猛女ときどき女神(4/11)縦書き表示RDF


震える彼女。夕暮れになってきて心配したナル<成実>は彼女<女神>を家の近くまで送ることに。ところが口下手な彼は、せっかくのチャンスに何も話せず時間だけが流れていく。ところが・・・
猛女ときどき女神
作:KEIKO



第4話:僕の心臓大丈夫でしょうか?


 
 2つくらい角を曲がって、僕たちは川沿いの道へ出てきた。

 無言な時間が流れているけど、気の利いた言葉も見つからなくて。
 
 これだから僕はいけないんだな。

 なんて思いつつ、小さな彼女を支えて歩いている自分が、少し誇らしかった。

 大したことしてる訳じゃないんだけど、彼女に頼られてる感じがして心地よかった。

 彼女はというと、立って歩いてるのは僕の支える力だけって感じで、ひどく疲れているようにも見えた。

 やつれているのか? 大丈夫か? ほんとに彼女が心配な気持ちでいっぱいだ。
 
 何か力になってあげたい!

 何を?

 それは、今は何も思いつかなくて。やっぱり無言なまま歩いていた。

 でも、こんなに一人の女の子が僕の横にいるのは、前の彼女の優菜以来だ。

 優菜と付き合ってた時は、必ず左側にいたっけ。

 昔の記憶が瞬間的に蘇った。

 治りかけてた心のかさぶたを、また少しかきむしってしまった気持ちになった。

 今は優菜のことを考えるのはやめておこう。

 やがて見慣れたスーパーをすぎて、駅近くのメイン通りに差し掛かっていた。

 もたれる髪から時折のぞく横顔がとても可愛く思えて、何度もこっそりみていた。

 あんまり見すぎておかしいと思われないように、見たい気持ちを押さえるのに必死だった。
 
 と、彼女が突然立ち止まった。左に小さく指差して

 「ここ・・・」

 かすれそうな声で言った。

 えええぇーーー! ここ?

 僕は予想だにしていなかった高級マンションに少し面食らった。
 
 ここは大手の不動産が建てたマンションで、最新鋭のデザイナーズマンションとして大きく宣伝していた。

 聞いた話では、値段も普通では買えない位して、芸能人なんかも住んでるらしい・・・と、地元の噂好きのおばちゃん達が、おもしろそうに話していた。

 昔は空き地になってて、小さい妹を連れてきては、こっそり入って、つくしやよもぎなんかを摘んでいたっけなぁ。

 いやいやっそんな思い出に浸ってる場合じゃない。

 「ここでいいんだよね?」
 
 うなずく彼女

 「部屋いちばん上だから」

 えっ? 部屋って? 

 僕は焦って聞き返した

 「部屋?一番上?」

 「そう。早くして」

 小さい声だけど早くしてって聞こえたんで、「はいっ」とだけ答えてマンションの入り口に入った。

 まさかマンションの中にまで入ることは予想していなくって、少し落ち着きかけてた鼓動がまた激しくなってきた。

 大丈夫か?僕の心臓。

 彼女が暗証番号を入力して自動ドアが開き、エレベーターの方へ進んでいく。

 緊張で、汗がどっと流れるのを感じた。

 自分がどんな顔してるのかも想像がつかなかった。

 彼女はまだぐったりした様子だったので、とりあえず彼女の部屋の前まで送らないと。
 
 部屋の前まで、部屋の前まで・・・と呪文のように心でつぶやきながら、エレベーターが刻む階数を今か今かとみつめていた。







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