第50話「小春と潤」
2017年7月2日
午後9時41分
「こ、小春……」
思わず自分の唇を指で触れる潤に、初めは悪戯な笑みを見せていた小春も、
「な、何だよ! よっぽどしたくなかったって面じゃんか」
と、恥ずかしさを隠す様に腕を組み、
「あ……あたしだって初めてなんだからいいだろうが……って、ダメ!?」
罰の悪そうに片目をつぶりながら、潤を見てくる。
「嫌だなんて言ってないだろ! それに初めてなんても言ってないぜ」
いまだに驚きは抜け切らないが、潤は必死に冷静さを取り繕う。
しかし、それは無駄な事だった。
きっと小春は初めてとは言ってない、という言葉を捕まえて、誰としたかを突っ込んでくると思っていたのだが、そうではなかったのである。
小春は少しクスッとしながら、
「あたしとこういう事するの……嫌じゃないんだ?」
と、最近見せるようになった美少女の顔を見せ、頬を赤らめたのだ。
予想外の反応に潤はうつむいて、
「えっ!?……ああ、そりゃ小春は最近……凄く……そ、その……」
と、ここ数日の小春のギャップの激しさを思い出しながら吃る。
「その……なに?」
笑みを浮かべたまま顔を覗き込んでくる小春。
『……可愛い』
ちらっと顔を上げて、潤はほんの数日前まではグループの女の子の中で、一番色気を感じていなかった筈の少女に緊張してしまう。
『まさか小春の奴、俺で遊んでないよな?』
そう考えつつ、困惑の表情を浮かべながら、
「まぁ……なんだ、小春も最近は大分、女の子らしくなってきたからな……別に嫌じゃないさ」
と、咳ばらいをしながら、なるべく冷静に見えるつもりで答える。
だが、そんな必死の態勢の立て直しを計った努力も小春が口にした次の言葉で粉々に砕かれた。
「じゃあ、今度は潤からしてくれる?」
「……!!」
絶句しながら、小春の顔を見つめる潤。
一転、変わって小春は笑っていない、その表情は潤の返答を少しおそれながらも切り出した様な微妙な感情が見える。
「こ、こ、小春」
再び吃る。
冗談に聞こえない。
「……ん」
小春は小さな吐息にも聞こえる声を出しながら、目をつぶる。
『……本当に待ってる』
潤は唾を呑み、両手で小春の肩をつかむ。
「あっ……」
つかんだ両方の肩から、小春が全身を少し震わせたのを感じる。
「……小春」
名前を呼ぶと潤は小春の唇に自分の唇を近づけ、ゆっくりと唇を重ねた。
「……んっ」
再びピクンと震える小春の身体。
そして、柔らかい唇の感触。
「んっ……んんっ」
唇を重ねながら漏れる吐息、潤は自分が興奮しているのを強く自覚しているが、それを抑え切れず、にかけていた右手を胸元に這わせる。
「……潤っ……んんっ」
唇を離し驚く様子で声を上げた小春、潤は左手を腰に回し再び強くキスをして、強引に唇をふさぎ込む。
「んんっ!」
小春は身体をくねらせるが、お構いなしに右手で左胸をわしづかみした。
「んんっ〜っ!」
唇をあわせながらも僅かに首を振る小春。
しかし、性的な興奮に後押しを受けた潤は止まらず、小春の左胸をつなぎの服の上から強く揉み上げる。
柔らかく、想像以上のふくよかな感触。
右手の動きに対する身体のこわばりを感じながら唇を離す。
「……潤、ダメッ!」
小さな声で抗議した小春、だが潤は小春の身体を強く脱衣所の壁に押し付けて、両手で胸を強くわしづかみする。
「……ああっ、くうっ、潤……もうやめてぇ」
小春が上げた声はいつもの男勝りの強気さなどは微塵も感じない少女の声だ。
それも潤を余計に興奮させた。
ぐっと胸をつかんだ両手に力を込めると、
「あうっ!」
小春は唇を噛みながら声を上げた。
「……小春っ!」
我慢が出来ず、小春の着ているツナギの襟元のファスナーに震える手をまわした……その時である。
玄関から来客を告げる呼び鈴の電子音が家中に響いた。
なんてタイミングだ、潤は思わず舌打ちして、小春の口元に手を当てる。
こんな時間に一体誰なんだ!?
呼び鈴を鳴らしているから両親ではないだろうし、帰ってくるには2時間以上ある筈だ。
しばらく黙ってればやり過ごせるだろう。
……しかし、そこでハッと気付く。
『小春に強引にこんな事して……来客にびくつきながら小春の口を塞いでいる……これじゃあ、まるで俺が小春を……』
恐る恐る視線を移すと、少し怯えたような瞳と目が合ってしまう。
『怯えている……それはそうだ、興奮して俺は何をしていたんだ!』
そう思い直し、一気に興奮が冷める。
潤は先程までとは違う意味で赤面し、何をしていいか分からず、小春の口を塞いでいた手を離し、洗面所の床に土下座した。
「ご……ごめん! 俺……興奮して、小春に凄く酷い事をした! 本当にゴメン、俺……なんて事をしていたんだ!」
そんな潤を見ながら、乱れた胸元と呼吸を整え小春は、
「……まぁ、いいよ……こっちも悪ノリして誘っちゃた所があったから……とりあえず人がきてるだろ? 出てこいよ、私はここにいるからさ、早く立ち上がって玄関行けよ……こっちこそゴメン」
と、罰の悪そうに顔を背ける。
「……いや、俺が悪いんだ、本当にゴメン、しかしいったい誰だろうな? ちょっと出てくるから、そうしたら盗聴器を探すのを頼むよ」
苦笑いを浮かべて、立ち上がると潤は早足で玄関に向かう。
『この来客がなかったら俺は小春を強引に……』
そう考えながら、玄関まで覗き窓をのぞいた潤は、そこに見えた意外な人物に、脱衣所まで聞こえるような声を上げてしまった、もちろんドアの向こうにも聞こえただろう。
「か、要!?」
玄関先に立っていたのは、思い詰めたような表情をしていた岸川要であった。
第51話に続く
今回、ちょっと過激なシーンがありました、ご気分を悪くした方がいましたらすいませんでした。
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