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16話「襲撃」
少し時は流れ、オモテ世界では5月6日。
ゴールデンウィーク最終日。
シン、由里、そしてウラからやってきたコウジの3人で、魔物退治の日々が続く。

一方、ウラ世界では魔桜団から魔力点を守るため、トウキョウ支部は第1級警戒態勢をとっていた。
真司はアンナの特訓を受け、マユやカブちゃんたち戦闘員は敵の襲撃に備えての準備を行っている。
少しずつ緊張感の高まるトウキョウ支部に、ついに魔桜団の魔の手が忍び寄ろうとしているのだった。






アンナの厳しい特訓を終えた真司は、医務室で休憩をとっていた。

「何だか真司くん、少したくましくなったんじゃない?」

ミドリはいつもの様に豊満な胸部をアピールするかの如く腕を組み、そう言った。

「そ、そうですか?」
「えぇ。 最初会った時に比べると、成長してるように見えるわよ」
「なんか、そう言われると照れるなぁ〜」

真司は頭を掻きながら、頬を赤く染めている。

「前より筋肉ついたんじゃなぁい?」
「カ、カブちゃん・・・・・・!」

突然、真司の背後に現れたのはカブちゃん。
いつも以上に身体をクネクネさせながら、真司に抱きつこうとしている。

「ちょ、ちょっと、離れてくださ、う・・・・・・ぎゃぁぁぁぁぁ!」

ついに抱きつかれた真司は、そのままカブちゃんとに押されて地面に倒れた。

「はーい! そこまでよ、カブちゃん」
「あんらぁ〜、今日はいつもよりスキンシップが進んだと思ったのにぃ・・・・・・」

カブちゃんは唇を尖らせながら不満を言った。

「失礼しま〜す!」

元気よくマユが入ってきた。

「真司ってここにいま・・・・・・、アンタ、地面に寝転がって何してんの?」
「い、いや・・・・・・つい先ほど貞操(ていそう)の危機が・・・・・・」
「アンタに渡すものがあるんだけど」
「ん、何?」

真司はそう言いながら、ズボンについたゴミを払いながら立ち上がった。

「これ、携帯と腕につけて」

そう言ってマユがローブのポケットから取り出したのは、携帯などにつけるようなストラップと金属製のブレスレット。
ストラップには黒い毛がひも状に編まれていてその先端に小さな赤い石がついており、ブレスレットにはところどころに青い石が埋め込まれているものだった。

「ん、ストラップ?」
「この赤と青の石は、互いにひっぱりあう性質があるの」
「磁石ってことか?」
「それとは少し異なるわ。 真司、ちょっと携帯貸して」

真司がローブのポケットから取り出すと、マユはすぐに携帯を奪って先ほどのストラップをつけた。
そして、それをカブちゃんに手渡した。

「カブちゃん、それを全力で投げちゃって」
「はぁい、任せといてぇ」
「ちょ、おい!」

ミドリが腰掛けている机の横にある窓を開け、カブちゃんは真司の携帯を投げる。
携帯は勢いよく飛んでいき、空の彼方へと消えていった。

「マジで? どこまで飛んで行ったんだ、俺の携帯・・・・・・」

がっくりと落ち込んだ真司はそのまま崩れ、床に座り込んだ。
すると、マユの持っているブレスレットが光り始め、蛍のような光の粒子が現れた。
その粒子たちはすぐに集まり、一瞬で真司の携帯になった。

「え!? さっき、飛んで行ったはずじゃ・・・・・・?」
「この赤と青の石は距離が離れると、赤い石が転移して青の石の近くに戻る性質があるのよ」
「すごいなぁ〜。 ・・・・・・で、なんで突然それを持ってきたんだ?」
「戦闘中に敵に携帯を奪われたら、真司はどうする?」

すぐにストラップとブレスレットの使い方を把握した真司は、なるほど〜、と感心の声を上げている。
その時、医務室のドアが開き、アンナが入ってきた。

「みんなここにいたか」
「ち、ちぃ〜す!」

真司は瞬時に、アンナに向かって頭を下げた。

「・・・・・・反応速度は、まずまずだな」
「それ、何の修行よ・・・・・・で、何か用でもあるんでしょ?」

ミドリは冷静にツッコミを入れつつも、すぐにアンナに尋ねた。

「あぁ、作戦内容が決定したからな。 それを報告しに来た」
「アタシも作戦に参加できるんですか?」
「まぁ、落ち着け。 お前たちの役目は魔力点へ続く道の防衛だ」

アンナは、手に持った数枚の資料をめくりながら話し始める。

「トウキョウの魔力点はここの最下層にあり、そこへ行く道は4つのみ。
 4つの道を防衛する者は、日野田リキ、黒道アンナ、波川ミドリ、澤オオカブト、
 有鞘マユ、そして、佐倉真司だ」

俺も!?、と驚く真司。
だが、戸惑う真司を余所にアンナは話しを続けた。

「マユはミドリ、真司はカブトとチームを組み、東と西の道の防衛をしてくれ。
 残る北と南は、私と隊長が行う」
「よろしくねぇん、真司ちゃぁん」
「あ、はい・・・・・・」

カブちゃんは不気味な笑みを浮かべながら、真司にウィンクを飛ばした。

「魔桜団が突破した場合、最下層までに必ず討ち取れ。 以上で作戦の説明は終わりだ」

アンナは説明し終えると、すぐに医務室を去って行った。




「アンナちゃんも、忙しいみたいねぇん」

カブちゃんはポケットから化粧品を取り出し、ベットに座って化粧を始めた。

「・・・・・・」
「真司、大丈夫?」
「・・・・・・もし強いヤツが来たら勝てるのかな」

真司の手は小刻みに震えていた。

「大丈夫よ、アンナさんの特訓も受けてきたんだからさ」
「・・・・・・あぁ、そうだな」
「あとは万全の状態で戦闘できるようにしておかないと・・・・・・」





カチ、カチ、カチ・・・・・・、と何度も同じところで時計の針が動いている。
誰も喋らない医務室には、緊張感が漂っていた。
そして・・・・・・。

ジリリリリリリリ!!!

突然鳴った警報はその沈黙を破り、トウキョウ支部に戦いのスイッチを入れた。


『緊急連絡! 魔桜団の襲撃! 繰り返す、魔桜団の襲撃! 数は4!
 市街地には多数の魔物出現! 各自、作戦通りに行動せよ! 繰り返す!
 魔桜団の───』


館内放送が続いている。

「き、来たのか!?」

慌ててイスから立ち上がる真司。

「みんな、行くわよ」

マユはミドリと共に、真司はカブちゃんと一緒にそれぞれの防衛地点へと向かって行った。







その頃、トウキョウ支部の屋上にはたくさんの戦闘員が配備されていた。


『敵は現在、校舎に向かって上空から接近中。 射撃部隊は直ちに攻撃準備せよ!』


屋上にいる隊員たちの脳内には、アンナの声が響いていた。

「これより、攻撃態勢に入る! 『マシンガン』コード使用!」

隊員の1人がそう叫ぶと、黒いローブを着た20人の射撃部隊は素早く携帯にコードを打ち込んだ。


 『マシンガン PEA』


コードを入力した隊員たちの携帯は、小口径の黒いマシンガンへと変化した。

「構え!」

その声と同時に、隊員たちはマシンガンを上空に向けた。

曇天の空に、4つの小さな赤い人影。
その人影は少しずつはっきりと見え始め、さらに校舎に近づき、トウキョウ支部周辺に展開されている防護壁と衝突した。

「ハァッ!!」

ゴツい体型をしたボルトローは土の鎧を纏った右手で、強烈なパンチを防護壁に与えた。
ピシッ・・・・・・パキッ・・・・・・、という音と共に無色の防護壁にヒビが入り、ぼろぼろと崩れ始めた。
再び、進行を再開する4人の魔桜団員。

「撃てぇー!」

戦闘員の掛声により、20人のマシンガンが大量の弾を発射し始めた。
弾の雨が校舎に向かって落下してくる4人を襲うが、ボルトローが展開した石の壁がそれらを全て無効化している。

「ひるむなぁー!」

ついに屋上に着地した4人の魔桜団・ボルトロー、アキラ、クロナ、イオータは、次々とトウキョウ支部の戦闘員を薙ぎ払っていく。

「それでは、そろそろ散開しようか?」

イオータはメガネをクイッ、と上げながらそう言うと、ボルトローは地面を勢いよく踏みつける。
すると、屋上の床にヒビが入り、一瞬にして砕け散った。

「じゃあさ、誰が一番速く最下層まで行けるか競争しようよ!」

アキラは子供のような笑みを浮かべ、颯爽と3階へと落ちていく。
それに続いて、ボルトロー、イオータ、クロナも屋上に開いた大きな穴を通って最下層を目指していくのだった。








ウラ世界でトウキョウ支部が魔桜団の襲撃を受けているその頃、オモテ世界にも大きな危機が迫っていた。

「変化系のコードも操れるようになってきたね、由里ちゃん」

いつもの修行場・廃工場にてシンと由里は特訓中。
ウラ世界から転移してきたコウジは、その様子を静かに見守っている。
そんな折、突如 シンの携帯が鳴り出した。

「またか?」

ローブのポケットから携帯を取り出すものの、すぐに音は鳴り止んでしまった。

「誤作動ですか?」
「いや・・・・・・センサーが破壊されたみたいだ」
「シンくん、ちょっと気になるので見に行きましょう」

3人は廃工場を後にし、早急にセンサーのあった場所へと向うことに。





その道中、街中の電気街を通る3人。
最新型の薄型テレビなどが店頭に並んでおり、ニュースが報道されていた。


『緊急速報です。 たった今、海上保安庁より 新潟県付近の日本海にて
 謎の巨大生物が出現したとの発表がありました。
 その怪物は巨大な黒いタコとの情報で───』


「ちょっと、2人とも。 これ、見てくださいよ」

由里は、店頭に設置されたテレビに映るニュース番組を指差して言った。


『あ、新たな情報が入ってきました! 静岡県に程近い太平洋上空にて、
 巨大な鳥と思われる怪物が発見されました。 詳しい情報が入り次第、
 再びお知らせいたします!』


「何これ・・・・・・」
「もしかしたら、何者かがこちらの世界に来たのかもしれませんねぇ」
「それってやっぱり、魔桜団という人たちですか?」

由里は、着ている灰色のジャージの袖を(まく)りながらコウジに尋ねた。

「きっと、そうだと思いますよ」
「由里ちゃん、コウジさん。 手分けして魔物を倒そう」
「分かりました、由里さんは私と来てください」
「じゃあ、黒いタコは任せたよ、由里ちゃん」

うん、と由里は頷き、コウジと共に電気街を駆けていく。
残ったシンは路地裏に入り、『光の翼』と『インビジブル』のコードを使って昼下がりの太平洋沖上空へと飛んで行った。


15話投稿が遅れていたので、昨日に引き続いての更新です。
次回から戦闘開始です!
お楽しみに〜(^−^)
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