寧にお辞儀をした。

「今の私はこの旅館の女将。 4名様、ご案内するのでこちらへ」
「さ、行くぞぉ〜!」

先程まで外にいたシンが、マユと由里を引き連れて真司の横を通過。
サクラに案内され、正面の廊下を進んでいく3人。
着物姿に見惚れていた真司は、ハッ!と我に返り、サクラたちの後を急いで追うのだった。










「・・・・・・ここが殿方の部屋でございます」

サクラは履物を脱ぎ、一段上がった所で正座して桜の花びらの模様が入った(ふすま)を開けた。

「サクラ、完全に女将キャラを演じてるな・・・・・・」
「それではお夕食の時間は6時ですので、それまでごゆっくりどうぞ」

では部屋へご案内します・・・・・・とサクラは由里たちとともに廊下を進んで行った。
残った2人は部屋に入って荷物を置き、部屋を見渡す。

部屋は8畳ほどの和室。
中央には木製の卓袱台(ちゃぶだい)があり、上にはいくつかの茶菓子と空の湯呑が置いてある。
そして、窓からは木々や山々が見える絶景。

「ホントに設定無視できる旅館みたいだな」

シンは紙に包まれた饅頭(まんじゅう)の包装を解きながらそんなことを言った。

「ん、そうなのか?」
「だって、普通はもう1人の自分と目が合ったら互いに消滅するだろ?」
「あ〜・・・そうだったな。 ・・・本編通りの設定だったら、今頃冒頭部分で消えてたわけか」

用意されていた電気ポットを使い、真司はお茶を()れた。
ズズズ・・・・・・とお茶をすする真司。
モグモグ・・・・・と饅頭を口いっぱいに頬張るシン。
2人はしばらくの間、こうしてのんびりと時間を過ごすのだった。









「・・・ごゆっくりどうぞ」

サクラは小さくお辞儀をして、今来た道を戻って行った。
葉桜の絵が描かれた襖を開け、中へ入るマユと由里。

「わぁ〜、景色がきれ〜い!」

感激の声を上げるマユ。
窓の外を見るマユの眼下には鬱蒼と生い茂る木々に囲まれた大きな湖があった。

「ところでマユちゃん、私たちってなんでこの旅館に来たんだっけ?」
「作者の願望じゃない?」

ど、どんな願望・・・?と苦笑する由里。

「本編にはエロチックな場面がほぼ皆無だったからねぇ。 今回は旅館が舞台だから、いろいろあるかもよぉ〜?」
「旅館・・・・・・ッ、ま、まさか!」

マユの目を見る由里。
ギラリと鋭く光るその瞳。

「そう・・・・・・旅館と言えば温泉よ! そして、ポロリよ!」

何でポロリ・・・・・・、と呟く由里。

「これこそ作者の願望だったんだね・・・」
「この番外編で男性読者を多く獲得するつもりかもしれないわ」

マユはそう言うと、ローブを脱いでお馴染みのショートパンツ姿とTシャツのスタイルで畳の上に寝転がった。
由里はファッション雑誌をカバンから取り出し、座布団に座って読み始める。
そういえばさ、と話を始めるマユ。

「オモテではどんなファッションが流行ってるの?」
「う〜ん、今年の夏はデニムレギンスかなぁ」
「でにむれぎんす?」

レギンスとジーンズが一体になったやつだよ、と説明するがマユは首を傾げたまま。
しばらくの間、互いの世界の文化についての話で盛り上がるのだった。









日はすっかり沈み、旅館内に明かりが灯っていた。
時刻は午後5時50分。
真司たち4人は女将・サクラに案内され、宴会の行われている部屋の前へとやってきた。
壁には『月影の間』と達筆で書かれた木製の札が貼られている。

「ねぇ、何で宴会やってる部屋に連れて来られたわけ? のんびり旅行じゃないの?」

マユは小声でシンに話しかけながら、前方にある4枚の美しい桜の絵が描かれた襖を見た。

「オレに聞くな。 とりあえず入れば分かるだろ?」
「そうだな。 んじゃ、開けるぞ・・・・・・?」

襖の取っ手に手をかけ、3人に尋ねた真司。
真司は3人が小さく頷いたのを見た後、勢いよく襖を開けた。




 『お前らぁッ! 楽しんでるかァァァァァ!?』


馬鹿デカイ聞き覚えのある声。


 『返事が聞こえねぇ! もう1回だ! お前ら楽しんでるかァァァァァ!?』


イエェェェェェイ!!

マイクを介して発せられている馬鹿デカイ声の問いかけに対し、部屋中にいた浴衣姿の男たちは盛大に叫んだ。


 『よぉし・・・ヒック・・・・・・いいかぁ、お前らァ・・・』


唖然とする4人。
しばらくして、ハッ!と我に返った真司は目を擦って『月影の間』に足を踏み入れた。

「な・・・なにコレ? ここにいるの、魔法協会の戦闘課の人たち?」

 『ウぅ〜! やっと来たか、お前たちィ〜!』

『月影の間』は和室の大広間。
いくつもの座卓が並べられており、そこにはすでに豪勢な和風料理が並べられており、他に日本酒やビール、(さかな)もある。
また、部屋の端にはステージがあり、いくつものスポットライトが馬鹿デカイ声の主を照らしていた。

「あ、リキ隊長!」

思わず叫んだのはマユだった。
ステージの上で右手にマイク、左手にビール瓶を持ちながら仁王立ちしているその男。
魔法協会トウキョウ支部の戦闘課、隊長・日野田リキ。

45歳、・・・独身。


「付け足すなよ、おい」


マイクを介さず、横を向いて小さく呟いたリキ。

「隊長さん、酔ってるみたいだね」


 『おいおいィ! そんなところで突っ立ってねぇで入ってこいよォ〜』


真司たちは苦笑いしながら、お邪魔します・・・と少しテンション低めで部屋に入り、
近くの空いている座卓についた。


 『よぉし! 全員揃ったということでトウキョウ支部戦闘課の宴会を始めるッ!!』


そのセリフを皮切りに隊員たちは自由に行動を始めた。
料理を食べる者、酒を飲む者、芸を披露する者。


「なぁ・・・・・・俺らは宴会に出席するためにここに来たってことか?」
「みたいだな。 ま、マネー的問題は隊長たちがどうにかしてくれるだろうし、今は楽しもうぜ」

そうだな、と頷いて真司はふと横に座っている由里の方を見ると。


「う〜ん、このお味噌汁おいし〜! マユちゃん、どう?」
「うん、最高! こんな料理、初めて食べたわ!」

食べるの早ッ!と、同時にツッコみを入れる真司とシン。
すでに料理は6割ほど消えている。

「くっ、その刺身は渡してたまるかぁぁぁッ!」

座卓の中央に位置する脂の乗った鮮やかな桃色の刺身に箸を伸ばす真司。

「それはアタシのものよッ!」

すかさずマユも箸を伸ばす。

「よし! ならオレはその(はさみ)怪獣を貰うぜ!」
「シンさん、それ鋏怪獣じゃなくてカニって言うんですよ・・・・・・」

味噌汁の入った木製のお椀片手に、小さくツッコむ由里。
真司対マユ対シンの奪い合い対決は続き、由里はのんびりと料理を食べながら傍観するのだった。




その頃、リキはステージ上で肴と酒を飲み続けている。

「隊長、あまり飲み過ぎると明日の仕事が・・・」

眼帯をつけた黒髪ロングの女・黒道アンナは今にも酒に溺れそうなリキに注意を促した。

「だいじょ〜ぶ〜だ〜よ! それより、一杯どうよぉ?」
「・・・・・・隊長、キャラ崩壊の危険が迫ってますね」
「んなモン、心配すんなァ。 番外編、ってつけときゃどうにかなんだろォ〜うぅ〜・・・ん?」

すでに酔いが回っているリキがふと横を見ると、そこには色黒の坊主男が座っていた。

「おぉ、シグマ師匠! 酒、どうです?」

無言で片手に持った日本酒を見せつけるシグマ。
表情は非常に厳ついものだが、その瞳からは光るものが流れている。

「な、泣き上戸・・・・・・?」

無言で酒を飲み続けるシグマを見つめ、アンナはそんなことを呟いた。
すると、リキはシグマの真ん前に座り、お猪口(ちょこ)に酒を注ぐ。

「師匠のトコの隊員はどうですかァ? ウチのトコなんて、酒に強いヤツが全然いないんですよォ・・・・・・」
「・・・・・・」
「それでですねェ、もう少し酒の耐性が強いヤツを育成し───」

リキの一人喋りは続いており、シグマは一言も喋らずに涙を流している。
とりあえずこの2人は放っておこう・・・・・・、とアンナはステージを降りた。



「やぁ、アンナ! 今日もその黒髪がエロティッ───」

浴衣姿の茶髪青年・松来コウジの脇腹に強烈な蹴りを喰らわせたアンナ。

「うごぉッ・・・・・・きょ、今日の蹴りも一段と・・・い、痛いね!」
「コウジ、酒に酔ってるな?」
「酒、なんだぃそれは? 私はワインを飲んでいる」

透明なワイングラスに入ったワイン、ではなく瓶ごとワインを飲むコウジ。
ラベルには葡萄酒(ぶどうしゅ)と書かれている。

「何で和風の旅館にそんなワインが・・・・・・というか、お前の私の前で現すそのお気楽さはアルコールを摂取したところで変わらない、か」
「アルコールっていうのはぁ、炭化水素のぉ水素原子を水酸基で置換した形の化合物の総称でねぇ。 水酸基の数によって1価アルコール、2価アルコ───」


アンナはコウジを気絶させ、真司たちのいる席へと向かっていく。


「その大トロは俺が貰ったぁぁぁぁッ!」
「それはアタシのものよ!」

まだ激しい戦いを広げている真司とマユ。

「楽しんでるか?」

マユは顔を上げてアンナを見た。
その隙をシンが見逃すはずもなく、箸がアワビに伸びる。

「あ、お姉ちゃ・・・って、そのアワビ取るなー!」
「フッ、貝殻は俺のものだぜ」
「・・・・・・と、とりあえず楽しんでいるようで何よりだ」

そう言うとアンナは宴会場を出て行った。
何だか寂しそう・・・・・・、と由里は呟くと箸を置いてそのあとを追って行く。
残った3人は引き続き、料理の取り合いを続けていた。








宴会場を出たアンナは旅館の外にいた。
満天の星空を見つめ、1人佇んでいる。

「・・・・・・あ、アンナさん?」

アンナの後ろから声をかけると、由里の方を振り返った。
その表情はどこか疲れている。

「由里、か。 どうした?」
「いや、何だか楽しめてないみたいだったから・・・・・・」

フッ、と小さく笑ったアンナは由里の真ん前まで近づいて頭を撫でた。

「十分楽しいさ。 ただ、ウチの隊長とシグマ隊長が・・・・・・」
「あ、あぁ・・・かなり酔ってましたねぇ」
「明日の仕事に響くと、私も上から注意されかねないのでな・・・・・・」

大変ですね、と笑いながら言う由里。

「真司やシンもどこか放っておけないだろ?」
「そうですね。 男の子って元気が良いけど、すぐ危ないこととかするし・・・」

お互い、誰かから目が離せないようだな・・・、とアンナ。
意外と似た者同士な2人はしばらくの間、星空の下で雑談をするのだった。







一方、宴会場ではいつの間にか野球拳が始まっていた。
ステージ上にいるのはリキ。
そして、もう1人はナイスバディな金髪美女・波川ミドリ。
ミドリはいつもの白衣スタイル。
リキはビール瓶を片手に持った浴衣姿。

『アウトォ! セーフゥ! よよいのよいッ!』

会場の男性陣が一体となった掛け声とともに、グーを出すリキとミドリ。

『ジャンケン! ポンッ!』

リキはグー、ミドリはチョキ。
宴会場に歓声が上がる。

「あらら、負けちゃったわ」

そう言いながら白衣を脱いだミドリ。

「いやぁ、楽しみだね、真司くん」
「あぁ、負けてくれないかな、ミドリ先生」

互いに棒読みで会話を続ける真司とシンの視線はステージに釘づけだった。


※野球拳は負けたら脱ぐ、というようなイメージもあるがそれはテレビやバラエティなどの影響であり、本家本元はそのようなことをしないそうです。



「アンタたちねぇ・・・・・・」

ハァ〜・・・、と溜息をつくマユ。
「なんだよ・・・?」と睨みつけてくる真司とシン。

「オスとしてさ、本能のままの発言したまでだよ。 ねっ、真司くん?」
「あぁ、そうさ。 本能に逆らえるわけがないだろ。 なっ、シンくん?」
「アンタたち、いつからそんなに仲良いのよ・・・・・・」

マユは呆れ顔でステージ上に目をやると、そこにはトランクス姿のリキが・・・・・・。

「あれ・・・・・・なぁ、シンくん? いつの間に隊長、負けてるよ?」
「真司くん? ミドリ先生は結局白衣しか脱いでないんだけど・・・・・・」

宴会場には最後の望みに賭けた者たちが僅かほどしかいなかった。

「もし、次で負けたら・・・・・・」
「ZENRA決定だね・・・シンくん」

・・・逃げよう!と、そう思った2人はマユの手を引っ張って『月影の間』から逃げて行った。






「い、いやぁ・・・危なかったな、シン」
「あぁ・・・・・・気分的に、いや視覚的に危うくなるところだった」
「あ〜あ、おかげで変な汗かいちゃった・・・・・・お風呂行こっかな」

『お風呂行こっかな』・・・だと!?と、いう思いがシンクロした真司とシン。

「し、シン! これは・・・」
「ま、間違いない・・・・・・! ウハウハ温泉編の始まりだッ!!」

こうして、ボーダーお風呂インの第二章が幕を開けるのだった。


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