ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第62話「海沿いの道で……」
2017年7月3日
午前2時26分


「明日、起きられるんでしょうね」
 要の家で借りた懐中電灯を持ち歩く潤と並んで海岸沿いの道を歩きながら要が言うと、
「平気だよ」
 潤は頷いた。
「根拠もないくせに」
「ばれたか?」
 呆れ顔を見せる要に潤は頭を掻く。
 熱帯夜の暑さはかなり海風で和らげられている。
 自転車を取りに行く雑木林は要の家から歩いてもそうは遠くない、10分も歩かない筈だ。
 しかし、海沿いの道は舗装はされているが、港の方向と逆になる雑木林の方に向かう道は民家はほとんど無く、街灯も少ない。
 今日は月明かりがあるからまだマシだが、無ければ真っ暗だろう。



「……要」
 潤が声をかけ、手を伸ばし要の手を握る。
「う……うん」
 要は潤の手を握り返し2人はそのまま歩いた。
 男女関係に疎く、堅いイメージの要。
 今までも要と2人きりになってしまうと何を話せば良いのか分からず互いに無言になる事が多かった。
 そんな要と夜中に手を繋いで歩いている。
 まるで今、いきなり時計のアラームの音で目が覚めたら自宅のベッドにいて、ここ数日の事は全て夢でした、なんてオチがいきなりおとずれてもおかしくはないとも考えてしまう程である。



「潤……聞いていい?」
 手を繋ぎ歩き始めて十数秒、要が口を開く。
「何?」
「……小春とは……どんなこ、事まで……す、済ましているのよ」
「え?」
 たどたどしく、後半につれて声が小さくなりながらの要の質問に潤は答えに詰まってしまう。
「い、いや……それは」
「……」
 答えあぐねる潤に要は繋いだ手に黙って僅かに力を込め、顔を見つめてくる。 南洋の明るい月明かりは自らの慣れない質問に恥ずかしげになりながらも、曖昧な答えを赦さない様に口をへの字に結んだ要の表情を照らした。



『もしかして小春に嫉妬してる?……凄く可愛い』



 潤はその表情にそんな感情を覚えてしまう。
 負けないから……と、自分に告げながらキスを交わしてきた彼女。
 年下の小春に対する対抗心、いわゆる女の子として自分を小春に渡さないといった嫉妬だろうか?
 そう考えてしまうと……多少、いや過剰に自惚れが過ぎるかも、とは心の隅に思いながらも要の自分への想いが可愛く思えて来てしまう。
「答えて」
 そんな事を思われているとはもちろん知らない要はもう一度同じ言葉を繰り返す。
「……要」
 優しく名前を呼び要を引き寄せて抱きしめる。
「じ、潤……んぐっ」
 声を上げた要だが、潤はすぐにキスで口を塞いでしまう。
「ンッ……んっ、な、なに……何をごまかしているのよ」
 唇を離し、真っ赤になりながら潤を睨み付けてくる要。
 しかし、潤にはそんな表情すらも凄く可愛いらしく思えて仕方ない。
「ごまかさないよ……要に小春にした事を……教えてあげる」
「……ンッ!」
 思わず言葉が出ない要。 潤は再び強引に要の唇を奪った。



「ンッ……」
「……んんっ」
 潤は唇を強く重ねながら要の身体を海沿いの防波堤の壁に強く押し付けた。
 自制してきた筈の感情が抑え切れないのを自覚していたが、それを抑える気持ちは今は無い。
 要に抱いてしまった欲求が遥かにそれに勝ってしまっている。
 パジャマ姿に薄いカーディガンを羽織り、素足にサンダル姿の要。
「……プハッ」
 長く強引な口づけから要を解放して、壁に押し付けた要を見つめる。
「ダメッ……」
 いきなりの強引さに気圧されているのだろうか?  要の抗議の言葉は弱々しい。
「……」
 構わず無言で息を呑み込むと潤は両手で要の胸を掴んだ。
「……んんっ!」
 ピクンと身体を硬直させる要。
「要の……凄く柔らかで……大きい」
 興奮しながら潤は素直な感想を口にした。



 神洋島の熱帯夜でましてクーラーも無いのでは、パジャマの下にブラジャーをつけてはいないのだろう、両手に伝わる感触は数時間前に触った小春のそれとは違った。
 小春は繋ぎだったし、ブラジャーもしていただろう……それに小春も想像以上に豊かな胸をしていて驚いたが、要のそれは小春よりも明らかに大きい。
 よく千島や琴乃が冗談混じりで要ちゃんの胸はおっきいよ、脱いだら凄いよ! みたいな事を言って要を赤面させていたが、グループで1番胸があるのは断トツで琴乃だろうと、そんな冗談に苦笑しながらも思春期の男子らしく潤は想像していた。
 実際に潤に抱き着いたり潤を抱きしめたりする琴乃の胸を実感しているのでそれは間違ってないのだろうが……今、手の中にある感触はそれに勝るとも劣らないかも知れない。
「潤っ……ダメッ、そんな事……したらっ」



 要の弱々しい抗議が興奮する耳には許諾にすら聞こえ始め、潤は要の胸を強く揉み上げる。
「はうっ!」
 防波堤に背中をつけ、顔を逸らしながら漏れる要の声に潤の性的興奮は強く刺激され、更に力を込めて欲求のままに要の胸を揉みしだく。
「んんっ、だめぇ!」
 首を振る要。
「要……小春にしたよりも……もっと……もっと凄い事してあげる、もう我慢出来ない!」
 興奮のまま潤は要のパジャマを右手でずり上げた。「んん〜っ!」
 恥ずかしさのあまり目をつぶる要、
「か、かなめっ!」
 こぼれる様に目の前に現れた豊満な乳房に潤が顔を近づけ舌を這わせると、
「じ、潤っ!」
 ビクンと身体を震わせ要は胸元の潤の頭を強く抱きしめた。









 チキチキチキチキ





 チキチキチキチキ




 チキチキチキチキ……




「……!!」
「……!!」
 いきなり耳にそんな不自然な音が入り、動きが止まる2人。
 虫の鳴き声とも明らかに違う人工的な何か聞き覚えのある音。
『誰かきた!?』
 要も潤も荒い息を無理矢理停めて顔を上げる。
『こんな時間に!?』
 興奮の任すままにこんな行為に及んでしまった潤だが、今の時間にここを通る人間や車はいないだろうと思ったのだ。
 海沿いとはいえ、先は民家も殆どなく、雑木林の間を抜ける道の先は山間の酒勾地区に続いているが、大回りで時間がかかるだけなので昼間でさえ滅多に人通りは無い。



 チキチキチキチキ




 しかし、それは聞き間違いでは無い。
 確実に近づく音だ。
「離してっ……自転車よっ!」
 要は胸元の潤の顔を押しやり服を整える。
 この音は自転車を降りて押している時の音だ。
 言われて思い出す。
 確信と共に数秒前の性的興奮はどこへやら、潤は要を解放すると音の方向に顔を向ける。
 いくら月明かりが明るいとはいえ、そう先までは見えない。
 しかし、徐々に自転車を押す人影が現れ始めた。
 いまさら隠れてやり過ごすのは無理だろう。
 どうか夜回りの駐在ではないように、と潤は祈るような気持ちになった。
 唯の島民ならば何とか要と一緒でもごかませる。




 しかし……月明かりに人影が現わになるとそんな考えは吹き飛び、ただ息を呑むしかなくなった。




 月明かりの下にはよく見知った少女が潤の自転車を押して歩いて来ていたのである。



「こんばんわ、潤君に要ちゃん」



 千島は首を僅かに傾げながらニッコリと笑った。






     第63話に続く


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。