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第九話 ありがとう・・・

物語もクライマックスです。ぜひ、ご覧下さい。

1月15日火曜日。

「ふう、佐竹、具合はどうだ?」

「大丈夫よ。」

俺は今、病室にいる。佐竹が入院してから約1週間(いつ入院したかは不明)がたった。佐竹は元気そうで何よりだ。

「そうか。」

「それよりも、黒田君。勉強はかどってる?」

「それだけは言うな。」

佐竹。勉強の話はやめてくれ。頼むから。

「いうわよ。黒田君、頭悪いし。」

畜生め。もう少し勉強しとけばよかったなと若干後悔する。


1月16日水曜日。

「おーす。」

「黒田君こんにちわー。」

俺は佐竹のそばに置かれたボウルを見る。たくさん血がたまっている。

「うわっ、昨日よりも多くねえか?」

正直、少しというかかなり心配だ。俺に感情があるのかいまいちわからないがあるとするのならこの言い方が一番いいな。

「気のせいよ。」

「そうか。そうだよな。」

早く佐竹が病室から出れないものだろうか。


1月17日木曜日。

「ゴホッ!ゴホッ!」

また、咳とともに佐竹の口から血が出てくる。気のせいじゃない。昨日より明らかに血を吐いている。

「・・・佐竹・・・。」

「大丈夫・・・大丈夫だから・・・。」


1月18日金曜日。

今日は妙に病院がバタバタしているな。まあいい。今日も佐竹のところに行く。

「佐竹ー。来たぞー。」

しかし、返事がない。どうしたのだろう。いつもなら返事してくれるのに。

「・・・佐竹?」

佐竹は動かない。よく見たら、血を吐きながら眠っている。

「ッ!!佐竹!!!」

俺は急いで医者を呼んだ。医者はすぐに駆けつけ、佐竹を担架に乗せる。

「佐竹!!!!!」

手術室に佐竹を乗せた担架が入っていった。そして間もなく『手術中』のランプが点灯する。

「無事でいてくれ・・・。」

おれはただ一人、手術室前の椅子に座っていた。何時間もの時がたっていく。俺は神というものを信じてなかったが、佐竹が無事でいてくれるよう、神に強く願った。


 『手術中』のランプがフッと消えた。そして、佐竹を乗せた担架が出てきた。

「佐竹は!?」

「・・・・・・。」

早く答えてくれ!!

「おい!聞いてるのか!!」

これはもうまぎれもない「怒り」。俺は明らか、医者に怒っている。

「・・・患者さんは、あと一日持てばいいほうでしょう。」

「・・・だめだったってことなのか?」

医者は黙ってうなずく。俺はもう何も考えられなかった。


1月19日土曜日。

「おい、佐竹。見えるか?お前の好きな雪が降ってるぞ。」

この病室は静かだ。ピッ、ピッ、っと佐竹の心拍数に合わせて音が聞こえる。

「佐竹・・・。」

俺は眠ったままの佐竹を見る。おそらく二度と起きないだろう。

「俺な、佐竹と出会えてよかったよ。佐竹のおかげで俺は人間になれた。思ったんだよ、佐竹の涙を見て、ノーハートは存在しないんじゃないかって。人間には誰にでも感情があるんじゃないかって。俺、思ったんだ。」

ピッ、ピッ、という音が少し遅くなってきた。脈が短くなってきたのだ。つまり―佐竹はもうすぐ死ぬ。

「佐竹。短かったけど楽しかったよな。たった少しの時間だったけど、俺は楽しかった。佐竹と一緒に笑ったよな。昼休みになると俺たちはいつも屋上に行って、きれいな眺めを見てたよな。クリスマス、佐竹は酒を飲んで俺を襲いかけたよな。まあ、あれは未遂に終わってよかったが・・・。そしてお正月、佐竹は俺とずっと一緒にいれますようにって神さんに頼んだんだよな。だけどその願いはかなえてくれなかったな。・・・いや、まだわからないな。そうだろ?」

当然返事は来ない。ピッ、ピッという音がほとんど聞こえてこなくなった。

「佐竹・・・。」

その時、佐竹の口がわずかに動いた。

「佐竹!?」

唇が弱弱しく動き、そして・・・

ピー

死んでしまった。俺の大好きな人が・・・。

「・・・『ありがとう』か・・・。」

俺の頬を一筋の涙がつたう。

「・・・それはこっちのセリフだ。」


1月20日日曜日。

佐竹の死体は焼かれ、骨となった。俺はその遺骨をもらう。

「ありがとうございました。」

佐竹の葬儀は行わなかった。クラスの連中にばれたくなくなったからだ。

「結局、お前の願い、かなったじゃねえか。」

俺は手に取った骨壺を見て言う。

「ずっと一緒にいてやるよ。」

空は昨日の雪がうそのような晴天。俺と佐竹はゆっくりと道を歩いて行った。

次回が最終回です!!ここまで読んでくれた皆さんに感謝感激です!!最後はしっかりとしめたいと思うのでよろしくお願いします!!!

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