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蛍籠
作:楓



序章


 十年前の夏、その年一番の猛暑の日に私は妹を亡くした。生まれた時も同じで私と瓜二つ。誰よりお互いを分かり合える大事な半身を。
 性格は、正反対で活発で男の子とよく間違えられた私と大人しく内向的な性格だった妹。
 あれは、私達が高校に進学した年の夏休みのことだ。
 私、田中 美智は陸上部に所属していて毎日学校で練習にはげんでいた。おかげで肌は真っ黒に焼けていた。他の子よりも大柄で、髪を短くしていたせいか男子によく間違えられていた。今思い返すと失礼な話である。
 妹の美花は、文芸部に所属していて美智とは反対に小柄で華奢だった。図書委員も兼ねていたので夏休み中の図書室の管理を先生方から任されていたので美智と毎日一緒に学校に行っていた。
 そしてあの日、美花がこの世を去ったあの日もいつもと同じように学校に行った。
 ただいつもと違ったのは、午後から雨が降り出した為練習が中止になった私が先に下校したこと。
 
 ガラッ。立てつけの悪くなっている図書室のドアを開け、美智は美花がいるカウンターへ向かった。
 「美花。あたし、先に帰るけどどうする?待ってようか?」
 「ううん、大丈夫。今日の図書室開放は五時までだから」
 「一応、功には言っておいたから」
 「うん。ありがとう」
 図書室には数人の利用者がいたため小声で話すと美智は図書室を出た。
 功は、幼馴染で美花の彼氏である。
 (まぁ、あいつに任せておけば大丈夫でしょ)
 だから、美智はそのまま下校したのだ。あんなことになるなら絶対待っていたのに・・・。

 その電話は、7時過ぎに来た。
 美智は、二階の部屋で宿題をしていたところだった。
 「あら?功君?美花ならまだ帰ってないけど。美智?美智ならいるわ。ちょっと待ってね。美智ーーーーー?功君から電話よ?」
 「はーーーーーい」
 美智は、階下へと駆け足で急ぐと玄関近くにある電話を取った。
 「功?美花ならまだよ?あんたと一緒でしょ?」
 「いや、五時半頃別れたぞ?まだ帰ってねぇの?」
 功からの思いがけない言葉に、美智は嫌な胸騒ぎがした。功と別れてから一時間以上もたっている。二人が別れるのは、互いの自宅の方向を分ける道端にある地蔵堂の前だ。地蔵堂から我が家までは五分もかからない距離である。
 「いやだ、どうしたんだろう。・・・・ちょっとそこまで見て来る」
 「俺も行くわ。じゃあ、いつものとこな」
 功はそう言って電話を切った。
 「美智?美花がどうしたって?」
 「五時半頃に美花とは別れたって。母さん、わたしちょっとそこいら見てくる。多分、どっかで道草してるだけだと思うけど」
 「そうなの?じゃあ、役場の父さんに電話しておくわ。気をつけて」
 「うん、行ってきます!」
 美智は、スニーカーを急いで履くと家を飛び出した。地蔵堂から家までは一本道、もし怪我したんだとしてもすぐ見つかるはず・・・・。
 はっ、はっ、はっ。
 美智は息を弾ませながら、地蔵堂までの道を慎重に見渡しながら走った。
 (・・・・・・いない。もしかして学校に戻ったとか?)
 地蔵堂付近まで来ると反対側から懐中電灯の光が見えた。
 (功だ!)
 「功ーーー!どう、美花いた?」
 大声で叫ぶと功が美智のところまで走ってきた。
 「いや、俺んちの方の道にはいなかった」
 「家に行くまでの道にはいなかった。もしかして学校に戻ったとか?」
 「行ってみるか」
 美智と功は頷きあい、自分達の通う『光泉高校』まで走った。
 校門まで来ると図書室の方向を確認する。すると、図書室に灯りが燈っている。
 「功!あれ!!」
 二人は急いで図書室へと走った。そしてドアをガラッと思い切り開ける。
 と、そこには美花ではなく教師の川辺の姿があった。
 「どうしたんだ?お前達」
 「先生!美花、戻ってきてない?」
 美智は、川辺に駆けより美花の所在を確認した。
 「いや?知らないぞ。先生は今日は当直だから、見回りついでにここにいるだけだ。美花がどうしたんだ?」
 美智と功の只ならぬ様子に川辺は、問い返す。美智が経緯を話すと川辺は職員室へとって帰し、役場へと電話をかけた。
 「はい、そうです。当校の生徒が帰宅していないそうです。はい。すみませんが、人手を貸していただけますか?」
 川辺が電話をしている間、美智は不安気にその場に立ち尽くしていた。その間、功は教室の方を確認していた。そして、戻って来ると川辺の電話も終わったところだった。
 「今、役場に連絡して探してもらうことになったから、お前達は家で待機してなさい。いいね?」
 「俺も探します」
 「いや、美智を家まで送ってやってくれるか?で、一緒に家に待機しておいてくれ」
 そう言うと川辺は、自分も捜索に参加すべく職員室から出て行った。
 捜索は朝まで続いた。
 その間、家で美花の帰りを待ちつづけた。
 そして、次の日の朝、近くの山林の崖下で遺体となって発見されたのである。
 事故・事件の両面で捜査された結果、美花は崖からあやまって転落したと結論付けられた。
 これが十年前に起こった事件。美智達家族は、村にいるのが耐えられず山向こうの街へと引っ越した。
 そして、十年の月日がたち、美智は25歳になった。
 あれから、街の本校を卒業し、大学を出てから地元の情報誌を作る会社に就職した。
 忙しい日々を過ごすうちに、美花の死を受け入れられた、そんな気がしている頃に一通の手紙が来た。
 差出人は、功だった。その手紙にはこう書かれていた。
 美花の死は、事故なんかじゃない。殺されたんだと。

 そして、美智は十年ぶりに故郷へ帰ることになった。
 『光泉村』へ。

 
 


少しばかりミステリーっぽいもの?にしていくつもりです。作者のない脳みそでは推理系は無理です、あくまでぽいものです。











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