第36話:十年前の真実
「久しぶりね、美智。だいぶ、女性らしくなったみたい」
「…………うん」
「こっちへいらっしゃい。ここは暗くて好きじゃないの」
灯に案内されて通されたのは、布団や机、電灯がある小さな部屋。
「広いんだね、ここ」
「…………十年前に増築されたの」
「十年前…………。ねぇ、何でこんな所に?」
「そうね、どこから話ましょうか」
灯は、困ったように笑いながらゆっくりと話始めた。
「この村の龍神の花嫁の話は知っているかしら?」
「うん」
「あれは村娘が自ら龍神に願いを伝え、花嫁となった。でも、本当は違うの」
「裏バージョンがあるのね?」
美智の言葉に灯は頷く。
「そう、飢饉で村が滅びそうになったのは一緒。でも、そこからのくだりは違う。龍神が生贄を求めた、そして選ばれたのは神楽の名手だった少女。彼女は、籠の中に入れられ泉に沈められた」
「人柱」
「そう、その儀式は、それ以降五十年単位で続けられているの。選ばれるのは、深見の家の娘。そしてその少女の名はすべて灯。つまり、私も生まれながらにして人柱になることが決まっていた」
「そんな!! 大昔と今は違う!」
「両親もそう言って取り合わなかった。だからこそ、私は村の外で生活していたの。だけど、たまたま帰省していた時に、捕まってしまった」
「神隠しのこと?」
「村には帰ってきては行けないと言われていた。帰ればどうなる運命なのかは知っていたもの。でも、私は自ら籠に囚われることを選んだの」
「何でそんなこと!!」
「あの人を解放してあげたかった。この村から」
美智の脳裏には1人の人物が描かれた。
「川辺先生?」
「そう、生贄の少女の監視の役目を担う家に生まれてしまったかわいそうな人。そして儀式と村の為にその手を血で染めてしまった。それでも、村から離れろと生きなさいと言ってくれる人」
灯の瞳からはいつしか涙がボロボロと零れ落ちていた。
「手を血で染めたっていうのは、蛍のおじさんのことよね?」
「…………それだけではないのよ。美花もそうなの」
「美花も?」
「ごめんなさい。あの日、美花は見てしまったのよ。禁足地の泉へと連れて行かれる私の姿を。そしてそれに気付いたあの人は追いかけた。そして足を滑らせた美花は死んでしまったの」
灯の告白に美智は言葉を失ってしまった。 |