「コーナーンー君!!」
「ん? 何? 歩美ちゃん」
「今日ね、歩美のうちでひな祭りのパーティするの! ケーキもあるんだよ!」
肌寒さがまだ少し残る3月。
3月3日は桃の節句であり、女の子の行事、ひな祭りがある。
オレはきらきらと目を輝かせる歩美ちゃんを片目に、遠い記憶を微かな懐かしみと共に手繰り寄せる。
―――あれは、まだ小学1年生の時だっただろうか。
学校帰りに蘭の家へ呼ばれ、ひなケーキをご馳走になったのは。
以前から節句が近付くと、蘭からひな壇を飾るのを手伝ってほしいという頼みを聞いていた。
そしてオレは蘭が指示する通りに、赤い団の上に慎重に人形を乗せていく―――…
―――『しんいち! さんにんかんじょのひだり! ちがうよ!』
『あぁ? おなじだろ?』
『みぎとひだりはにてるけど、ちがうんだよ! らんがおしえてあげる!!』―――
あの時は、オレが置くたびに蘭に怒られたっけ…
そこ違う、弓持ったじいさんは下だ、って。
んで、当日になれば蘭と一緒にケーキを食べた。
らんはおんなのこだから、さきにえらぶんだよ! って言い張って。
そんなのかんけーねぇよ! ってオレは言って。
結局おっちゃんが食べたんだよな……
懐かしげに微笑むコナンを、歩美は不思議そうに首をかしげる。
「コナン君…来てくれるよね?」
コナンの顔を覗き込むかのように、歩美は再度尋ねる。
ひな祭り。
今日も蘭はケーキを買ってくる。
だけど、オレには『コナン君は男の子だから5月だね!』って言うんだ。
たまには……甘えてみるか。
その女の子の行事とやらを、満喫するのも悪くない。
オレは首を縦に動かした。
微かな記憶を、扉の中に封じ込んで。
またいつか、蘭と笑い合えるように。
ひな壇のように、いつか、蘭の隣で……
笑ってやる。
いつかきっと、必ず、絶対に―――…
オレが背にしたお雛様が、微笑んだような気がしたのは、気のせいだろうか―――…
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