猛女ときどき女神(3/11)縦書き表示RDF


突然のハプニングからコンビニでしか見ることのなかった‘午前の女神‘に出会ってしまう。そして彼女の正体が少しずつ明らかになっていく・・
猛女ときどき女神
作:KEIKO



第3話:彼女の大事なもの


 
 「あっとっとっとりあえず落ちてるもの拾うねっ」

 あわてて散らばった筆記用具やノートを手早く拾って彼女の袋に入れようとした。

 「いいのっ!」

 強い口調で言うと、奪うように僕の手から拾ったものをもぎとった。

 「ごめんね・・」

 なんだかしらないけど謝ってしまった。

 彼女は焦って袋に入れようとして、また鉛筆を落とした。

 よっぽど袋の中身を見られたくないようだ。だけど、犬が激しく噛んでた袋は破れかけてて土もついて汚れていた。

 「よかったら、僕の買い物袋が余ってるからそっちに入れる??」

 彼女はノートを抱きしめたまま強く首をふった。

 なんでそんなに見られたくないのかな?あまり厚みがあるものでもなさそうだし、持ってた感じでは軽そうに感じた。

 「えっと、だっ大事なものが入ってるのかな?」
 
 あーーなに聞いてるんだ! 言いたくないものなのかもしれないし、僕にそんな聞く権利ないぞっ! バカバカ!!

 「イカが・・・」

 小さな声でうつむいた彼女は言った

「へ・・・イカ?」

 え? イカって何のイカ?

 まさか食べるイカじゃないだろ? なになに? なんなんだ? 

 僕はまだ出会ったパニックが収まらないうちのイカ発言に、また頭がショートしそうになった。

 「イカってあのっ食べる方のイカかな?」
 
 食べる以外になにがあるんだよ! 自分ながら嫌になってきた。

 「するめ・・・」
 
 彼女がまた小さく言った。

 「あーあーーっ!するめイカね〜!!」
 
 彼女は小さくコックリうなずいた。

 あーするめの方のイカね〜うんうんっ・・

 犬にどうしても取られたくない大事なもの=するめイカ?

 なんなんだこの組み合わせ?

 そんなに大事だったんだろうか?

 でも、あんなに必死に取られまいとしてたんだし、なんだか思い入れのある‘するめイカ‘なのかなぁ?

 思い入れのあるするめイカってなんだよ・・・

 うだうだ考えてるうちに、彼女は抱きしめていたノートをしまい、立ち上がろうとしていた。

 と! 危ない!! 

 よろけそうになったので、あわてて小さな体を支えた。

 え? なんて細い体なんだ! 

 支えようと彼女をつかんだ僕の手が、頼りない細さを感じて驚いた。

 最初に犬に引っ張られているのを見たときは、てっきり中学生くらいの女の子かとおもったくらい、彼女は小柄で。

 でも、こんなにほっそりした子だとは、コンビニで見ている時は思いもしなかった。

 なんだか急に心配になった。

 ちゃんとご飯食べてんのかな?そう言えばいつもコンビニでサンドイッチしか買わない。しかも同じやつばかり。

 もしかして夕飯にあれだけって事はないよなぁ?

 考えすぎて、彼女をしばらくみつめてしまっていた事に気がついて、焦って取り繕ったように引きつった苦笑いをしてしまった。

 変な奴って思われたな多分・・・

 気がつくと、もうとっくり日が暮れてきて、周りが暗くなっていた。

 こんな状態で一人で帰すわけにいかないし、暗くなってきたからなおさらだ!

 「一人で歩けなさそうだし、暗くなってきたから家の近くまで送っていこうか?」
 
 彼女はしばらく地面をみつめて、小さくうなずいた。

 そっと彼女を立ち上がらせて、ゆっくり歩き出した。

 方向は彼女が小さく指差すほうへ。

 体と心が、沸騰寸前のやかんみたいに、ピューーと音を立てながらグングン温度が急上昇している。

 彼女をつかんでる手がジンジン熱くなっちゃって、それが彼女に悟られはしないかと、気が気でなかった。







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