第35話:灯
ポツン、ポツンと頬を濡らす冷たい水。
その冷たさで美智は目覚めた。
ゆっくりと目を開けると視界に入ったのは、古い木の天井。
しかし、床に寝ている自分との距離が近いことに違和感を覚えた。
(…………どうしてこんな所にいるんだろう)
何だか体があちこち痛い、それに頭がズキズキとする。
手をつきながら体を起こすと、だんだんと頭の中にかかった靄が消えていく。
ズキッ。
「……………いっ…………た。そうだ確か私…………」
後頭部に手を回すとかなりの大きさのタンコブが出来ている。
しかし、その痛みのおかげで自分達に何が起きたのかが思い出された。
「明は? 明、いるの?」
声をかけてはみたがあたりに誰もいないようだ。
美智は、ここがどこなのか確認しようと辺りを見渡した。
「!?」
美智は、自分が寝ていた部屋に木で出来た格子があることに気が付いた。
恐る恐る近づき、それに触れる。それは、とても頑丈な格子。
「これって座敷牢なの?」
時代劇で見るような場所に自分がいる、その事実に寒気がした。
「ここはどこなの?」
この座敷牢に電灯は無いようで牢の出口で揺れている蝋燭の炎が唯一の光だ。
美智は自分の体を探り何かないか確かめる。しかし、何もない。手に入れた鍵ももしかしたら自分達を襲った誰かに奪われたのかもしれない。
美智は、床の上に崩れ落ちる。
「……………忠告は聞くもんだわね」
格子に背を預け美智は一つ自嘲の言葉を呟く。
「……………気がついた?」
美智は突然聞こえた女性のか細い声に思わず立ち上がり身構える。
「誰? 誰なの?」
小さい足音と共に美智とは反対側から出てきたのは、髪の長い女性。
その顔を見て美智は愕然とした。
「あっ、灯ちゃん?」
現れたのは、自分の中の記憶より歳を重ねた姿、しかし明とよく似たその面差しに間違えようはない。
「…………久しぶりね」
そう言って微笑んだその顔は、とても懐かしい笑顔だった。
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