19話「覇桜の力」
最下層へと進4人の魔桜団員は、すでに魔力点のある部屋へと辿り着いていた。
その部屋はとても広く、床には魔法陣が描かれている。
「邪魔もあったけど、ここの魔力点もようやく解放できるねぇ〜」
イオータは魔法陣の中央に向かいながらそう言った。
「やっぱり、僕が一番だったでしょ?」
「はぁ? アタシの方が早かったし!」
口喧嘩を始めたアキラとクロナ。
「落ち着け、2人とも」
2人を宥めようとしているボルトロー。
「お〜い、解放するけどいいかなぁ〜?」
魔法陣の中心にいるイオータが大声でそう言った。
ボルトローは頭上で右手を振り、合図をした。
イオータが魔力点の解放を始めようとしたその時。
「待てッ!」
真司の声が響いた。
アキラとクロナは口喧嘩を止め、真司の方を睨みつけた。
「あ〜あ。 もう追いついてきちゃった。 ・・・・・・殺さなきゃ」
アキラは不機嫌そうな顔をして真司に近づいていく。
「・・・・・・あれは使いたくないけど・・・・・・やるしかないか」
『闇 TQ』
真司の左手に黒い球が現れた。
そして、それを持ったままアキラに向かって走っていく真司。
そんな真司の脳裏では、アンナとの特訓の日々が蘇っていた。
『闇は魔力を吸収し、魔法を消滅させる属性。
かといって、がむしゃらに使えばいいというものではない。
必ず相手に当て、魔力を奪う。 それが闇魔法の使い方だ』
「うおぉぉぉぉぉ!!」
黒い球をアキラの顔面目がけて当てようとする真司。
しかし、アキラはバックステップで真司との距離をとって回避した。
「まだだ!」
『闇光線 TQ@』
左手に持っていた黒い球から、一筋のレーザーが発射された。
そして、そのレーザーは目にも止まらぬ速さでアキラの右腕を貫いた。
「うあっ!」
腕を押さえながら地面に膝をつくアキラ。
「うぅ・・・・・・魔力が消えていくよぉ・・・・・・」
俯きながら今にも泣きそうな声を上げていた。
近くに駆け寄るボルトローは、『癒し』のコードで穴の開いた腕を治癒しようとしている。
「止めな、ボルトロー。 アンタの魔力まで消滅させられるわよ?」
クロナがそう注意を促すと、ボルトローは仕方なく携帯を閉じた。
「あんなやつ、アタシがやるわ!」
『火炎刀 A_AGJ』
クロナは火炎刀を構え、真司に向かっていく。
『暗黒壁 .CB』
「フンッ! そんなもの当たらなければ関係ないね!」
遠回りをして壁を回避し、真司との距離をとるクロナ。
そして、一気に間合いを詰めて真司に飛びかかった。
『水流壁 F−X@B』
突如、真司とクロナの間に水の壁が出現。
クロナがそれを斬ると、水流壁と火炎刀は互いに相殺し合って消滅した。
「誰だ!?」
クロナが後ろを向くと、そこにはアンナとミドリが立っていた。
「チッ・・・・・・もう追いついて来たのか・・・・・・」
舌打ちをしたクロナは、高く跳び上がって魔法陣の中央にいるイオータの近くに着地した。
「真司を頼んだ、ミドリ!」
「えぇ、分かったわ!」
真司の近くに駆け寄るミドリ。
『雷撃砲 W−B@』
アンナは自分の正面に携帯で大きく円を描いた。
すると、円を描いた部分に電気が迸る。
「今回は特別サイズだ、喰らえ!」
そう言うと、アンナの正面に描かれた円から雷の極太ビームが発射された。
「ボ、ボルトロー!!」
クロナが叫ぶ。
『岩石砦 ABX』
次の瞬間 イオータとアンナの前に、天井まで届く高さの巨大な岩の壁が現れた。
雷撃砲は岩に吸収され、勢いを失って消滅した。
「真司くん、大丈夫?」
「あぁ、はい・・・・・・あれ、マユは?」
「・・・・・・ちょっと休んでいるわ」
そうですか・・・・・・、と真司は小さく呟いた。
その時、真司の背後に突如忍び寄る1つの小さな赤い影。
「スキありだよ!」
背後に現れたのは、雷を纏った短剣を振り上げているアキラだった。
「あ、危ないッ!!」
ミドリは咄嗟に真司を突き飛ばし、自らの身体で攻撃を防ぐ。
「・・・・・・っ!!!」
雷の短剣は、ミドリの身体を右胸部から斜めに切り裂いた。
不敵な笑みを浮かべるアキラ。
そして、突然の出来事に唖然とする真司。
「み、ミドリさん!!」
大量の血を流しながら、床に倒れたミドリに駆け寄る真司。
「し、しっかりしてください!!」
「フフンッ、お前も切り裂いてやる!」
再び短剣を振り上げるアキラ。
「邪魔だッ!!!」
『漆黒衝撃 ECE@B』
真司が怒鳴った。
携帯から環状の黒い波動が現れ、アキラを数メートル先の壁まで吹き飛ばす。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・俺が油断していたせいで、こんなことに・・・・・・」
「だ、大丈夫よ・・・・・・真司くんは早く解放を阻止して・・・・・・!」
「で、でも・・・・・・」
「平気よ、自分で転移するから・・・・・・」
ミドリはそう言うと、ゆっくりコードを入力して真司たちのいる部屋から転移した。
「真司ッ! 早く戦え!!」
アンナの怒鳴る声がどこからともなく聞こえた。
「え、アンナさん、どこに・・・・・・?」
「今、『高速移動』で戦闘している! お前は魔法陣の中心にいるやつを叩けッ!!」
部屋内の各所で金属のぶつかり合う音や、爆発が起きている。
「中心にいるやつ・・・・・・アイツか!」
部屋の中央で携帯を持って何かをしているメガネの男・イオータを視界で捉えた真司は、
すぐにそこに向かって走り出した。
「チッ、解放中は手が離せないんだよねぇ〜・・・・・・護衛を! クロナ!」
「あいよッ!」
突如、真司の前に姿を現したクロナ。
だが、クロナを見えない何かが吹き飛ばした。
「高速で移動している小娘とデカブツに気をつけろ!」
真司はすぐに、アンナが助けてくれたのだと分かった。
はい!と返事をし、イオータにさらに接近。
「さっきから僕の魔力を奪いやがってぇ!」
壁にぶつかって瓦礫の下に埋もれていたアキラが、怒りながら真司の後ろから追って来ていた。
「くっ、この魔力じゃ闇は使えないな・・・・・・」
『火炎壁 A_B』
真司は携帯で横一閃。
アキラとの間に、燃え盛る火の壁を展開した。
「そんな壁、無意味だよ!」
『雷電 W−』
真司の頭上から、突如 雷が落下。
床を転がり、危機一髪で回避した真司。
「うあぁぁぁッ!!」
真司の横に、悲鳴とともにアンナが転がってきた。
「あ、アンナさん!」
「さ、さすがに2対1は無理があったか・・・・・・」
アンナは額から血を流し、両腕に火傷を負っていた。
「フンッ、無駄に手間掛けさせてくれちゃって。 だけど、もう終わりよ!」
「邪魔さえしなければ殺さないでおいたものを・・・・・・」
「ボルトロー、殺さないとかはナシだよ? 邪魔するやつは全員やっつけないと!」
真司とアンナに迫るのは、ボルトロー、アキラ、クロナの3人。
と、そこに巨大な火球が飛来。
素早く散開し、回避した3人。
「いやはや・・・・・・麻痺というのは面倒なものだな」
最下層の部屋に現れたのはリキだった。
「げっ、オッサン!」
「小娘、ここで決着をつけようか」
リキは、図上に2つの首を持つ燃え盛る竜を従えていた。
「イオータ、まだ解放は出来ないの!?」
「今やってるから声掛けるなよ〜!」
「クロナ、俺はアイツを止める。 お前はこの少年と女を始末するんだ」
「軽がるしく命令するな、ボルトロー!」
反発しながらも、クロナは真司たちに視線を向けた。
「・・・・・・散々邪魔してくれたけど、ようやくアンタらを殺せるわ!」
『猛火 @A』
クロナが携帯をひと振りすると、真司とアンナを猛る炎が包み込んだ。
「う、うあぁぁぁぁぁぁ!!」
床に横たわるアンナはすでに気を失っている。
真司の悲鳴だけが炎の中から響いていた。
「ここまで頑張れたのに・・・・・・やっぱり魔桜団には・・・・・・」
真司は炎の熱さにやられ、バタッと倒れた。
やがて視界が霞み、意識が朦朧とし始める。
「・・・・・・ちく・・・・・・しょ・・・・・・う」
全てを諦め、死を覚悟する真司。
『真司!』
突如、脳内に流れた誰かの声。
『諦めないで、まだ貴方には力がある』
「・・・・・・サクラ? 俺にはもう・・・・・・動く力もないんだ・・・・・・」
『思い出して、狭間で貴方に与えたあの力を』
「あの・・・・・・力・・・・・・?」
『・・・・・・覇桜を』
その言葉を聞いた瞬間、真司の心臓がドクン!と、大きく脈を打った。
まるで打ち慣れたかのように、コードを入力していく真司。
『憑依 覇桜 N@− M/@』
赤く揺らめいていた真司たちを囲む炎は、次の瞬間、漆黒の炎へと変化。
部屋全体に大きな衝撃が走った。
「な、なんだ・・・・・・!?」
クロナは謎の現象に戸惑いを見せている。
「何事!?」
「おい、真司! 無事なのか!?」
炎の剣と石の剣で激しい戦闘をしていたリキとボルトローも、突然起きた異変に戦いを中断していた。
「ハァッ!!」
激しく燃え盛っていた漆黒の炎は、真司らしき声の一喝で瞬時に消し飛んだ。
そして、消え去った炎の中から現われたのは真司とは似ても似つかぬ者が立っていた。
それは全身に漆黒の鎧を纏っており、背には大きな黒き翼。
顔には目と口元だけが見えている形状の仮面。
その者はゆっくりと閉じていた目を開け、真紅の瞳でクロナを睨みつけた。
「だ、誰だ、お前ッ!」
炎の刀を呼びだし、その黒き者に斬りかかる。
だが、黒き者は刀を片手で止めた。
数瞬後、刀が纏っていた炎が黒き者の手に全て吸収。
刀の形状だった携帯もしばらくすると、元の形に戻ってしまった。
「あぁぁぁぁぁぁ!! アタシの魔力が・・・・・・・吸い取られてい・・・・・・く・・・・・・」
クロナは気絶して床に倒れた。
「お、おい! お前は真司なのか!?」
リキは大声で尋ねるが、返事はない。
それどころか、ワープするかの如く一瞬でリキの目の前に移動し 蹴りをお見舞いした。
吹き飛んだリキは壁面へ激突。
「あの少年なのか、お前は・・・・・・?」
冷静な眼差しで黒き者へ問うボルトロー。
黒き者は、依然として何も言葉を発さない。
顔面を黒き者に殴られたボルトローは、リキと反対方向の壁面に衝突。
黒き者は獣のように大きく咆哮し、凶悪なオーラを全身から放ち続けるのだった。
戦闘回も佳境に入って来ましたね。
次回もお楽しみに〜。
《どうでもいい話》
毎回、魔法の名称にルビをふるのが大変です(笑)
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